軍事的雑学

米国最大の造船所が不正、バージニア級攻撃型原潜の性能は偽装された数値?

米海軍のバージニア級攻撃型原子力潜水艦を建造した、ハンティントン・インガルス・インダストリーズ社のエンジニアは、同社が建造したバージニア級原潜のステルスコーティングについて、適切な処理を行っていないにも関わらず、書類を偽造し海軍に提出していると告発した。

参考:Whistleblower accuses largest US military shipbuilder of putting ‘American lives at risk’ by falsifying tests on submarine stealth coating

バージニア級攻撃型原子力潜水艦のステルス性能は偽装されたもの?

ハンティントン・インガルス・インダストリーズ社のニューポート・ニューズ造船所で働く、シニアエンジニアのアリ・ローレンス氏は、同社が建造したバージニア級攻撃型原子力潜水艦(以降、バージニア級原潜)に施すステルスコーティング(所謂、無反響タイルの接着や防音処理のこと)は、特殊な接着コーティングを扱うため資格を持った技術者が処理する必要があるにも関わらず、無資格の技術者が不適切な方法で処理していると告発した。

バージニア級原潜は就役以来、航行中にステルスコーティングが剥がれ落ちる問題に悩まされてきた。

ロサンゼルス級原潜でも、航行中にステルスコーティングが剥がれ落ちる事はあったが、ロサンゼルス級原潜の場合は数枚が剥がれ落ちる程度だったのに、バージニア級原潜では大きな塊でステルスコーティングが剥がれ落ち、ひどい場合には船体のあちこちでステルスコーティングが大規模に剥がれ落ちたこともあると言う。

潜水艦の船体は、水圧の変化によって膨張と縮小を繰り返すため、ある意味、ステルスコーティングが剥がれ落ちるのは仕方の無い事かもしれない。しかし、バージニア級原潜のステルスコーティングは、ロサンゼルス級原潜と比較しても「あまりにも脆すぎる」ため、潜水艦のステルス性能(アクティブソナーが発信する音波の吸収性や静粛性)に大きな影響を及ぼすという意味だ。

ステルスコーティングが剥がれ落ちた船体は、不規則な段差を生み、不要なノイズを発生させる原因となり、潜水艦の存在を隠すのではなく目立たせてしまうので、バージニア級原潜にとっては致命的な欠陥だ。

海軍は、この問題の改善を要求したが、同社はどんな対策を講じること無く、試験結果を偽造した書類を海軍に提出することで問題の隠蔽を図っていたとローレンス氏は指摘した。

ただし、バージニア級原潜を苦しめている問題はこれだけではない。

出典:Public Domain 潜水艦の垂直発射管 ※この画像はロサンゼルス級潜水艦のもの

バージニア級原潜に搭載されている12基の垂直発射管の溶接部分に問題が見つかり、米国の造船業界の技術力、品質管理のレベルが低下していることを示していると報じられていた。

完成したにも関わらず、電磁式カタパルトや、兵器用エレベーターの不具合で空母として機能せず、さらに動力部にも欠陥が見つかり、一度も任務に就くことなくドックで1年を過ごし、最近になって、やっと海へ戻ってきた空母「ジェラルド・R・フォード」を建造したのも、今回告発を受けたハンティントン・インガルス・インダストリーズ社のニューポート・ニューズ造船所だ。

このニューポート・ニューズ造船所は、唯一、米海軍の原子力空母を建造でき、バージニア級原潜の半分を建造している造船所で、もっと言うなら米海軍が建造する艦艇の大半を建造しているもっとも重要な造船所だ。

そのためバージニア級原潜のステルスコーティングに関する不適切な処理は、もしかすると、もっと多くの艦艇でも不適切な処理が行われていたかもしれないと言う疑惑に発展する可能性がある。

この告発者は、この問題についてハンティントン・インガルス・インダストリーズ社から「沈黙」するよう圧力を受けたとも訴えており、もし告発内容が真実だと認定されれば同社は回復不可能なダメージを負うことになるかもしれない。

しかし、同社の代わりとなる造船企業は米国国内にはなく、米海軍にとっても頭の痛い問題になることだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Chief Mass Communication Specialist Patrick Dille/Released

 

ドイツに残された唯一の選択肢?トーネード後継機として間に合うのは「F/A-18E/F」だけ前のページ

F-35B運用能力が向上?ウェルドックを取り戻した「アメリカ級強襲揚陸艦」の実力次のページ

関連記事

  1. 軍事的雑学

    方向性を示せるか?日本、次期戦闘機「F-3」の要求性能が定まらない理由

    今年6月、次期戦闘機「F-3」の要求性能が、まとまっていないため開発費…

  2. 軍事的雑学

    韓国にとって不都合? 台湾、F-16Vメンテナンスセンター設立支援を米国に要請

    台湾の漢翔航空工業(漢翔航空工業股份有限公司:AIDC)は、同国にアジ…

  3. 軍事的雑学

    軍事的雑学|伝説のステルス攻撃機!退役したはずの「F-117」が密かに実戦復帰してた?

    今回は伝説のステルス攻撃機「F-117」ナイトホークのお話です。F-1…

  4. 軍事的雑学

    軍事的雑学|90式戦車、89式装甲戦闘車も実弾射撃!陸自最強第7師団が米陸軍と共同訓練!

    陸上自衛隊で唯一の機甲師団である「第7師団」が、米陸軍と共同訓練を行っ…

  5. 軍事的雑学

    韓国製訓練機「T-50」の天敵、ボーイング「T-X」の欧州参戦で大ピンチ?

    米空軍の次期高等訓練機「T-K」受注に失敗し、米国上陸を果たせなかった…

  6. 軍事的雑学

    日本は良くて韓国はダメ?韓国、固体燃料使用を禁じた「韓米ミサイル指針」改正を要求

    韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、韓国の民間ロケットが「固体燃料…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 10月 07日

    ニューポートニューズはグラマンと合併していた時期もあるので、どこか品質管理のちゃんとしたところが買収して立て直すシナリオしかないですね。
    問題はそういう企業があるのか、というところですが、寡占化が進んだ今の状況では他業種から引っ張ってくるしかないと思われます。
    日本の造船企業も2隻1000億で受注して2000億の赤字を出したMHI筆頭にいろいろやらかしてるので、品質管理面でアメリカのフォローができるとは思えないです

      • 匿名
      • 2019年 10月 07日

      筆頭にとは言うけど三菱以外ってなんかやらかしてたっけ?
      三菱以外は技術的な問題より官僚に振り回されてるだけな気がするぞ

    • 匿名
    • 2019年 10月 07日

    三菱は官との癒着体質に慣れきってるから、民需や国際競争に弱い
    だから武器輸出もほぼ不成立
    これは国の体質でもあるんだが

      • 匿名
      • 2019年 12月 11日

      癒着も何も、日本の武器輸出は民間企業が勝手にできんから、政治家と官僚に丸投げ以外にありえんだろ。

    • 匿名
    • 2019年 10月 07日

    根本的に米国製造業ダメすぎでは?
    そりゃBIG3が日本自動車会社に駆逐されますわ

      • 匿名
      • 2019年 10月 07日

      日本は航空機製造でアメリカに足元にも及ばないけどな。過度な一般化は笑えるだけ。

        • 匿名
        • 2019年 10月 08日

        その航空機製造のボーイング今ボロボロなんですけど。
        エアバスの独占になると困るので踏ん張って欲しいですね。

        • 匿名
        • 2019年 10月 08日

        今の所、ボーイングの大型機でまともに動いて商売になってるのって787ぐらいでは
        KC-46は給油機としての仕事は出来ず輸送機としてしか使えないわ、737MAXは飛行禁止中だし、777-Xは納期延期、797は姿が見えず757更新需要をエアバスにかっさらわれてるし
        おまけに戦闘機事業はほとんど新規受注が無く先が見えていて、なんとか新型練習機T-7Aで小型機部門を生き残らせられる程度の有様

        エアバスもA400MとA380でコケはしたものの、主力の小型~大型の旅客機は好調で企業全体としては問題無いでしょう

    • 匿名
    • 2019年 10月 07日

    アメリカの工業力も低下しているのですね。
    アメリカの経済は、一部、不平等条約で日本の富を掠めとることで成り立っている部分があります。

    日本は、アメリカの核の傘のもと、発展できた側面があるので、ある程度はしょうがないとも思えますが。

    また、日本は少子化と教育機関への冷遇のため、技術力が低下すれば、経済力は低下し、国際競争力はなくなります。

    日米ともども、自国に適正な投資ができなければ、共倒れしてしまうのではないかと心配するこの頃です。

    • 匿名
    • 2019年 10月 07日

    おいおい、日米英独軒並みかい

    いったいどうしちまったんだ

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 軍事的雑学

    ロシア製戦闘機を買うと損をする? SU-30SMを導入したベラルーシの後悔
  3. 軍事的雑学

    着実にレベルアップを果たす日本の対潜哨戒機P-1、2020年度から「能力向上型」…
  4. 軍事的雑学

    ようやく本領発揮、世界最強の戦闘機F-22Aが「神の視点」を味方に提供
  5. 軍事的報道

    国産防衛装備品の海外輸出が実現!フィリピンが日本製警戒管制レーダー「J/FPS-…
PAGE TOP