ロシア関連

露バルチック艦隊の揚陸艦6隻が黒海に到着、黒海艦隊の水陸両用戦力は倍増

バルチック艦隊に所属するロシア海軍の揚陸艦6隻が黒海に入ったことが確認され、本格的に黒海沿岸部からの侵攻を警戒しなければならなくなった。

参考:Six Russian Amphibious Landing Ships Are Now Headed Into The Black Sea
参考:Отряд больших десантных кораблей ВМФ России проходит проливы Босфор и Дарданеллы

これ以上防衛すべき戦線が増えるとウクライナ軍の戦力や装備が分散されるため非常に好ましくない

ロシア海軍のバルチック艦隊に所属するロプーチャ級揚陸艦5隻とイワン・ロゴフ級揚陸艦1隻は1月下旬に根拠地(カリーニングラード)を出港、バルト海→イギリス海峡→大西洋→地中海を経て2月上旬(2日か3日)にシリアのタルトゥース海軍基地に到着、水や食料といった物資を補給後に地中海と黒海を結ぶダーダネルス海峡を3隻つづに別れ通過したのが確認された。

ロシア国防相はバルチック艦隊所属の揚陸艦を黒海に派遣した理由について「2月上旬に行う軍事演習に参加するため」と述べているが、このまま6隻の揚陸艦がクリミアに居座り続けると黒海艦隊の水陸両用戦力はロプーチャ級揚陸艦9隻、イワン・ロゴフ級揚陸艦3隻、多数の上陸用舟艇で構成されるため黒海沿岸部からの侵攻を警戒しなければならなくなり、ウクライナにとってはモルドバ駐留のロシア軍と合わせて不気味な存在と言えるだろう。

因みにウクライナの首都キエフはドニエプル川を挟む形で都市が形成されているものの政府の主要施設は西岸に集中しているため、ロシアとの国境から侵攻してくる地上軍を天然の防衛ラインで食い止めることも可能だったが、演習目的でベラルーシに展開したロシア軍が居座り続ければドニエプル川の西岸側からも侵攻してくる=西と東から包囲される可能性が高く、これ以上防衛すべき戦線が増えるとウクライナ軍の戦力や装備が分散されるため非常に好ましくない。

関連記事:ロシア陸軍、ウクライナ国境近くに核砲弾対応のアトミック砲を配備
関連記事:ロシア、カリーニングラード配備の極超音速ミサイルでNATO本部を射程内に収める

 

※アイキャッチ画像の出典:Mil.ru / CC BY 4.0

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

米空軍がE-3の後継機を2023年に発注、ほぼE-7導入で間違いない前のページ

フォークランド諸島に対するアルゼンチンの主権を中国が支持、英国は連邦の一員と反論次のページ

関連記事

  1. ロシア関連

    ロシア陸軍、主力戦車に対する対戦車ミサイルのトップアタックを防ぐ保護装置を導入か

    ロシア国防省は17日、ウクライナと国境を接するロストフ州のカダモフスキ…

  2. ロシア関連

    ドネツク人民共和国、戦闘中に拘束した外国人兵士3名に死刑を宣告

    ドネツク人民共和国の最高裁判所は9日、ウクライナでの戦いに参加して拘束…

  3. ロシア関連

    努力するロシア軍、地上拠点をUAVによる攻撃から保護する新戦術をテスト

    ロシア国防省は25日、敵の無人航空機から地上拠点を保護するため新しい戦…

  4. ロシア関連

    SM-3迎撃実験への対抗? ロシアが対弾道ミサイル迎撃システム「A-235」をテスト

    ロシア国防省は26日、開発中の対弾道ミサイル迎撃システム「A-235」…

  5. ロシア関連

    ロシア、自律的に連携可能な「UAV+自走砲」の組合せを海外の顧客にアピール

    ロシアの国営企業「ロステック(英:Rostec / 露:Ростех)…

  6. ロシア関連

    ロシア空挺軍所属の兵士60名、ウクライナでの作戦参加を拒否して解雇?

    ウクライナ侵攻作戦に参加するためベラルーシに移動した空挺部隊の兵士60…

コメント

    • 名無し
    • 2022年 2月 09日

    お疲れ様です。
    いつも楽しく拝見させて頂いています。
    僭越ながら、川の表現で左岸、右岸という表現がありますが
    川の下流を向いて左側、右側という使い方になります。

    キエフの主要施設の位置はドニエプル川右岸、
    もしくは西岸などといった表現がわかりやすいと思います。

    単純に打ち間違いかもしれませんがコメントさせて頂きます。
    寒い毎日が続きますが風邪などひかぬようご自愛ください。

    62
      • ななし
      • 2022年 2月 09日

      新しいうんちくをまた一つ知れたわ。ありがとう。

      20
      • 航空万能論GF管理人
      • 2022年 2月 09日

      大変勉強になりました。ご指摘ありがとうございます。

      42
    • 無無
    • 2022年 2月 09日

    バルチック艦隊・・・
    ウクライナにZ旗でも供与するか

    6
    • tofu
    • 2022年 2月 09日

    > 西と東から包囲される可能性が高く
    この動きの何がいやらしいって、ウクライナが本腰入れて対応したら揚陸部隊は捨て駒にならざるをえない(少なくとも相当のリスクを孕んだ作戦になるはず)んで現実的な作戦の選択肢としては無し寄りなんだけど
    そうは言っても無防備にしたところに揚陸されると戦線が瓦解しかねないんで、ウクライナとしてはある程度は軸足を移さないといけないというところよね

    9
    • くらうん
    • 2022年 2月 10日

    輸送能力から推察すると全艦合わせて一個旅団~師団規模か

    戦力が裂けない以上、確度の高い上陸予想地点順に地雷&機雷敷設とトルコから供与された徘徊型UAVで牽制で割り切った方が良いようにも思うけど。
    地雷撒くのも人出はいるしなあ。

    • きっど
    • 2022年 2月 10日

    地雷だけ撒いても、それがよほどの規模でない限りは、陸戦力が無ければ簡単に突撃路を開拓されて突破されるかと
    TB-2なんて、ロシア正規軍相手にはカカシも同然だすし

    2
    • 破軍
    • 2022年 2月 10日

    >イワン・ロゴフ級
     イヴァン グレン級じゃないですかね。ロゴフ級はすべて退役のはず。

    現在の揚陸艦が積載している装備が分からない事には、どれだけの驚異なのかが推し量れないですね。

    艦船保護考えるなら全て水上移動できるBTR-80以上の車輌を洋上発進させる。それだと黒海とバルチック艦隊併せて200両以上は展開出来るから対戦車ミサイル一発必中でもきっつい感じ。

    • A
    • 2022年 2月 10日

    >モルドバ駐留のロシア軍・・・
    やはりそこにもいるんですね。
    モルドバはギリギリ内陸国だから、「一緒に頑張れば海沿いをもらえるよ」なんてロシアの甘い言葉につられちゅんじゃないか。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  4. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP