中東アフリカ関連

イスラエル、多層防空システムBarak MXを売却することでモロッコと合意

イスラエルはアルジェリアと極度に関係が悪化しているモロッコに多層防空システム「Barak MX」を5億ドルで売却するに同意したと報じられている。

参考:IAI agrees $500m missile defense systems deal with Morocco

Barak MXはロシア製防空システムと同じように複数の防空レイヤーを1つのシステムで提供できる多層防空システム

フランス支配から独立した北アフリカのモロッコとアルジェリアは政治体制の相違(立憲君主制と共和国制)、モロッコが領有権を主張する西サハラの独立を掲げたポリサリオ戦線へのアルジェリア支援、モロッコの西サハラ領有承認と引き換えにパレスチナと対立関係にあるイスラエルと国交樹立した問題など両国関係には幾つもの火種が転がっており、遂にアルジェリアはモロッコが敵対的な行動を続けていることを理由に国交断絶を昨年8月に発表した。

出典:sukhoi

つまり両国関係は極度に悪化しているという意味でF-16Vの調達を進めているモロッコに対抗してアルジェリアはSu-57を14機導入(時期未定)すると発表、これに対抗するためモロッコ国王のムハンマド6世は2ヶ国間の安全保障分野に関する軍事協定(アンチドローンシステム/Skylock Domeや徘徊型UAV/ハロップの売却、両国が共同で徘徊型UAVを開発してモロッコ国内で製造する協定など)を結んだイスラエルに「モロッコへのF-35A輸出を実現させるため米国を説得してほしい」と依頼したと噂されており、防空システム「Barak-8/バラク-8」調達に関する協議も進展を見せていたがイスラエルはBarak MXの売却に同意したらしい。

イスラエル航空宇宙産業が開発した防空システム「Barak MX」はロシア製防空システムと同じように複数の防空レイヤーを1つのシステムで提供できるよう設計(多層防空システム)されており、カバーするエリア毎にBARAK MRAD(高度20km/範囲35km)、BARAK LRAD(高度20km/範囲70km)、BARAK ER(高度30km/範囲150km)を使い分けるため、有人航空機、無人航空機、ヘリコプター、巡航ミサイル、超低空を飛行してくるミサイルやドローン、滑空爆弾、弾道ミサイル(LRADとERの対応)を迎撃することが可能だ。

当初協議で導入候補に挙がっていたBarak-8は単一の防空レイヤーを提供するシステムなので、Barak MXの方が迎撃密度の高い防空システムと言える。

関連記事:パトリオットやFD-2000を保有するモロッコ、Barak-8調達をイスラエルと協議中

 

※アイキャッチ画像の出典:Israel Aerospace Industries

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コメント

    • トクメイキボウ=サン
    • 2022年 2月 15日

    中SAMの後継か高高度迎撃飛翔体の開発完了するまでの繋ぎにコレ買った方がいいかな?

    • 原点にして頂点
    • 2022年 2月 15日

    日本の防空システムなどには、日本が研究中のエレメントレベルDBFを導入したレーダーを搭載してほしいですね。

    革新的なエレメントレベルDBFを導入したレーダーを搭載すれば、極超音速兵器などへの対処能力も大幅に向上するでしょうし。

    レーダーは日本の得意な分野の中の一つですから、頑張ってほしいものです。

    • ななし
    • 2022年 2月 15日

    売却というよりは販売な気がするが…

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