19日目に突入したポーランド運送業者によるウクライナ国境封鎖の影響で国境付近には約2万台のトラックが立ち往生し、これに人道援助物資や燃料を積んだトラックも巻き込まれ、ウクライナのカチカ経済副大臣も「LNG、ガソリン、軽油の輸送が影響を受けている」と明かした。
参考:Polish Farmers to Join Truckers in Protest at Ukraine Border
参考:Київ сподівається на переговори з Польщею і ЄС через блокування кордону
既に国境封鎖によってLNG、ガソリン、軽油の輸送が影響を受けている
EUはウクライナ支援の一環として「道路による貨物輸送の自由化協定」を昨年6月に締結、これによりウクライナの運送業者は「EU域内でのトラック輸送」に許可を取得する必要がなくなり、国境を越える取り扱い貨物量も2021年と比較して53%も増加、この結果を受けてEUとウクライナは今年3月に「自由化協定の1年延長」で合意したのだが、ポーランドの運送業者は「自由化協定」の影響で自分達のビジネスが不利益を被ったと主張。
ポーランドの運送業者と東欧諸国のドライバー達は「自由化協定の取り消し」と「ウクライナ運送業者に対する許可取得の復活」をEUに訴えるため、ポーランドとウクライナの国境にあるクラコヴェッツ検問所、ヤゴディン検問所、ラーヴァ・ルーシカ検問所を今月3日から封鎖、両国の国境付近では約2万台のトラックが立ち往生しており、Bloombergは「気温の低下と降雪の影響で立ち往生しているドライバー達は厳しい状況に直面しているが、この抗議活動にポーランド人農民も合流する動きを見せている」と報じている。
抗議者は「人道援助物資、燃料、危険物、生鮮食品を輸送するトラックの通過は妨害しない」と主張していたものの、ウクライナのデルカッハ・インフラ副大臣は19日「抗議者の主張が虚偽であるのは明確だ。我々は検問所に向かう道路上で人道援助物資や燃料を積んだトラックが長い車列に並んでいるのを目撃している。この状況をポーランド側に報告して回答を待っている状況だ」と述べており、インフラ省は立ち往生したドライバーを支援するため食料や燃料を届けているらしい。
ウクライナの駐ポーランド大使も現地メディアに「国境封鎖を解除すべきだ」と訴えているが、今のところ大きな関心や政治的な動きは観測されておらず、ウクライナのカチカ経済副大臣は20日「国境封鎖によってLNG、ガソリン、軽油の輸送、ポーランドを経由するバルト三国からの輸入が影響を受けて危機的状況だ。自由化協定の取り消しには応じられないものの状況を改善するため追加規則を話し合う用意がある」と述べ、ウクライナ、ポーランド、EUによる三者協議の開催を呼びかけている。
因みにスロバキアの運送業者も許可取得の復活を訴えるため国境封鎖に合流する動きがあり、この問題が長期化すると国境を越える道路輸送が麻痺して軍事物資の輸送にも影響を及ぼす可能性がある。ここまで問題が大きくなると管理人は思っていなかったので本当に驚きだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Serhiy Derkach
もはやトラック運転手に人道支援が必要な状況です。これで寒波が来たら人死にが出ますね。
いうまでもなく、ポーランド政府は「黙認」しているわけでして、この黙認自体が政治的なメッセージですね。
ポーランド政府を、甘く見てきたツケがでていますね。
ポーランド=ウクライナは、歴史的に仲が悪く、領土問題や少数民族問題も抱えてきた訳ですから(スロバキア・ハンガリーなどもですが)。
ポーランドは、政治家~農民レベルまで、多大な負担を負ってウクライナ支援を続けてきました。
穀物問題で、ないがしろにされ続けて、堪忍袋の緒が切れたと見るべきですね(現状でもその一歩手前かもですが…)。
西洋史では西欧がメインで語られがちで目立ちにくい東欧ですが、ポーランドでは「貴族特権」を持つ層が農作物を近隣へ飢餓輸出することが多く、農民や輸送業者(当時は馬車)が団結して抵抗することが多かったという歴史背景や地域文化も響いてそう。
ポーランド分割以後では、そうした蜂起活動の相手がプロイセン、ロシア、ナチスドイツ、ソ連と流転していき、ドイツ主導のEUやアメリカ主導のNATOが今は上にいる。【上の組織】がウクライナ支援を掲げても、下から不満の突き上げがあれば、ポーランド政府としては正当な法的手続きに基づく行動でないとしても自国民優先になりますか。
東欧の農民層からすれば、欧州委員会の特に西欧の議員などは、【貴族特権を振りかざすばかりで民の現実を見ない傲慢な連中】と見えているのやも。善悪の是非はともかく、対立構造がEU内に生じるのは良くない兆候ですね。
仰る通りですね。
ポーランドは、ポーランド=リトアニア共和国の歴史的なプライド、末端の地域文化もあると考えるべきです。
国連官僚が、石油食料交換プログラムで汚職を行ってきた事も有名ですが、欧州議会もカタール汚職がありましたからね。
仰る通り、顔の見えない上部組織が(正統性の怪しい)命令を下して、納得できないという考え方は理解できます。
ポーランド国民の行動、サボタージュ・ロックアウトといった行動は、民主主義のストライキの範囲に入りますから難しい所ですね。
穏便に解決する事を願っています。
情報戦とは、あらゆる作戦・戦術と同様に、稚拙なものであれば敵に利用されるリスクがあります。
ウの情報戦は開戦当初は西側の(ジョンソン元首相が訪問してから停戦を蹴ったことから英国情報部と推測)宣伝戦のやり方をよく踏襲し、西側世論の同情を誘うことに成功し膨大な援助を勝ち取りました。
元コメディアンでメディアをよく理解していたゼレンスキーのPR能力と、西側諜報部の世論戦シナジー効果がここではうまく働いて欧州最貧国のウクライナを救ったのです。
しかし戦争が長期化し、ポーランドとの確執(ミサイル誤爆事件)や反攻作戦の失敗によってウの情報戦が破綻すれば、敵に利用されこうなります。
元コメディアンで政治外交経験のないゼレンスキーの資質がここにきて致命的に働いたという印象です。
たむごん氏のおっしゃる通り、ウクライナ国家・民族は決してポーランド人にとって『好ましい隣人』ではありませんでしたし、逆もまた然りです。きっとこれからもそうでしょう。
仰る通りです。
日本も隣人という観点で、貿易額だけで見れば、米中を天秤に掛けながらやっている部分もありますからね。
ウクライナ=ゼレンスキー大統領は、世界の中心・世界のリーダーのように『西側メディアが神輿に担いだ』わけですが、旧ソ連の貧しい国=政治の素人な訳です。
ロシアとの戦争を続けたいのであれば、地に足のついた隣国対応を望んでいます。
日本とポーランドは、歴史的な経緯(小野寺信へのヤルタ密約の情報提供など)や経済関係・EU域内であるため、1.2年で急に湧いてきたウクライナよりも重要と考えています(信頼関係を積み重ねる重要さを痛感します)。
権利を主張するのは大事なことではありますし、ポーランド側としてはウクライナの世話をしてやってるという意識も多少なりともあるんでしょう。EUは長引くインフレからの金利の急速な引き上げによる景気後退が既に実体化し始めているわけで、人道的にもとるとしても行動する必要があると判断したんでしょうね。
しかしながら、ここまでウクライナにとって不利益が出る行動をポーランドの一部とは国民の間で行われてしまって、感情的にも反ウクライナとも言えるモノが見えてしまうと、難民として入国しているウクライナ人の扱いや対応が気になる点ではあります。
うーん、反ウクライナと言ってもウクライナ支援を掲げて生活苦しめる事への反発止まりではないですかね?
結局、民としては「おまんまの食い上げ」にならなきゃ良いだけの話なので、経済的なケアさえあれば上がどれだけウクライナ支援しようが構わんのでは
今までまとまった動きのなかったポーランドとスロバキアのバラバラの運送業者が、
このタイミングで一気に組織的な政治活動をするというタイミングの良さ
しかもこれから冬になるという絶妙なタイミング、これでロシアのインフラ攻撃始まれば
ウクライナの苦境は一気に加速するという素晴らしい偶然
両国とも政権交代(ポーランドはあくまで見通し止まりではありますが)かつ、今戦争における経済的混乱やウクライナへの特権により生まれた不平等はEU(特に中東欧)諸国で共通しています。
抗議行動の主催者側も情勢や数の論理は意識するものなので、(場合によっては業界に跨る)大規模な抗議が重なることは偶然ではないでしょうが不自然とは言えないかと。
農業界の抗議にしても穀物クラブ扱いされた五カ国以外でも同時期に行われていましたし。
今更のように蘇ったゲラシモフドクトリン
多分彼方側の労働組合辺りに金が流れてるのではないかと、偏見ですけど東欧の労組って共産党時代のコネクションとか残ってそうですし
今戦争による特例や経済的混乱で割を食っている業界は多いですし、そのいずれもがこの程度の不満は抱えています。
農業界は規模の大きさや市場の混乱だけでなく、収穫物の保存や作付け判断等もあって他業界より分水嶺を迎えるのが早かったというだけで、他業界が現状に満足している訳ではないでしょう。
ポーランドの体制上、政権交代となれば各省庁のみならず全国の自治体や国営企業,関連組織で人事刷新が行われます。
国内の全てにおいて権力の空白期間となっているに等しいため、今まで抑え込んでいた不満に火がつきやすく、行政にも掣肘され辛い期間と言えるかもしれません。新政権の樹立が遅れれば遅れる程、別業界へ飛び火する可能性は高まりそうです。
PiSは首相任命後の信任投票をなるべく遅らせつつ野党連合からの造反者を狙っていますが、多少なりとも外聞を気にするのであれば12月中旬のEU首脳会議までに決着を付けねばならないでしょう。
泣きっ面に蜂とはこのこと
こういう形のハイブリッド戦も有る訳か
ゲラシモフ恐るべし
もっとも、周辺国を舐め腐ってヘイトを溜めた
ウクライナの因果応報だが