インド太平洋関連

パキスタン、トルコ製攻撃ヘリをキャンセルして中国とZ-10導入交渉を開始

パキスタンは米国製エンジンの輸出承認が下りないトルコの攻撃ヘリ「T129/ATAK」導入契約をキャンセル、中国とZ-10ME導入に向けた交渉を開始したと報じられている。

参考:Pakistan cancels purchase of Turkish T129 ATAK helicopters, and seeks replacement from China

対ロシア制裁で中国防衛産業の輸出を助けていては最終的に自分たちの首を締めるだけだろう

トルコはイタリアのアグスタ(現アグスタウェストランド)が開発した攻撃ヘリA129を一部改良した「T129/ATAK」をトルコ軍向けに製造中で、AH-64EやAH-1Zといった米国製の攻撃ヘリよりも導入コストが安価なためパキスタン(30機)やフィリピン(6機)から計36機を受注したものの、米国がS-400導入を理由に対ロシア制裁(敵対者に対する制裁措置法/CAATSA)を発動したため米国製エンジンの輸出承認が下りず、パキスタンには引き渡しを1年延期することで合意し国産エンジン「TS1400(1,400馬力)」への切り替えを急いでいた。

出典: MilborneOne / CC BY-SA 4.0 T129 ATAK

補足:フィリピン向けのT129/ATAKにはエンジンの輸出承認が下りたため引き渡しが始まっている。なぜフィリピン向けだけ輸出承認が下りたのかについては諸説あるが、ドゥテルテ大統領は終了期限が迫っていた「米軍に関する地位協定(VFA)」の破棄を米国側に通告して協定延長なら相応の見返り(対外軍事援助や装備品の援助など)をフィリピン側に提供することを要求、この要求に屈したバイデン政権はドゥテルテ大統領の要求を十分満たすレベルの援助を提案したと言われており、ここにフィリピン向けのT129/ATAKに搭載するエンジン輸出承認が含まれていたのではないかと管理人は予想している。

しかしパキスタンはトルコとの合意後に水面下で中国製の攻撃ヘリ「Z-10」に興味を示していると以前から噂されていたが、パキスタン軍は正式にT129/ATAK導入契約をキャンセルして中国とZ-10ME導入に向けた交渉を開始したと報じられている。

出典:3GO*CHN-405/mjordan_6 / CC BY-SA 3.0

トルコが提案した引き渡し1年延期内でT129/ATAKへの国産エンジン搭載が間に合わなかったのか、中国が魅力的な提案でパキスタンの背中を押したのかは謎だが、米国は目論見通りトルコの防衛産業にダメージを与えることに成功して中国製兵器が穴を埋める形で売れてしまい本当にコレで良いのかと首をかしげたくなる話だ。

仮に米国製エンジンを搭載したT129/ATAKのパキスタン輸出を承認していればエンジンのスペアパーツ供給を通じてパキスタンに対する影響力を確保できたはずなのに、対ロシア制裁で中国防衛産業の輸出を助けていては最終的に自分たちの首を締めるだけだろう。

そろそろインドがロシアから調達したS-400が配備されレーダーにスイッチが入るはずなのでバイデン政権はインドへのロシア制裁を発動しなければならず、そうなれば売り込んでいる米国製兵器は全てストップすることになるため今度は米防衛産業がダメージを受ける番だ。

関連記事:急転直下で正式発注、フィリピンがトルコ製攻撃ヘリ「T129B」導入を発表
関連記事:フィリピンの要求に屈した米国、ドゥテルテ大統領の要求を満たす対外軍事援助を提案か
関連記事:海外依存から脱却するトルコ、念願の国産ターボシャフトエンジン量産を開始
関連記事:印露首脳会談で両国が関係強化、インドは主権国家であり米国の制裁には屈しない

 

※アイキャッチ画像の出典:Peng Chen / CC BY-SA 2.0

仏大統領選挙の候補者、NATOから離脱すれば米国主導の冷戦に巻き込まれずに済む前のページ

ロシアとイランが1月中に安全保障協定に署名、Su-35など約100億ドルの武器を調達か?次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    インドが国産練習機HTT-40を70機購入、700万ドルで海外の顧客にも提供

    インドはヒンドスタン航空機(HAL)が開発した初等練習機HTT-40を…

  2. インド太平洋関連

    韓国軍が大邱級フリゲートの欠陥報道に反論、油漏れと軸受損傷は事実だが状況は深刻ではない

    韓国の防衛事業庁は欠陥が報じられた大邱級フリゲートについて「通常の運用…

  3. インド太平洋関連

    韓国が空中発射型の超音速ミサイルをFA-50に統合、2025年に試射予定

    韓国空軍は対地・対艦攻撃に使用できる空中発射型の超音速ミサイルを開発中…

  4. インド太平洋関連

    ソウルで開幕したADEX2023、複数の無人戦闘機や無人機が披露される

    ソウルで17日に開幕したADEX 2023(航空宇宙・防衛産業展示会)…

  5. インド太平洋関連

    バイデン政権、台湾に対する3.45億ドルの軍事支援パッケージを発表

    バイデン政権は台湾に対する3.45億ドルの軍事支援パッケージを28日に…

  6. インド太平洋関連

    ス-ルー王国の末裔だと主張するフィリピン人、マレーシア領サバ州への侵攻を計画か

    ス-ルー王国の末裔だと主張するフィリピン人達は不当にマレーシアが占拠し…

コメント

    • G
    • 2022年 1月 07日

    アメリカの兵器関連技術が世界トップを独走していた頃はCAATSAがその効力を友好的に発揮していましたが、そうでなくなった今となっては今後も同様の案件が続き、さらにアメリカと中国の国際的影響力や兵器関連輸出額(ライセンス料含む)の差が無くなっていく原因となるだけですね
    インドだけ特例としようとしていたことはありますが、CAATSAそのものを見直すという議論はなされていないのでしょうか

    8
      • ミリオタの猫
      • 2022年 1月 07日

      今の米国はそれどころじゃ無いよ…先日、バイデン大統領が一年前に起きたトランプ前大統領支持者による連邦議会襲撃事件についてトランプ前大統領を(名指しせずに)激烈に批判する程、国内の分裂が悪化している。
      バイデンも対ロシア・中国政策等外交・軍事面でブレブレな対応をしていて米国人が抱いている「強い米国」のイメージを相当傷付けているから、今年秋に行われるの中間選挙の行方次第では米国内に収拾不可能な混乱が起きる可能性すらある。

      10
    • 無明
    • 2022年 1月 07日

    パキスタン軍の使う中国兵器がどんどん増えていく

    5
      • 無無
      • 2022年 1月 07日

      こうやってパキスタンが中国依りになるほど、インドは態度を硬化させる。
      だからインドがアメリカになびくのかというと、そんな単純な話ではない
      やっぱりアメリカの自縛自傷行為

      5
      • ptj
      • 2022年 1月 07日

      中国は前にパキスタンへZ-10を売ろうとしたけど、Z-10のエンジンが非力(約1,280馬力)だったので、パキスタンはT129/ATAKとMi-35Mを選んだ。
      その後、中国はZ-10の改良型であるZ-10MEを開発。
      Z-10MEのエンジンは約1,600馬力に向上しており、装甲やアビオニクスの性能も向上している。
      Z-10MEだったらパキスタンも普通に導入するでしょうな。

      8
    • AH-X
    • 2022年 1月 07日

    マングスタか、日本のAH-Xも価格重視でこれでいいかな?
    アパッチ高すぎなんだよね。火力支援くらいならマングスタくらいでも十分。

      • 匿名
      • 2022年 1月 07日

      サポートを考えるとオーストラリアのティガー同様の道を歩むと思うので海兵隊の退役したAH-1Zでいいんじゃあないかなー?

      1
        • あばばばば
        • 2022年 1月 07日

        米海兵隊の機材なんてボロボロなんだから、変に中古のものを買ったりせず、新規調達にした方が返って安上がりになるぞ。

        中古で買ったC-130もボロボロで苦労しているみたいだし。AAV-7も新品で購入したおかげで海上運用が出来ない事を避けられたし

        12
      • 半分の防衛費の国から
      • 2022年 1月 07日

      アメリカのFARAの候補機のレイダーXなんかも良さそうですけどね、生存性の方が大事な気がします。
      リンク

      1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  3. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP