中東アフリカ関連

アラブ首長国連邦、ラファールを導入してもF-35Aの導入は継続すると発表

アラブ首長国連邦はフランスからラファールを導入すると明かしたため米国製のF-35A導入を諦めたのではないかと噂されていたが、UAE空軍の司令官を務めるアラウィ少将は「ラファール導入はF-35Aを代替するものではない」と明かして注目を集めている。

参考:UAE defense ministry says French warplanes not a substitute for U.S. jets

バイデン大統領はアラブ首長国連邦とフランスの歴史的契約(170億ユーロ/約2.4兆円)を見て何を思っているのだろうか?

トランプ政権はイスラエルとの国交樹立に応じたアラブ首長国連邦(UAE)に見返りとしてF-35AやMQ-9の供給を約束、しかし中東政策の見直しを掲げたバイデン氏が大統領選挙で勝利してしまったためトランプ大統領は退任の1時間前に総額233.7億ドル(約2兆4,600億円)もの対外有償軍事援助をUAEと締結して義理を果たしただが、新しく大統領に就任したバイデン氏はこれを問題視して武器輸出プロセスを停止してしまった。

出典:Gage Skidmore / CC BY-SA 2.0

この武器輸出プロセスの停止は現在も続いているためUAEへのF-35AやMQ-9の売却は実現しておらず、バイデン政権は「ファーウェイとの関係を断ち切らなければF-35Aを失う可能性がある」と圧力を加えて中国と手を切るよう要求していたが、UAEはラファールの最新バージョンとなるF4仕様機(開発中で2025年頃にフランス空軍へ引き渡し予定)を80機導入する契約をフランスと締結したため「バイデン大統領の圧力に嫌気が差してF-35A導入を諦めたのではないか?」と噂されていた。

しかしUAE空軍の司令官を務めるアラウィ少将は4日「ラファール導入はミラージュ2000の後継機として以前から交渉が進められてた計画で、今回の契約は導入を予定しているF-35Aを代替するものではなくUAE空軍の能力を向上させるための補完的な契約だ」と説明してF-35A導入継続を主張している。

出典:Robert Sullivan / Public domain 戦闘機ラファール

これが事実ならロッキード・マーティンは一安心と言ったところが、武器輸出プロセスの停止を続ける限りF-35Aの輸出は止まったままなので「チェックメイト」の開発を進めているロシアがUAEの第5世代戦闘機需要(同国に対する政治的な影響力も)を奪っていくかもしれない。

果たしてバイデン大統領はアラブ首長国連邦とフランスの歴史的契約(170億ユーロ/約2.4兆円)を見て何を思っているのだろうか?

関連記事:拡大するフランスのラファール輸出、アラブ首長国連邦が新たに80機発注

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Alexander Cook AtlanticTrident21に参加中のラファール

海自が検討を進めている滞空型UAV、調達性を優先すればトルコ製やイスラエル製も候補に前のページ

フィンランドがF-35A採用をクリスマス前までに発表予定、F/A-18E/Fは今年だけで3連敗次のページ

関連記事

  1. 中東アフリカ関連

    エジプト、ブラジルから対地用の巡航ミサイル「AV-TM300」を調達か

    エジプトはブラジルから巡航ミサイル「AV-TM300」の調達に近づいて…

  2. 中東アフリカ関連

    エジプト軍需生産省の高官、EDEX2021で自走砲K9の現地製造契約を韓国と締結する

    中東系メディアのアル・ワタン/الوطن紙は21日、エジプトが韓国製自…

  3. 中東アフリカ関連

    各国の第4世代戦闘機を調達するエジプト空軍、今度はタイフーンを導入

    伊メディアのラ・レプブリカ紙は5月29日、イタリア政府がエジプトに対す…

  4. 中東アフリカ関連

    ハマスの奇襲攻撃を受けたイスラエル、前例のない代償を支払わせると約束

    イスラム原理主義組織のハマスが開始した軍事作戦は「ロケット弾と地上侵攻…

  5. 中東アフリカ関連

    イスラエル軍がガザ地区への限定的な地上侵攻を実施、本格侵攻は流動的

    イスラエル国防軍は26日「歩兵部隊と戦車によるガザ地区への限定的な地上…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 12月 06日

    >バイデン政権は「ファーウェイとの関係を断ち切らなければF-35Aを失う可能性がある」と圧力を加えて中国と手を切るよう要求していたが

    果たしてこのやり方が正しいのか。

    3
      • 匿名
      • 2021年 12月 06日

      そりゃ正しいだろ
      でないとF-35の機密が中国に渡る

      20
        • 匿名
        • 2021年 12月 06日

        ファーウェイが流すのか?

        1
          • 匿名
          • 2021年 12月 06日

          つ【国防動員法】

          中国政府が「えらこっちゃ」の一声で、全ての中国人、在中企業が政府の支配下に収まる法律らしい。
          在外中国人にも適用されるから、在外中国企業も適用されるでしょ。
          だからファーウェイ潰しが起きてるわけで。

          12
            • 匿名
            • 2021年 12月 06日

            なるほど

            1
            • 匿名
            • 2021年 12月 06日

            【国防動員法】は中国当局が実施の決定をするけど、徴用・補償や企業の管理等を実際に行うのは地方政府。
            なので、中国当局がファーウェイから情報を徴用しようとした場合、地方政府の予算や人員で徴用・補償に関する業務を行う。
            一地方政府の予算や人員で、グローバル企業相手に徴用・補償をできるとは思えないのよね(地方政府が嫌がって職務放棄しそう)。
            ファーウェイと中国当局の繋がりは不明だけど、【国防動員法】はそんな万能の法律ではない。

            1
              • 匿名
              • 2021年 12月 06日

              法の上に中国共産党があることをお忘れなく
              どんな文言が書いてあろうと大した意味はない

              12
                • 匿名
                • 2021年 12月 07日

                法律は中国当局(中国共産党)が考えているので、法律通りに動くと思いますが。
                【国防動員法】は中国当局が自ら動いて作業する内容ではありませんよ。

                1
      • 匿名
      • 2021年 12月 06日

      孤立を深めるだけだろうね

      1
    • イーグルクロウ
    • 2021年 12月 06日

    段々とラファールの売り上げと知名度が上がってきましたね。

    ラファールはグリペンの次に大好き!。

    8
    • 匿名
    • 2021年 12月 06日

    F35は確かに素晴らしい戦闘機やけど、バージョンアップの遅れや
    予想外の耐久劣化、維持費の乱高下、あとアメリカの腹積もりひとつで
    買えなくなる等、面倒臭い要素も盛り沢山やからな

    6
      • 匿名
      • 2021年 12月 06日

      維持費の乱高下いうても、最新の時間あたり飛行コストがF-35Cとスパホが同じレベルになってたりするし
      総じて順調に下落傾向だと思うけどね

      荒れてるように見えるのは、単にこれまでこんな熱心にコストまでトレースしたことがないからじゃ?

      11
    • 匿名
    • 2021年 12月 06日

    お金持ちはいいな

    5
    • 匿名
    • 2021年 12月 06日

    F-35を手に入れられなかったらF-16Vがまた売れてしまう可能性

    まあその辺も周辺国次第な気はするけど
    周辺国に第五世代機が普及するようなら、ファーウェイとさよならしてF-35を買うか、それまでの基盤を捨てでもロシアのやつを買うかしかなくなるだろうし

    1
      • 匿名
      • 2021年 12月 06日

      F-35を金銭的には買える国だと、F-16Vはあまりにも物足りない性能だろう
      それだったら、F-16よりも高額だが性能で勝るラファールやF-15EX、F/A-18EFを買うと思う

      1
    • 匿名
    • 2021年 12月 06日

    あれ?ファーウェイが理由だったか?

    イエメンへの人道的な面が理由だったような?

    6
    • 匿名
    • 2021年 12月 06日

    オイルマネーで自国産開発を進めるというのは、どうなんだろう。オフセットの話もないのでやる気ないのか。

      • 匿名
      • 2021年 12月 06日

      最新鋭機作れるような技術者のヘッドハンティングは無理だろ
      日本ぐらいじゃないの?そういう技術者をロックできないのって

    • 匿名
    • 2021年 12月 06日

    block4が実装されたなら、block3の販売のハードルを下げていいだろって思う

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  4. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP