欧州関連

NATOが即応部隊の拡張を承認、バイデン大統領は欧州での米軍プレゼンス強化を表明

29日に始まったNATO首脳会議で加盟国は「防衛と抑止力の根本的な変革」を承認、バイデン大統領は「欧州における米軍プレゼンスを長期に渡って大幅に強化する」と表明した。

参考:NATO agrees new Strategic Concept, strengthened deterrence and defence, more support for Ukraine, invites for Finland and Sweden
参考:US to boost military presence in Europe for Russia threat

欧州・中東・アフガニスタンに展開する米軍を整理してインド太平洋地域に再配置する計画は見直しが濃厚

NATOのストルテンベルグ事務総長は事前に「今回の会議はNATO変革の場になり多くの重要な決定が行われる。有事発生時の初動対応部隊=NATO即応部隊(現行4万人規模)を30万人以上に拡張する」と明かしていたが、29日に始まったNATO首脳会議で加盟国は「防衛と抑止力の根本的な変革」を承認した。

出典:NATO

変革の内容は事務総長が事前発表していた通りの内容(別記事参照)で、NATO加盟国が負担すべき国防支出の数字については「従来の指針=GDP比2.0%は達成すべき上限ではなく下限である」という言及に留まり具体的な数値目標は設定していないが、加盟国がNATO即応部隊に提供する準備が整った戦力提供は7倍以上になるため必然的に負担は増加することになる。

米ディフェンスメディアは中国への対応を理由に「NATO首脳会議でバイデン大統領は欧州の安全保障に対する米軍のプレゼンス引き下げを主張すべきだ」と訴えていたが、ストルテンベルグ事務総長と会談したバイデン大統領は「欧州における米軍プレゼンスを長期に渡って大幅に強化する」と明かし、ポーランドに恒久的な米軍陸軍の第5軍団駐屯基地を設置、英国にF-35Aを装備する2個飛行隊を追加派遣、ドイツとイタリアに防空部隊を追加派遣、ルーマニアとバルトに追加部隊を派遣、ロタ海軍基地にアーレイ・バーク級駆逐艦2隻を追加配備すると発表した。

出典:NATO

拡張されるNATO即応部隊に米国がどの程度の戦力を提供するのは未知数だが事実上、トランプ前政権から進めてきた米軍の再編成=欧州・中東・アフガニスタンに展開する米軍を整理してインド太平洋地域に再配置する計画はロシア軍のウクライナ侵攻の影響を受けて見直されることが確定的といえる。

因みに東欧諸国に恒久的な戦闘部隊を駐屯させないというNATOとロシアとの合意(1997年)を守るため、ポーランドの恒久的な駐屯地には第5軍団の司令部部隊のみが配備される予定で、戦闘部隊は東欧諸国に事前配備されているNATO即応部隊と同じようにローテンション配備される可能性が高い。

関連記事:NATO事務総長、現行の4万人から30万人以上に即応部隊を拡張すると発表
関連記事:米メディア、30万人以上に拡張されるNATO即応部隊の80%は欧州が負担すべき

 

※アイキャッチ画像の出典:NATO

米陸軍がGD製の軽戦車採用を発表、2035年までに500輌程度を調達前のページ

ロシア軍に包囲されつつあるリシチャンシク、補給路維持も限界か次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    安全保障が最優先、国防予算を2.0%以上に設定するNATO加盟国が増加

    ロシアの脅威を実感したポーランドではGDP比に占める国防予算の割合を3…

  2. 欧州関連

    トルコの新型無人航空機「バイラクタルAkinci」の引渡式典に日本の駐在防衛官も参加

    バイラクタルTB2で有名なBaykar社が開発を進めていた新型の双発無…

  3. 欧州関連

    クリミアで発生する謎の爆発、ウクライナは新型兵器のテスト結果であると示唆

    占領下のクリミアで発生する謎の爆発について国防安保委員会のダニロフ氏は…

  4. 欧州関連

    オランダがPzH2000をウクライナに提供、ドイツが弾薬と訓練を提供

    米ブルームバーグは20日、ドイツはオランダがウクライナに提供するPzH…

  5. 欧州関連

    ドイツのランブレヒト国防相が来週中にも辞任か、ウクライナ支援で功績

    残念な新年の挨拶動画で批判にされていたランブレヒト国防相について「来週…

  6. 欧州関連

    ナゴルノ・カラバフ紛争が終結、アルメニアが全面降伏に近い和解案に同意

    要衝シュシャが陥落したことを受けてアルメニアとアゼルバイジャンはロシア…

コメント

    • 匿名さん
    • 2022年 6月 30日

    >拡張されるNATO即応部隊に米国がどの程度の戦力を提供するのは未知数だが事実上、トランプ前政権から進めてきた米軍の再編成=欧州・中東・アフガニスタンに展開する米軍を整理してインド太平洋地域に再配置する計画はロシア軍のウクライナ侵攻の影響を受けて見直されることが確定的といえる。

    当然ですよね。
    中国は米民主党のスポンサーなんだから、バイデンに本気で対応することを期待しちゃダメ。
    本当に中国シフトする気があったなら、ウクライナにこんなに肩入れしないで、事前にロシアと話付けてただろうからね。

    7
      • 真夏日
      • 2022年 6月 30日

      何でそんな子どもじみた結論になるのよ。

      燃えてる火事を放置できるわけがない、日本だって米軍を当てにしてるのは欧州諸国と同じだろ。

      44
        • 匿名さん
        • 2022年 6月 30日

        >燃えてる火事を放置できるわけがない
        いや、初期消火をせず、放置したのはアメリカでしょうが。
        普通、家が火事になる前に消火するよ。

        4
      • ぱんぱーす
      • 2022年 6月 30日

      結局NATO加盟国は分担金を増やせという主張を続けていたトランプが正しかったですね
      ドイツへもロシアへのエネルギー依存の危険性を警告してました
      ウクライナの緒戦でもトランプ政権時に大量に売却したジャベリンが活躍したし、舌禍は多かったですが少なくとも安全保障については真剣な大統領だったと思います

      28
        • 匿名さん
        • 2022年 6月 30日

        トランプは興味がないこと(安全保障)については、専門家の意見を聞き入れる感じでしたからね。
        そのあたり、ポンペオがうまく手綱を引いてたのでしょう。

        15
        •    
        • 2022年 6月 30日

        トランプが負担増やせ言うてたのはアメリカの負担を減らしたいからで全然違うけどなー

        トランプが言う以前からGDP2%目標はNATOで決まっていたし、軍事力増強はずっと課題だった

        18
        • けい2020
        • 2022年 6月 30日

        トランプは良くも悪くも一般人感覚の俗物感情イキリだったから、
        みんながそれダメだろって思ってても、リベラル派に叩かれるから言えない事を言ってたんだよな

        個別の短絡的思考のは知能低いなぁと思うことだらけだったが、
        周りに同調してイキル発言なんかは、集合知的なものがおおかった感じ

        1
        • kojima
        • 2022年 6月 30日

        トランプ「パイプラインは制裁する。ドイツはロシアの属国になるだろう」
        「プーチンは天才だ(ジャベリン送っといたけどw)」
        プーチンとは気が合うかのようにふるまいながら、裏ではこの仕打ちw
        恐るべき人物なのは間違いないし、少なくとも対露に関しては彼が正解だったように思えますな。

      •    
      • 2022年 6月 30日

      >中国は米民主党のスポンサーなんだから

      頭Qアノンか
      おそらくクリントンとかの事言ってるんだろうが
      ヒラリークリントンの親中論文と言われるものは天安門以前で、当時はヒラリーに限らず中国に期待する見解が多数でステレオタイプなものでしかない
      中国からの献金も問題になって解決済みの大昔の話

      ロシア発の、トランプ支援のネガティブキャンペーンをまんま信じて思う壺ですよアナタ
      ヒラリーはリベラルホーク言われて中露にあたりキツいからね

      31
        • 匿名さん
        • 2022年 6月 30日

        論より証拠。言葉より行動に注目してください。

        3
        • 匿名
        • 2022年 6月 30日

        米民主党はかつての親中路線イメージの払拭に必死でしたが、昨今のウクライナ情勢で一息ついたって感じですかね

        米国のリソースも有限である以上、ウクライナが収まるまではしゃーなしかと

        3
      • general
      • 2022年 6月 30日

      リンク
      こんな無様な行動する奴を未だに持ち上げてる奴いるんだ…これが頭Jアノンってやつか…

      1
      • 無名のミリオタ
      • 2022年 6月 30日

      ついにこのサイトも陥落(Qアノンや限界保守が出入りするようになったため)したか…

    • モノリス
    • 2022年 6月 30日

    欧州の事は欧州自身に守らせるっていうのは純軍事的には合理的なんですけど、仏独伊という欧州の主要国が露に融和的でNATO内の対露姿勢が一致していない現状では米国が欧州の安全保障に関与していくという方針を打ち出すのは仕方のない事なのかなと思います。
    仮に米ディフェンスメディアの言う通りに露の脅威が消えない内に対中全力なんて表明してしまったら、米国が欧州を見捨てたと思われてただでさえ資源高で足元の支持基盤がぐらついている各国の政権が軒並みルペンやオルバンみたいな権威主義的な自国第一主義の政党に取って代わられてしまうかもしれません。

    7
      • 成層圏
      • 2022年 6月 30日

      グローバルな時代になっても仏独伊ってまとまらないんだね。出て行ったイギリスの気持ちがよくわかる。
      そういえば、第二次大戦前もこんな感じだったような。

      6
    • モノリス
    • 2022年 6月 30日

    欧州の事は欧州自身に守らせるっていうのは純軍事的には合理的なんですけど、仏独伊という欧州の主要国が露に融和的でNATO内の対露姿勢が一致していない現状では米国が欧州の安全保障に関与していくという方針を打ち出すのは仕方のない事なのかなと思います。
    仮に米ディフェンスメディアの言う通りに露の脅威が消えない内に対中全力なんて表明してしまったら、米国に見捨てられたと思われてただでさえ資源高で足元の支持基盤がぐらついている各国の政権が軒並みルペンやオルバンみたいな権威主義的な自国第一主義の政党に取って代わられてしまうかもしれません。

    2
      • モノリス
      • 2022年 6月 30日

      すいません!二重投稿になってしまいました…

      7
      •    
      • 2022年 6月 30日

      G7でウクライナ戦争への大原則が決定されて意思統一されたから大丈夫だろう

      ・ウクライナへの支援は必要な限り継続する
      ・ウクライナの意思決定に干渉しない
      仏独は停戦しろなどと干渉できなくなり、黙って支援するしかなくなった

      1
    • こんにちは
    • 2022年 6月 30日

    広告が増えすぎてめちゃくちゃ見づらくなってる。残念。

    1
      • ポロニウム
      • 2022年 6月 30日

      Braveとかを使うのをオススメする。結構便利よ。

      3
      • 匿名
      • 2022年 6月 30日

      管理人さんも霞を食っては続けていけないからしゃーない
      そもそもサイト運営に費してる時間と労力を考えたらね…

      5chのコピペでやっていけるまとめサイトと同一視するのは正直酷な気がしますわ

      19
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  4. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  5. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
PAGE TOP