イタリア空軍のルカ・ゴレッティ参謀長が議会の国防委員会で「テンペストとFCASは最終的に統合されるべきだ」語り、ロイターなど多くの海外メディアが関心を寄せている。
参考:FCAS, Tempest fighter jet programmes will merge – Italy’s air force chief
往々にして人間は正しさや合理性だけでは割り切れない部分があるため両者の統合は難しいだろう
イタリア議会の国防委員会に出席したルカ・ゴレッティ参謀長は「我々がテンペスト計画に参加を決断したのはFCAS計画よりも大きな役割が果たせると思ったからだ=FCASを主導するダッソーやエアバスの優位が強烈でテンペストの方が一定の影響力を確保しやすいという意味」と明かしたが、欧州が莫大な資金をよく似た2つのプログラムに投資することは考えにくく「最終的にテンペストとFCASを1つに統合するのが自然でイタリアはNATOと欧州の橋渡し役になるべきだ」と述べた。

出典:BAE Systems テンペスト
つまりテンペストとFCASに分断された次期戦闘機プログラムに欧州の国と防衛産業企業が別れて投資を行うほど余裕がないので「欧州は1つにまとまるべきだ」という意味だが、イタリアがテンペストとFCASの統合を主張したのはコレが初めてではなく、2020年末にテンペストプログラムに関する3ヶ国間協定(英国、イタリア、スウェーデン)に署名したと発表した国防省発行のプレスリリースで「欧州間で無駄な競争を避け、世界市場で高い競争力を備えた次世代戦闘機を開発するためFCASとテンペストは統合される方が望ましい」とハッキリ言及している。
さらにエアバスの防衛・宇宙部門総責任者のダーク・ホーク氏も昨年6月の段階で「新型コロナウイルスの影響でダメージを受けた欧州の経済状況ではFCASとテンペストを同時に進めるのは難しい」と語り、英国のEU離脱に伴う貿易交渉が完了して防衛に関するルールが確定すれば「英国と欧州は戦闘機開発プログラム統合へ向けて話し合いを開始するべきだ」と訴えていた。
最も興味深いのはフランスと共同でFCASを立ち上げたドイツもテンペストとの統合を訴えている点だろう。

出典:エアバス Future Combat Air System
ドイツ空軍総監のインゴ・ゲアハルツ中将は「このまま行けば相互運用性の問題に直面したタイフーンやラファールの二の舞になる」と指摘してFCASとテンペストは最終的に統合されるべきだと今年7月に主張しており、イタリアやエアバスと異なるのは資金面ではなく相互運用面から両者の統合を訴えている点だ。
かつて欧州のNATO加盟国は戦闘機を共同開発することで完全な相互運用性の実現を夢見たが要求要件の食い違いからフランスが離脱、完成したタイフーンも各開発国が独自の構成やシステムを開発して採用したため「完全な相互運用性」という理想からかけ離れたものになってしまった。
その代表例がタイフーンのアップグレード向けに開発されたAESAレーダー「Captor-E」で、レオナルドが開発した基本型のCaptor-E/MK.0は各開発国の採用予定はなくクウェート空軍向けの機体のみが採用、ドイツとスペインはCaptor-E/MK.0をベースに独自機能を盛り込んだCaptor-E/MK.1を開発してアップグレード向けに採用、英国はCaptor-E/MK.0を開発したレオナルドと共同でMK.0に実装されていない高度な電子攻撃能力と安全なデータリンクモードを備えたCaptor-E/MK.2を開発中だが、肝心のイタリアは空軍のタイフーンにCaptor-Eを採用する予定がない。

出典:Public Domain
要するに現在のタイフーンは各国がバラバラにアップグレード機能を開発して進めているため能力的に相互運用性が破綻した状況で、この悲劇を繰り返さないためゲアハルツ中将は「FCASとテンペストの統合」を訴えているのだが、各国がバラバラにアップグレード機能を開発しているのは独自要求を実現するためというより「自国の開発能力を維持するため」という側面が強く、国際共同開発が追求する効率や理想だけで「完全な相互運用性」を確保のは不可能だ。
結局、欧州の相互運用性を阻害しているのは各国の事情(自国の防衛産業基盤の保護や維持)であり、欧州の戦闘機向けエンジン部門はロールス・ロイス、レーダー部門はレオナルド、設計部門はダッソーといったように防衛産業が集約化され自国企業のみでの戦闘機開発能力を喪失して名実ともに「欧州の防衛産業基盤化」が成れば問題は解消するかもしれないが、独自の防衛産業基盤は自国の安全保障政策にも大きな影響を与えるため安易に応じる国はなく競争の過程で淘汰されるしか受け入れられないのかもしれない。
少々話が脱線したが各国の利害を抜きに考えれば「FCASとテンペストの統合」は完全に正論(二重投資や規模の経済といった側面)だが、往々にして人間は正しさや合理性だけでは割り切れない部分があるため両者の統合は難しいだろう。
関連記事:イタリア、第6世代戦闘機「テンペスト」開発に関する3ヶ国間協定に署名
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※アイキャッチ画像の出典:BAE Systems 第6世代戦闘機「テンペスト」
イギリスがEUから脱退していなかったらこんな面倒なことにはなってなかったんだがなぁ
かつてもそうだったようにフランスは小さな艦載機であることに拘るから無理だろう
大陸国家と海洋国家だとどうしても求める方向性が違う
無理にまとめてもどうせあっちこっちが脱退するのがオチ
タイフーンとラファールの時も機体の仕様や基本構成までは合意できたんだよな。むしろ問題になったのは英仏どっちのエンジンを乗せるかで、これは採用国の使用環境や地理的条件うんぬんじゃなくて純粋に仕事配分の問題。むしろ英国の離脱交渉が停滞して両岸関係がピリピリしている今こそこの手の問題は深刻なんじゃないか。
兵器の生産をEUの枠組みでやる訳ではないのでEUの雇用配分関係の規制などは元々働かないが、例えば機能面でも価格面でも戦闘機の核心要素であるエンジンなどはRRがあり既に設計に入っている英国の優位がある。戦闘機を発注すればするほど大陸諸国の投資が英国に吸われていく状況になっても独仏が笑顔でOKしてくれるってことはないはず。そして悪いことに、バーターとして別分野での労務調整などを担えたはずのEUに英国は既に加盟していない。
そしてA400Mの悪夢が繰り返される訳だな。
計画始動段階ではフランスがFCASでは主導権を握り、ドイツは次期戦車で主導権を握るって方針だったのにドイツがFCASのワークシェアの分担割合でゴネた経緯を見ても、これ以上参入する開発国が増えてもマイナスにしかならんだろう
日本も人事じゃねーな
日本の防衛産業もたこつぼ状態で先細りと言われてるけど、欧州は欧州で辛そうだな。
欧州内での共同開発は諦めて、今やってる欧州外の国との共同開発•技術支援に各国勤しんで、出来上がった物を使えば良いんじゃない?
そうすると今の韓国のK9みたいな、安くて優れた欧州外製兵器が欧州内を席巻することになって、やっぱり生産基盤の維持に支障をきたすことになりそうだが。
各国の要求や運用が違うから統合できないというのはそもそもの前提であって、
それを踏まえたうえで共用できる部分を共用するようなうまい方法はないものか
というところで出てきたのがテンペストというゆるふわコンセプトだったのでは。
このプロジェクトの中間管理職とかは過酷だろうなぁ
何かしらの肩書を持つ人物がこういう事を言うと、各国で必ずお金的な意味で問題にする議員がいるわけで。
余計なこと言うなーって思ってる関係者多そう。
日本のF3は真逆の問題抱えてるよな
第5世代より高度で高価になる第6世代目標の機体を1国で殆ど開発する
日本の財政と自衛隊はそのコストに耐えられるか!?
耐えられないならイギリス+αのテンペストもフランス・ドイツのFCASもロシアも作れない
日本の経済規模と同等以下だもの。特にロシア
だって日本は次期戦闘機を輸出しないんだから、輸出も視野にいれてる欧州やロシアよりも厳しいだろう。
40年代には経済成長しないまま人口イギリスと変わらんくなるまで減るのに…?
別に問題なく耐えられるんじゃない?
年間で1000億ちょっとだし、逆にそれに耐えられんのなら補正予算や特別な対策費用が出せないでしょうし
イタリアの言うことも一理あるが、それなら輸送トラックや小銃などの分野から共同開発をやってみたらどうだろうか。どうせ揉めるだろうけど
構造の複雑さや価格、生産数が全然違うからそれは例えとしてちょっと違うと思うぞ
車両でも簡単な物でも何でもいいから共同開発を成功させてみろ、と言っている訳でして。それができずに航空機を作ろうとするからタイフーンやA400Mのようなってしまった訳で。
ごめん、A400Mはエンジンの問題だからユーロファイターとは違かったわ
>各国の利害を抜きに考えれば「FCASとテンペストの統合」は完全に正論(二重投資や規模の経済といった側面)だが、
じゃあついでに自動車メーカーもプジョーやフィアットやダイムラーを潰してフォルクスワーゲンに統合して、ヘリコプターメーカーもAWを潰してエアバスヘリに統合、造船業もフィンカンティエリに統合、航空会社も薬物中毒者のエールフランスKLMやルフトハンザを潰して機体数と旅客数が欧州一のライアンエアに統合するのが正しいな。
個性も売りの一つになる個人所有の乗用車とNATO等での相互運用性が求められる戦闘機を同列では語れんだろ。
まずは、F-35Bの数を揃えろ。
そこからだ。
ドイツ入れたら、絶対グダるよ
タイフーンで一番グダった原因を作ったのはドイツだったろうに
テンペストからしたら、FCASはドイツを押し付けるのにちょうどいい枠組みなんだから
そのくせ
>相互運用性の問題に直面したタイフーンやラファールの二の舞になる
などと自覚のない事を言ってるのはどこのどいつだ。
ヨーロッパで共同制作した大型ドローンもドイツの双発仕様という条件がかなり足を引っ張って高額・大型化したっぽいからなぁ…
15mクラスの小型機、18mクラスの中型機、20mクラスの大型機
3パターン用意すればいいのさ
レーダーとエンジンはお好きなものを
それができるのはテンペストのほうじゃね?
車もそんな感じで売って欲しい。
軽の車体に1.6VTECとか隼のエンジンとか
「統合されるべき」に異論のある人はおらんでしょうけど。
出来ないから今があるわけで。(笑)
相互運用性とか言って、統合のために時間とコストをかけるより、別々にチャッチャと作った方が、トータルのコストは安く上がるんでないのかね?
ヨーロッパで戦闘機などを共同開発できない理由は、一番重要なエンジンを英仏どちらが作るかで必ず揉める、そしてドイツも実はエンジン開発に加わりたいと思っている
だからイギリスがEuを抜けたのは大正解、FCASは独仏になってもエンジン開発のワークシェアでもめている、それゆえテンペストの方が先に完成するだろう(予定もそうなっている)。
一部LMなどを下請けに使っているが、F-3の性能要求を出すのはは防衛省だけで、ワークシェアなどの問題もない。
日本は15トン級エンジン、ウエポンベイを含むステルス技術、AESAレーダーとフライバイライトとベクタード推力を統合させパイロットの望むように飛ばす機体制御と連動するアビオニクス。
日本はこういった要素技術をほぼすべて自国で保有してるわけで次世代機を世界で一番早く完成させることになるだろう。そして15トンエンジンの無いテンペストもCASもF-3を超えられない。
一番可能性のあるのはアメリカだが基本設計の古いF-15やF/A18をこれからも使い続けなければならない状況では第6世代機にもそれほど期待はできない。
EU軍として加盟国が完全に統合されてるなら一つに絞れるけどまぁ無理だろう…
欧州エンジン下に見てるようだけど、直径とかサイズ比較してみ?
EJ200はF404系に全戦全敗してるからなぁ。
グリペンEではEJ230を提案して負けてるんだから半ば身内のスウェーデンの目で見ても「サイズを同等まで拡大してもF414には及ばない」と評価されたんだろ。
そしてF414の1.5の推力を持つXF9-1。
1000馬力の零戦ではどんなに頑張っても2000馬力級のF6FやPー47、スピットファイアの後期型を超えることは出来なかった、そして今の日本はF6Fの立ち位置にいる。
20年前のF119に並ぼうかってとこ
サイズの違うF414持ち出して 何酔いしれてんねん
XF9-1の性能は、F119よりも圧倒的に優れている。
なんか 怖っ
型番についてる「X」の文字が見えませんか?
正式採用された量産品の比較にただの試作エンジン持ち出したって何の意味もないんですけど
これまで通りにフランスだけで艦載前提の作ればええんとちゃいますの
ほんでフランス以外オールEUでテンペストやりゃええやん
テンペストのほうに合流して、研究と共用パーツを開発して、あとは各自で好きに作るのが一番いい落とし所だと思うよ
まーた給油ノズルぼっこり出されんのかね?
中東とかアフリカしか見えてねーんじゃねか あの国
インターオペラをしっかりやって兵器の互換性の確保ですかねぇ
ミサイル関係が面倒くさいんだろうけどね。
JSIで関連ミサイルのテストでうん億以上かかっているあたり
まあ、タイフーン開発のグダグダの二の舞って未来しか見えない案件
もし、統合されたら、
イギリスとやるF3はどうなるだろ?
面倒くさくなりそう
統合を成功させるキーポイントがあるとしたら、機体設計をダッソーに一任することかな。
機体をモジュラー化して各国が望みのエンジンやレーダーに交換できるとか、ソフト切替えだけで各国独自の戦術に対応可能とかの柔軟な設計を出来るでしょ、ラファールで実際にやってるから。F3RまでソフトのみでUG可能とか、RBE2AAへは現場で2時間で換装可能でソフト書換え不要とか、90kN級エンジンはインテーク交換だけで搭載可能でそれも設計済とか、単座艦載型と複座陸上型をニコイチして単座陸上型を造ったとか。