メローニ政権は遅れていた来年度の予算案を16日に発表、この政府文書には防衛装備の調達プログラムに関する資金割当が記載されており、イタリア軍はレオパルト2A8、次期歩兵戦闘車、HIMARSの調達を希望している。
参考:Italy unveils weapons wish list, forecasts defense spending
英国や日本と進めているGCAPにも2.71億ユーロ(2037年までの総支出は77.7億ユーロを予定)を配分
メローニ政権が発表した予算案(安全保障分野の装備調達や開発プログラムのみ)の話に入る前に、これまの流れをおさらいしておく。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて「伝統的な地上戦力」に対する再評価に注目が集まり、欧州では新しく戦車や歩兵戦闘車の調達や検討を行う国が急増、イタリアでもポルトラーノ中将が3月「アリエテとダルドの後継計画が具体化するまで時間がかり、このギャップを埋める戦車と歩兵戦闘車を迅速に調達したい」と国防委員会で発言して注目を集めた。
イタリアはアリエテの後継に独仏が開発を進めている「Main Ground Combat System=MGCS」を検討していたが、両国はイタリア参加に否定的(顧客して購入するのはOK)で、ポーランドに共同開発を持ちかけたもののウルフ・プログラムの勝者にK2PLを選択したため、イタリア産業界の関与が未知数なMGCSを参加・導入を目指すのか、単独もしくは国際共同開発の枠組みを構築するのか見えていない。
ダルドの後継計画は2022年度予算で「国際的なパートナー(共同開発国)を2024年までに決定する」と触れているものの、仕様はもちろん「誰と共同開発するのか」も謎なので先行きが明るくなく、正統な後継計画が軌道に乗るまで国防力のギャップを放置できないという理由で「戦車と歩兵戦闘車を迅速に調達したい」とポルトラーノ中将は主張しているのだ。
イタリア国防省の関係者は「安全保障に必要とされる戦車の数は250輌で、アリエテのアップグレードは125輌(2035年まで運用予定)しか予定されていないため125輌のギャップが存在する」と明かし、元国防次官のミューレ議員は「ギャップを埋めるための戦車は購入ではなくリースが現実的な解決策で、NATOや欧州で運用実績があり、信頼性が高く、兵站基盤が確立されている戦車が必要だ」と述べていたためレオパルト2A7導入が噂されていたが、現地では「レオパルト2A8を調達する計画だ」と報じられている。
メローニ政権のラウティ国防次官は「保有する200輌のアリエテは50輌しか運用状態になく、NATOの要求を満たすためには250輌以上の戦車が必要で、2024年からの新規購入に40億ユーロの予算計上が行われる予定だ(戦車取得に関連した総支出は80億ユーロを想定)」と明かし、計画に詳しい関係者は「レオパルト2A8が133輌必要」と答えていた。
そしてここから今回の本題だ。
2024年度予算案によると「レオパルト2A8の取得スケジュール」は2024年から2037年で取得費用は40億ユーロ(2024年1億ユーロの支出を予定)、最終的なプログラムコストは「82.5億ユーロに達する」と予測しており、レオパルト2A8の取得は「MGCS参加への可能性を排除するものではない」と述べている。
ダルドの後継車輌についても「2024年に4,890万ユーロの支出を予定」「最終的なプログラムコストは150億ドル(取得コストは52.3億ユーロ)に達する」「このプログラムはイタリア産業界、雇用、ノウハウを最大限活用するものでなければならない」と言及しているが、ラインメタルが提案しているリンクスをライセンス生産するのか、新しい車輌を1から開発するのかは不明のままだ。
さらに2024年度予算案にはHIMARSの調達が登場、今後7年間で1.37億ユーロ(プログラムコストは9.1億ユーロを予定)を投資してHIMARSを21輌調達したいらしい。
他にもドローンのスウォーム技術開発に7,600万ユーロ、英国や日本と進めているGCAPに2.71億ユーロ(2037年までの総支出は77.7億ユーロを予定)を配分しており、国防予算に占める調達費は2023年=61億ユーロ、2024年=81億6,000万ユーロ、2025年=87億6,000万ユーロになると予想し、2021年の40億ユーロ、2022年の54億ユーロと比較すると大幅な増額と言える。
因みにイタリアは今回の予算案でも「GCAPで開発された戦闘機を調達するのかどうか」という点を明確にしてない。
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※アイキャッチ画像の出典:Corporal-chef Sedeyn Ritchie, Belgian combat camera team
アリエテ2は財政難でポシャり、近代化改修(2035年まで使えるようにする)も125両だけと、国産戦車を作っていた国がまた一つ消えていくのはちょっと寂しいですね。それだけレオパルド2がお買い得ということなのでしょうけど。
同じNATO加盟国同士で、車両を共通化できるというのはやはりかなりの強みなのでしょうね。
欧州で残る独自戦車はイギリスのチャレンジャー2(3)とフランスのルクレール。随分減りました。
アリエテを200両全て近代化改修すべきなんだが、75両は部品取りされてスクラップ状態なのか?
ダルドもオーバーホールで済ませとけ。
こっちも、産業崩壊しているのか?
廃棄予定の90式戦車を上げられればなあ。
77億ユーロ(≒1.2兆円)出して自国分生産はしない、は流石にないんじゃないかとは思いますけどね。
日英が約200機に込み込み×300億円で導入したとしても売り上げで6兆円。原価分はほぼそれぞれの国内に還元するだろうから利益分を仮に3等分しても全然元は取れない。レオナルドUKの取り分を考慮しても厳しいでしょう。
まあ「状況証拠はともかく視覚的に確認できる根拠はまだ存在しない」ってとこですかね。
MGCSはまだまだすったもんだしそうだから、レオ2の方が将来計画としては堅実だな。
話は変わるが、イタリアはウクライナにチェンタウロ・ドラコを供給しないのかな?
オトマティック自走対空砲は失敗作の烙印を押されてしまったが、攻撃ヘルやUAV対策に持ってこいの76㎜砲搭載の対空自走砲。
今が一番のPR時じゃない?
レオパルドしかり、F-16しかり、兵器って結局大量生産されてるものじゃないと生産や配備の融通が利かないので、そういう兵器ばかり売れるようになるっていうのが一面の真実なんだと思う。
日本がトマホークを購入するのも、同様にトマホークが大量生産されていて同種の兵器の中では比較的購入しやすいということもあるのだろう。
逆に日本の武器輸出が上手くいかないのは、少数生産で外国が配備しようにも調達にほとんど融通が利かないって面も少なからずあるように思う.
トマホークの例は違う
あれは自衛隊がトマホーク運用システムを既に持っているという互換性での購入
例えセールスで競合に負けていても運用基盤の再利用で選ばれることがある
似たような例としてミラージュ運用国がラファールを買ったり、オランダがブラッドレーを買わずにYPR−765を選んでいる
>>「このプログラムはイタリア産業界、雇用、ノウハウを最大限活用するものでなければならない」
産業界からの圧力やばそう
ラインメタルのKF51パンターなら交渉次第で良い条件(ライセンス国産等)で契約できるかも
イタリア勢は既に装軌装甲車の開発の気が皆無なんで装軌はラインメタルで装輪はBAEって協業の分別になるのでは?この構成は英国と同じですけど決定的な違いは装輪装甲では開発と輸出で相当な能力がある所です。
それでダルドIFVの後継の車体はラインメタルのKF系かイベコの装輪かで悩ましい事にもなる。性能的にはKFの装軌車でラ国もできる、しかし装輪装甲で構わないのなら砲塔はレオナルド製で完全国産で行けるわけです。
欧州製の装軌IFV車体はCV90とアスコッドに既に二分化されてます。イベコの装軌を保護するために何れの側にも加わらなかった結果のガラパゴス化と言える。産業保護で自滅した典型ですね。これを今更にどうしろなんて不可能です。
通常兵器は、美術品や骨董品ではないので、本体や部品の消耗前提になりますからね。
運用実績、特に実戦投入されて数の多い物は、戦訓を取り入れる事ができるためアップグレードも早くなります。
数が売れて、1台当たりの設計コストも安く、量産効果が働きくからです。
逆に生産数の少ない戦車は、アップグレードの設計コストが合わず、生産部品も少なくなるため協力企業すら集めにくくなります。
自動車は、3万点の部品が1点欠ければ生産できないですが、戦車や戦闘機は部品点数がさらに多くなります。
少量生産の戦車は、カタログスペックで考えるのは危険であり、サプライチェーンの面が脆弱なため制約(弱点)があると考えるべきです(長期の戦争に耐えられない)。
>ギャップを埋めるための戦車は購入ではなくリースが現実的な解決策で、NATOや欧州で運用実績があり、信頼性が高く、兵站基盤が確立されている戦車が必要だ
スウォームドローンに最も重要な技術は実のところドローン本体ではなく安全かつ大容量の通信
スターリンクのような衛星コンステレーションが理想だが、米中以外で確率出来るのだろうか
「MGCS参加への可能性を排除するものではない」とは言え、MGCSに対してドイツとフランスの間で温度差があると報じられているので、開発開始までまだまだ時間がかかりそうな気が。
国土の地形が似ているだけに10式戦車をイタリア軍仕様にアップグレードさせた車両をライセンス生産してもらおう(妄想)