イラクではイスラム教シーア派の指導者サドル師が率いる勢力と、同じシーア派でイランの支援を受ける勢力が武力衝突する事態に発展、首都バクダットのグリーンゾーン(首相府や政府庁舎が集中するエリア)で激しい交戦が続いている。
参考:Iraq protests turn deadly after prominent cleric quits politics
参考:Black Helicopter Prompts False U.S. Embassy Evacuation Claims In Iraq
バクダット市内の状況は両勢力の支持者が衝突したというより「両勢力の支持者が交戦している」と表現する方が適切
サドル師が率いる政党政党「サーイルーン」は昨年10月の総選挙で74議席を獲得、一方で親イランを掲げるファタハ連合は議席数(48→17)を大幅に減らし、選挙結果に納得がいないファタハ連合は選挙で議席数を減らした他の勢力を巻き込み「選挙の無効」を訴えたが裁判所に退けられたため、スンニ派やクルド人と手を結び新政権樹立に欠かせないクルド自治政府首相の選出を阻止、選挙から10ヶ月が経過しても両勢力の対立が収まらず政権樹立の目処は立っていない。
この事態を打開するためサドル師は支持者を議会前に座り込ませて議会の解散と再選挙を要求したが、ファタハ連合を含む親イラン勢力がこれを拒否したため29日にサドル師は政界引退を発表、これに怒った支持者がグリーンゾーン(首相府や政府庁舎が集中するエリア)を襲撃、治安部隊や親イラン勢力のデモ隊と衝突して少なくない死傷者が発生している。
#UPDATE#Iraq declares nationwide curfew until further notice amid clashes
Seeing more reports confirming at least two dead in today’s clashes
Scenes from Baghdad’s Republican Palacepic.twitter.com/dyGB8MEJL6
— Heshmat Alavi (@HeshmatAlavi) August 29, 2022
Sniper is back to action again — the person behind the camera says while recording the gunshots in Baghdad’s Green Zone.#Iraq
pic.twitter.com/8QoQ9qkGMt— Baxtiyar Goran ☀️ (@BaxtiyarGoran) August 29, 2022
Fierce clashes between Saraya al-Salam and unknown militias in Baghdad.#Iraq pic.twitter.com/TL8vtaP6wF
— Baxtiyar Goran ☀️ (@BaxtiyarGoran) August 29, 2022
Baghdad is a war zone. pic.twitter.com/0XDgzB3ANJ
— Faytuks News Δ (@Faytuks) August 29, 2022
Insane footage from inside the green zone in #Baghdad pic.twitter.com/R88f6dLQ8V
— Faytuks News Δ (@Faytuks) August 29, 2022
More footage from Baghdad where intense clashes continue at this hour pic.twitter.com/BdrXC2xOPm
— Faytuks News Δ (@Faytuks) August 29, 2022
NEW — Reported footage of US embassy C-RAM responding to rocket fire at Baghdad’s green zone pic.twitter.com/5gc2w8z9JX
— Faytuks News Δ (@Faytuks) August 30, 2022
Baghdad’s skyline tonight. pic.twitter.com/ttzHziJ30x
— Faytuks News Δ (@Faytuks) August 29, 2022
バクダット市内の状況は両勢力の支持者が衝突したというより「両勢力が交戦している」と表現する方が適切で、小銃だけなくRPGまで持ち出し激しい戦闘が行われている様子がSNS上にアップされ、このまま内戦に発展するのではないかと危惧されており、グリーンゾーンにある各国の大使館や国際組織の事務所では「スタッフの退避が始まっている」という噂まで飛び交っている有様だ。
ロシア軍とウクライナ軍の戦いの影に隠れて目立たないが、沈静化していたギリシャとトルコの軍事的対立が再燃する兆候、アゼルバイジャン軍がアルメニアとナゴルノ・カラバフを繋ぐランチに入り、リビアでは米軍かイタリア軍のMQ-9が撃墜され、モロッコとアルジェリアは互いに軍事力増強に邁進、ミャンマーでも反政府勢力との戦いが激化して住民が虐殺されており、エチオピアでもティグレ人民解放戦線との戦いが激化している。
どう見ても世界的な安全保障の環境は悪化しており、軍事力や防衛産業の価値や存在感が高騰していると言っても過言ではない。
関連記事:アゼルバイジャン軍がラチンを掌握、ナゴルノ・カラバフ地域への通行権を管理
関連記事:ギリシャ軍、クレタ島配備のS-300でトルコ空軍機にレーダー照射か
※アイキャッチ画像の出典:@Faytuks
ウクライナ侵攻は世界の安全保障をぶっ壊したからなぁ。
嫌な世の中になってしまった。
もっと遡って、東西冷戦終結にあわせて湾岸戦争、ユーゴ紛争、ソマリア内戦と次々と揉め事があらわに。
もっとも冷戦下でも各地で紛争は続いていたが、冷戦後の紛争は大国によるコントロールが効かない性格を帯びていると感じる
このような状態は、すべてを暴力で押さえ込む独裁的な権威主義国家に理論的正当性を与えかねないから、心配
世界的な空気というものがあはりあるんだと思う。
第2次大戦のような互いに連合を組んだ大勢力同士の戦いではなく、各地域の火点が増えつつリンクして、いつの間にか世界大戦になっていたという事も起きうるんじゃないか?
シーア派同士が交戦とか、イラクもスンニ派の影が薄くなったなあ
まあイスラム国で最後の花火やったんやね
イラクやシリアは民族や宗教間の対立だけでなく
内部分裂も激しく勢力が入り乱れていて
強力な独裁者でなければ治められないのではないかと考えてしまう
まだ対立の単純なウクライナの方が救いがある
常識的な日和見協調主義より、過激な独裁者の方が支持を集めやすい世の中になってきてるのかもね。
信用なんて崩壊しつつあるこの世界で、自分の身は自分で守る。
「自己防衛」その一点に限るわな。
プレッパーやサバイバリストの時代か。
ここはカオスやなぁ
選挙をしても選挙を認めないとかが横行するからめんどくさいことになるんだよなぁ
サドルさんは同じシーア派でも余所者は嫌なんだろうな。
イライラ戦争のイメージを引きずってる身としては以前程ではないにしろ未だに安全保障でアメリカの影響下にあるイラクで親イラン派の大規模な票田が存在する事に驚きますね。
イスラム国危機を契機にイランの影響が強まった所から昨年の選挙は親イランPMFへの反発で一周回って国粋主義とも言えるサドル師躍進の流れだったそうですが複数派閥巻き込んで塗り絵がはっきりしないまま内戦となると反体制派への原理主義組織の浸透で有耶無耶になったシリア内戦の再来とならないか心配です。
イラクはスンニ派よりシーア派の方が多数派なのです。サダム・フセインがスンニ派だったのでスンニ派のイメージがありますが。
イラク国内のスンニ・シーア両派の比率については存じているのですが当方不勉強なためいつの間にか混乱期のイラク国内にイラン後援の武装勢力が誕生して気がつけば政治化し米のソレイマニ司令殺害へ繋がるぐらいの漠然としたイメージしか無かったもので、イラクシーア派内でのイラン支持層の多さに驚いたと書いた方が的確だったかもしれません。ただまあ国政においては外交政策は支持のファクターの一つでしか無いのでその側面だけ切り取って見るのは少々安易でしたね…。
ISIS掃討選でイラン革命防衛隊が大規模な部隊を派遣していたりや、米軍駐留時から表に出た南部シーア派イラク人への工作とか深くイラク国内に食い込んでいますよね
オバマの時には、イラクの統治にイランが協力していたからな。
それでサウジアラビアが拗ねた。
元から世界中で燃えていたのが顕わになっただけ。
下から2番目の動画、C-RAMですやん。ちゃっかり米大使館も攻撃されてるの…もうめちゃくちゃですね。
イラク人によるイラクの民主的な自治と言えば聞こえは良いですが、宗教右派はともかくとして隣国イランの影響力すら排除できてないのはアメリカの戦後統治さぁ…って話ですよね。イラクの内政に干渉しようとする外患はいずれも民主的な手続きとか民族自決権なんか屁とも思ってない訳で、そういうならず者国家の前に旧権力層が一掃された不安定な国を放り出すのは自治尊重とは言わないですよね。いじめっ子といじめられっ子が居るクラスで「みなさん気をつけましょう」とだけ言って特に対処しないのと一緒ですよ。まぁぶっちゃけ、アメリカからすると占領統治中のある時点でもうイラクを進歩的な民主国家にするのを諦めたって事なんでしょうけども。
『イラクでは,人口の約6割をイスラム教シーア派アラブ人が占め,約2割とされるイスラム教スンニ派アラブ人のほか,クルド人,キリスト教徒,その他少数民族が混在している』
公安調査庁 国際テロリズム要覧より
宗教・民族対立を強権で抑え込んでいた独裁者が居なくなればこんなもんてすよ
元はと言えば欧米諸国が勝手に国境を引いたせいだが、今さら民族や宗教ごとに国を作っても一度できた直線で囲まれた国家の意識が消え去ることは無さそうですね。
アメリカの力が以前より衰え、ロシアが大ダメージを受け、中国も成長の限界にきた今、タガが外れたようになりそうですね。
日本も早く憲法改正をしないと、予想外の事態に巻き込まれるかも知れませんね。
いや、直線で囲まれた国家への帰属意識がないからこそ、分裂しているわけですから、欧米や東アジアが一切干渉せず、殺し合いを好きなだけやらせれば、どこかで各勢力が拮抗する境界線が発生し、それは直線ではないはずです。
ただ域外からの干渉が無い、という前提を満たすのが極めて難しい以上、半永久的に紛争が続くでしょうけど。
こういうの見るとアラブの春を始めとする独裁国家の民主化も正しく無かったと言わざるえんよな
多民族、他宗教地域は独裁者が力で抑えんとすぐこうなる
仮に民族、宗教ごとに独立させてもナゴルノ・カラバフ戦争戦争と似たようなもんが始まるだろうし
しかし、先進国以外は民族や宗教以外のイデオロギーでまとまることはできないでしょう。
やはり共産主義は滅び、資本主義+自由民主主義のアメリカもまた分裂の危機にある中で、これら超イデオロギーに希望を見いだせない以上、新しい何かを人類が生み出せない限り仕方が無いのではないでしょうか。
???:「ともあれ、憲法9条は死守すべきであると考える次第である」
そろそろ、シニカタヨウイかな。
リビアは両陣営、ミャンマーは国軍側にそれぞれ大国がバックについていたが、
サドル派は誰が支援する?
親イラン派も、反米のサドル派どちらもアメリカは支援したくないし、ウクライナに手一杯で出来ないはず。
ならば、湾岸諸国に任せるか?
隣国トルコに任せたら反対側にクルドがつきそうで余計ややこしくなるからな。
この地は、かつて欧米諸列強の野望が交錯し、ぐちゃぐちゃにしてしまったところ。もっとも、それ以前も東西の文化、民族、宗教が交錯し、交易上の重要拠点であったため、古来より戦争が絶えなかった地。
伝説になった独裁者フセインを支えていたスンニー派は今はどうしているのだろう? ISISも国内が乱れれば、その隙に乗じて復活を企むだろう。
アメリカは、アフガンみたいにこの地も捨てて、去っていくつもりなのだろうか?