欧州関連

仏独の新型哨戒機開発の行方、フランス人はP-8Aを導入したドイツを誰も信じていない

仏メディアのLATribuneは6日、新型海上哨戒機(MAWS)を導入するまでの「一時的な解決策」としてP-8Aを調達するというドイツの主張を「フランス人は誰も信じていない」と報じている。

参考:Excédée par l’Allemagne, la France descend du programme MAWS

ドイツのP-3Cアップグレード失敗はボーイングにとって「天からの贈り物」だったに違いない

ドイツはフランスと共同で2035年頃までに新型海上哨戒機(MAWS)を開発することを約束しており、フランス側は昨年10月にMAWS開発に関する先行調査(2021年にMAWSプログラムへ統合される予定)を開始していたのだがドイツがP-8A調達に関する契約に署名したため雲行きが怪しくなっている。

MAWSの共同開発を控えているドイツがこのタイミングでP-8A調達に踏み切ったのはフランスとの約束を蔑ろにしたのではなく、2035年頃まで運用を継続する予定だったP-3Cのアップグレードに失敗(予定よりも10年早い2025年頃に退役予定)したためなのだが、MAWS導入までの「一時的な解決策」としてフランスが提案したアトランティックIIのリース案をドイツは蹴ってP-8A調達に踏み切ったのでフランス側からすれば複雑な気分になるのは当然だ。

出典:U.S Navy photo by Personnel Specialist 1st Class Anthony Petry

ドイツはP-8A調達をMAWS導入までの「一時的な解決策」だと説明してMAWSの共同開発を「予定通り進める」と言っているが、2025年頃に引き渡されるP-8Aは最低でも30年間は使用できるため「2035年までに新型海上哨戒機が必要という仏独の共通需要は崩壊した」とフランス側は見ており、対戦車ミサイルの共同開発でドイツに振り回された恨みもあるので仏メディアのLATribuneは「ドイツの主張をフランス人は誰も信じていない」と報じて注目を集めている。

フランスとドイツは2017年に次期攻撃ヘリの規格や空対地ミサイルの共同開発に関して合意、これに基づき攻撃ヘリ「ティーガー/PAH-2」に搭載する対戦車ミサイル(ヘルファイア IIの後継)を共同開発する方向で話が進んでいたのだがドイツは突然「イスラエルの対戦車ミサイル「スパイク」をライセンス生産して採用するので共同開発には参加しない」とフランス側に通知、必死の引き止め工作も実らず対戦車ミサイルの仏独共同開発はあっさりと崩壊してしまった。

出典:Bundeswehr/Maximilian Schulz

つまりドイツは今のところMAWSの共同開発を予定通り進めると言っていても「数年後にはP-8A導入を理由に共同開発から離脱するだろう」とフランス側は見ているのだ。

実際、フランス装備総局(DGA)のバール総局長は「MAWSプログラムを再考せざるを得ない」と議会の公聴会で証言しており、これは開発したMAWSを購入するのか怪しいドイツの要求を受け入れエアバス製のA320neoベース(ミリタリーバージョン)で新型海上哨戒機を開発を進めるよりフランス単独でフランス好みの新型海上哨戒機(Falcon10Xベース)を開発した方がマシだという意味に映る。

果たして仏独共同によるMAWSプログラムは今後どうなってしまうのだろうか?

このまま欧州の海上哨戒機開発計画が揉めて不透明になればなるほど欧州の哨戒機需要はP-8Aに向かう可能性(CN-235の哨戒機バージョンがあるので完全にP-8Aに需要が集中する可能性はない)が出てくるため、ボーイングにしてみればドイツのP-3Cアップグレード失敗は「天からの贈り物」だったに違いない。

関連記事:スリリングな展開を見せていたドイツのP-3C後継機問題が決着、議会がP-8A導入を承認

 

※アイキャッチ画像の出典:AIRBUS

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    FCASやMGCSはどうなるんでしょうか?

    7
      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      それ、当人たちが一番聞きたいんじゃないかな

      20
    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    といって、ドイツが悪人でフランスが善人かって、みんな知ってるw

    17
    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    > ボーイングにしてみればドイツのP-3Cアップグレード失敗は「天からの贈り物」だったに違いない。

    リンク
    > 極めつけは2018年に発生した火災で倉庫に保管してあった約2万個のP-3Cのパーツが焼失していまい、2025年末までにP-3Cの改修を完了させることも飛行可能な状態に持っていくことも不可能だと判断された

    つまり「そういうこと」だな(陰謀脳

    15
    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    こいつら相手に嫌がらせするのが目的か?ってぐらい歩調合わねえな…
    自国の利益優先のつもりで最終的に損してそうなんだが

    20
      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      今までは、イギリスが裏で各国の調整役してたんじゃないかと。

      典型的な調整役が居なくなった集団に見える。

      16
        • 匿名
        • 2021年 7月 08日

        それをいうなら三すくみでは
        国力はほぼ同じで、全員がお互いのこと嫌い(感情的な意味でも、利害の対立という意味でも)なのに調整役もへったくれもないでしょ

        8
    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    欧州情勢は複雑怪奇なり(平沼並感)

    18
    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    フランスとの約束を反故にしたドイツに相応の罰金を払わせるしかあるまい。

    2
      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      そうすると、ドイツは別の件で半沢直樹やりかねないから(笑)
      ほどほどで手打ちを探すしかない

      6
      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      ルールに進駐するんですね。
      解ります。

      6
    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    この不協和音がEU分裂の序曲となろうとは、この時点では誰も思わなかったまる

    4
      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      いや、不協和音多すぎて、どれが序曲やらサビなのやら…

      20
        • 匿名
        • 2021年 7月 08日

        しかも歴史は何度も繰り返し続ける
        終わらないワルツですな

        2
        • 匿名
        • 2021年 7月 08日

        そもそも何度もその不協和音が歓喜の歌を奏でてる気がするわ
        でも何故か崩れない

        3
    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    本質は、やる気のないドイツとごり押しのフランスの対立、のような気がする

    17
    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    ドイツを取って欧州でこれだけ好調だと、ポルトガルやノルウェーもP-8Aを採用してきそう
    ロングセラー機になりそうで、ボーイングにとっては久々の好材料かな?

    4
      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      そこで欠陥が露呈するまでが安定のボーイング。

      10
      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      現状哨戒機はこれ一択みたいなものだし西側で哨戒機が必要な国はみんなP-8買うだろうな

      6
        • A
        • 2021年 7月 08日

        そういわんとP-2買うてくれ。

          • A
          • 2021年 7月 08日

          P-2やのうてP-1だった。
          ごめん。

          4
      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      P-8Aは元旅客機に合わせて生産ラインの閉鎖が決まっているらしいですが8Aユーザー向けにP-8B改修とかやるかもしれませんね
      当の米軍自身がP-8Aを使ってるんだし

      3
        • 匿名
        • 2021年 7月 08日

        P-8Aは、さすがに旅客機ベースだけあって、搭乗員の満足度は高いそうです
        そりゃ、大抵の必需品は載ってるでしょうからね

        3
    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    契約というのは履行できなかった場合の罰則を予め定めるものだと認識していたが国同士では違うのかな
    詳しい方教えて下さい

    1
    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    日本は70機以上調達する見込の元で、他国からすれば異常と言えるほどこだわった対潜哨戒機をゼロから開発したが、ベース機有りからの開発でもフランス一国では厳しいのかね?共同開発自体に意味が有るのかもしれないが揉めてる話が多すぎる。

    5
      • 匿名
      • 2021年 7月 13日

      今回の話に関してはドイツの動きが悪すぎるわ。
      あくまで繋ですってフランスの話も聞かず、最新機材を調達してたらやる気ないなってとられても仕方ない。
      NATOとしては同一機材の方が良いんだろうけど、この件はどうしようもないな。

    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    日本のP-1を海外ではもっと評価してくれないかな
    P-8A相当の対潜哨戒機を単独で自力国産出来る国って日本ぐらいだし、性能だって悪くはないんだぞ
    現状ではUAV連携が無い、エンジンが国産ガラパゴスエンジンで海外マーケットでは弱いって点を除いては
    優秀機だろ
    どっか「欲しい」って声かけてくれんかな

    10
      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      >>現状ではUAV連携が無い、エンジンが国産ガラパゴスエンジン

      誰が買うんだよこんなん…

      4
      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      737NG向けだけで1万4千、ファミリー合わせて3万機以上生産されていて50年頃までサポートが確約されているCFM56に対して、
      生産数が300足らずの日本専用のガラパゴスエンジンしか選択肢がないってのはかなり致命的なのでは。
      アビオニクスに欠陥があっても最悪目視での洋上監視やブイやマーカーの投下は可能だが、エンジンに欠陥があったらそもそも何もできなくなる。

      せめてオプションでCf34かBR700が選択出来たらワンチャンあった可能性がわずかにあったかもしれない。

      2
        • 匿名
        • 2021年 7月 08日

        4発だから大丈夫ってのはさておきエンジン換装は金次第でなんとでもなりそうだがな。発電能力とかあるから簡単には行かないか?

        1
      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      台湾くらいしか思いつかんけど、台湾だぜ

      • 匿名
      • 2021年 7月 08日

      そもそも現状の対潜UAVって導入コスト凄まじいから必須かといわれると疑問があるし
      F7も同クラスの他エンジンと比べると省燃費・低騒音・低公害で民間向けの研究も進んでいるから、これから来るかもしれんよ。

      まぁ、P-8の当て馬としての需要は高いから声かけはあるさ。
      採用されるかは別としてね。

      9
        • 匿名
        • 2021年 7月 08日

        F7に関しては、同クラスのエンジンの後継を狙った民間モデルを出さないと評価のしようが・・・。

    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    フランス一国で厳しい状況になってるしダメ元でP-1売り込みもう一回やって見るのも手かもしれん。いや日本だって単独で開発したんだから難しいだろうけど。

    3
    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    P-8の強さって米海軍が必死こいて集めた大量の音紋データだからなぁ
    こればっかりはP-1では逆立ちしても勝てない

    9
      • 匿名
      • 2021年 7月 09日

      最先端の兵器ってみんなそうだよ、ハードというよりソフトの時代
      長年の経験値に加え、膨大なデータ集積してるほうが勝つ

      5
      • 匿名
      • 2021年 7月 16日

      それP-3Cの運用自に海自と米海軍との間でインターオペラビリティを高める理由で、
      共用化してる、それでないと冷戦期の日本近海で旧ソ連の原潜の追っかけなんかできない。
      現にP-1の開発初期にP-8との間で搭載機器の共同研究が行われて、
      お互いに共同運用が出来る様になっている。但し輸出面ではダメだしされる可能性が大

    • 匿名
    • 2021年 7月 08日

    ドイツとの共同開発って基本的にうまくいかないってことだね

    2
      • 匿名
      • 2021年 7月 10日

      なぜ上手く行かないのに夢を見てしまうんですかねホント…

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