ロシア関連

ロシア、新型のステルス爆撃機「PAK DA」はスタンドオフミサイルのみで運用

ロシアのイタルタス通信(TASS)は9日、新型のステルス爆撃機「PAK DA」はスタンドオフミサイルのみを運用する専用設計だと報じて注目を集めている。

参考:ПАК ДА получит комплекс обороны, который защитит его от всех видов оружия

ロシアのステルス爆撃機はスタンドオフミサイルと電子戦装置で生存性を上げる

イタルタス通信はツポレフ設計局が開発を進めている新型のステルス爆撃機「PAK DA」について「同機は機体のステルス性能だけでなく電子戦による敵ミサイルからの保護にも力を入れており、レーダーや光学センサーなどを搭載した兵器からPAK DAを保護するため新型の電子戦装置を開発している」とツポレフの関係者が明かしたと報じている。

さらにPAK DAは自由落下式や無動力の兵器運用を考慮した設計ではなくスタンドオフミサイル(敵が使用する反撃用兵器の射程外から攻撃可能なミサイルという意味)のみを運用すると説明して「PAK DAは高度な防空システムに守られた空域に侵入することなく目標を攻撃可能だ」と主張してるのが興味深い。

出典:Mil.ru / CC BY 4.0 Tu-95

つまりロシアのステルス爆撃機は高度な防空システムに守れた空域を貫通することを目指して開発が進めている米空軍のB-21とは異なり、現在運用中のTu-22、Tu-95、Tu-160と同じミサイルキャリアとしてPAK DAを運用するという意味で敵防空圏を貫通する必要がないので電子戦装置も積極的に活用して生存性を高めるつもりなのだろう。

米メディアはツポレフ関係者の証言に注目しており「米国が開発を進めている戦闘機搭載タイプの長射程空対空ミサイルに対するロシア側の回答だ」と指摘している。

参考:Russia’s PAK DA Nuclear Stealth Bomber to Emphasise Standoff Attacks and Electronic Warfare

米空軍はロシアや中国の長射程空対空ミサイルに対抗するためF-15EXに特大の空対空ミサイル(これが何なのかは不明)搭載を検討、米海軍の戦闘機F/A-18Fが艦対空ミサイルSM-6を搭載して飛行しているのが確認されており、ロッキード・マーティンはAIM-120の後継となる長射程の空対空ミサイル「AIM-260 JATM(推定射程200km)」を開発中だ。

出典:Raytheon Missiles&Defense AMRAAM-ER

レイセオンもAIM-120C-7よりも射程距離が50%向上したAMRAAM-ER(防空システムNASAMS向けに開発された地対空ミサイル)のF-35A統合を検討しており、このようなロングレンジの空対空ミサイルが届かないところから攻撃を仕掛けるか仮に迎撃を受けても強力な電子戦装置で対抗するとロシアは言いたいのだろう。

勿論、米空軍のB-21も巡航ミサイルや極超音速兵器で武装する予定なのでミサイルキャリアはロシアの専売特許ではない。

ただB-21はPAK DAのようにスタンドオフミサイル運用に特化した設計ではないので、この辺りの違いが機体設計にどのような影響を与えるのか注目される。

出典:TsAGI ロシアの中央航空流体力学研究所が研究していた全翼機の風洞モデルでPAK DAとの直接的な関連性はない言われている

余談だがロシア通信(RIAノーボスチ)は今年3月、ロシアが開発を進めているステルス爆撃機「PAK DA」について「同機のレーダー反射断面積(RCS)はNATOの早期警戒管制機や戦闘機のレーダーに検出半径を「数桁」まで減少させるため、同機が特定の戦術を用いればNATOの防空網に捕捉されることなく侵入が可能だ」という開発関係者の証言もある。

参考:ПАК ДА сможет преодолевать рубежи ПВО НАТО незамеченным, сообщил источник

ステルス爆撃機「PAK DA」はロシアにしては珍しく事前に開発スケジュール(プロトタイプ完成は2021年頃、初飛行は2025年頃、空軍への引き渡しは2027年頃)を明かしており、昨年5月の時点でコックピット周りの組立が完了したと報じられていたので、すでにPAK DAのRCS値は確定しているのだろう。

関連記事:米空軍はF-15EXに特大の空対空ミサイル搭載を検討、米海軍はF/A-18FにSM-6を搭載してテスト中
関連記事:レイセオン、AIM-120C-7よりも射程距離が50%向上したAMRAAM-ERのF-35A統合を検討

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Trevor Cokley

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    安値な誘導爆弾ではなくてミサイルのみなのはステルス性にそこまで自信がないことの裏返しなのでは。

    17
      • 匿名
      • 2021年 6月 13日

      既存の爆弾のせられるって報道自体はあったんだけども。
      今ある爆撃機置き換えるんだから実際のせられないわけ無いと思うんだよね……。

      3
      • 匿名
      • 2021年 6月 13日

      逆に言えばそこまで高価にならずに済むのではないかと
      ステルスは整備の手間も製造の費用も維持費も普通機材よりかかる

      2
    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    ロシア領内から出ないで敵の射程外から打ちっぱなしって特にステルスであるメリットないな
    いや電子戦装備と合わせて生存性はそりゃ高まるんだろうけど

    11
      • 匿名
      • 2021年 6月 13日

      カナダ越えしないといけないアメリカ向けには能力不足だけど欧州や日本向けには十分ですね。

      2
    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    長波帯レーダーからはステルスでも逃れ得ないのだから、結局、スタンドオフでの運用が賢いという選択なんでしょう。攻撃対象の比較的近くまで進出できて、検出されにくいだけかもしれなくても、敵の対処能力を飽和させるには十分。無人機とすれば、与圧設備もいらず、ペイロードも増やせやるだろう。

    6
      • 匿名
      • 2021年 6月 13日

      大型ステルス全翼機は長波帯レーダ波に対し形状ステルス性を維持できるそうですよ。

      6
        • 匿名
        • 2021年 6月 13日

        “形状ステルス性”ってなんですか?初めて目にした。

          • 匿名
          • 2021年 6月 13日

          ステルスには種類があって、機体の形状で電波をそらす形状ステルス、電波を吸収する塗料等の材料ステルス、様々な偽装電波を自分から発して位置を隠すアクティブステルスがある
          まあ投稿者が何を思って書いたのかはわからないが…

          16
    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    ミサイルの命中率が十分高かったら、先制攻撃できて(スタンドオフで発射)、守備力も高い(RCS値の低い)こういうステルス爆撃機が空戦最強になるんだろうな。

    1
    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    米露ともすでに核相互確証破壊 他のどこを攻めるまもるため? 配備箇所で推測するしかない。

    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    B-21だって無傷の敵防空網の突破は考えてないだろ。
    レーダーと敵航空基地破壊して制空権確保が必須。
    ステルス+SR-71みたいな6万ftをマッハ3ならともかく、3万ftを亜音速なら危険すぎる。
    スタンドオフミサイルがあればわざわざ短射程誘導爆弾を発射する必要がない。

    4
      • 匿名
      • 2021年 6月 13日

      写真の通り正面RCSは優れているが上下面からレーダーあてられると格段に下がる 必須はそのとうり 核戦争で生き残り第2段攻撃用。

      1
      •   
      • 2021年 6月 13日

      レーダー網を回避する機能があるよ
      ECMでレーダー波を検知して穴を探す機能

      1
      • 匿名
      • 2021年 6月 14日

      中国・ロシア本土にあるレーダー及び航空基地の数が多すぎる(アメリカは数十万と推測)ので、安価な誘導爆弾を大量に搭載した爆撃機を使用しないと継戦できない、とアメリカ軍は分析している。
      アメリカ軍は制空権を確保していない状態でB-21による直接爆撃を考えているし、そのために全方向からのステルス対策や自衛用の空対空能力を持たせようとしている。

      9
    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    まさかキンジャルを搭載するとかじゃないよね。専用ミサイル開発するのかな。
    ミサイルも2027年までに開発完了するのかな?

    1
    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    ロシアの当局者(大臣・政治家・軍の調達担当者・兵器メーカー役員…)が「~となる予定だ」「~が可能だ」「~によって米国に対して一方的な優位性をもつだろう」と言ってるときはブラフや国内向けのサービストークの場合が多いから注意だぞ。PAK FAの時も当局者の話から推測するスペックはF22の数倍のキルレシオを持つ戦闘機と西側では見ていたが、実際出てきたのは出力に不安のあるエンジンと妥協されたステルス性をもつSu-35の上位互換みたいなものだったし。周辺国にとって大きな脅威であり段階的なアップデートが予定されてるのは間違いないが、最終的な顧客である軍の要望や国家予算との兼ね合いもあるから、PAK DAも外見を立派にしたTu-22みたいなものかもしれない

    20
      • 匿名
      • 2021年 6月 14日

      「F22の数倍のキルレシオ」とは具体的に何の機体に対する数値なのか?
      二十年くらい前に旧式のSu35に対する西側戦闘機の被・撃墜比だったかを推定した数値標があったが、もしかしてあれを参考にしてるの?

      この文体からだと、陳腐化したF22よりも各段に強力なミサイルやFCSを搭載したSu57の方が強い。つまり西側が予想した「スペックはF22の数倍のキルレシオを持つ戦闘機」も間違いではないな(笑)。

      基本的に如何なる国家だろうと政治家や軍属が発信するこの手の話は内外向けのプロパガンダ。中露だけでなくアメリカ等の西側機関にも言える事。 個人的にPAK DAはTu160の上位互換だと思う。

      3
    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    ウッソだぁ
    本当はツァーリボンバみたいなの吊り下げられるんでしょ知ってるんだからそのくらい

    4
    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    Su-57の機体表面状況を見るとF-35レベルには遠く及びません。
    配備された頃のF-22では機体表面の隙間等を塗布材で被覆し平滑化した上にRAM塗料/トップコートを塗布しています。
    F-35は機体表面の工作精度が非常に高く、その上に直接RAMシートを貼り付け高耐久性トップコートを塗布しています。
    これらのことからSu-57の段階では電波ステルス性はF-22やF-35に大きく劣ります。
    つまりロシアのステルス技術は米に対し遅れをとっていてファーストキルの能力では及ばないでしょう。
    >NATOの早期警戒管制機や戦闘機のレーダーに検出半径を「数桁」まで減少させる
    は当面は眉に唾で良いのかと思います。

    10
      • 匿名
      • 2021年 6月 13日

      あれは意図的にあのレベルのステルス性能に押さえてメンテンス費用を抑えた作りにしてるんじゃないの?

      ロシアにはロシアの考え方があるんだからSu-57の工作レベルがロシアの工作レベルをダイレクトに反映してると考えるのは早計だよ。

      4
        • 匿名
        • 2021年 6月 13日

        意図的も何もF-16とSu-35の機体表面見ても後者は接合面浮いてるしリベット剥き出しだよ。

        17
        •   
        • 2021年 6月 13日

        ロシア機のアップ画像見れば分かるが表面はかなり荒い仕上げで凸凹

        17
        • 匿名
        • 2021年 6月 15日

        うん
        ロシア・ソ連系の航空機は伝統的に
        大きな性能低下にならないようなところであれば、
        結構アバウトに組み上げて生産性と低価格化を狙った
        構成になっていますね。

        3
      • 匿名
      • 2021年 6月 14日

      F35とSu57ではステルス思想及び運用が異なる。小型単発と大型双発機体では異なる運用法になるので、Su57のステルス性能は限定的。

      基本的にF117以後のステルス機は電磁波吸収素材を使用した被膜・骨格構造に同機能のステルス塗装を施してる。機体の表面を平滑化するのに樹脂等でパテ塗りする技術はプロペラ機戦闘機が全盛期だった頃から存在。やろうと思えばSU57も表面を保護層(電波吸収素材)で完全に覆う事が可能。

      Su57の様な大型機の場合、骨格構造材にチタン合金の様な反射しやすい素材を多用しなければ強度を保てない。当然レーダー反射断面積が増大するので外殻層に電波吸収素材の層を用いるが、f35と同程度のステルス性を確保するとなると空虚重量が増加してしまう。

      これらが同機のステルス性を低下させる主な要因なので、運動性能等を低下させるならステルス性を犠牲にした方が費用の面でも合理的。現代ステルス能力の大半は塗料よりも、積層電波吸収体や同骨格構造体をもつ反射電波の低減に依存してる。
      電波吸収の始まりともいえるフェライト樹脂(記憶が曖昧なので間違ってたらゴメン)等の初歩技術は日本が80年代に開発研究しており、「ロシアのステルス技術は米に対し遅れをとって」はあり得ない。逆に言えば今の時代にステルス素材研究は物理学や素材工学が進んでる国なら可能。ロシアの物理学や材料工学等は未だに世界最高水準を維持してる。

      「NATOの早期警戒管制機や戦闘機のレーダーに検出半径を「数桁」」は「眉唾」でなく、ECM・EPM等の何か別の方法で疑似的に再現可能だと言う事を考慮すべき。

      5
        • 匿名
        • 2021年 6月 14日

        重要なことを書き忘れていたいので追伸。 

        電波吸収技術には抵抗器等による電波の熱変換も存在する。半導体等に詳しければ理解できるだろうが、レーダー反射断面積の低減に必ずしも分厚い皮下脂肪の様な電波吸収層を設ける必要は無い。

        4
    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    ロシアは兵器の改良をこまめに続ける国だから
    どうせ従来の爆撃機もやがて寿命を迎えるし、そのうちに通常爆弾も搭載可能なタイプに変わっていくんではないかな

    2
      •   
      • 2021年 6月 13日

      新しい工場を作れないから古いものを生産し続けるしかない
      インフラや民間工場なども同じで、ひたすら古いものを使い倒すのがロシア
      新しい設備に更新する金が無いのよ

      7
    •   
    • 2021年 6月 13日

    ロシアは設備投資する資金がないプラス優れた工作機械は外国頼りなので、先端技術を備えた工場が限定的にしかなく各種新兵器がそこに集中して渋滞を起こし、最新装備の生産が遅々として進まない特徴があり
    T72やmig31などのようにレガシー兵器の生産も合わせて継続しなければならない

    7
      • 匿名
      • 2021年 6月 13日

      逆にハイテクはほぼソフトウェア依存に到達してしまっていてガワがレガシーな兵器でもどうにでもなりつつあるよね
      実際中国もそうだし

      4
        •   
        • 2021年 6月 13日

        ソフトウェアである程度対応できるのは最近のオープンアーキテクチャと言われるものであって、レガシーなものは機材入れ替えるしかない

        8
      • 匿名
      • 2021年 6月 20日

      むしろその手のインフラ面を整備したのが新生ロシアだと思うのですが‥‥。
      荒れ果てた造船所や港湾設備、空軍基地なんかをきちんと改修してますよ。
      でなければ、北極圏においてロシアがダントツで強い力を持つと評されることはあり得ません。

    • 匿名
    • 2021年 6月 13日

    利点がいまいちわからない
    そりゃ生存性だけを考えればスタンドオフミサイルオンリーの運用にメリットはあるけれど、そもそも爆撃機の強みは長距離を飛んで大量の火力を投射できることにある
    スタンドオフミサイルしか使用しないならばコストや弾頭のサイズから考えると大規模な火力投射は望めないし、母機が長距離を飛ぶ必要もない
    ミサイル打ちたいだけならばキンジャール装備型のmig-31のように戦闘機から打ち出したほうが手っ取り早いうえにミサイル母機としての数も確保できる

    4
      • 匿名
      • 2021年 6月 13日

      利点というか高度なステルス性が付与できないだけと違いますか

      1
      • 匿名
      • 2021年 6月 13日

      どっちかというと爆撃機の位置付けというか、思想的なものかもしれませんね。
      戦略爆撃機を砲兵の延長線上のノリで使ってる米軍も大概おかしいワケで。

      どのみち今のロシアでは大量配備とまではいかないでしょうから、モスクワのお膝元から重要目標の撃破と政治性の強い攻撃に徹する方針なのでは?

      11
      • 匿名
      • 2021年 6月 13日

      まあ運用方法が限定的だから、なにか明確な意図があるとは思うが
      それが何かは分からないな

      4
    • 匿名
    • 2021年 6月 14日

    俺達はこんなに凄いんだ!と言い続けなければならないロシアの立ち位置は分かるが、戦略爆撃機と言うか戦略空軍自体もう無駄金では?と思ってしまう。基本莫大な国土防衛に特化して、米中への報復用に戦略原潜と移動弾道ミサイル維持で充分なのでは?

    5
      • 匿名
      • 2021年 6月 14日

      ロシアが相当な無理をして軍備を整えてるのはみんな感じてますよね、人口は日本と台湾を合わせた程度なのに、アメリカと張り合おうとして、豊かな資源で得た利益をすべて軍備につぎ込んでる感じ
      世界一の広い領土防衛を理解せぬわけではないが、遅れたインフラ整備や福祉をおざなりにした結果、国民に言論統制や弾圧しないと統治もままならない状態が続いてて、
      プーチン退場後の絵図を誰も予想できないのが怖いですよ

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