2019年5月、イタリア海軍の強襲揚陸艦「トリエステ」が進水したが、奇妙な新政権の方針転換で肝心の搭載機調達が事実上ストップしてしまった。
法律を改正してまで空母保有に漕ぎ着けた努力をぶち壊すイタリアの新政権
イタリア海軍は1985年に就役した強襲揚陸艦「ジュゼッペ・ガリバルディ(基本排水量1万トン)」の更新用として建造中だった基本排水量2万2,000トンの強襲揚陸艦「トリエステ」が今月25日、フィンカンティエリの造船所でマッタレッラ大統領立ち会いのもと進水式を執り行った。
強襲揚陸艦「トリエステ」は満水排水量約3万トン、全長240m、全幅36mで海上自衛隊のいずも型護衛艦とよく似た大きさだ。但し、省力化が進んでいるためか船自体の乗組員は200名と少ない。ここに750名の兵士と戦闘車両、揚陸艇、12機の回転翼機が搭載可能で艦尾にはウェルドックを装備している。因みにこの新型艦はイタリア海軍が唯一保有している軽空母「カヴール」がドック入りする際、バックアップ艦として活用される予定だ。
イタリア政府は空軍用にF-35Aと海軍用にF-35Bの導入(A/B合わせて計100機前後)を進めていたのだが、2018年に誕生した新政権がF-35導入中止を打ち出し混乱に陥った。

出典:public domain F-35B
2018年の総選挙で第一党に躍り出た「五つ星運動(Five Star Movement)」は、一言で言って奇妙な政党だ。
この五つ星運動は元々政党ではなく「運動」を自称して既存の政治体制を否定し、新しいあり方を模索してきた集団で当初は左派と見られていたが、過半数に足りない五つ星運動が選んだ連立の相手は極右政党の「同盟」で、この同盟は違法な移民追放を政策として掲げているため五つ星運動は同盟の政策を受け入れたことになる。
イタリアやギリシャなどは移民に対する現行のEUルールに強烈な不満を抱いており、この規則に則れば移民が最初に漂着した国が移民を受け入れなければならず、EU加盟国の中で地中海に面した国々は一方的に不利なルールだと反発しているのだ。
この地中海ルートによる移民流入によってイタリアには50万人以上、一説には100万人に達する移民が流れ込んでいると言われており、そのためイタリアは不法移民のキャンプ地と呼ばれているのだ。

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人権やヒューマニズムを口にする連中は「受け入れろ」と主張するが、文化も、宗教も、考え方も、言語さえ異なる何十万もの貧しい集団が、ある日突然現れたとしたら同じ事が言えるのか非常に怪しい。ただこれがイタリアが直面する移民問題の現実で、これを物理的に追放しようという政党と五つ星運動は連立を組んだのだ。
さらに五つ星運動はドイツを除くNATO加盟国が防衛費を増額しているにも関わらず防衛費を削減し福祉分野へ予算を回し始めたため、導入を予定していたF-35が削減対象に浮上するがF-35調達を全てキャンセルすると高額な違約金が発生するため、年間10機の調達ペースを年間5機程度にペースダウンすることで米国と調整を進めている。
ただ新政権の本音はF-35Aよりも機体価格や運用コストが高価で1機しか引き渡しを受けていないF-35Bの導入を中止したいらしい。

出典:pixabay AV-8B ハリアーII
ただ本当にF-35Bの導入を中止してしまうと、海軍が運用中のAV-8B ハリアーIIを改修して使い続けるか廃止するかの2択になり、もし廃止となれば2008年に就役したばかりの空母「カヴール」が不要になってしまう。
移民に反対という保守的な政策に同意しながら防衛費を削減し福祉予算を増額するという右派でも左派でもない「奇妙」なイタリアの新政権は、更にG7メンバーとして初めて中国の巨大経済圏構想「一路一帯」への参加を表明したため反米・反EUの称号まで獲得した。
イタリアは米国やEUを中心とした経済圏よりも中国経済の成長を見越し中国接近を果たしたが、結局、米中が本気で貿易戦争を始めたため新政権の思惑は完全に裏目になってしまうのだが・・・

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米中貿易戦争といえば聞こえは良いが、実際には米国による中国経済への一方的な攻撃で中国は効果的な反撃を行えていない。ファーウェイへの禁輸を手始めに、今後も中国への経済的圧力を強めていけば米国やEUからの批判覚悟で接近した中国経済の腰が折れるかもしれない。
もしそうなれば米国やEUからの批判覚悟で中国経済の恩恵に与ろうと接近した意味がなくなってしまう。
既存の政治体制を否定し新しいあり方について考えることは悪いことではないが、イタリアの新政権「五つ星運動」が行っていることは前政権の逆をやって国民からの支持を一時的に得ているに過ぎず、至るところで綻び始めているように見える。
日本も過去、国民に聞こえの良い政策ばかりを掲げた政党が政権を握った結果、国が大きく混乱してしまった経験をもつだけにイタリアが同じ道を歩んでいるように見えてしまう。
イタリアは固定翼保有を禁止した法律を改正してまでAV-8B ハリアーIIを導入、さらに軽空母「カヴール」を調達して小さいながら空母打撃群を手に入れたのにたった10年で、このような努力を全てぶち壊してしまうのだろうか?
※アイキャッチ画像の出典:public domain 空母「カヴール」
日本がF-35、105機を追加購入するから、アメリカとしては無問題ですね。
たぶん、この105機には、もう2つの飛行隊(20機)+教育部隊、整備学校で25機ぐらいが含まれるのでは?
まずはDDH-183(いずも)、
そして、今回の追加分でDD-184(かが)の2隻での運用かな?
ドイツ:2つ隣の国にロシアの脅威が及んでいる為、それなりの軍拡が必要
英・仏:アジア太平洋地域に海外領土や旧植民地国があるので、対中包囲網に参加できる、海・空軍のそれなりの遠征軍備が必要
ところで、イタリア(特に海軍)の想定する主要な脅威とは何だろう? 地中海に入って来るロシア海軍だろうか?
それなら脅威レベルは大した事は無い。また、難民対策は海軍の仕事では無い
こう考えると、NATOや西側主要国の中で、イタリアこそGDP比1%程度で済ませようと思えば可能な、楽な環境だと思う
ただし、主要国の責任も果たさず防衛努力をそこまで怠ればアメリカに疎まれ、国益を損する可能性が生じるので、
ただ利益だけが生じる話ではないだろうけど
NATOの仮想敵国はイランなので、イタリアも同じかと。
対イランなら空母は役に立ちそうですが
イランの脅威は多分に過剰評価だと思います。NATOのイージスアショア配備とか、
イランの脅威に対抗してと言ってますが、本命はロシアの脅威なのを、
イランをダシにして薄めているのだと思います。
日本の脅威の本命は中共であるが、中共相手だとあまり言うと外交問題になるので、
北朝鮮の脅威を大々的に打ち出して、防衛力整備の名分に利用しているのと同じ構図だと思います。
(実際に北朝鮮も相当の脅威ですが)
イタリアの財政破綻の危機、EUからの融資(特にドイツからの)の返済に対するイタリアのブラフ(恫喝)
って面もある。 軍事面だけで見てもねえ。
イタリアは貧しい国なんですよ。南北間、人種、移民、古くはジプシーとの間で金の分配競争が常に起きてるから、所得の再分配圧力が軍備に向かっただけでしょ。
上の方も述べてますが戦略的に差し迫った脅威がなく、戦術的にも近隣に大きな海上戦力がないんですから。
日本だと創価みたいな生活互助団体が役所にかちこむみたいな、「金寄越せ! 軍備? 警察で十分だろ」って素直に反応してるだけだと思うけど。
一言で切り捨てれば「平和ボケ」ですね。
整備工場どうなるんだろ?
同盟ってフォルツァ・イタリアと同様に中道右派政党じゃないですかね・・・少なくともジェトロをはじめ信頼できるシンクタンクではそう記載されていますね。
なんで極右政党扱いなのかと思ってたら、新聞とか報道ベースではそう書いてるっぽい?なんだかなぁ。
イタリアにはしっかり「新しき力」っていう極右政党があるんだから彼らに失礼。議席持ってないけど。
ほんで5つ星は素人ポピュリズム政党で小池&希望の党みたいなやつ。まともな政策なんかありゃしない。
記事中の「奇妙な」って表現は最大限良い言い方をしていますね。まあ賞味期限が切れたみたいですが。
現行のEUルールに則れば、移民が最初に漂着した国が、移民を受け入れることになっており、EU加盟国のなかでも地中海に面した国は、一方的に不利なルールだと反発している。
地中海ルートによる移民流入により、イタリアには50万人以上、一説には100万人達する移民が流れ込み、もはやイタリアは不法移民のキャンプ地と言ってもいい。
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そりゃまぁ激オコで排除推進なのも分かる不公平ルールだわ これには同情する。
米中どちらつかずって韓国みたいだねw バカっぽいわ。
浮いた空母カヴールはインド 韓国など他国に売れば? レッドチームに入るなら中国に売っても良いし