中東アフリカ関連

イスラエル、ガザ地区での戦闘にAI制御で群れを形成したドローンを実戦投入

イスラエル国防軍は今年5月にガザ地区に投入した兵器に関する機密を解除、AI制御で群れ(スウォーム)を形成したドローンを実戦で使用したと明かして注目を集めている。

参考:בלעדי | להקות הרחפנים של צה”ל השתתפו בלחימה בעזה, וחוקי המשחק צפויים להשתנות
参考:In apparent world first, IDF deployed drone swarms in Gaza fighting

AI制御で群れを形成したドローンを実戦に投入したイスラエル、ドローンによるスウォーム攻撃の実戦投入も遠い将来の話ではない

イスラエルはパレスチナのガザ地区から撃ち込まれるロケット弾や迫撃砲の攻撃を阻止するため、巧妙に隠され攻撃の度に移動を繰り返すイスラム原理主義組織ハマスやイスラム聖戦機構のランチャー(発射機)を特定して破壊する作戦にAI制御で群れ(スウォーム)を形成したドローンを投入したと明かした。

出典:Sven Teschke / CC BY-SA 3.0 de クアッドコプターと呼ばれるタイプのドローン

イスラエル国防軍が投入したドローンは小型のクアッドコプターで同機は複数のドローン同士で群れを形成してガザ地区上空に展開、イスラム原理主義組織ハマスやイスラム聖戦機構の戦闘員がランチャーを引っ張り出して砲弾を発射するとドローンに搭載されたセンサーが位置を特定、この情報に基づき上空で待機していた無人航空機や地上部隊の砲兵戦力が敵のランチャーを破壊することに成功したらしい。

要するに今回の発表内容はスウォーム運用されたドローンが直接攻撃に参加したというものではなく、AIに制御されスウォーム形成した複数のドローンは光学センサーで指定された地域の地表を監視するメッシュ状のセンサー網を提供したという意味で、イスラエル国防軍は「今回実証された技術を一般の部隊にも普及させる計画だ」と述べている。

商業的にに見れば数百機のドローンによる大掛かりな空中ショーは世界中で行われているため、複数のドローンの同時に制御する技術自体は特に珍しいものではない。

しかし特定の任務を複数のドローンで実行するためには常にドローン同士が通信を行い「変化する状況に応じて形成されるスウォームを調整する必要がある」とイスラエルメディアは説明しており、単純に複数のドローンによる同時攻撃(あるいは他の任務)はスウォームではなく協調に過ぎないと主張している。

このスウォームと協調に大きなギャップが生じるという話には根拠があり、同じ目標を破壊するミッションに「独立して行動する1,000機のドローン」と「スウォームを形成した800機のドローン」のどちらが優れているのか検証するため米軍が実施したシミュレーションでは後者の方が「2時間以上」も早くミッションを達成したため、この研究に関わった関係者は「能力が同一でもスウォームアルゴリズムを導入した方が目標達成までの効率が飛躍的に向上する」と主張しているのだ。

つまりAIに制御されスウォーム形成したドローン群の方が独立で作動する複数のドローンよりも「効率的に情報収集が行える」とイスラエルメディアは言いたいのだろう。

※本記事と関係ないが最近のドローンはこういうことも出来るらしい

因みにイスラエルメディアは「大規模なスウォームを利用するには高度なAIや機械学習技術が必要なので技術力に優れる大国の領域だが、これもコンピューター技術の発展によって変化しつつある」と指摘、AI制御によるスウォーム技術は永遠に大国のものではないと警告しているのが非常に興味深い。

登場した当時は限られた国しか利用できなかった無人航空機技術が20年程度で世界中に拡散したことを考えると、AI制御によるスウォーム技術もあっという間に拡散して多くの国で軍事利用され始めるのだろう。

関連記事:無人機による攻撃を受けて目が覚めたインド、アンチドローンシステム導入に動き出す

 

※アイキャッチ画像の出典:Capricorn4049 / CC BY-SA 4.0 クアッドコプターと呼ばれるタイプのドローン

相互運用性の確保が重要と説く独空軍​トップ、欧州の次世代戦闘機計画を統合すべきだと主張前のページ

目先の利益は優先事項でない? 中国がアルゼンチンの軍事力強化を後押しする理由次のページ

関連記事

  1. 中東アフリカ関連

    イスラエル国防軍、米英仏独伊を招待してUAVを主体とした世界初の軍事演習を実施

    無人航空機(UAV)は他の戦力のオマケや脇役といった地位から脱しつつあ…

  2. 中東アフリカ関連

    米国、エジプトのSu-35導入にもCAATSAに基づく制裁を匂わせ始める

    米国のバイデン政権は23日、トランプ大統領が問題化するのを避けていたエ…

  3. 中東アフリカ関連

    中国製の装備品輸出に好影響、UAEと中国が共同で航空機のスペアパーツ供給拠点を設立

    米国からファーウェイを排除せよと要求されているUAEは14日、中国国営…

  4. 中東アフリカ関連

    イスラエル、アゼルバイジャンに対する武器供給停止を拒否

    イスラエルメディアは12日、アゼルバイジャンに対する武器の禁輸措置を求…

  5. 中東アフリカ関連

    サウジアラビア、ロシアとの武器共同生産と防衛産業育成に200億ドル以上の投資を発表

    サウジアラビアは今月20日、国内の防衛産業に今後10年間で200億ドル…

  6. 中東アフリカ関連

    SF映画の中に登場する未来の戦闘マシーン、イスラエルの次期装甲戦闘車が実用化に向けて前進

    イスラエル航空宇宙産業は今月10日、イスラエル国防軍が開発を進めていた…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 7月 13日

    まぁ、ミサイル追撃にAIを使っているからこういうシステムも既に実戦使用されているだろうと思っていたよ。
    それに記事には出ていないらしいけどイスラエルだけじゃ無くアメリカ、ロシア、中国も既に同様のシステムを導入、実戦配備していると考えた方が良いだろうね。

    2
    • 匿名
    • 2021年 7月 13日

    取り敢えず、スウォームにも色々種類があるんですよ

      • 匿名
      • 2021年 7月 13日

      まあ、いろいろ種類があろうがあるまいが
      脅威として認識されるべきは
      >特定の任務を複数のドローンで実行するためには常にドローン同士が通信を行い「変化する状況に応じて形成されるスウォームを調整する必要がある」
      の話で、単に集団行動するだけなら特別目新しい話じゃない

      3
    • 匿名
    • 2021年 7月 13日

    シリアでのkarguの件もそうだけど、向こうしばらくは技術を持つ大国が技術のない小国や民兵・テロリストを狩るのに使われそう
    酷いことを言えば、そういう国にとっては自爆ドローン使うより兵隊100人の方が安いまであるけど、大国にとっては逆だし

    2
    • 匿名
    • 2021年 7月 13日

    そもそもドローン優位性はもう揺らいでるよねって

      • 匿名
      • 2021年 7月 13日

      • 匿名
      • 2021年 7月 13日

      揺らいでいるならなんでドローンを中国とかアメリカとかロシアとかヨーロッパとかイスラエルとか日本とかが必死に作ってるの?

      3
      • 匿名
      • 2021年 7月 13日

      優位性もなにも、まだ戦場に出て来て限定的に実戦を経験したばかりで本当の評価はこれから
      これに対して対抗手段が出て来て、シーソーゲームを繰り返して、それでも生き残れたら一人前

      5
      • 匿名
      • 2021年 7月 13日

      というより、既にあったそこそこの脅威を
      プロパガンダに使いたい国
      性能アピールしたいメーカー
      記事にして飯を食いたい記者
      そうあれかしと囃し立てる一般人
      とかの思惑が一致した結果過剰に盛り上げられたと考えるべきかと

      なので、優位性なんてものは最初から無いし、脅威としてはそれなりにあるけど
      それについては今に始まった事ではなかったっていう

      10
    • 匿名
    • 2021年 7月 13日

    まどろっこしい事するより、ガンシップとIFVで片づけた方が早いだろう

    1
      • 匿名
      • 2021年 7月 13日

      偵察ドローンなら分隊に一機とか持てるし、それで敵を検出してそこに火力をぶっこむってのは結構理に適ってると思う

      特に市街戦だと装甲車もヘリも安易には投入出来ないけど、偵察ドローンはロストしても多く見て数百万の損害で人も死なず
      テロリストには効果的な対空砲火もECMも無いから尚更ホイホイと投入出来るし
      鹵獲されたところで技術的に特別新しいわけじゃないから何も痛くないし

      2
    • 匿名
    • 2021年 7月 13日

    芋虫のスウォーム移動でググるとめっちゃキモくて合理的な移動が見られる
    ドローンも進化すると一見奇妙だが理にかなった行動をし始めるんだろうな

    3
    • 匿名
    • 2021年 7月 14日

    戦闘? ホロコーストの間違いでしょ。

    • 匿名
    • 2021年 7月 14日

    >要するに今回の発表内容はスウォーム運用されたドローンが直接攻撃に参加したというものではなく、AIに制御されスウォーム形成した複数のドローンは光学センサーで指定された地域の地表を監視するメッシュ状のセンサー網を提供した

    小型のドローンに武器を積んでも大した攻撃力にならないと思われるので、やはりセンサー役に徹するのが理にかなっているのだろうなと。
    どう考えても砲兵で攻撃した方が火力もコスパもよいだろうし。

    1
      • 匿名
      • 2021年 7月 14日

      砲兵を戦場で維持するコスト
      機動力

      兵站軽視がこう言う発想を生む

      1
        • 匿名
        • 2021年 7月 14日

        どう考えてもドローンの方が兵站にとっては負担なんだよなぁ・・・
        3㎏の弾頭を使えるKagruが総重量10㎏前後で本体サイズ60㎝四方なわけで、兵站云々を考えないといけない戦場になるほど攻撃役としては使えなくなっていく
        同じ火力をデリバリーするなら迫撃砲の方が安く早く広範囲にできるわけで

        5
          • 匿名
          • 2021年 7月 14日

          飛んでいくのが砲弾だけの砲兵と、プラットフォーム自体も飛ばさないといけない航空機では、どう考えても質量あたりの効率では勝てないし、維持整備も遥かに複雑になりそうですしね。
          現代では誘導砲弾やロケットアシスト砲弾がありますし。

          砲兵の射程外であったり迅速さが求められる場合も、高度なセンサーとトン単位の積載量を持つ大型の航空機に攻撃を任せた方が効率がよいだろうし。

          2
    • 匿名
    • 2021年 7月 14日

    日本はスウォーム戦術を行えるドローン兵器を開発しているのでしょうか?

    また次期戦闘機には、スウォーム戦術を遂行できるドローンが搭載されますか?

    あと、日本は徘徊型兵器の開発をしているのでしょうか?

    詳しい人、教えてください。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 軍事的雑学

    ロシア製戦闘機を買うと損をする? SU-30SMを導入したベラルーシの後悔
  2. 軍事的雑学

    リチウムイオン電池採用艦!日本のそうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう」就役に世…
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 軍事的雑学

    着実にレベルアップを果たす日本の対潜哨戒機P-1、2020年度から「能力向上型」…
  5. 軍事的報道

    国産防衛装備品の海外輸出が実現!フィリピンが日本製警戒管制レーダー「J/FPS-…
PAGE TOP