ボンバルディアはカナダ空軍の次期哨戒機(CMMAプログラム)に向けに「Global 6500ベースの海上哨戒機」を発表、この機体はジェネラル・ダイナミクスと共同で開発する予定で、ボーイングが提案中のP-8Aと競合することになる。
参考:Bombardier Defense and General Dynamics Mission Systems–Canada Are Collaborating to Deliver Canada’s Multi-Mission Aircraft
参考:Bombardier partners with General Dynamics on platform that meets Canada’s Multi-Mission Aircraft requirements
参考:Rivals Bombardier, General Dynamics teaming up on bid to replace Canadian military’s surveillance aircraft
現地メディアはボンバルディアの提案が魅力的であると認めつつ「過去の教訓も活かすべきだ」と指摘してiいる
カナダ空軍はP-3オリオンにS-3バイキングのアビオニクスを統合した海上哨戒機「CP-140」の後継機(Canadian Multi-Mission Aircraft)プログラムを2021年に発表、政府はCMMAプログラムに50億加ドル(最新の見積もりでは90億加ドル)を拠出する予定で、ボーイングは2022年2月に発行された情報提供依頼書(RFI)に対応して「P-8Aを提案する」と表明、英国のジェーンズも「エアバスがA319MPA、ボンバルディアがGlobal Expressベースの独自モデル、サーブがSwordfish MPA、川崎がP-1を提案してくるかもしれない」と報じていた。
ボンバルディアは正式に「Global 6500ベースの海上哨戒機を提案する」と表明していたが、カナダ政府は「P-8AがCMMAプログラムの要求要件を適合する唯一の航空機で、この選択肢を詳細に検討するため対外有償軍事援助(FMS)を通じて正式な概要と提案を要求した」と発表、これは事実上「競争入札をスキップしてボーイングと随意契約を締結する」という意味になる。
これに反対するボンバルディアは「産業界にとってCMMAプログラムは海上哨戒機の製造や運用に関与できるチャンスで、機種を選定する上で性能も重要な要素の一つだが、カナダにとっては雇用や持続可能性が最も重要な要素だ。この件について再考するようアナンド国防相に要請中で返答を待っているところだ」と訴えていた。
公共事業・調達省は「P-8Aだけが空軍のニーズを満たす選択肢だと信じているが、米国への要請はP-8Aの購入を約束したものではなく同機を検討するためのもので、調達機種は能力、可用性、コスト、産業界へのメリットに基づいて決定される」と回答したものの、P-8Aの生産ラインは2025年に閉鎖される可能性があるため「P-8Aしか要求要件に適合しない」と理由で国内手続きを強行突破しようとしている可能性が高く、この意図は国内メディアに見透かされているのでトルドー政権にとっては具合が悪い。
保守党の前政権はCF-18A/Bの後継機について「F-35プログラムに出資している」という理由で競争入札をスキップ=F-35A採用を決めたものの、この手続きを問題視した自由党は「F-35A導入撤回」を掲げて選挙に勝利したため、前政権と同じことをやっていると批判されればトルドー政権は顔を顰めるしかめるしかないのだが、ボンバルディアは競争入札が実施されると信じてGlobal 6500ベースの海上哨戒機を発表した。
ボンバルディアとジェネラル・ダイナミクスのカナダ法人(General Dynamics Mission Systems Canada)が発表したGlobal 6500ベースの海上哨戒機は機体下部にウェポンベイが増設され、主翼下にも武器を携行するためのパイロンが設けられており、現地メディアは「この機体を開発するには大幅な改造を必要とするため、この海上哨戒機はP-8Aよりも高価になるかもしれない」と指摘しているもののボンバルディアは強気だ。
欧米諸国を含む多くの国では防衛産業界を「賃金水準が高い雇用を生み出す産業の一つ」と認識しており、この分野への投資では必ずと言っていいほど「雇用の創出」を重視するため、ボンバルディアは「我々の提案に対する投資は国内労働力への投資であり、これは単なる経済的なオフセットとは違う。この機体はカナダで賃金を受け取る労働者が作るため、政府は当社を通じて国内労働力を刺激することができる」と主張しており、Global 6500ベースの海上哨戒機はP-8Aの強力なライバルになるかもしれない。
但し、カナダは対潜ヘリ「CH-124(CH-3のカナダ海軍バージョン)」の後継機調達で国内雇用、産業界のメリット、独自の要求要件を重視してH-92ベースのカスタムバージョン「CH-148」を選択、様々な要求要件に応じて改良を加えたため何度も遅延が発生し、最終的に6年遅れで引き渡しが開始されたものの、CH-148は他の同盟国が採用していないため海外派遣時の保守で苦労することになり、当時の国防相はCH-148を「カナダ史上最悪の調達だった」と批判している。
さらにCC-115とC-130Hの後継機として調達中のCC-295(C-295Wをベースにしたカナダ海軍向けの捜索救難機)も大幅な設計の変更と機能の追加を要求したため、初期作戦能力の宣言が6年遅れの2025年~2026年になる見込みで、現地メディアはボンバルディアの提案が魅力的であると認めつつ「過去の教訓も活かすべきだ」と指摘しているのが興味深い。
関連記事:カナダが競争入札をスキップしてP-8A調達を示唆、要求要件に適合する唯一の機種
関連記事:ボーイングがカナダ空軍の次期海上哨戒機にP-8Aを提案、日本参戦の可能性も
※アイキャッチ画像の出典:Bombardier
無人機で日本と協力してP-1のラ国で搭載機器を自国でカスタムが多分性能面では一番無難なんじゃあねぇーかなっていう感想
米軍に相乗りし続けるならその限りでないとしても(ソナーとか自動でラックに入れられないとか運用面で比較で不便なところはちらほらと聞くけど)
全く売れないのに性能は優れてる〜っても虚しいなあ
まぁ売れる売れないはともかく、シードラゴン2023演習で優勝してるんで性能はありますよ
搭載機器はさておき、機体については唯一の専用設計機なんで「優れてる(というか用途に最適)」ってのはそれなりに説得力があると思いますけどね。
ただ自前でカスタムが必要な時点で「無難」とは程遠いと思うけど。
私も機体として優れているという事に疑問は持ってないんですけどねー
各国の国内産業への貢献とか政治的な思惑とか、そもそも搭載機器から兵装はどうするの問題とか、性能以前の複合的な理由があるのは理解してますが、現状当て馬にすらなれてないですからなあ
P-1の場合は、ベース機体の無い日本独自設計の機体で、さらに国産エンジンの4発機という時点で海外で欲しい国はほとんどないのではと思います。
メンテナンスや部品供給等の運用面での懸念が大きいですからね。
これは逆に言うとP-1は海上自衛隊の要求を元に最適化された機体であり、エンジンは日本での部品調達やメンテナンスに苦労しない日本にとっては最良の哨戒機であると思います。
P-1設計してた頃なんて海外輸出なんて考えてなかったですからね。まぁこれからでしょ。
性能の問題とそれ以外の問題は独立してるので「性能【以前】の複合的な理由」と勝手に前後関係を決められるのは違和感がありますね。
どんなに国と軍が後押しして導入コストが半分だったとしても必要性能を満たしてないモノは要らんでしょう。
要求性能の8割だから2割引でなら買ってやるよ、なんて頭のおかしい計算はまともな軍では通用しないでしょう。
そうですね
NZでもドイツでもコンペで正式な検討候補に残れなかったと記憶してます
国内で思われてる程国外では評価されてないのでしょうね
がんばっているのですが…。
残念ですね。
北極海の氷の下の原潜を見つけるにはMADが必要だが米海軍仕様のP-8にはMADは装備されていない。インド軍仕様の様にMADを着けるのかな
P-8って高空から対潜戦をやる前提だから737がベースでよかったのに、MAD載せて低空運用ってどうなのかという気もしましたが。
床下に貨物室設置すら想定していないビジネスジェットにウエポンベイとか、魔改造っぷりがすごいですね。
ポンチ絵は格好いいけどそんなに武装を積めるかな
短魚雷×4、最新ハープン×2、航空爆雷×2で3tは超えるだろうし
爆弾倉やラック、各部の補強に対潜のセンサーやアンテナ類も重いしね
素直にP8が安全だと思うな、それか海上哨戒に割り切って用途廃止予定のU125Aを買って欲しい
格安で使ってもらって
良ければ そこから後は正価で
そういう食い込み方はだめか P1
SAABがグリペンで行ったリース方式の短期間版とか
購入に至らなくて海自で引き取るシステムですと野党やマスコミが喜ぶネタになりそうですが