スナク首相はウクライナ軍に対する長期的な投資の一貫として「提供する訓練内容の拡大=戦闘機パイロットの訓練など」を発表、これに合わせて英国を訪問したゼレンスキー大統領は「我々に自由を守るための翼を与えて欲しい」と訴えた。
参考:PM extends Ukraine military training to pilots and marines as President Zelenskyy makes first visit to the UK since Russian invasion
参考:Johnson calls on UK to give Ukraine fighter jets and tanks
参考:‘Wings for freedom’ – Zelenskyy appeals for planes
期待されていた長距離攻撃兵器のウクライナ提供に関する言及は今のところなし
英国は2015年にオペレーション・オービタル(Operation Orbital)と呼ばれる軍事訓練プログラムを提供してウクライナ軍の構造的な改革に大きな役割を果たしたが、ロシア軍による侵攻が始まると新たにオペレーション・インターフレックス(Operation Interflex)を立ち上げ、ニュージーランド、オランダ、カナダ、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ドイツ、ラトビア、ノルウェー、リトアニアなどの国と共同で軍事訓練プログラムを提供している。
スナク首相は8日、ウクライナ軍に対する長期的な投資の一貫として「提供する訓練内容の拡大(NATO標準戦闘機を操縦するための訓練や海兵隊に対する訓練など)」を発表、この発表に合わせて英国を訪問したゼレンスキー大統領はウェストミンスター宮殿で演説を行い「我々に自由を守るための翼を与えて欲しい」と訴えた。
要するに新兵訓練に限定されていたオペレーション・インターフレックスの内容を「海空にも拡張する」という意味だが、スナク政権はウクライナへの戦闘機提供について「可能性を除外しないものの現時点では優先順位が低い」という立場を崩しておらず、今回の訓練計画も「ウクライナ軍に対する長期的な投資」と表現、政府の報道官も「戦闘機パイロットの訓練には最短でも35ヶ月かかる」と述べているため西側戦闘機の提供が直ぐに実現すると期待しない方がいい。
因みに英政府の公式なプレスリリースには「スナク首相は長距離攻撃兵器の提供をゼレンスキー大統領に申し出るだろう」とも書かれていたが、今のところスナク首相もゼレンスキー大統領も長距離攻撃兵器に関する言及はなく、英国訪問を終えたゼレンスキー大統領は8日夜にパリでマクロン大統領とショルツ首相と会談する予定らしい。
追記:オペレーション・インターフレックス構想を当時発表したジョンソン元首相は「120日毎に1万人のウクライナ人に訓練を提供する=年3万人分」と説明していたが、英政府はプレスリリースの中で「過去6ヶ月間で1万人の訓練が完了し、今年は2万人の訓練を予定している」と明かしているため、120日毎に1万人ではなく180日毎に1万人のスピードで訓練が行われているのだろう。
追記:英メディアのSkyNEWSは「スナク首相がウォレス国防相にウクライナへ提供可能な戦闘機を調査するよう指示した」と報じており、管理人の知る範囲で言えば2025年までに退役予定のタイフーン・トランシェ1(単座24機+複座6機)がそれに該当すると思うが、最近は「機体寿命を半分以上も残しているタイフーン・トランシェ1をアップグレードするべきだ(技術的にトランシェ3への改修が可能らしい)」という動きがあるので英国に提供できる戦闘機があるのかは微妙だ。
因みにギリシャが英空軍から退役するタイフーン・トランシェ1を狙っている。
関連記事:豪州がインターフレックス作戦に参加、ウクライナ人を訓練する教官役兵士を派遣
関連記事:バイデン大統領がウクライナへのF-16提供を否定、ホワイトハウスも決定を擁護
関連記事:戦闘機提供で意見が対立する米国、優先すべきはF-16か防空システムか
関連記事:ウクライナ空軍の報道官、全域の空をカバーするには180機の戦闘機が必要
関連記事:英空軍高官、現時点でウクライナへの戦闘機提供は優先順位が低い
関連記事:世界初の空中消耗戦に挑むウクライナ、戦闘機提供は勝利の助けにはならない
関連記事:英空軍、機体寿命を半分以上残したタイフーン×30機を2025年までに退役
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Dwane R. Young
訓練は時間が掛かるから
供与の有無に関わらず予めやっておくのは素晴らしい事やね
戦闘機にせよ戦車にせよ供与が決まってから訓練してたら致命的な遅れに繋がりかねないしありがたいよね
それにウクライナ全土がロシア化なんて起こらん限り、戦後は間違いなく西側製の武器が主力になるだろうし
休戦するにせよ継戦するにせよロシアの兵器は入手不可能になるので、西側諸国の兵器訓練はいずれ必要になりますからね。
特に、足の長いパイロット養成は今のうちから始めないと間に合わないですよね。
フランスがラファールの導入で退役が進んでいるミラージュ2000(制空戦闘機型のC型とマルチロール機の5型)をウクライナに供与することを検討しているとの報道もありますね。共同開発のタイフーンよりは供与のハードルは下がりそうですが果たして?
リンク
ミラージュの外人部隊って…
漫画みたいで心が踊りますね…
アメリカの後ろ向きな感じ見てるとウクライナ空軍の標章付けた初の西側戦闘機はミラージュ2000になりそうな気がする
さっきワールドニュースでゼレンスキーの演説放送してたけど
英国で紅茶のお礼言った後、先回りで戦闘機のお礼も言ってめっちゃウケてた
ギリシャはF35あるんだしトラ1短期繋ぎで無理に入れなくても良いのでは?
飛行機は飛ばせば飛ばしただけ事故や故障で数が減るが、パイロットは負傷しなければ復帰できるので、パイロットが居るのに機体がない、というのがウクライナの現状ではないか
訓練に35ヶ月うんぬんは素人を1から教育して戦闘機乗りにする時の話で、機種転換だけならもっと短いと思うのだが、戦闘機を供与したくないが為に話を盛ってないか?