欧州関連

英陸軍の次期自走砲、スナク首相がベルリンでRCH155調達を発表

英国は防衛計画の見直しでAS90退役と次期自走砲計画を発表、BAEのArcher、NexterのCaesar、KMWのRCH155、HanwhaのK9A2が入札に参加すると予想されていたが、スナク首相は「ドイツとの防衛協力強化」と「RCH155調達」を発表した。

参考:Prime Minister’s conference speech in Germany: 24 April 2024
参考:Britain to purchase Boxer-based RCH155 artillery systems

Archer有利と思われたが、まさか政治決着でRCH155調達に着地するとは想像もつかなかった

英陸軍のAS90は39口径155mm榴弾砲を採用しているため、52口径を採用する西側諸国の自走砲(PzH.2000、K9、Archer、Caesar)やロシアの自走砲(Musta、Koalitsiya-SV、А-222)と比べて通常弾の射程距離が劣り、52口径155mm榴弾砲への換装計画(AS90 Braveheart)も被弾した際の誘爆を防ぐ要求要件が満たせず、防衛計画の見直しでAS90退役と次期自走砲計画を発表。

まだ次期自走砲の調達計画は正式に動き出していないものの、米ディフェンスメディアは「この次期自走砲入札に関心を示す企業は最低でも4回の情報提供要請に応じた」「BAEのArcher、NexterのCaesar、KMWのRCH155、HanwhaのK9A2が入札に応じる可能性が高い」と予想していたが、ベルリンを訪問したスナク首相は「ドイツとの防衛協力強化」と「RCH155調達」を発表した。

スナク首相は演説の中で「英国とドイツは155mm砲を搭載するボクサーシステム(RCH155のこと)を共同開発する」と、英国防省も「この砲兵システムは英国とドイツで生産され新たな雇用(数百人分)を生み出す」と述べたため、英国は次期自走砲の入札をスキップしてRCH155を選定した格好だ。

因みにRCH155はPzH2000の技術を流用して開発したモジュール式砲塔システム「AGM=Artillerie-Geschütz-Modul」をボクサーに統合した装輪型自走砲で、スイスと英国に提案され、ウクライナにもRCH155の提供が予定されており、ドイツ政府が公開している支援リストには38輌の提供が記載されている。

英国はウクライナに提供したAS90のギャップを埋めるためArcherを取得し、次期自走砲の入札でもArcher有利と思われたが、まさか政治決着でRCH155調達に着地するとは想像もつかなかった。

関連記事:英陸軍の次期自走砲、英Archer、仏Caesar、独RCH155、韓K9A2が競合か
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関連記事:ドイツがウクライナのRCH155購入を承認、ただし納品は早くても30ヶ月後
関連記事:まもなくドイツが過去最大のウクライナ支援を発表、総額は27億ユーロ

 

※アイキャッチ画像の出典:Krauss-Maffei Wegmann GmbH & Co. KG/CC BY 4.0

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コメント

    • 折口
    • 2024年 4月 25日

    RCH155、装軌式より戦略機動性に優れるという触れ込みの割にタッパがありすぎて一部輸送機による空輸が困難というお話だったと思いますが、英軍はどの任務でこれ使う気なんですかね。まあ英陸軍の海外派遣部隊は船の移動が念頭ですし、そもそもAS90の後継なら本土防衛用かしら…

    6
    • emp
    • 2024年 4月 25日

    Archer、Caesar、K9はバックオーダー抱えてる
    RCHは採用全然聞かんから、納期が早いんじゃないかな?

    手間も時間もかかる入札して少々安くするより、納期とドイツとの繋がりになるRCHにしたんじゃない?

    8
      • トーリスガーリン
      • 2024年 4月 25日

      こうなると既に調達したArcherをどうするのか気になりますね
      流石に同クラスの155mm装輪自走砲を2タイプ並行運用するのはあまりにも非効率的ですし…
      RCH155の数が揃ってきたらArcher導入国に売り飛ばすのかな

      5
    • あああ
    • 2024年 4月 25日

    英軍はMIVでボクサー採用しててエイジャックスがヤバげでボクサー増えるかもな情勢でもあるのでRCH155は順当と言えば順当ですかね。BAEとラインメタルの協業で国内生産ですし。
    ただこれ装輪装甲化で無人砲塔って事なんですよね。アーチャーも一応の無人砲塔ではあるが飽くまで駐鋤式の自走砲架。車体が高機動トラックでなくモノコックのAFVでなければやはり残存は難しく無論、砲塔は無人化しかないと。なまじの装軌よりも高額なボクサー車体にこれまた高額な無人砲塔でまさにハイエンド。
    重戦力の火力戦闘部隊が実践評価は良いカエサル的ではやはり無理というわけですが、MBTほどは速く走れないフロントエンジン装軌車もまた無人機脅威に非常に脆弱である説も空論ではないって事です。K9もA2で無人砲塔化が済んだら次はもっと速く走れる車体をインテグレードする必要がありそうな?
    案外K9装輪装甲型は既に用意されつつあるような気がしないでもない。GDLSもピラニア5の10輪ミッションモジュール型に同等の火力システムを統合し米陸に持ち込まんとしてます。わーくにも16式ファミリーで次期火力戦闘主力を構想したほうが良いのでは?

    3
      • 無印
      • 2024年 4月 25日

      >16式ファミリーで次期火力戦闘主力を構想したほうが
      JSW「せや!AMVに19式の砲身を搭載した無人砲塔くっ付けた、RCH155のそっくりさん作ったろ!」
      99式がまだまだ使えるし、19式が配備中だから、今すぐは必要ないだろうけど、こう言う考えは持ってて欲しい
      そもそもAMVベースにRCH155のそっくりさんを作れるか分かりませんが

      7
    • ローテクおっさん
    • 2024年 4月 25日

    oryxブログを見るとウクライナ戦線で撃破されたkrab自走砲は砲塔が吹き飛んで転がってる例が多いのに対して、M109系列は原型は残ってる例は多い

    装軌式では履帯で動く以上は対戦車地雷に遭遇すると動けなくなる例が多いが、タイヤや車軸なら一つや二つ吹き飛んでも自走は出来る
    k9やらkrabやらは主力戦車クラスの重量がある為に回収も戦車回収機並みの車がいる
    当然、渡れる橋も少ない上に空輸もC17並みの機体がいる
    耐地雷性能を考えればボクサーが選ばれるのは自然

    10
    • 豆板醤
    • 2024年 4月 25日

    早くAS90をあるだけウクライナに送ってくれ

    8
    • 58式素人
    • 2024年 4月 25日

    記事の動画を見ると、やっぱり反動は大きいみたいですね。
    ボクサーの車台が大きく揺れています。連続射撃はできるのかな。
    装輪式ならば、やっぱり、何かしら駐鋤が必要に思えます。
    もし、今の砲身(39口径長)のままなら、砲弾に工夫が必要だけれど、
    翼安定式やラムジェット推進の物が安価に製造できないものでしょうか。

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