統合打撃戦闘機計画(JSF)にX-32のテストパイロットとして参加した元海軍中佐のイエーツ氏が語る「X-35にX-32が負けた理由」が非常に興味深い。
参考:X-32’s Test Pilot On Why It Lost To What Became The F-35
もしボーイングがブラックプログラムから流用したデザインではなく最終設計案に近いデザイン案でX-35と勝負していたら・・・
統合打撃戦闘機計画とはF-16、A-10、F/A-18、AV-8B、シーハリアー、CF-18といった戦闘機を同一デザインの新型機で更新するというビッグプロジェクトで、ロッキード・マーティン、ボーイング、マクドネル・ダグラスが名乗りを挙げたが概念実証に進めたのはロッキード・マーティンとボーイングだけで、両社が提供したX-35とX-32をテストして実機の開発契約を授与されたのはX-35を提供したロッキード・マーティンで現在のF-35が実用化された。
なぜX-35にX-32が敗れたのかについては諸説あるが、ロッキード・マーティンの概念実証機(リフトファン方式)が無改造で垂直離陸→超音速飛行→垂直着陸をやってのけたのに対し、ボーイングが提供した概念実証機(直接排気方式)はSTOVLモードで運用する前にメンテナンスクルーが機体の一部に手を加える必要があり、高温の排気を再びエンジンが吸い込み出力低下が低下してオーバーヒートを起こす問題から(STOVLテスト中の)安全マージンを確保するため標高の低いパタクセント・リバー基地に移動しなければならず、この結果がX-35とX-32の運命を決定づけたとも言われている。
しかしイエーツ氏は上記の問題に加えて「ボーイングが開発コストを節約するため概念実証機の機体デザインにブラックプログラム(極秘計画)で開発されたコンセプトを流用したが不味かった」と明かしており、概念実証機は量産機に近いデザインである必要はなく通常の離着陸、模擬空母への着艦アプローチ、短距離離陸・垂直離陸ができることだけが求められいたため、ボーイングは一先ず手持ちのステルスデザインを流用して概念実証に挑み設計をブラッシュアップした最終設計案(一般的な主翼と水平尾翼で構成されたもの)を提出するつもりだったらしい。
この最終設計案はX-32の不格好なエアインテークのデザインも変更されロシアのチェックメイトに近いものになるはずだったのだが、ロッキード・マーティンが概念実証に提供したX-35のデザインは最終設計案に近く、この段階でJSFプログラム・オフィスは「ボーイングの設計を支持するのは難しいと感じ始めた」とイエーツ氏は証言している。
勿論、ボーイングが採用した直接排気方式の問題があるので最初から最終設計案に近い機体デザインで概念実証に挑んで現在の結果がひっくり返ったかは謎だが、イエーツ氏は「美しいデザインと性能は一致する。X-35やF-35は高速飛行や高い機動性を連想させ空軍や海軍が好みそうなデザインで、コストを節約するためブラックプログラムのデザインを流用したボーイングはこの点を理解していなかったと思う」と語っている。
興味深いのは「もしX-35ではなくX-32が採用されていたらどうなっていたか?」という質問についてイエーツ氏は「ロッキード・マーティンのスカンク・ワークスは先進的プログラムの開発能力に多くの能力を持っているが戦闘機の大量生産や維持に関するノウハウや経験は浅く、X-32が採用されていれば強固な製造能力を示していただろう」と答えた点で、X-32の最終設計案は借り物のコンセプトに依存した概念実証機とは異なりJSFで要求されていた性能要件を十分満たしていただろうと付け加えた。
この件を取り上げた米メディアのTheDriveは「もしボーイングがブラックプログラムから流用したデザインではなく最終設計案に近いデザイン案でX-35と勝負していたらJSFのコンペティションは異なる展開を迎えていたかのしれない」と言っており、現実世界にifはないもののF-32を凋落する前のボーイングが量産していればF-35が直面する問題を回避できていた可能性もあったのかもしれない。
※アイキャッチ画像の出典:Public Domain X-32
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ダセエから
もしボーイングだったら、製造能力と一緒に品質問題もおまけで付いてきただろうな。
西側の最新鋭戦闘機の内部から、ボルトやら工具やらが出てきたら、マジで笑えないわ。
忌み子すぎてATFに続きJSFもロッキード・マーチンが勝っちゃったねぇ
ペンタゴンもYF-23選んどきゃよかったかなって思ったやつは1人位いると思うわ
美しいデザインと性能は一致する
多分世界中の人がカッコ悪いからコンペに負けたと思ってるよ
欧米では工業製品開発に、デザイナーが当初から参加する話は聞きますね、
兵器にも美的感覚が要求されるのは、いろいろな意味で必要なんでしょう
やはり次期戦闘機開発チームに河森正治を…
アクティブ・ステルスが、形状ステルスやRAMを凌駕する時代になれば、デザイン的にはアリかも?
機能美という言葉もあるにはあるんですが、X-32からそれが感じられるかと言われたらちょっとねえ・・・
むしろマクダネル・ダグラス案の実機が見たかった(エースコンバット3の愛機が、マクダネル・ダグラス案に近いX-36ゲイムだったので)
性能がいいのは大抵かっこいいよね
作り慣れてて得意分野だと洗練された外見になることが多いし
バッカニアとか、優れた機体かもしれないけど、格好いいとは思えないです。
F-4も、残念ですが、格好はちょっと。
異論は認めますが。
ラファールとタイフーンを比べてもそれは言えてる。
優れたものを美しいと感じる直観を、人間は進化の中で発達させたのか。
同じ理由で、よく言われるようにYF-23の方が性能面ではYF-22を上回っていたのかも知れない。
ただ、でっぷりズングリのF-35が美しいかというとそれもないと思う。空飛ぶアンコウよりはマシだっただけで。
YF-23も真上や真下から見ると、モモンガみたいで、愛嬌はあるけど美しいとは言い難い感じ。
真っ正面も、50年代のアメ車な印象で、好みからは外れる。
それ以外は、仰る様に美しいとは思うけど。
YF-23は、外見も何気に癖が強いと思います
カッコは兎も角、STOVL型はギミックがハリアー系とあまり変わらないから採用はなかった気がする。
通常型だけならそこそこ良かったかも知れないけど。
「ロッキード・マーティンのスカンク・ワークスは先進的プログラムの開発能力に多くの能力を持っているが戦闘機の大量生産や維持に関するノウハウや経験は浅く、X-32が採用されていれば強固な製造能力を示していただろう」
ボーイングの生産や維持に関するノウハウや経験?
戦闘機じゃないけどB-737MAXやKC-46AとAH-64どれも生産面でトラブルあったような・・・
JSF選定の頃はまだボーイングがおかしくなる前だからね
JSFの失注からボーイングの凋落が始まったかも
大口の受注が取れずに先行き怪しくなってくると、経営陣が焦りだして
いらんリストラとかやりだして、おかしくなった大企業は幾らでもあるから
何事も手抜きは駄目って事やね。
最初からコレが量産されるって気持ちで創らないと。
「最初から最終案で出せば結果は変わってたかもしれないのに。」って言われるのはだせぇわ。
YA-9と10も、YA-10の力の入れぐらいに比べたら、YA-9は手抜きにしか見えなかったり。
X-32に携わったファントムワークスは現在、海軍のNGAD計画(ホーネットを置き換える第6世代機)に関わっているらしいけど、今度こそ戦闘機の選定に受かるだろうか。
最初見た時からこのデザインはないなと思ってましたね。
特に航空機ってある程度のカッコ良さは必要だと思う。
ところでコンセプト案だけだったけど、JSF審査に破れた旧マクドネル・ダグラス社のJSF案が凄いかっこ良かった。
テンペストをもっとカッコ良くした感じ。
まあ好みは人それぞれだからね
個人的には、単発小型化したF-3﹙次期戦闘機コンセプト図﹚の印象です >マクドネル・ダグラス案
ラムダ翼とV尾翼からの連想なので、どちらでも良いのでしょうが、
テンペストは好みに合わないので、より好感を持っているF-3を連想したのだと思います。
みんなボロカスに言うなぁ……。個人的にはX-32好きなんだけど。
(少数派なのは解ってるしF-35をけなしたいわけでもないので念のため
このエントリに掲載されている写真を見ても、1,2枚目は「これはないわぁ」と思うけど、3枚目はけっこうイケていて、このアングルからの写真を押し出すべきだったなぁ、と思ったり。
三枚目の「X-32の最終設計デザイン」は、概念実証機ではなく次のステージで予定されてたものの様なので、「幻の~」の類いなのでは?
写真というよりはCGポイ感じだし。
がま口に目が行きかちだけど、主翼付け根から先端に向けて下がる曲線は航空機でも有数の美しさに見える。
インテークが見えない角度がらだと以外ときれいでかっこいい飛行機だと思う。
サムネのX-32 蚕蛾っぽくて好きです。かわいい寄り
要約
「見た目がダサいから負けた」
戦闘機って名前も厨二っぽいのが多いし、割と見た目重視なんだと思うよ
やっぱり、一目でカッケーじゃないと士気が下がると思う
命預けるんだし
戦車も似たようなもんだろう
だって兵器は大人のおもちゃと言えなくもないから(笑)あ、変な意味じゃなくてな、
スターウォーズ製作のときは、メカニカルスタッフが宇宙船デザインについてNASAから助言を仰いだというが、
逆に今の技術者は、まずガンダムやらマクロスのイメージを以て現実の兵器をデザインしてるかもしれない、
世界は相互に作用しながら進むから
兵器じゃ無いですが、自動車業界では90年代からガンダムのイメージの影響を受けたフロントマスクを持つ車が結構出ていますよ。
98年に出た三菱ランサーエボリューションⅤが「ガンダム顔」と言われ出した辺りから、その手の車が増えて来て、今では外車にも「ガンダム顔」と言えそうな車があります(90年代後半から日本人デザイナーが海外自動車メーカーのデザインを手掛けるケースが増えているので、その影響かも)。
そう言えば、以前日産が販売していたSUV・デュアリスのCMをマクロスのバルキリーで有名な河森正治さんが手掛けていましたね。デュアリスがパワードスーツに変形すると言うCGと実写の合成作品でした。
F-32のデザイン案は見てみたい
自分はF35言うほどかっこいいとは思わないですし、X32もアングルによってはよく見えると思います。採用されたら西側でまあネタになったのは避けられないと思いますが、3軍のうちのどれかにしてもJSFの当初目的が失敗したし良かったかも国策救済的に。
この話は何故両方を採用しなかったに尽きるけどどっちかで一つを選ぶならFVLもJSFの二の舞になるんじゃないか?
これだけ膨大な需要を一社だけで抱え込ませる必要ないしF23のノースロップしかりF32のボーイングしかりステルス戦闘機では撤退せざるを得ず国益上どうなんって感じだし
あまりに調達規模が大きすぎで配備スケジュールの遅延と諸経費肥大化は現にF35でこんだけ問題になってるしFVLでは両案採用で使い分けすべきに思うね
136没といい決め打ちやり過ぎた気がしますねJSF。出来た機体のの性能はともかく計画としてはODINといいベストセラーに相応しい物ではないと思う
”格好が…”、というのは冗談としても、X-35はF-35になるときに大きな変更がない設計だったが、X-32からF-32になるときに大幅な設計変更を明示していたから、なんのためにYナンバーを飛ばすためにXナンバーで金をかけたのか?という話になるわな。
もっともYナンバーすっ飛ばしたのがF-35の現状ともいえるけどな。
JSF計画自体がかなり方向性迷子の産物だし、仮にソフトウェアトラブルがなくても文句なしの傑作機とはならなかったろうなぁ。
VTOL機としては驚嘆に値する性能ではあるんだけど。
ぶっちゃけF-35とかのデザインがないって言う奴、ステルス性(爆弾ミサイル内蔵と4世代機と比べてかなり多い燃料搭載)、戦闘に問題ないレベルの飛行性能、限りなく統合を要求される機体と言う条件で全てを満足するかっこいいデザインしてみろよ。
デザインの為に機体全長全幅の大幅拡大、エンジンに無理させるとか、機内搭載減らす、飛行性能も妥協、VSTOL機能低下とかは無しだからな。こんな無茶な要求をしてよくまとめられたわと思うわ。