終末段階下層で戦術弾道ミサイルを迎撃するのは高価で複雑な専用システムの領分だったが、イスラエルは「空対空ミサイルを流用したSPYDERシステムが顧客の要請に応えて戦術弾道ミサイルの迎撃能力を獲得した」と明かした。
参考:European nations eyeing Rafael-made short-range ballistic missile defense systems
参考:Rafael upgrades Spyder system to counter tactical ballistic missiles
SPYDERとDerby-ER弾で出来ることを「NASAMSとAIM-120弾もしくはAMRAAM-ER弾との組み合わせ」で出来ないはずがない
ロシア軍との戦いで空からの攻撃阻止に活躍する「NASAMS」や「IRIS-TSL」は専用の迎撃弾を必要としない点が最大の特徴で、AIM-120やIRIS-Tをそのまま流用できるため兵站にかかる負担(最近では専用弾並の改良弾(AMRAAM-ER弾やIRIS-TSLM弾/SLX弾)が登場しているため兵站上のメリットは霞んできている)が少ないが、防空システム専用に開発された「PAC-3MSE弾」や「PAC-2GEM+弾」ほどの作動範囲はなく戦術弾道ミサイルの迎撃も対応していない。

出典:Ereshkigal1/CC BY 3.0 SPYDER
海外市場で人気の高いイスラエルのラファエルが開発した「SPYDER(ジョージア、ベトナム、インド、シンガポール、チェコ共和国、フィリピン、幾つかの中東諸国が導入+ベルギー、ブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニアが導入を検討中)」もPython5とDerbyを流用した防空システムだが、ラファエルは「複数の顧客の緊急要請に応えて戦術弾道ミサイルを迎撃するためのアップグレードが行われた」と発表した。
この新機能は本体システムだけでなく「Derby-ERに対するハードとソフトの改良」で達成されたもので、ラファエルはSPYDERのアップグレードについて「最近の紛争で戦術弾道ミサイルの広範囲な使用から学んだ教訓を研究・分析した成果だ」と述べている。

出典:Lockheed Martin PAC-3MSE
アップグレードされたSPYDERとDerby-ER弾による迎撃範囲は恐らくミサイル防衛の終末段階下層だと思われるが、この範囲の迎撃を担当してきたパトリオットやSAMP/Tなどは高価で複雑な専用システムなので、これを安価なSPYDERで代替(Derby-ER弾がPAC-3MSE弾と同じ範囲をカバーするのは不可能だと思われる)できるなら海外市場での人気は更に高まるはずだ。
逆を言えばSPYDERとDerby-ER弾で出来ることを「NASAMSとAIM-120弾もしくはAMRAAM-ER弾との組み合わせで出来ないはずがない」ということになるため、戦術弾道ミサイルの迎撃技術は熟れて難易度が下がってきたのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Rafael SPYDER
このシステム、どうかウクライナに売ってください
顧客とか、最近の戦闘でとか言ってるし
ぜひぜひ
PAC3は本質的にキネティック弾で、それによって弾道ミサイルに対する破壊性を高めているので、近接信管で爆発時の破片による迎撃を旨とする空対空ミサイルの転用でPAC3と同程度の撃破率を達成するのは不可能だと思います。命中させるのと無効化するのは別の話なので。
これは安価な応急処置的なもので本格的な弾道弾迎撃システムではないと思います。
米軍やその同盟国がAIM-120弾を転用して同じようなことをするかといえばしないと思います。
自衛隊も西部方面隊の石垣島や与那国島にでも置いておくと、中国から飛来する弾道ミサイル対策にでもよいのかと
システム採用国から推察して高額なものではないだけに、ばらまくのには良いかと
しかしこの迎撃システムも陸自ならバッジシステムに組み込む必要もないから、調整に時間もかからないですしと思いました。
AAM-4系列使えればだいぶ違いそう。
この先の03式の改良で限定的な弾道ミサイル対処能力が付くという話なので、同等以上には進化してそう。
限定的と言っても日本の環境だと中距離弾道弾対応が必須だからかなり重要案件ではある
目標の現在位置に追従する従来型のSAM誘導方式では、超高速で接近するBMに有効範囲で会合するのが難しく撃破成功率が大幅に低下します。
こういった目標には、会合点を高精度に予測し最適軌道で衝突コースを飛翔する誘導技術が必要になります。ラファエル社HPによると、Derby-ERは終末誘導装置がこの機能を持っていると推測され、しかもソフトウェアの換装で容易にアップグレードが可能とされています。中間誘導にも同様の最適化機能が必要ですので、射撃統制装置にも改良が行われているのでしょう。
ちなみに、「03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上」事業では、「早期研究開発分」でソフトウェアの改良(JNAAM終末誘導装置の研究開発成果を流用)により短距離BM及びHGVへの対応能力を早期獲得するとしています。その後「新規研究開発分」でBADGEシステムに統合可能とし、より遠距離で中距離BMやHGVに対応可能とする計画です。
流石にスペック詐欺ってことは無いだろうが、現状はカバー範囲が限られるんだろうな。それでも高額な専用弾でなくとも終末段階で弾道ミサイルを迎撃できるようになったとは。技術の進歩ってスゲー。
普通に考えて。
AIM-120の飛翔速度は、M4とあるので、類似のSPYDERミサイルも同程度と思います。
一方、SRBMや極超音速ミサイルはM5で飛来すると思われるので、
今回記事のシステムは、飛来するミサイルの目標地域付近に居ないとですね。
飛翔速度の差から、飛来するミサイルを追跡したり、横合いから命中させるのは
無理かと思います。正対して狙わないとですね。
誘導方法がSARHだけでなく、中間を慣性誘導にして、
終末誘導にARTやパッシブIRを使ったりすれば命中するのでは。