豪州のシンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」は政府が提示した長距離攻撃能力の獲得について「B-21の取得を検討すべきだ」と主張した。
参考:B-21 bomber could be Australia’s best long-range strike option
広大なインド太平洋地域をカバーできる長距離攻撃能力を再取得するためB-21が必要だと主張する豪州のシンクタンク
オーストラリアは約10年前まで長距離攻撃が可能なF-111を運用していたが同機の後継機としてF-15Eを導入しなかったため豪州軍の長距離攻撃能力はコリンズ級潜水艦が搭載する地上目標への攻撃に対応したハープーンだけで、中国との対立が悪化するに伴い失った長距離攻撃能力の再取得が切迫の課題に浮上している。
ここで登場する長距離攻撃能力とは広大なインド太平洋地域をカバーできる火力投射能力のことで、ASPIによると豪空軍が導入を進めているF-35Aの有効な作戦半径は無給油で「約1,000km」だと説明しており、高価で敵の攻撃に脆弱な空中給油機を使用することでF-35Aの作戦半径を1,500kmまで拡張することが可能だが広大なインド太平洋地域をカバーするには全く足りないと指摘して「どんなにF-35Aが優れていても中国の長距離ミサイルで基地が攻撃を受ければ飛び立つ前に破壊されるだろう」と警告。
さらに6隻運用しているコリンズ級潜水艦のうち常時展開できるのは2隻のみで地上目標への攻撃に対応したハープーンの搭載量も少なく、一度打ち尽くせば再装填のために何週間もかけて本国に戻ってくる必要があり、新しく調達を進めているアタック級潜水艦によって潜水艦戦力が拡張されるのも15年以上先の話だ。
結局、アタック級潜水艦によって潜水艦戦力が拡張される前に長距離攻撃能力のギャップを埋めるためには専用の爆撃機を導入するのが最も手っ取り早く、この選択肢における唯一の候補は米空軍が開発を進めているステルス爆撃機「B-21」で今のところ開発予算の超過もなくスケジュール通りに開発が進んでおり、同機の航続距離は無給油でF-35Aの3倍~4倍もあるので運用拠点を中国の長距離ミサイルが届かない場所に設定しても広大なインド太平洋地域をカバーできるとASPIは訴えている。
特にB-21の調達コストは10億豪ドル/約845億円以下になると予想されているので同機を12機導入するコストは関連費用を含めても200億豪ドル~250億豪ドル/約1.6兆円~約2.1兆円程度だと推定、ハンター級フリゲート調達(450億豪ドル)やアタック級潜水艦調達(900億豪ドル)にかかる費用と比較しても検討に値すると述べており、B-21(2名)とアタック級潜水艦(60名以上)が晒される人命リスクについても「B-21の方が優れている」と言っているが全くデメリットが問題が無いわけではない。
ハンター級フリゲートやアタック級潜水艦は高価でも国内の産業界が製造に参加することでプログラムに対する投資の恩恵を受けられるが、ASPIはB-21への投資について「国内の産業界に恩恵をもたらすことはない=米国はB-21の現地生産や同機の製造に豪産業界を参加させないという意味」と断言しており、この辺りに関しては「割り切るしか無い」といった感じだ。
但しASPIはB-21以外で長距離攻撃能力のギャップを埋める選択肢には「ボーイングと共同で開発を進めているロイヤル・ウィングマンの大型化バージョン開発に投資する方法もある」と主張しており、オーストラリアが直面する中国のリスクを考えるとB-21調達とロイヤル・ウィングマンの大型化バージョン開発の両方を推進しておくのが理想的らしい。
オーストラリアではB-21導入論が定期的に浮上して注目を集めるので広大なインド太平洋地域をカバーできる長距離攻撃能力取得が切実な問題なのだろう。
問題は「米国がB-21をオーストラリアに売るのか?」だが、米国でもF-22の失敗を引き合いに出して「豪州がB-21導入を望むなら真剣に検討すべきだ」という声(ごく一部)もあるので可能性は「0」ではないが、やはり開発したばかりの機密が詰まった機体を直ぐに売るとは思えないのでB-21を装備した米空軍の部隊をオーストラリアに常駐させるのが関の山ではないだろうか?
関連記事:豪州の希望が叶う?現実味を帯びてきた「B-21レイダー」輸出の可能性
関連記事:オーストラリア、中国に対抗するにはステルス爆撃機「B-21レイダー」導入が最適解
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force Courtesy graphic by Northrop Grumman
買いたいものが買えるなら日本だってラプター買えてんだよなあ
もしF-22を購入していたら、今頃空自の航空戦力はF-15の後期型とF-2だけになっていたろうな
今となっては買えなかったのはかえって良かったのではないかと思うのだが…
> B-21を装備した米空軍の部隊をオーストラリアに常駐させるのが関の山
むしろこれを引き出せたら政治が相当頑張ったって評価になりそう
戦略兵器は配備されるだけでも強いメッセージを伴うしね
まあ、日本列島は言わずもがなでグアムも中国の弾道ミサイルの射程内に入ってるし、オーストラリアも候補になりそうと言われたらそんな気はするけど
米戦略爆撃機部隊をオーストラリアに常駐=のっける米の核兵器も常駐
となるのでオーストラリアの国内政治的に無理ありすぎるなぁ
正直日本に米の爆撃機+核常駐と難易度大差ないと思うわ
長距離打撃兵力必要なら米LRHWに豪州北部へきてもらえばインドネシアの首都ジャカルタ他主要都市に届くけど・・・南沙諸島に届くか届かないか位なので米のメリットねーわ
オーストリアは日本ダシにしてF-22のライン再稼働と供与を米側に要求して突っぱねられていた過去があるけど、懲りないよなぁ。どのみちアメリカ軍が国内に駐留してくるんだから、対中戦に限れば米軍の金で買った米軍が使うB-21がオーストラリアを守ってくると思うんだけど、自前で揃えとく必要あるんだろうか。中国以外の脅威が地域にあるとも思えないけど
変な話、オーストラリアの立地からすると孤立外交をやろうと思えばやれそうだけど
なんで自前でやりたがるのか不思議といえば不思議だな
英連邦の一員ということと、明日の台湾は来年くらいのオーストラリア、みたいな論理は分かるけど
アメリカが守ってくれると自分で守れるは違うよ
完全に丸投げだと外交がアメリカに制限されちゃうしあと仮想敵国のインドネシア相手にするのに必要
そもそも売ってもらえるか?
オーストラリアを馬鹿にしてる訳じゃないけど、最新兵器でアメリカも外に出したがらないだろうから可能性が低いと思うけど、中古のB-2を売ってくれる可能性は交渉次第でなくはないけどB-21は無理があると思うが
B-2はB-21に技術として直接繋がってる部分が多いでしょうから、これも外には絶対に出さないと思います。運用にしても維持費が高すぎてオーストラリアには無理でしょう。
それはさておき、オーストラリアと日本は兵器に求める部分が近いですから、将来的には様々な共同開発ができると良いのですが、そうりゅう型の顛末を見るとまだまだ遠いですね。
正直厳しいだろうなあ
オーストラリアは日本や韓国語よりも歴史的にアメリカと高度な同盟国だがそれでも難しい
中古のB-2すら無理だと思う
そもそも米国が戦略爆撃機を売却って事例はないんじゃないか?
可能性があるとしたら中古のB-1だが、それすらもほぼないんじゃないかな
インドネシアと喧嘩する用?
本来なら日本にこそ必要だよな~
さっさと専守防衛なんて破棄して長距離攻撃兵器ガンガン作るべきだろうに
WW2の敗戦国という立場上、これはそう簡単にはいきませんが、中国や北朝鮮が暴れてくれてるおかげで少しずつ舵は切れてると思います。新たな悪役として、彼らにはもうひと暴れして欲しいところ。
日本くらいの距離だと、戦略爆撃機を持つより巡航ミサイルの方が有効じゃね?
ステルス爆撃機の中では安いと言ってもそのお値段でトマホーク数百発買えるわけで
維持管理費で言えば更に差がつくし、少なくとも日本には不要としか
索源地攻撃云々もミサイルか、それこそF-3かF-35で大半済んじゃうし
そもそも用途が違うかな
巡航ミサイルは、単価が高い、威力が低めだから、地上の対空兵器破壊が目的
爆撃機は維持費はかかるが搭載する爆弾は安い、バンカーバスターのような大型爆弾での地下施設破壊、もしくは広範囲爆撃が目的
地下施設の多い北朝鮮が相手なら、地下施設破壊のための手段は用意しておくべきだけど
日本で戦略爆撃機の導入は現状は難しいだろな
概ね同意するけど、JDAMとかの単価が安い爆弾を撃てるとこまで接近できるほどA2D2戦略の意図を挫く能力はどっちみち日本には無いような?
って方向で行くと、戦略爆撃機は出番自体が無いか、巡航ミサイルの空中発射プラットフォームにしかならん気がするので
難しいというより不要(優先順位が低い)かなと
異論は認める
開戦後いきなり爆撃機で特攻させるような戦術をとる国はないだろ
通常、巡航ミサイルで対空兵器・空軍基地を破壊→空軍で掃討→爆撃機投入の流れだし
A2D2戦略は開戦最初期に敵軍の行動の遅滞、侵入阻止を目的とした戦略であって
爆撃機の投入時期は戦争中盤以降
まあ北朝鮮にA2D2戦略を取れるほどの現代兵器があるとも思えないが
そもそも対北朝鮮だと日本がそういう攻撃をする必要自体ないのでは
対北は米韓が主体になってやるべきだし、米韓がそういう攻撃をしないのに日本が頭越しにやったらそれこそやばい
買えたところで日本のどこにおくべ・・・。グアムですら危険と言われる時代だぞ。
それとも先制攻撃用か?東風-21なんて新彊あたりからでも日本は射程圏内だから、
いくらB21が優れたステルス性があるって言っても、そこまでバレずに貫通はできないだろうよ。
北朝鮮に先制攻撃するんだったらF35で十分だし。
オーストラリアと絡むんだったら、問題のコリンズ級・アタック級みたいな、数千 kmとばせるミサイルの発射ができる潜水艦じゃねえかな。
沖ノ鳥島あたりに潜ませておけば中国は嫌がるぞお~。もっとも日本がそれを持つのはアメリカも嫌がるだろうけどな。
今の日本の状況だと「どんなにB-21が優れていても中国の長距離ミサイルで基地が攻撃を受ければ飛び立つ前に破壊されるだろう」
にならんか?
日本が爆撃機持っても泥沼の日中戦争の再来にしかならない気がするな
ミサイルで沿岸潰すくらいにしておいたほうが効率が良い気がする
もしオーストラリアが導入するなら、イスラエルも米国に寄越せと迫ってきそう
あんな狭苦しいところに、長距離爆撃機なんていらんやろw
一応ここの管理人さんは
イスラエルにB–2とバンカーバスター供与の可能性の記事を載せてるぞ
イラン向けにいらんか?
山田君、座布団持って行って
周辺のどの国が核開発しようとしても簡単にバビロン作戦できるようになるじゃん?
長距離というより大型爆弾用だろ
開発初期段階の機体をもし買えたらなんて「もしも話」すぎるよなぁ・・・
F-3でF-22ベースにF-35のアビオニクス乗せる提案がLMからされてたけど、外観は航続距離を意識した大きいデルタ翼でFB-22に似てるそうな
そいつ作ってもらうとかはいけんのかな
アレはおそらく便乗して米空軍がF-22(or派生機)を追加導入したり補修用部品を調達する事も計算に入れた計画で、
ライン復活のコストが嵩む部分は日本に「生産を許可」して費用負担させるつもりだっただろうから、
・もう米空軍はF-22の追加調達や延命は考えてなさそう
・オーストラリアにF-22(or派生機)のエアフレーム生産をさせられるとは思えない
・F-Xより調達機数が少なさそう
なんて辺りを考えるとちょっと難しいんじゃないかなぁ。
移植するF-35アビオ等はブラックボックス、エンジンやレーダ等は日本側開発品に換装を許可するがその場合の日本側分担生産比率は50%、等々自由な改修権やステルス素材等核心技術の移転を許すものではなかった。
更に提案時点で米政府の許可を得られる保証が無かったらしい。
で、論外と判断され最終的にLMも提案を取り下げた、という経緯。
途中で送信してました(汗
日本へのLM提案について書いたんですが、オーストラリアは国内生産には拘らないでしょう。
結局は米政府/議会の輸出許可と閉鎖済の生産ラインなんで難しいかなと。
ちなみに日本へ提示した調達価格はLM見積りで 210億円/140機生産 だったかと。
オーストラリアの中に中国の長距離ミサイルが届かない場所ってあるのか
もしそれがICBMやSRBMの話なら、地球上に射程外は存在しないということになるかな
でも、核弾頭のせること前提の戦略兵器はともかく、例えば空港の能力を停止させるような戦術ミサイルの話で言えばオーストラリアはほぼ安全かと?
北の方は射程圏内で、内陸部とか南に軍事拠点の整備すべき、との記事が最近あったような?
ステルスに拘りがないんであれば、退役するB-1Bを譲ってもらうのはどうだろうか?
または、Tu-22みたいなのを自前で作るとか?
原型が60年代だから、現代なら機能を盛り過ぎなければそれなりのものができそうな気がするけど、
生産基盤から作らないといけないから無理か。
あとはP-1かP-8に爆装させるか、
博物館からアブロ バルカンを博物館から引っ張ってくるか。
P-8に爆装で良いんじゃないか。
B-1Bはアメリカ軍でも碌に作戦参加できる機体が少ないくらい消耗してるから、買っても早々に砂漠に埋めることになるぞ
ステルスに拘りがあるんでしょ。
生残性等もろもろ考察した結果、高度なステルス性を持つ長距離作戦機が最適解と結論したのかと。
B-2保有は維持コスト等手に余るがB-21なら何とかなりそうだと。
ぶっちゃけ
オーストラリアは中国の脅威なんか遠すぎて及ばんだろ
日本なんか東シナ海隔てただけやぞ
F111は長距離侵攻爆撃機として優秀な機体だったなあ
F15Eより搭載力、航続距離は上回り
可変翼だからより高い速度での空気の濃い低空侵入も可能だったろう
では一つ再生産で
それは、色々無理有りすぎ。
F-18FをBlock3に改修して、多少難があってもCFTを付けた方が無難。
そんなに長距離打撃力が欲しいなら、キャンベラ級にF-35BとV-22(空中給油装置付き)を載せて遊弋させればいい。
それか、P-8に長距離ミサイルを搭載するとか。
オーストラリアは、何事も地に足が付いた計画を考えるべきでは?
軍事系の記事を読んでると金さえ出せば買える民生品の素晴らしさを実感できる
…まぁ最近は生産数を絞って買いたくても買えない物が増えてるけど
何にしても金で解決できる事は金で解決した方が楽だなぁ
モスボールされてるB-52をリストア・購入して巡航ミサイル積めば?探知されやすいとしても、物理的に攻撃手段が存在してるのは抑止力になると思うけど。
F-35の行動半径が不足なら、ラファール導入したら倍近い1850kmあるし対地攻撃力も高い。なんならPANGと交代で退役したド・ゴールを(豪仏の得意な)通常動力化して購入、ラファールMを運用したら更に遠距離まで攻撃できる。
実現可能性は低そうだけど、B-21の購入(輸出解禁)に比べればまだ現実的では?
ステルスじゃないと極超音速ミサイルの餌食になっちゃう
航空基地に極超音速ミサイル撃たれたら
B21なんかただの鉄くず
B-21の開発が順調とは言っても今までのパターンから考えて、メーカーの言う予定通りのコストで本当に調達できるか疑問だな
勿論オーストリアへの輸出を許可するか自体が不明だけど、もし実現すれば同じ太平洋の民主主義国家である日本にとっては心強い話だと思う
それと関係ない話だけど、ロイヤル・ウィングマンのフォルムは水棲カメムシやピパピパは彷彿させてどうも好きになれんなw
今更ながらF-15E導入しとけばよかったねぇ豪州
なんでかホーネット方のツリーに進んでしまった
そもそもの話、南半球まで中国がやってくるのか?再エネやリサイクルでほとんど鉄もエネルギーも自給できるようになるだろうしオーストラリアの戦略的価値は減少の一途だと思うが。
単純な話、地球儀を俯瞰すればわかるよ。南シナ海が中国の「内海」となって、そこから外海へ進出していくのだから、東南アジア諸国が突破されれば、次はオーストラリアということになる。習近平はオバマ元大統領にもトランプ前大統領にも「太平洋二分割案」を提案している。
こうなると、FHIの可変翼哨戒機が豪州の求める機体の様な気がしてきた。