中東地域のニュースを専門に扱う英国のMiddle East Eye(MEE)は11日、トルコが要請するF-16V導入についてバイデン政権は「何の問題もない」と語っていると報じて注目を集めている。
参考:US encouraged Turkey to modernise fleet of F-16 fighter jets
トルコへのF-16V売却にバイデン政権は積極的、ただし議会が取引を承認するかは別問題
トルコはロシア製防空システム「S-400」を購入した影響で空軍近代化の中心に据えていたF-35A導入がストップ、第5世代戦闘機TF-Xの実用化まで手持ちのF-16C Block30/40/50(Block52+相当にアップグレード済み)を維持していく必要があり、トルコはF-35Aで更新を予定していた最も古いBlock30に機体寿命延長プログラム(8,000飛行時間→12,000飛行時間)を実施する方向で動いていたが東地中海問題で対立しているギリシャが次々と空軍近代化を計画(F-16のアップグレードやラファール導入)を打ち出したため新たな対応が求められていた。
つまりギリシャに傾き始めた両国の軍事バランスを修正する必要があり、トルコは最も古いBlock30を新造機のF-16Vで更新して既存のF-16Cをギリシャと同じブロック70/72(V仕様)にアップグレードするための改修キットを売ってくれるよう米国に要請していると最近報じられていたが、英国のMiddle East Eye(MEE)はトルコが要請するF-16V導入についてバイデン政権は「何の問題もない」と語っていると報じて注目を集めている。
トルコ政府の関係者は「F-16のアップグレードが実現しないとNATOは南方面の安全を危険に晒すことになり米政府関係者もトルコの要請が手に届かないものだとは決して言っておらず、ワシントンはトルコとギリシャの軍事バランスにも配慮すると信じている」と述べており、別の関係者は「米国との交渉は非常に早く進んでいてバイデン政権もF-16Vや改修キットの購入に何の問題もないと語っている」とMEEに明かしたらしい。
但し関係者は「米議会がFMS経由での取引に同意するかは別問題だ」と言っているので、対ロシア制裁(敵対者に対する制裁措置法/CAATSA)を課しているトルコへのF-16Vや改修キットの売却は米議員への説得=つまりロビー活動の成否にかかっているのだろう。
すでにアルメニア系やギリシャ系のロビイストがワシントンで「No Jets to Turkey」と命名されたキャンペーンを開始しており、バイデン政権や議会に対してトルコにF-16Vや改修キットの売却を行わないよう圧力をかけ始めているとMEEは報じているので状況は非常に流動的だが根本的に米国はトルコとの関係をこれ以上悪化させることを望んでおらず、エルドアン大統領も「米国が非協力的ならロシア戦闘機導入を導入する」と圧力を加えてきているので議会も東地中海の軍事バランスを再調整することに同意する可能性は高いと思わる。
エルドアン大統領はプーチン大統領と会談を行い戦闘機、戦闘機用エンジン、潜水艦などの防衛産業分野で協力を行うことを検討することで合意したと報じられており、米CBSのインタビューに対して「米国がトルコのF-16維持に今後も協力し続ける保証は何処にもなく、もし米国が協力を中断するのであれば我々は別の手段を選択せざるを得ない」と語っているため、追い詰め過ぎてトルコがロシア戦闘機を導入に踏み切れば元も子もないのでF-16Vや改修キットの売却に応じてトルコの安全保障に対する米国の影響力を維持する方が現実的な選択肢だ。
ただMEEは「米国防総省はS-400導入によって影響を受ける米軍の装備品の範囲にF-16も含めていたことがある」とも指摘しており、F-16Vのセンサー類がS-400によって影響(トルコが運用するS-400を経由してF-16Vが搭載するレーダーや電子戦装置の特性がロシアに流れるのではないかという懸念)を受けるか検討を求める声もあると言っているのが興味深い。
もしF-16Vのセンサー類が影響を受けるなら発注していたS-400が年内に到着するインドに提案しているF-16Vの派生型「F-21」の輸出が難しくなるので、S-400を理由にF-16Vのトルコ売却を議会が拒否すればロッキード・マーティンにとっては衝撃的だろう。
追記:米国防総省はS-400導入によって影響を受ける米軍の装備品の範囲にF-16も含めていたことがあるということは、F-16Vの売却が対ロシア制裁(敵対者に対する制裁措置法/CAATSA)に引っかかって輸出を拒否するのではなく、F-35プログラムからトルコを追放したのとの同じ理屈=S-400とF-16Vの同時運用はできないと言って輸出を拒否する可能性があるという意味。
関連記事:東地中海問題に新たな動き、トルコが米国にF-16×40機と近代改修キット80機分の売却を要請
関連記事:トルコ、第5世代戦闘機「TF-X」完成までF-16のアップグレードで凌げるか?
※アイキャッチ画像の出典:ロッキード・マーティン
バイデンはターゲットを中国に絞ったね
小競り合いには関わらないようだ
まぁ、背に腹は代えられないよな。
ロシアとしては議会が反対する事を望むでしょうね。
悪どい商人ならば、話がこじれるほどにビジネスチャンスの生まれるのを知ってるからね
ロシア人は自身を商売下手民族と称するが、どうしてどうして
かなりあこぎだよ
他国に売る分には議会は騒がないんじゃないの
自国が買う時は大騒ぎするけど
トルコにF-16Vを売却すれば、ギリシアはラファールを追加購入するかもしれない。
>ギリシアはラファールを
それがギリシャの大失敗かもね
ギリシャにはF-35を与えるんじゃない?
トルコにはF-16、ギリシャにはF-35なら、ギリシャ側は文句ないだろうし
F-35なら確かに良さそうですが、ギリシャにF-35の維持はしんどそうなので同じくF-16VかF-15EX(今はF-15Ⅱでしたっけ?)くらいが良いのでは?
ギリシャにとって望ましい性能の戦闘機ってどんなのなんでしょう…
ギリシャのリソースでラファールとF-15Ⅱ並立させるメリットあまりないな。ある程度継続性のあるF-16Vで色をつけるかグリペンEあたり?
やっぱりF-16Vの価格に色をつける、あるいは何かおまけをつけるという感じですかね…?
そうするとNATO加盟国同士がF-16VとF-16Vで睨み合うことになるのか…
米政府がトルコのS-400導入に対しトルコ大統領府国防産業庁(SSB)に科した制裁のうち、直接関係しそうなのは「SSBに譲渡された商品または技術に対して特定の米国の輸出許可および許可を付与することの禁止」の項目だけ。
F-35は明らかに対象になるが、F-16Vとアップグレードキットの購入は恐らく抵触しない。
「何の問題も無い」とは制裁の対象外だという意味なのかなと。政治的判断とは別のように思う。
良くも悪くも、F-16のネットワークは旧式だしね
トルコならF-16クラスの戦闘機は自力で作れそう
TF-Xが戦力化するまでのつなぎ、って記事に書いてあるよ
F-16Vの輸出の可否が米国のTF-Xへのエンジン輸出の資金石になるかもですね。
F16は中東辺りでは身近な紛争で手軽な兵器だがの新規、更新など今の今は交渉の余地あるだろうけど
もう機体も技術もバーゲンセールのようなもので、買過ぎると10年後ぐらい先には、世代的にお荷物兵器になるような感じ。アメリカもロシアもその中議会も、需要があるなら、売り渋りしないせず、他国にユーザー取られるぐらいなら売ってしまえと言うのが本音。
ロシアのミサイル購入だけでトルコを失うのは、地政学的にアメリカのプラスにならない。
トルコやギリシャの天秤販売で死の商人がボチボチ儲けてるうちはいいけどね。アフガンから手引きトルコとも適当、アメリカはシェールガスで中東戦略変わったね。
事実、米空軍は、F-16の技術は古いから、追加調達はしないって明言してるしな
Block30は、V仕様に改修しないのだろうか?
寿命なのかな。
一時凌ぎなら、新造よりは延命すればいいように思うが?
TF-Xが難産する可能性を考えると、一時しのぎではなく20年くらい普通に主力で飛ばせる機体をトルコは欲しいのでしょう。それこそアメリカの動き次第ではロシア機にしても良いと言う事からには10年かそこらの延命ではダメと