北米/南米関連

JF-17対MiG-35、中国とロシアがアルゼンチンの戦闘機需要を巡って激突か

アルゼンチンは老朽化した攻撃機A-4ARの後継機としてロシアにMiG-35の調達を打診したが、中国もJF-17の売り込みを行っており南米で中国とロシアの戦闘機が競合するかもしれない。

参考:Chinese delegation in Argentina to offer the Air Force, the supersonic aircraft JF-17

FA-50導入が御破算になったアルゼンチンのA-4AR後継機を巡って中国とロシアが競合か

アルゼンチンは老朽化した攻撃機「A-4AR ファイティングホーク」を更新するため韓国航空宇宙産業が開発した軽戦闘攻撃機「FA-50 ファイティングイーグル」を8機~10機程度調達することを予定していたが、同機に採用されていたマーチンベーカー製の射出座席などが英国の武器禁輸措置(フォークランド紛争以降に英国がアルゼンチンに課した禁輸措置は現在も有効)に抵触するため輸出許可が得られなかった。

出典:KAI / CC BY 2.0 T-50高等訓練機

この問題についてアルゼンチンのロッシ国防相は「帝国的な傲慢さの現れだ」と英国を非難、韓国側は「今後も輸出許可問題を解決するための努力を行う」と述べたがアルゼンチンはA-4ARの後継機探しを既に再開しておりロシアに対してMiG-35導入(単座10機+複座2機)に関する見積もり依頼を正式に要求したと報じられている。

さらに中国の航空関連製品の輸出窓口として機能する中国国立航空技術輸出入公社(CATIC)のトップがアルゼンチンを訪れ、A-4ARの後継機にパキスタンと共同開発した戦闘機JF-17を提案しているらしい。

出典:Shimin Gu / CC BY-SA 4.0 パキスタン空軍のJF-17

JF-17(中国名:FC-1)はロシアからの技術協力にも助けられながらパキスタンとの共同開発したシングルエンジンの第4世代戦闘機だが、幾つもの改良を経て完成した最新のJF-17 Block3には中国軍向けのJ-20やJ-11Bに使用された技術が多数取り入れられ西側の第4.5世代機と同等の能力を備えていると言われている。

J-20に採用されているものよりも大きい「ホログラフィック広角ヘッドアップディスプレイ」や統合型の大型コックピットディスプレイ、J-10やJ-16に搭載している赤外線捜索追尾システム(IRST)やミサイル警報装置、新しく開発されたAESAレーダーやロシア製「RD-93」よりも推力が向上した国産エンジンを搭載しており、同機の開発関係者によればBlock3はパイロットの状況認識が大きく改善され戦闘効率が格段に向上しているらしい。

出典:Alert5 / CC BY-SA 4.0 エアショー中国2016でのJ-20

しかもBlock3は民生技術を積極的に採用したことでコストの上昇を抑えることにも成功、同機の輸出価格は3,200万ドル/約34億円(Block2は2,500万ドル)程度なので最も安価な第4.5世代戦闘機(次点は4,240万ドルのテジャスMK.1Aと4,500万ドルのMiG-35)と言える。

ただMiG-35はRD-33×2基が発生させる推力のおかげでシングルエンジンのJF-17よりも加速力やペイロードといった基本性能が優れており、調達コスト以外の部分で両機を比較するとJF-17ではなくMiG-35に軍配が上がってもおかしくはない。

出典:Carlos Menendez San Juan / CC BY-SA 2.0 MiG-35

果たしてアルゼンチンは安価なJF-17を選択するのだろうか?それとも戦闘機としての基本性能がJF-17を上回るMiG-35を選択するのだろうか?

関連記事:韓国、武器禁輸措置に引っ掛りアルゼンチンへのFA-50輸出が頓挫
関連記事:アルゼンチン空軍、製造から50年が経つ攻撃機「A-4」の継続使用を決断

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※アイキャッチ画像の出典:Aldo Bidini / GFDL 1.2

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    長らくミラージュシリーズを使ってきたんだし、本来ならばフランス機でも導入するべきなのだろうが、フォークランド以降デフォルト常習犯の貧乏国家じゃあ、中露の安い機体しか買えんかー

    15
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      アルゼンチンが何度も何度もデフォルトするお陰で感覚が麻痺してたけど、デフォルトって本来滅茶苦茶ヤベー事態だよなぁ…

      36
        • 匿名
        • 2021年 5月 10日

        アルゼンチンは食料強いから通貨の信用崩壊しても国内だけで最低限食ってくことはできるんで
        自給率の低い食料輸入国がやったら比喩でなく死にます。良い例がベネズエラ

        9
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      その前に、英国絡みの部品を使っていると、アウト。
      実は、両者にも英国絡みの部品が混じっていないかな?

      13
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    よし、今がチャンスだ!今のうちにjf-17を買おう!(錯乱)

    1
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      自称軍事ライターの文XX重同志ですか?

      5
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    アルゼンチン新しい戦闘機買う余裕あんのかよ
    経済破綻状態はもう抜け出したのか
    第二次フォークランド紛争も近いな

    7
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      第二次が起きても
      英国、アルゼンチン共にしょぼい戦力になりそうだな

      9
        • 匿名
        • 2021年 5月 09日

        今英国は一応空母を持っているから以前のようには簡単にフォークランド島を落とせない、空母でF-35Bを運用されたらMig35もJF17も絶対に勝てない。
        まあF-35の空対空戦闘を一度は見てみたい気もするが。

        12
          • 匿名
          • 2021年 5月 10日

          艦載機の居ない空母なんて、役に立たないよ。
          搭載しているF-35Bの半分は、米海兵隊だからね。

          1
            • 匿名
            • 2021年 5月 10日

            F-35Bが10機も居れば、アルゼンチンの航空戦力は全滅しそうなんですが……(場合によっては海上戦力も)
            そもそも今のアルゼンチンの軍備では、現在フォークランドに配備されているタイフーン1個小隊4機を抜くのすら困難に思える
            JF-17かMiG-35が1個飛行隊12機ほど配備されて、初めてやっと勝負になる感じですかね(その場合、フォークランド駐留部隊も増強されるか?)

            リンク
            ゲームとはいえ、タイフーンx4機に空中給油機x1機と23型フリゲートx1隻で、アルゼンチンのA-4ARx4機に哨戒機複数と駆逐艦x1隻にフリゲート3隻が全滅していますからね

            2
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      FA-50の輸出を止めたのはイギリスにとっては失策だったかもね
      FA-50とMig-35 or JF-17のどれがフォークランド諸島防衛に対して最も脅威になるか

      19
        • 匿名
        • 2021年 5月 09日

        いや、確実に失策でしょ。
        FA-50ならイギリスとイスラエルが儲かるだけだが、ロシアを儲けさせるとは。通常の戦闘機だし。

        9
          • 匿名
          • 2021年 5月 09日

          平和に浸かりきってるとか言ってた本邦を馬鹿にできないねぇ
          英国さんは

          3
        • 匿名
        • 2021年 5月 09日

        アルゼンチンがフォークランドを諦めてない以上英国として禁輸は解除できないさ
        結果Mig-35とかがアルゼンチンに入ることになっても、そこはどうしても譲れない一線だろう。

        8
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    西側にもこれくらい安いのが必要だと思う
    F-16やグリペンですら最新型は高すぎる
    F-16A/BはF-15A/B/C/Dの半額に近いコストだったけど
    F-35AやF-15EXの半額の戦闘機って今の西側にないんだよね
    F-22の半額としてみればF-16Vあたりが該当しそうだけどF-22が高すぎてそれの半額でも高すぎるんだよ

    14
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      一応、今回はご破産したけどFA-50がそのカテゴリーでしょ
      そのほかはボーイングがT-7Aを武装転用を視野に入れているらしいが、どうなることやら

      3
        • 匿名
        • 2021年 5月 09日

        よく考えたら西側製である限り、マーチンベーカー印の射出シートを採用してるから、値段の問題じゃないわ
        ロシア製・中国製は一応自国で作ってるみたいだが

        2
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      安さだけならF/A-50が。

      • 匿名
      • 2021年 5月 10日

      そういう意味じゅKFXは上手いとこ狙ってたんだよね。
      どうしてああなった。見栄とは恐ろしく馬鹿らしいな。

      2
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    取り敢えず英国ナイス!

    7
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      どうしても売りたいなら射出座席にブラックボックス付けるデース
      ミー達の空母に近づいたら自動的に作動するネー
      作動しないよりは人道的デスネー

      9
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    アルゼンチンがどの程度フォークランド諸島にご執心かも影響しそうだ
    正直JF-17でいいと思うがそれだとフォークランド諦めたか?とか思われそうだし

    6
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    いまのアルゼンチンは貧乏だが、空軍力を放棄するわけにはいかないだろう。
    MIG-35は妥当な選択ではないか。

    12
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    中国はJ–10は輸出せんのやろうか?

    3
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      FC-20、J-10CE(FC-20E)として売り出してはいるけど、JF-17(FC-1)と違ってお値段がハイエンドなので。

      9
        • 匿名
        • 2021年 5月 09日

        J-11だと中途半端なのかな?

        1
          • 匿名
          • 2021年 5月 09日

          今更J-11(Su-27SK)を売っても買い手はいないでしょう。
          あと、双発機をお望みならロシアのSu-35を買いそうだし。

          5
            • 匿名
            • 2021年 5月 09日

            >今更J-11(Su-27SK)

            10と11を取り違えていたこと、()内を見て気付きました。
            ()での補足ありがとう。

            1
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    MiG-35とJF-17って維持コストはどうなってるんだ?
    正直アルゼンチンの経済規模じゃあ双発のMiG-35は厳しいだろ

    4
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      35に型番は変えたけどMIG-29の時の高コストは変わらんよね
      隣国チリや今更英国と戦争しないだろうけど、最近asm運用のテストも終了した単発のFC-1で落ち着きそうな予感
      後でアメリカからどちらの機体を買っても地味な嫌がらせを喰いそう

      6
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    輸出実績があるJF-17と皆無のMiG-35。
    アルゼンチンは単発機(A-4ARやFA-50は単発機)をご所望のようだから、
    双発機であるMiG-35よりJF-17のほうが有利?
    そもそも、今のアルゼンチンに双発戦闘機の維持管理は辛かろうね。

    5
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      Mig-35はMig-29シリーズの番号変更でもあるわけだから完全に輸出実績がないとは言い切れない

      4
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    元々FA-50購入を内定してたわけだし負担の大きいMiG-35よりJF-17と考えるのが自然ではあるけど

    9
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    安いけどさ、維持費が大変じゃなかった?
    後々高く付くはずなんだけど。

    いや並べとけばいいのか?

    3
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    韓国可哀想

    3
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    ブラジルがミラージュ2000とF-5EでグリペンEに代替予定
    チリがF-16のAやCとF-5Eでしたっけ
    本当はもう少し良い機体が欲しかったんでしょうかね、国情でFA-50にしたけど
    当然な理由で却下されたわけで、対イギリス以外にも周辺国との関係も考えて
    選定やり直しってとこですか

    3
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    MIG-35の価格が知りたいからいい加減どこか買ってほしいな
    エンジン寿命云々ってのは中露共通の事だからあれだし

    まあA-4からとりあえず変えたいってだけならJF-17にするだろうな

    5
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    ロシア対中国による次期戦闘機争いねえ…でもアルゼンチンって親米政権の筈だから、このままだと米バイデン政権が「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」に基づく制裁発動をチラ付かせて両者水入りってオチになるんじゃないのか?

    1
      • 匿名
      • 2021年 5月 10日

      ラテンアメリカ諸国は冷戦中にアメリカが反共のために軍部を支援して軍事独裁を招いた過去、もっと遡ればセオドア・ルーズベルトの棍棒外交があるので「親米」かと言われると疑問です。

      「汚い戦争」「死の部隊」で調べてみると、こんなことしてたのかと驚くと思いますよ。

      4
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    Mig-21が魔改造を重ねて4.5世代機になるなんて

    3
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      残っているのは胴体フレームと操縦系統、降着装置くらい?

      2
        • 匿名
        • 2021年 5月 09日

        残っている部分あるんだ。
        面影くらいかと思ってた。
        ちょっと意外。

        2
          • 匿名
          • 2021年 5月 09日

          当代軍用機業界のミステリーですね。当事者でないと誰にもわからない?

          • 匿名
          • 2021年 5月 10日

          キャノピーから後ろの胴体の野暮ったさなんかMiG-21そのものに見えるね。

          2
        • 匿名
        • 2021年 5月 10日

        パイロットだけってオチ希望www

    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    どの道三機種どれを選んでも航続距離的にフォークランドに駐留する英空軍に対して不利な状況には変わらないでしょうね
    空中給油機や空母でも有ればまた別でしょうがアルゼンチンのは到底整備不能でしょう。

    2
      • 匿名
      • 2021年 5月 09日

      道三がとうしたのだろう?
      と誤読して一瞬混乱しちゃいました。

      • 匿名
      • 2021年 5月 10日

      アルゼンチンは、空母保有を諦めて居ないのかも。
      MiG-29Kを導入する伏線かな。

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