ロシア国防省は30日「ウクライナ軍が発射した戦術弾道ミサイル『Grom-2』を迎撃した」と発表、これが事実なら「ウクライナ軍は反攻作戦に向けてクリミア大橋に届く隠し玉を持っている」という意味になるので非常に興味深い。
ヴィンニク会長は「事前テストは行わず実戦で試す」と述べていたので、ロシア軍が迎撃したのは実戦でテストされたGrom-2という推論が成り立つ
ウクライナ軍の弾道ミサイル戦力は核戦力の放棄によって通常弾頭搭載のトーチカUだけになり、ロシア企業がスペアパーツの生産をしたためトーチカUの運用・維持にも支障を来すと予想され、当時のクチマ大統領(1994年~2005年)は新しい戦術弾道ミサイルの開発を指示、ユージュノエ設計局は1994年から「Борисфен(ボリスフェン)」と呼ばれる戦術弾道ミサイルの開発に取り組んだものの2003年に計画は中止されてしまう。
後任のユシチェンコ大統領(2005年~2010年)が2006年に再び戦術弾道ミサイルの開発を指示、これを受けてユージュノエ設計局は2007年に「Сапсан(サプサン)」の開発に取り掛かったものの資金不足で作業が進まず、後任のヤヌコーヴィチ大統領(2010年~2014年)が再度サプサンの開発を指示したが、国防省は「予算の使用が非効率だ」と主張して開発計画を2013年に破棄。
マイダン革命後のポロシェンコ大統領(2015年~2019年)が再々度サプサンの開発を指示、今回はユージュノエ設計局への資金供給も確保され、2018年の独立記念日にサプサンのモックアップが公開されたが、ここからサプサンに関する情報が途絶えてしまい詳しいことはよく分かっていない。
サプサンは種類の異なるミサイルを運用できるマルチプラットフォームで、計画では戦術弾道ミサイル、長距離空対空ミサイル、対艦ミサイルを運用することになっており、開発資金はサプサンに関心を寄せていたサウジアラビアが提供している可能性が高く、当時のウクライナメディアは「サプサンで使用する戦術弾道ミサイルの開発はユージュノエ設計局とキングアブドゥルアジズ科学技術都市(サウジの国立研究開発機関)が共同で行っている。試験プログラムに必要なミサイルや機器の第一陣をサウジアラビアに納品した。2022年に完全運用能力を獲得した量産モデルを配備する計画だ」と報じている。
サウジアラビアの要請で開発されたサプサンは「Grom-2(最大射程280km/弾頭重量480kg)」と呼ばれており、オリジナルの射程は500kmで「Grom-2のウクライナ軍バージョン」と当時のメディアは書いているため、サプサンの正式名称は「Grom-2」でウクライナバージョンとサウジバージョンの2つに分かれていると理解すれば良いのかもしれない。
ユージュノエ設計局は2019年4月、ウクライナバージョンのGrom-2について「テストの準備が整った」と明かしているが、Grom-2が2022年2月までに引き渡された形跡はなく「ウクライナ侵攻に間に合わなかった兵器」と言われてきた。
つまり「戦術弾道ミサイル『Grom-2』を迎撃した」というロシア国防省の発表が事実なら、ウクライナ軍は反攻作戦に向けて「Grom-2の準備を進めている=クリミア大橋に届く隠し玉を持っている」という意味になり、もう一つの隠し玉「Vilkha-M」の存在に言及したウクライナ防衛産業協会のイワン・ヴィンニク会長は「事前テストは行わず実戦で試す」と述べていたので、ロシア軍が迎撃したのは実戦でテストされたGrom-2という推論が成り立つ。
まぁ、ロシア国防省の発表が事実だったらの話だが、、、
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※アイキャッチ画像の出典:VoidWanderer/CC BY-SA 4.0
曲がりなりにも下地があったなら、弾道ミサイルの準備が出来ててもおかしくない。
数は望めないだろうけど、急所を狙えるんなら充分なのかな。
コレを呼び水に西側長距離兵器も望めるかも。
逆に「自分たちで用意出来るなら必要無いよね」てなる可能性もあるのでは?
ロシアとの全面衝突を恐れる西側諸国は長距離兵器の提供に消極的ですから
ただウクライナが国産長距離兵器の製造を出来るように支援する可能性はあるかもしれません。
ちょっと心配。クリミア大橋を落として南部攻勢するはずが、出鼻をくじかれちゃった…なんて話じゃなかったらいいんですけどね
何とか実戦に投入できるレベルに到達しているとしても、数がほとんど無さそうです。
テストがてらに発射できるような状況ではないと思いますので、本当に迎撃した場合は違うミサイルではないかと思います。
ウクライナ版のイスカンデルのコピー品ですね。
計画発表後ずっと音沙汰なしでしたが、いよいよ実戦配備出来たんでしょうか。
どの程度の数を用意できたかはわかりませんが、本家よりも高い精度で攻撃できるのであればクリミア大橋をもう一度落とせるかも。
あるいはタガンログやジャンコイ辺りの物流拠点を狙っていくのか。
ロシアの発表が事実ならウクライナ軍はテストされていない新兵器を実戦投入したことになる。現状ハイマースに頼るウクライナ軍も本音としてはATACMSの供与があれば…と臍を嚙む思いだろう。
残骸の写真あるかと元記事リンクを押したら、テレグラムが出てきた。そういうもんなんか・・・
以前から話はありましたね。いくつかの名前で呼ばれていましたが。
WIKIによると、Hrim-2 とか、 Grіm-2、Grom 、Sapsan とか。
20基ほど持っているとか。
某中東大国の資金で開発され、輸出型は射程280km、最大射程は500kmとか。
弾頭は、最大(?)500kgとのことでした。これは射程280kmの時かと想像します。
誘導方法は書いていなかったですね。
昨年8月にクリミアの空軍基地に打ち込まれたようです。これが試験だったのかな。
この時の射程が200kmと推定されていて、このミサイルと推定されていました。
橋に直撃できる精度があれば、その時に既に実行していたのではと思います。
あと、弾頭がやや小さいので、橋を落とすには数が必要かなと思います。
例として、ベトナムのタンホア鉄橋は250lbと750lbの爆弾ではびくともせず、
米軍は2,000lbと3,000lbの誘導爆弾で落橋させたとか。
タンホア鉄橋は”無駄に頑丈に”造られていたようですが。
ユージュノエあるから、少なくとも技術面では特に不思議はないけど
それより、実際弾道ミサイルで橋という極めて細い標的に当てられるのかに興味がある
どうせうちの国も弾道ミサイル作ってるんだし、これで効果あるようなら滑空弾頭だけでなく、通常弾頭も作ったら良いんだ
最新の短距離弾道ミサイルはCEP5mとかまで精度を上げられるので、イメージしやすい例えでかなり大雑把に言えば「半数ほどが日本の二車線道路程度の幅に収まる」ということ。
橋に当てること自体は難しくないかと思います。
仮に破壊できなくても攻撃される可能性ってだけで相手には相当なプレッシャーでしょうね。
ウクライナが確実に所持してる長距離兵器の射程から反攻作戦の進攻ルートを逆算する予想は怪しくなってきたな
やはりベルジャンシクまで行かなくても攻撃できるのでは
駆け引きの上手いウクライナ
ロシアは満遍なく戦力を配置せざるを得ないのにバフムートで包囲を解除できないでいる
なるほど!
貴重なミサイルを迎撃されるなんて;;と思ってましたが、その手があったか!
前にも書いたことがあるのですが。
クリミア大橋を落橋させるなら、
2本1組の橋脚のうちの1本を途中で折るような形で破壊するのが良いと思います。
そうすれば、あとは自重で崩壊すると思います。
直上から当てても、威力が低ければ、橋板に穴が開くだけのような気がしうます。
ちょうど、ヘルソンのアントノフスキー橋をHIMARSで攻撃した時のように。
そうすると、橋脚に横から2,000lbくらいの物を命中させないといけないと思うので、
LJDAMのような誘導爆弾か、大型の巡航ミサイルかと思います。
最終誘導は、特殊部隊によるレーザー誘導が良いかと思います。
クリミア大橋なんて普通の名前じゃなくて、旗艦モスクワみたいな沈むのに最適な名前が付いてればよかったのに