英国のジョンソン首相は11日、NATO加盟を目指すスウェーデンとフィンランドが攻撃を受ければ軍隊を派遣して防衛を支援すると明かし注目を集めている。
参考:UK soldiers could defend Sweden and Finland against Russian invasion
参考:UK signs security treaty with Sweden and Finland
恐らく協定によって両国に提供される相互防衛の内容は「義務」ではない
ロシアによるウクライナ侵攻を受けて北欧のスウェーデンとフィンランドは安全保障体制の方針を転換、今月末にNATO加盟手続きが始まると予想されているもののロシアは「もし両国がNATOに加盟すれば対抗措置を講じる」と警告しており、加盟申請から全ての手続きを終えるまでの期間(5月中に加盟手続きが始まっても正式な加盟国になれるのは早くて12月)が一番危険だと指摘されている。
つまり両国が加盟申請に踏み切ればウクライナの二の舞い=ロシアから軍事侵攻を受ける可能性があり、加盟申請中の国にNATOの第5条=集団防衛は提供されないため「両国は米国と英国から何らかの安全保障に関する確約を取り付けた」と報じられていたが、米国は「安全保障に関する義務と協力は異なる=第三国に米軍の防衛義務を提供するには複雑な手続きと議会承認が必要なので簡単に提供できないという意味」と述べているためフィンランドとスウェーデンがNATO加盟申請中に侵略を受けても「米軍」を派遣するかは未知数だ。
英国のジョンソン首相も11日に両国を訪問してNATO加盟手続きを終える期間をカバーする安全保障協定を締結したと報じられているが、恐らく協定によって両国に提供される相互防衛の内容は「義務」ではない。
ジョンソン首相は協定発表の会見で「もしスウェーデンとフィンランドが攻撃を受ければ英国は両国からの要請に応じるということだ」と述べたが、これは両国の防衛のため核兵器の使用も含まれるという意味なのか?という記者の質問には「要請するのは両国の自由で、我々はその要求を真剣に受け止めるということだ」と曖昧に答えており、英メディアも本協定について「英国軍が派遣される可能性がある」と報じている。
勿論、ジョンソン首相が会見で語った言葉を断片的に切り取れば「強い調子」で両国を守ると述べているが、本協定が加盟手続きを終える期間をカバーするため繋ぎあることは否定(本協定は今後何世代にも渡り欧州の防衛力強化に寄与すると述べている)しているのも興味深く、今回の協定が「相互防衛を義務付けたものなのか?」「協力の範囲に留まるのか?」を悟らせないようにしてロシアを牽制する狙いがあるのだろう。
NATO加盟手続きを終えるまでスウェーデンとフィンランドに何らかの安全保障を提供するという試みは、ウクライナ侵攻に持ち出したロシアの政治的レトリック=「NATO加盟国ではないのだから軍事介入する根拠がない」という主張を封じるためのものとも解釈できるため、ジョンソン首相の発表した安全保障協定がNATO加盟手続きを終えるまで両国の独立維持と主権の保護に役立てば何よりだ。
因みに英国ではウクライナ支援で圧迫された国防予算の引き上げを要求する声が上がり始めており、GDP比2.0%ではなく3.0%に引き上げるべきだという主張もある。
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※アイキャッチ画像の出典:Boris Johnson
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英国の海外展開能力で何が出来るのかと言いたくなるところですが(英軍は軍の再編縮小で本土部隊を海外展開部隊に集約したが、これは非正規戦を念頭に置いたものなのでロシア相手は分が悪い)、当のロシアも口先以上の恫喝している余裕はなさそうですし、英国という国は本当に守れそうな約束を見つけてきて外交的成果を稼ぐのが上手いなあといった印象ですね。
ロシアにしても、今フィンランドと下手に事を構えると逆進されてカレリアの国境線が後退するような事態になりかねないですし(既にサンクトペテルブルクは目と鼻の先)、恐らくフィンランド人も戦争になったら失地を回復することを躊躇しないように思うので、ほんとに詰んでますねえ。緩やかな衰退を受容しながら現状維持をしていくのがロシア政治にとっての最適解だったはずなのに、何でこうなってしまったのか。
それは独裁政治のゆえの要請です
プーチンは2011年の激しい反政府デモで、自分の地位が不安定であり、国民は自由化という名の欧米化を志向していることに不安を抱き、 ただ保身のために大ロシア復活というテーマをでっち上げた
イギリスにとっては北欧諸国がロシアと距離をおくほどに、それは自国に近づいてくる意味だとよく判ってる
プーチンは保身のための結果的にロシアの国益を失している、 それが独裁者の実態
ウクライナ侵攻でロシア軍の限界をさらしてしまい、喪失した大量の兵器・人員の再建の見通しは立っておらず、しかもウクライナ侵攻の落としどころさえ未だに見えない状況ですからね
この調子ですとウクライナ侵攻中(他国へ割く余力がない間)のNATO加盟申請国が他にも出てきそうですし、場合によっては親ロシア国以外の周辺国すべてがNATO加盟申請する可能性もゼロとは言い切れなくなった気がします
いまこの時期にフィンランド首相が来日していますが、その真の来日目的は何でしょうね。自分は同首相がEU/NATOの密使として来日したのでは?と勘繰っているのですが。
トップ自ら密使というのはどうかな、逆に、アメリカの密使と秘かに会うために来日した可能性を感じる
ロシアに悟られぬように来日日程に紛れ込ませて密談
何にせよロシアに対して東西挟撃の体制が始まる予感
「我が国のパトリアAMVはイイ物でっせ~」
って営業かけてたりして
協定発動のトリガーを曖昧にするのは牽制の常套手段だからいつもの通りとして、万が一のNATO非加盟(もしくは拒否)の場合の安全保障という面でスウェーデンとフィンランドにとってはありがたいのかな。北海にしろユトランド沖にしろ、そこへのロシア海軍進出は英国にとって死活問題だし
しかし、「デート写真」ワロタ。
ジョンソン首相の写真って、なぜかほっこりするのが多い。髪型か?
加盟申請中にロシアがバルト海のフィンランドやスウェーデンの小さな島を取ってしまったとして、その状態のままで加盟できるんだろうか。取り返しきれずのダラダラとした戦闘状態とかでも。
加盟規約でそれで妨害できてしまうというのなら、そりゃロシアはやるよね。
それを防ぐための今回の安全保障協定かと。
今回の相互防衛は恐らく義務ではないとは言え、
加盟前でも英国が軍事介入する口実と成り得、
そして英露が開戦したら、NATOが動く余地も出てくるだろうから。
なので、仰る手は恐らく実質使えなくなるかと。
フィンランドやスウェーデンの本加盟前にNATOがそれで軍事介入したとして、NATOがロシア領内にまで空爆や侵攻やミサイル攻撃までするだろうか。紛争状態が発生した島なりの小さい領土をNATOで奪還して、それで終わりじゃないだろうか。どうにも今のNATOの慎重さを見るに、そんな気がする。
まぁそこまでのロシア領内への侵攻のようなことをNATOがやる可能性は存在しうるから抑止力としてロシアは考慮せざるを得ないので実行できないのでは?ってのは分かるんだけれど、ウクライナの一件でロシアが抑止力をどの程度無視して冒険主義的行動するかを考えるに、バルト海なりでロシアとしてはやっちゃいそうな気がする。
英国がフィンランドやスウェーデンと安全保障協定を締結したので、状況は大きく変わったと解釈しています。
フィンランドやスウェーデンにロシアが侵攻した際に、﹙両国の要請を受けて﹚仮に英国がロシアとの戦争に踏み切った場合、
NATOにとっては「英国対ロシアの戦争にどう対応するか」との問題にすり変わるかと思います。
英国本土が戦場にならない限り、NATOに参戦義務は生じないでしょう。
しかし「英国参戦→他のNATO加盟国も参戦」なエスカレーションの可能性が生じた以上、﹙NATOの影に怯えている﹚プーチンが締結前と同じような対応を出来るかというと、個人的には否と予想しています。
ロシアはそのくらいは平然とやる国だが、すでに西側が全力で警戒体制に入ってるエリアでロシアが電撃作戦やるのは無理と思われ
ウクライナで手一杯なのに、新たに北欧で戦線開いてくれたら、ロシアには自滅的、西側には待ってましたになるだろう
ロイター情報で恐縮ですが、2カ国の加盟承認は早ければ来月にもされる観測はでてますね
ロシアに付け入る隙を与えないためにここまで速く対応するのは欧州にとっては戦時状態という認識なのかもしれません
リンク
ついにフィンランドはNATO加盟を正式に表明しました、外交政策の歴史的転換です。あとはスウェーデンの動向とロシアの反応が待たれます、
我々は、コロナといいウクライナといい、ある時代に遭遇してますね