昨年9月に露独を結ぶ天然ガスの海底パイプライン「ノルド・ストリーム」が何者かに破壊され、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は「ロシアによるテロ攻撃だ」と非難したが、米当局も独当局も親ウクライナグループの犯行を示唆している。
参考:Intelligence Suggests Pro-Ukrainian Group Sabotaged Pipelines, U.S. Officials Say
参考:Nord-Stream-Ermittlungen: Spuren führen in die Ukraine
参考:In Nord Stream bombings probe, German investigators see Ukraine link, reports say
この事件にウクライナ政府が関与していないことを祈るしかない
米国のNYT、CNN、POLITICO、英国のBBC、ドイツのARD-Hauptstadtstudio、Kontraste、SWR、ZEITといったメディアは、米当局と独当局の話を引用して「昨年9月に発生したノルド・ストリームの破壊は親ウクライナグループの犯行だった」と報じており、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は「私も興味深い陰謀論の収集を好むが我々とバルト海の事件は何の関係もないし、親ウクライナグループに関する情報も持っていない」と主張し、政府と問題のグループには繋がりがないと強調した。
Хоча я люблю колекціонувати цікаві конспірологічні теорії про український уряд, мушу зазначити: Україна не має стосунку до казусу в Балтійському морі та не має інформації щодо «про-🇺🇦 груп із підриву». Що сталося з «Північними потоками»? «Вони затонули», як кажуть у самій Рф…
— Михайло Подоляк (@Podolyak_M) March 7, 2023
全ての報道を総合すると以下の通り(要点のみ)になる。
- ノルド・ストリーム事件の解明には米国、ドイツ、オランダ、デンマーク、スウェーデンの捜査当局が参加
- 独捜査当局は爆発物による攻撃がいつ、どこで、どのように準備されたかをほぼ特定することに成功
- この攻撃には6人(男性5人+女性1人=船長1人、潜水士2人、潜水助手2人、医師1人)が参加
- 偽造されたパスポートでポーランドにある会社からウクライナ人所有のボートをレンタル
- 9月6日にドイツのロストック港で攻撃に必要な機材を積み込んでから出港
- このボートは最終的にデンマークのクリスチャンソ島で発見され船内から爆発物の痕跡を発見
- 事件直後に西側の情報機関は「ウクライナの特殊部隊が爆破に関与している」という情報を共有
- その後に親ウクライナグループが事件に関与した可能性を示す情報提供があった
- このグループとウクライナ政府に繋がる痕跡も見つかった
- 犯人にノルド・ストリームの破壊を依頼した人物や組織の特定には至っていない
- これが罪をウクライナに擦り付けるための偽旗作戦である可能性も否定できない
- しかし捜査当局は偽旗作戦を裏付ける証拠を今のところ発見出来ていない
親ウクライナグループが事件に関与した可能性を示す情報や、このグループとウクライナ政府に繋がる痕跡が何なのかについて米当局や独当局も口を閉ざしているが、NYTだけは米当局者の話を引用して「攻撃に参加したのはウクライナ人かロシア人、もしくは両方の組み合わせである可能性が高く、米国人や英国人の関与を示す証拠は今のところない」と報じている。
NYTは「この情報に関して説明を受けた米政府関係者は『どれだけ今回の情報を重視するか』について意見が分かれている」とも報じており、米政府は「ロシアが自ら重要な収入源と欧州に影響力を行使するための手段=ノルド・ストリームを破壊する動機が不明で、この破壊にロシアが関与した証拠も見つかってない」と付け加えた上で、米国政府はウクライナの意思決定に対する可視性が限られていると認めているとも言及しているのが興味深い。
現在のウクライナは軍事、情報、外交で米国の大きく依存しているにも関わらず「ウクライナ当局者は軍事作戦、特に前線から遠く離れたロシアを標的にした作戦についてカウンターパートナーに説明しない。このような作戦は戦場におけるウクライナ軍の立場を大きく改善するものではなく、結果的にウクライナと支援国の不信感に繋がり戦争拡大のリスクになると米政府関係者は苛立っている」とNYTは指摘、さらに昨年8月にモスクワ近郊で発生した自動車爆弾テロも「ウクライナが作戦実施に許可を与えた」と米諜報機関は結論を下したとも報じている。
プーチン大統領の世界観に影響を及ぼしたと言われる国家主義思想家のドゥーギン氏の娘・ドゥギナ氏が運転する車が爆破された事件について、プーチン政権打倒を宣言したロシアの国民共和軍(National Republican Army)が犯行声明を発表したがロシア連邦保安庁は「ウクライナ軍特殊部隊の犯行」と断定。
この件についてNYTは「米諜報機関はウクライナ政府のある当局者によって許可された作戦だと断定、これを受けてバイデン政権はウクライナ側を秘密裏に叱責し、同様の行動を二度とするなと警告した。しかしドゥギナ氏殺害から5週間後にノルド・ストリーム事件が発生したため、ワシントンではウクライナ政府の一部がこの件に関わっていると囁かれた」と報じているが、今のところノルド・ストリーム事件にウクライナ政府が関与した決定的な証拠はなく、バイデン政権のゼレンスキー政権に対する信頼度は再び高まっているとも指摘。
現時点でノルド・ストリーム事件へのロシア関与の可能性は低く、親ウクライナグループによる犯行説が有力視されているが、NYTは「直接的もしくは間接的にでもウクライナ政府の関与が発覚すれば、エネルギー価格の高騰に耐えているドイツ国民の支持を失う可能性があり、ウクライナとドイツの微妙な関係は崩れるだろう」と危惧しているので、この事件にウクライナ政府が関与していないことを祈るしかない。
因みに米諜報機関の話が本当なら、ロシアの国民共和軍はウクライナ側が設立に関与した組織ということになる。
関連記事:ウクライナ、ドゥギナ氏の告別式はプーチンへの忠誠心を示すショー
関連記事:反プーチンを標榜する3つのロシア人組織が合流、ウクライナ側として戦うと宣言
※アイキャッチ画像の出典:Kustbevakningen
今頃、苦しい言い訳だな。
トランプの方が、数段マシ。
ドゥーギンに関してゼレンスキー大統領が承知していたのかどうか。
両方とも過激派の暴走であればまだ言い訳ができる、のかな?
正直そっちはウクライナ政府がかんでても別にって・・・。昨年の8月ってもう侵攻している最中なんだし、ロシアがやってること考えればやり返されても仕方ねえだろうとしか。
そりゃ一応民間人殺傷は戦争犯罪だろうけど、後方撹乱なんてどこもやろうとするから、実際に第三国が糾弾するかっていったらねえ。
敵国に工作機関を作るなんてよくある話。
それの是非は問わないが、仮にウクライナ政府が作った組織がパイプライン破壊に関与したとして、ウクライナ政府側にどんなメリットがあるんだか分からないので構成員の暴発として尻尾切りかな。もしくはイタビア航空870便事件のように有耶無耶にするか。
実際にメリットはあったでしょう。
ロシアはドイツにウクライナ支援してるとガス止めちゃうよ?という脅しを繰り返していたわけですが、実際に送ることが不可能になればその外交カードを失うわけです。
ドイツからの収入も失い、余ったガスを安売りする羽目になっています。資源収入に依存しているロシアにとっては大打撃です。
しかも国際的にはロシアの自作自演として非難されてたわけですから、ロシアにとっては踏んだり蹴ったりでしたね。
ノルドストリームの爆発のうち2回はデンマークの排他的経済水域(EEZ)内、2回はスウェーデンのEEZ内で発生した。(日経ビジネスより)
露軍 米軍 英軍などの高い作戦遂行能力を持つ組織が関与したなら可能だと思うが親ウクライナグループ単体では不可能だと思うんだよね。
最低でもウ政府のバックアップ 現実的な線だとアメリカの関与がないと。
シーモア・ハーシュの犯人は米ってのはどうなったんだろ
別に不可能というほどのものではないでしょ
バルト海は海況が穏やかかつ船舶往来量の多い海域だからボートで接近して潜水士が爆発物を仕掛けるくらいだったら特殊部隊クラスの人間じゃなくてもできるよ
まあ浦沢直樹のマンガ
「マスターキートン」
の主人公のような、元・イギリス陸軍特殊空挺部隊SASの隊員、というような民間人、あるいは民間軍事会社の社員、傭兵というのもたくさんいるので、そういうのは確かに民間人といえば民間人です。予備役の退役軍人というのもいます。
もともとウクライナの国家親衛隊の部隊も、民間の財閥企業の費用で編成した部隊が多く、そういう部隊の隊員も、もともとは民間人だったわけです。アゾフ連隊や、スボボダ大隊もそうです。
元・ソ連海軍スペツナズの、予備役退役軍人の民間人というのももちろんいるでしょう。アメリカにも元・ソーコムでシールズの民間人とか、イギリスには元・王立海兵コマンド隊SBSの民間人というのもいるでしょう。映画
「ランボー」
の主人公もあくまでも元・アメリカ陸軍特殊部隊隊員です。プレイステーションのゲーム、
「メタルギアソリッド」
の主人公も確かそんな感じだった気がします。
今のウクライナ海軍は、NATO海軍の支援や協力を得ているというのは、黒海での作戦を見ても明らかで、ウクライナ海軍のスペツナズがアメリカのシールズやCIA、イギリスのSBS、SASと協力して作戦するのも難しいことではありません。
ロシアが非道だからといってウクライナは何をしても擁護・称賛されるというのは流石に違うと思うが…
これが本当にそうだったら世論はどうなるんだろうね。
悪に対する抵抗として称賛されるのか、テロとして糾弾されるのか。
ポーランドのミサイルのときのように有耶無耶にするにかね。
侵略されてる被害者.当事者だから批判は許さないし、こちらの意見をすべて受け入れろ配慮しろっていう昨今のポリコレ的匂いをウクライナには感じてしまうので、どうも肯定的に見れなくなってる。
親ウクライナグループとやらがハリウッド映画みたいな秘密工作、破壊工作を実行出来る能力があるのか…?
ロシアにとって破壊するメリットがないけど、自分たちで破壊してウクライナがやったとプロパガンダ流して西側のウクライナへの支持・支援をやめさせる
ってことだってあり得るわけで
第2次チェチェン紛争前後のロシア国内の一連のテロがそんな感じでロシア国民のチェチェンへの憎悪を掻き立ててチェチェンを更地にする口実だった
そもそも核攻撃もあるぞと脅していたので、パイプラインが破壊されたときは、ロシアの本気度をドイツに見せつけた脅しにしか受け取れませんでした。ウクライナの工作員組織にロシアに操られている人が多数残っていそうだから、親ウクライナグループの犯行と言われても、チェチェン・トリックにしか見えないなぁ。
ハーシュの暴露通りなら、ウクライナに濡れ衣着せる米国が糞すぎて草
NATOの監視網を掻い潜ってパイプラインを爆破するとか米英の特殊部隊並のスキルだな
ドイツの捜査当局は優秀だなぁ
しかし国民の生活に直結する分ドイツの国民感情相当悪くなるんじゃないかね
これ色んな意見が未だに出ていて犯人がはっきりしませんよね。
ピューリッツァー記者のシーモア・ハーシュはアメリカ主導でノルウェーの協力で爆破されたという記事を書いていました。
なかなか面白かったので気になった方は調べてみると良いかも。
アメリカピューリッツァ賞経歴記者による取材と犯行経過の詳細、国務次官ビクトリア・ヌーランドの関与が一切合切発表されてました。西側は報道しない自由発動して報じられないがインド中国南米など第三国では事実として受け止められている。アメリカ政府の沈黙は是認と見られるわけで慌てて責任の所在がはっきりしないウクライナグループの犯行、ウクライナ政府の仕業へ押し付け誤魔化しにきた。開戦前より度々EUとロシアが互恵関係にありアメリカに都合悪いノルドストリームは破壊すると意思表示した発言記録あるビクトリア・ヌーランド。どう弁明するか
ウクライナ政府の関与は、どうなんだろうか。
仮に事実としたら、その工作能力の高さに比してリスク・ベネフィットの評価がずい分と杜撰に思える。
ノルドストリーム爆破、上手くいけば西欧とロシアをデカップリング出来るけどバレた場合のリスクがデカ過ぎる。
とは言え、ウクライナの意思決定も記事にある通りドゥーギン暗殺未遂なんてやらかすくらいだから“あり得なくはない”とも受け止められているのが、なんとも。
政府の意思決定に特に実権のなさそうなイデオローグひとりを吹っ飛ばそうとして、娘を誤爆だもんなぁ…
そうだよなって感じ。
米欧州はリスクが高いし(最悪開戦)、ロシアが破壊するのは費用対効果が悪い。
まぁホントにウクライナが犯人なら早くとも公開されるのは戦後だろうけど
ウクライナの攻撃だったとしても、ロシアがウクライナの輸出入を武力で阻止してるのと同様の単なる戦略的攻撃としか思えない。悪いことでしょうかね?
ノルドストリームの膨大な建設費はロシアだけでなく欧州企業も出資してるからね。
例えばロシアのダメージになるからってサハリン2爆破して日本商社に大損食らわせてから「支援ください」と言われても困るじゃん?
支援ありきで戦ってる国なのだから。
わずか6人であれほどの規模の破壊工作が出来てしまうものなんですね。
どうせ真実が明るみに出る事は無いんでしょう
これをどう解釈し、どう利用するのか
それぞれの国が自国の国益のため態度を決め
力関係により、何を信じるのかが選択されるだけだと思います
少なくとも、ウクライナ政府にとっていい結果にはならないので
ウクライナ政府には動機が無いようには思います
親ウクライナがやったとしても極端な思想を持った者の暴走と考えるべきでしょうね
ウクライナとしてはなかなか勝ち筋が見えない苦しい戦いですが
それはロシアも同じ、どうすればこの戦争を勝って終われるのか苦慮しています
西側からの支援が無くならないとロシアの勝利はありません
ロシアにとって勝敗の分かれ目は結局のところ、そこですので
これでウクライナ支援から手を引く国が出てくるのであればロシアにとって有益です
動機がありそうな人は他にも色々居るでしょう
爆破されたノルドストリームの水深は80m程度とのことですので、リブリーザーといった特殊な潜水器具と専門知識があれば少人数のチームでも十分に爆破可能な水深です。ちょっと前にDUCというドラマで、潜水士役の阿部寛がリブリーザーかついで水深100mまで潜水してましたしね。
戦争なんてマッチポンプなんだよ。
「ウクライナ政府が関与してないことを祈る」と皆ウクライナが好きなんだな~
中国の軍事技術の発展の原因の1つはウクライナにも有るのに。
戦争はマッチポンプ?どういう意味かちょっと分からないですね
中国の軍事技術云々も現在の親欧政権に責は有りません
ロシア寄りの姿勢を維持している中国との縁はもう切れたに等しいでしょうしね
>偽造されたパスポートでポーランドにある会社からウクライナ人所有のボートをレンタル
これが臭いなあ。
なんでわざわざウクライナ人所有ボートを…。