ノルウェーの国防相は「どれだけ時間を費やし整備をしても、どれだけスペアパーツを購入してもNH90はノルウェー軍の要求要件を満たせない。NH90を返品するので支払った約50億クローネに利息を乗せて返せ」と発表した。
参考:Norway ends contract for NH90 helicopters, wants full refund
参考:Norway terminates its contract for the NH90
エンジニアがどれだけ時間を費やし整備をしても、スペアパーツをどれだけ発注しても動かないNH90
ノルウェー国防省はNHインダストリーズ(NHI)にNH90を2001年に14機発注、2008年までに14機全てが引き渡される契約だったのに初号機がノルウェーに届いたのは2011年で、2018年までに8機引き渡されたNH90は稼働率(14機で年間3,900飛行時間を予定していたが実際の年間飛行時間の平均は700時間/8機)が異常に低く、当時の国防相が問題改善と残り6機の調達を2022年までに行うよう計画を変更。
それでもNHIはノルウェーの要求を満たせずグラム国防相は「義務を果たさなければ契約を打ち切る」と今年2月に脅していたが、10日に「NHインダストリーズが契約上の義務を果たさなかったため正式に契約を解除した」と発表した。
グラム国防相は会見の中で「残念ながらエンジニアがどれだけ時間を費やし整備をしても、スペアパーツをどれだけ購入してもNH90はノルウェー軍の要求要件を満たせないという結論に達した。我々は今後受け取ったNH90やスペアパーツの返却作業を開始する。NHIに対してはノルウェーが支払った約50億クローネとその利息を返還するよう要求する」と主張したため大きな注目を集めている。
つまり契約締結から20年以上も経過しているにも関わらず、ノルウェーの要件を満たすNH90は1機もなく、NHIも現実的な解決策をノルウェー側に提示できなかったため契約の不履行=支払った金に利息をつけて返せと行っているのだ。
これに対してNHIは「ノルウェー国防省の決定には失望した。我々はNH90運用に必要な措置を全力で講じてノルウェーが要求する固有要件を満たすソリューションも提供してきた。NH90を返品するので受け取った代金を返還しろという要求に法的な根拠は存在しない」と反論しており、両者はこの問題を話し合いで解決するのか、それとも法廷に持ち込むのかは謎だが、ノルウェー国防省は「新しい対潜哨戒ヘリの調達プロセスを直ぐに開始する」と明かしている。
因みにNH90の稼働率が驚くほど低調だという批判や不満はノルウェーが初めてではない。
オーストラリアも独自要件を盛り込んだNH90を導入したがNHインダストリーズは設計変更に失敗、運用上の不満を解消すため部分な再設計を行い最終運用能力の獲得が2014年→2019年にずれ込み、欧州から取り寄せるスペアパーツの入手性が悪いためNH90の稼働率も異常に低く、2021年6月にはスペアパーツの問題で導入した47機全てが飛行を停止に追い込まれ、堪忍袋の緒が切れた豪国防省は2037年まで運用予定だったNH90の早期退役とUH-60Mの導入を2021年12月に発表した。
当時のダットン国防相も「耐用年数を残すNH90を捨ててUH-60Mに切り替えると納税者は2037年まで18億ドルを節約することができる」と述べている。
さらにドイツでも71機保有するNH90の平均稼働率が17.5機(約20%)だと2018年に報告され問題化したが、管理人が知る限りフランスやイタリアといった他の導入国では特にNH90は問題視されていないため、どうやらNH90には運用国との相性問題があるのかもしれない。
関連記事:豪軍が導入して日が浅いNH90退役を決断、後継機としてUH-60M導入を発表
※アイキャッチ画像の出典:Forsvaret
人見知りするAIでも搭載してるのか、わけわかんない
企業の、オプション対応する能力の問題か
なんだか仕事のこと思い出して、気分悪くなってきたぞ。。。。。。
ノルウェー国防相のブチ切れ振りに既視感があると思ったらアレだ。
金融庁が某銀行に「言ったことをやらない」と切れたやつ
見た目はかっこいいのに残念だな
NH90の稼働率の低さはノルウェー・豪州・独だけの話じゃないです。
実は、齋木伸生氏が2022年2月に発行した同人誌「写真集・世界大戦後のフィンランド空軍機」(サークル名・芬蘭堂、6月11日現在、メロンブックスととらのあな通販で入手可能)によると、フィンランド陸軍が2008年から20機導入しているNH90も導入当初は稼働率が50%を遥かに下回り、一時は3機しか運用出来ない有様だったそうです。
その後、フィンランド陸軍のNH90の稼働率は50%を超えて「一応満足出来る情況」になったそうですが、それでもノルウェー・豪州のケースから考えると運用国の条件次第ではNH90は欠陥機と思われても不思議では無いかも知れません(逆を言えば、仏・伊等の導入国は信頼性に関する厳しさが他国よりも緩いのかも?)。
NH90ってそんなにダメヘリなのか?我が国のOH-1といい勝負か。
多分、寒冷や砂漠環境での運用に難があるんだろうね。ドイツ者が日本の環境に弱いのと同じかな。
整備しやすいから導入しろって主張してた評論家がいたなぁ…
カタログデータは嘘は載せないにせよ、都合の良くないことには触れないし記載のしようのない問題もある、部品供給に滞りがあるとかはメーカーが予め予定してるわけでもないが、運用に重大な影響を招く
輸入時計を母国にオーバーホール送りしたら、通常在庫のあるはずの交換部品が無いとか言い出して、2ヶ月の予定が半年も待たされて、あげく謝罪も値引きもないという嫌な思いしたから手放してしまった。
これだけではないよ、欧州の企業にはしばしばそういう体質を聞く
やっぱり安心と実績のブラックホークで。
>フランスやイタリアといった他の導入国では特にNH90は問題視されていないため
出資割合がエアバスとレオナルドの2つで95%と大半を占めるので、仏伊両国は欠陥機だと認めるに認められないだけな気もしますけどね…
認めた瞬間から政治問題化するのは必定ですし
防衛秘密扱いにして国会とかにも報告してないだけで、稼働率20%以下とかもありそうですね
それでも実質自国の国営企業なら問題には出来ないし
ヘリは成功と失敗の差が激しいな
もう全部ブラックホークとチヌークで良くね
単純な部品供給の問題なの?となるとイタリアメーカーのAW101系とかのほうがヤバそうとか思ってしまった
自衛隊の101もあまり稼働率が良くなかったはず。
海自のAW101も退役が見え始めているので、遠からず更新でしょう
無難なのは、MV-22かCMV-22あたりで置き換えでしょうか
先祖返りでCH-53kも良いと思いますがさすがにデカ過ぎますかね?
CH-53Kも稼働率が新鋭機なのに低すぎて困っているとか
デカすぎます(`・ω・´)
海自の掃海用ヘリは当たりがなかなか掴めない。
オスプレイなら艦隊の補給にも使えて良いと思うけど、しらせ用はどうするんだろ?
しらせの寿命が30年程と仮定すると、オスプレイの更新に船の更新が間に合いそうな気もしないでもない
稼働率が低い国は複雑な保守システムが原因で部品の供給(特にギアボックスなど)が上手くいかないようです。
F-35のALISのようにすべてのデータが正しく入力されるのが必須条件で、少しでも欠損があったりすればたちまち機能不全になるんじゃないですかね。
開発国はどこも上手く運用できているので、保守システムに適応できるかが命運を分けるのかと。
となるとむしろサポートが足りなかったとなりそうな気が…
そうですよね。
開発側が「自分達は稼働率が高いので、稼働率が低いのは相手国のせい」と強引に出過ぎたのでしょうか…
多国籍で開発された機体で部品の供給もそれぞれ多国籍になってるので
それぞれの運用国の部品の組み合わせの相性がある感じでしょうか(自作パソコンでよくあるような)
でもって開発国は大半の部品が自国か元からの開発国グループ内の供給なので相性問題が発生しにくい一方で
部品の供給を出来るだけ安いとか関係の深い取引先とか自国ライセンスやオフセットとかの理由で複雑なルートの多国籍に頼ってる一般の採用国では規格通りに噛み合わない組み合わせがあるとかかな
問題が起きていないのは開発関連国であるフランスやイタリア。開発に関わっていないフィンランドと豪州で問題化、ということですか?(ドイツ?装備品の稼働率なんて興味ない国なのでは…。
ちょっとググったら、ベルギーでも稼働率の低さは問題になったみたいですね。
(ドイツは軍を削り過ぎて全ての装備で稼働率が問題になるレベルでしたから、開発国云々以前の問題ではないかと。)
先祖返りでCH-53kも良いと思いますがさすがにデカ過ぎますかね?
ノルウェーの激怒は分かりますが、この要求は通るんですか?
レオナルドの日本での稼働の低さに相通ずるものがありますね。
一度耐空検査整備に入ったら数ヶ月ダウンとか、部品供給の悲惨さとか、また412に回帰する流れが……