米空軍はクラッチがスリップする現象のためオスプレイ全機に飛行停止を命じたが、米海兵隊も陸上自衛隊もオスプレイを飛ばし続けており、両者の違いはスリップ現象に対する教育の有無にある。
参考:US Air Force grounds Osprey fleet after dangerous clutch problem
参考:US Marine Corps isn’t grounding Osprey fleet over clutch issue
陸自のパイロットも米海兵隊からオスプレイの操縦方法を学んでいるため「スリップ発生は常識だ」と認識している可能性が高い
米空軍特殊作戦司令部は16日「過去6週間以内にMV-22オスプレイのエンジンとローターを繋ぐクラッチがスリップする現象が2件発生、根本的な原因と解決策を探るためオスプレイに飛行停止を命じた」と発表、同機の安全性を問題視する日本メディアも「米空軍のオスプレイが飛行停止」と大きく報道しているが、米海兵隊も陸上自衛隊もオスプレイを飛ばし続けており、両者の違いはスリップ現象に対する教育の有無にある。
オスプレイは墜落を防ぐため2基のエンジンとローターを繋ぐクラッチにスリップが発生すると「瞬間的にスリップが発生していないエンジンに動力負荷を集中させる仕組み」を採用しており、スリップから回復したオスプレイは再接続されたエンジンのトルクが伝達されて機体が大きく傾く現象が発生するらしい。
米空軍は「この問題に直面したオスプレイはギヤボックスやエンジンの交換を余儀なくされた=クラスAの事故(250万ドル以上の被害)を引き起こす」と主張しているが、スリップ問題を計10回も経験している米海兵隊は「2010年に問題を把握したがパイロットが対応策を身につけることで管理可能なリスクであり、我々の部隊やスタッフ間においてスリップ発生は常識だと受け止めている。これまで負傷者は1人も発生していない」と述べている。
米海兵隊のパイロットは計器類をチェックして「クラッチがスリップを発生していないか」を確認後、スリップが最も発生しやすいホバリング操作に入るよう訓練されているため「リスクを管理可能=飛行停止を命じるほどの問題ではない」という意味で、陸自のパイロットも米海兵隊からオスプレイの操縦方法を学んでいるため「スリップ発生は常識だ」と認識している可能性が高い。
因みに昨年8月に配備が始まった海軍仕様のCMV-22では「スリップ問題が発生していない」と報告されており、陸自が導入したV-22Bは米海兵隊のMV-22Bと同仕様なのでスリップが発生する可能性がある。
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※アイキャッチ画像の出典:Pixabay V-22 オスプレイ
民間機ならこの不具合はダメだろうけど軍用機の場合くせを把握したうえで操縦者が安全を担保できるなら別に構わんような
そりゃ全部機体側で担保できればいいけど
まぁ海軍運用でこのくせはぼちぼち直すでいいでは
単純にクラッチ容量を増やせば直ぐ解決しそうだけど
航空機のエンジンはそんな単純じゃない??
飛行特性として捉えてるか否かってところだろうけど、問題は米空軍と海兵隊でリスクへの対応や情報共有がなされてないことじゃなかろうか。使い方が全く違うっていうなら仕方ないが、そこまで変わらんだろうし。
F-4だって低速時に操縦桿を倒した方向とは逆に動いちゃうアドバースヨーの発生を知ってて運用してたんだから、今回のも海兵隊の対応策を空軍パイロットに周知・教育して終わりだろうな。
もともと四軍統合(のちに陸軍が外れて三軍統合)のプロジェクトで30年以上前から共同で開発して(初飛行は1989年だったはず)、運用も15年前からしているのに情報共有だ、周知・教育してとか言っている状況かね?
変な意地張ってやらないよりはマシでしょう。事故が起こるまで分からない、または何年も使ってやっと明らかになる欠点なんて工業製品にはよくある話ですし。
だからさぁ、開発は30年以上たっている。
それまでに何機も落としているし、運用を始めて15年も経って何機も落としていたり、その前まで行ったことがいくつもあるわけで「分からない」「知らない」では通らないし、実際海兵隊10年以上前から把握し、空軍も10件のうち直近5年で4回は発生ている。
三軍統合のプロジェクトで意地もへったくれなんて山羊にでも喰わせばいいが、これだけの時間がたって改善が進んでいないことの方が問題だろうに。
CMV-22では発生していないとのことなので、改善されたということでは。勿論、まだ発生してないだけかもしれませんが。
この記事の件は海兵隊は知っていたが空軍は知らなかったというセクショナリズムの問題ですし、クラッチが原因で落ちたのなら過去の事故において解明されて、改良か対策がなされていたと思います。
運用方法の差なのでは?
特殊部隊の輸送なので、細い谷とか木陰を縫って飛ぶので、不意の姿勢変化が致命傷になるのでしょう。
ここまで両方のペラに動力を伝達する事に拘るなら、翼端ではなく胴体にエンジン積んで、ペラだけ向きを変えた方が良かったのでは?
速度と行動半径を落としてもいいのでホバリング能力を高める改良すべきだよなぁ。エンジニアはやりたくても予算付かなそうだけど
細々と生産ラインを維持しながら改善部品をサプライヤが納入していくのかな。
陸自という不特定多数のパイロットによる飛行時間増加で制御プログラムがアップデートされ複雑で難しい操縦が、より安全になって欲しい