米シンクタンクのヘリテージ財団は「空軍が今後もF-35の能力を最大限引き出すためにはF135のアップグレードではなく新エンジンが必要だ」と主張して、AETPでなければならない9つの理由を披露した。
参考:9 reasons why the F-35 needs a new engine
インド太平洋地域で劣勢に立たさる状況下で優先すべきは最高の戦闘機をもつこと
エンジンは戦闘機のパラメーターに大きな影響を及ぼす重要なユニットで推力性能は速度や加速、燃費性能は航続距離、冷却性能と発電能力はアビオニクス、耐久性は運用や保守に直結し、基本設計で想定された以上の能力を引き出そうとすれば最終的にゼロサムゲームに陥るのは明白で、ヘリテージ財団は「今後もF-35(Block4)の能力を最大限引き出すためにはF135EEP採用を見送りAETPに移行すべきだ」と主張している。
1.F-35はより大きな推力を必要としている
P&Wが設計したF135の性能はジョイント・ストライク・ファイター(JSF)の要件を満たすように作られており、完成したF-35はJSFよりも全長が13%、翼幅が16%以上大きくなって、重量は30%以上重くなっている。そのためF-35は加速性など主要なパラメーターが低下(M0.8→M1.2に加速するのにF-35Aは8秒、F-35Bは16秒、F-35Cは43秒かかる)、これを改善するのにF-35はより大きな推力をもつエンジンを必要としている。
2.F-35は航続距離を拡張する必要がある
JSFが達成すべき目標の一つに戦闘半径の大幅な拡張があったが、コンセプトサイズに合わせてF135が設計されたためF-35の作戦半径は目標よりも15%小さいものになってしまった。これを改善するのにF-35はより燃費が優れたエンジンを必要としている。
3.サブシステムの冷却要件はF135の設計仕様を超えている
F135の冷却能力は15kwに設定されていたが既にF-35の冷却要求は設計時の2倍=30kwに迫っており、F135はブリードエアをエンジンからより多く抜き取ることでサブシステムの冷却を行っているが、この影響でF135の推力は低下している。2028年に完成するBlock4仕様のF-35が要求する冷却能力は47kw、レーザー兵器などの追加要素が実装されれば60kwに達するため、F-35のパワープラントはF135が提供する冷却能力の2倍は必要だ。
4.ブリードエアを想定以上抜き取られるF135は想定よりも早く摩耗する
冷却能力の拡張とブリードエアの供給量を交換するゼロサムゲームはF135の推力低下をもたらし、これをカバーするためF135はより多くの燃料を消費し、設計で想定された以上の高温運転が続くためエンジンの摩耗、故障率、保守サイクルを著しく増加させている。
5.F135は将来の電力要件を満たしていない
JSFのコンセプトに基いて決定されたF135の発電能力は2001年想定のサブシステムには十分なものだったが、Block4に搭載されるAN/APG-85(ロット17以降)や新しい電子戦システムなどが要求する電力要件は満たせておらず、将来レーザー兵器などの追加要素に対応するためにはパワープラントの発電能力を大幅に引き上げなければならない
6.F135の改良型=F135EEPでは問題の一部にしか対処できない
P&Wは推力を6%~10%、燃費を5%~6%、冷却能力を50%向上させることができるF135の改良型=F135EEP(以前は推力を15%、燃費を20%向上できると主張)を提案しているが、この案はAETPに換装するより遥かに安価なので魅力的に見える。しかし将来サブシステムが要求していく冷却能力や電力能力は飛躍的に増加していくため、F135EEPで解決できる問題は目先の範囲に限られている。
7.AETPは未知の技術ではなく検証済みで、将来要求されるF-35のアップグレードを可能にするための土台になる
F135と同じサイズで設計されたAETPの主要目的は熱管理用のヒートシンクとして機能する「3つ目の空気の流れ」を追加して3ストリーム化することにあり、GE製のXA100はF135と比較して推力が10%~20%、燃費が25%向上すると確認されている。さらにセラミック・マトリックス複合材料で製造されたタービンブレードによってF135よりも高い温度に耐える事ができ、試験が進むP&W製のXA101も良好な結果を示している。
8.XA100とXA101を競争させることで自助努力による性能向上やコスト削減が期待できる
GE製のF136開発がキャンセルされたためF-35のエンジン供給はP&Wが独占しており、戦闘機を構成するコンポーネントの中で最も費用がかかるエンジンのコスト削減=価格競争を誘発させる環境作りに失敗した。
9.F-35の新しいエンジンは証明された性能とコストで決定されるべきだ
AETPへの換装コストは60億ドルを越えると見積もられており、このコストだけで判断を下すのなら20億ドルで済むF135EEPの圧勝だ。しかしF135EEPの性能は実証されておらず、カバーする性能向上の範囲もBlock4までなので応急措置に過ぎない。もしEEPを選択すれば今後もサブシステムの要求要件に合わせて改良を繰り返すコストを負担することになるため、Block4以降もF-35の能力向上に投資するつもりならAETPへの換装が最も優れた選択肢になる。
以上がヘリテージ財団が主張する「AETPに移行すべき理由」で、インド太平洋地域で劣勢に立たさる状況下で優先すべきは「最高の戦闘機をもつことだ」と付け加えている。
因みにAN/APG-85は空軍が6月に提出したウオッシュリスト(空軍予算でカバーできないけど、もし議会が許可するならコレとコレにも資金供給をお願い的な要望書)に初めて登場したもので、AN/APG-83の後継モデルと思われるが詳細は提供されていない。
関連記事:F-35Block4のエンジン問題、AETPとF135EEPのどちらが正解か
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Kevin Long
両方作って比較すれば良いんじゃないか。
あと同盟国に供給できるか怪しい場合はイスラエルみたいに弄る許可を出してくれんもんか。エンジン周りだけでも。
航続距離や加速性能は両方作れば比較できる(作らなくてもシミュレートできる)ものの、Block4のアビオニクスへの適合性や保守性・さらに将来の電力要件は、実機の比較というよりも現時点でわかっている見通しを議会がどれだけ理解しているかということの方が大きいと思います。
そもそもF135エンジンはオーバーホールごとにMRO&Uデポ行きになる。オーバーホール終了したエンジンは採用国が複数有るならその地域のどこに発送されるかもシステム次第。そんな特別扱いは米軍以外では考えられない。
Block4の要求性能に足りないなら素直にAETP採用が良さそうですが、難しいのですね…
変な費用負担を強要されてF-3計画に悪影響が出ないと良いんだがな
まずは採用国への売却許可とF-35B対応してから言えと
米国の戦力向上は日本にも関係あるとはいえ、こき下ろされたF135EEPしか売ってもらえない同盟国からしたら「勝手にしろ」としか思えませんね。
言ってる事はなるほどと思えるけれど、どうにもズムウォルト級駆逐艦の匂いが感じられる。中国の暴発も間近とも言われている中、先を見越した開発に資金を投じるのが良い選択なのかどうか。
確かにアメリカは、月刊正規空母、週刊護衛空母なんてペースで戦力を増やしつつ、五大湖に訓練専用空母を浮かべて操縦士の量産を行い、それと並行して原爆開発までしてたくらいだから、本当にやる気ならやれてしまうとは思うけれど。
F135EEPで戦力を整えつつ、精密誘導兵器の備蓄に注力すべきじゃないだろうか……?
双発ではあるがF-3のエンジンも同レベルの性能を要求されるものと解釈していいのかな?
これは確かに経験の少ない日本単独でエンジン開発するのは大変だ
BAEと組んだからうまくいくという保証はないが、共同開発しないと失敗しそうな気がする
出力は双発ゆえに達成可能でも、冷却や発電能力は単独では難しいのでしょうね。
日本の場合、燃費も重要そう。
いや、日本が単独で開発したPFRTエンジン(予備定格飛行試験用のエンジン)の製造及び試験等に着手すると公式に発表されているから、日本単独でのエンジン開発は十分に可能だよ。
発電力などの面でも、日本単独で開発して何の問題もない。
一例として、日本が単独開発したEETエンジン(技術評価試験用のエンジン)であるXF9-1を挙げてみる。
XF9-1の1基あたりの発電力は180kW級であり、双発だからエンジンだけで発電力は360kW級となる。
一方、F-22は65kWの発電力を持つF119を2基搭載するから、F-22の発電力は130kWだ。
F-35は、160kWの発電力を持つF135を1基搭載するから、F-35の発電力はエンジンだけだと160kWしかない。
このように、XF9-1の時点でF-22やF-35の発電力を大幅に超えている。
冷却能力の点でも、日本は「将来戦闘機用小型熱移送システムに関する研究」で技術を確立済み。
燃費の点では、XF9-1はF119比で約14%優れている。
サイズの点では、XF9-1はF119と同等の推力を実現しながら小型化を実現している。
このように、日本単独での優れたエンジンの開発は十分に可能だ。
腰をおるようで悪いが、実用量産化には
日本にはまだまだ超えなければ行けないハードルはあるぞ
例えば冷却システム。航空機に詰めるほど小型で高冷媒装となってくると、置日本の冷却装置ははっきりいって微妙。
冷却できなきゃ定格がだせないのでカタログスペックだけでしかない。
プロトタイプがあっても量産化が一番手間取るのが現実。
ここででてるF135もプロトタイプから量産化までえらい時間と金がかかった
そのあおりを受けてF136の量産化を断念したのは知ってるだろう
だからといって日本に無理なのかとなるとそこまでは言わん
水素冷却にとって燃料電池と水素を同じく使うことでトータルでの小型軽量化を目指そうというアプローチをJAXAや東芝が開発しつつある。
まあ、濡れ手に粟とはいかないよ、ということは考えておけ
日本は「将来戦闘機用小型熱移送システムに関する研究」で、次世代の冷却システムに関する技術も確立済みだよ。
小型で熱移送能力に優れたベーパ・サイクル・システムの試作及び実証も終わってる。
排熱能力の拡張の為、空気への排熱だけでなく燃料への排熱に関する研究も実施済みだ。
なお、ベーパ・サイクル・システムとは、液体の蒸発及び気体の凝縮により熱を移送させるサイクル・システムのことで、代替フロン等の高い蒸発潜熱を利用したサイクルのため、熱移送能力に優れ小型化が可能である。
増大する発熱への対応にあたり、従来のエア・サイクル・システムでは、エンジンから一部の圧縮空気を抜き、冷却空気を作った上で熱交換するため、装置の大型化及びエンジン性能の低下を招く。
これらの事からレーダーなどの発熱量の増大に対応する、効率の良い熱移送能力を持つ小型熱移送システムの実現が必要であるが、これを達成できるのが小型で熱移送能力に優れたベーパ・サイクル・システムだ。
他にも、全機レベルの「熱収支管理技術」も併せて研究を実施済み。
これは、ミッション全体を通した全機の熱収支を管理し、最適な熱移送システム、排熱先を適宜選択し、機体性能を最大発揮することに資する。
「熱収支管理技術」で最適な熱移送システム及び排熱先を選択する事で、機体性能を最大発揮する。
戦闘機の各種ミッションに応じ最適な排熱先を適宜選択する等を行う熱収支管理機能を実現する「熱収支管理装置」の試作及び実証も実施済みだ。
他にも「将来戦闘機用小型熱移送システムに関する研究」では、様々なことが行われているが、ここでは割愛する。
>プロトタイプがあっても量産化が一番手間取るのが現実。
開発者インタビューによると、XF9-1の開発はノートラブルで、驚くくらい順調だったらしい。
しかも、あっさりと設計値通りの推力が出たそうなので、いけると思う。
XF9-1の試験を進めていく上で大きな課題は出てきていないそうだし、開発者も「この先、もちろんトラブルがゼロということはないと思うんですが、ただ今までの経験上、ここまでできていれば何か起こっても必ず解決できる範囲だろうという感じです。」と述べている。
あのね、代替フロンを使う冷媒装置自体、重くてでかいから航空機に使う冷媒に向かないんだよ。
しかも生産自体も先細り。
だから、各国ともヘリウムや窒素などの冷媒の開発に躍起になっているんだけど、
日本はこの分野で乗り遅れているのが実情。
もっとも小型軽量化がもともと難しいため、代わりに日本が目をつけたのが自身が得意とする水素。
搭載する燃料電池と水素を一括することでトータルでの小型軽量化を目指そうという試み。
日本の技術を意味もなく盲信するのもほどほどにしておかないと
>重くてでかいから航空機に使う冷媒に向かないんだよ。
将来戦闘機用小型熱移送システムとして試作も外部の評価も済んでて目標達成は十分可能と判定されてますが。
てか代替フロンはVCSを説明するための一般的な例に過ぎないのでそんなに力入れて否定しても意味ないですよ?
次期戦闘機用小型熱移送システムの冷媒に何を使うかは明言されてなかったと思います。
米空軍の次期戦闘機はAETPの開発経験を活かして別のエンジンを開発してるから、登場時期的に比較するならAETPじゃなくて次期戦闘機に搭載されるエンジンじゃない?
XF9の要求発電力って180 kW
でF135が160kWのはずただから発電力だけで言うならすでにクリアしてるはずだけど。>エンジン
いや、上のコメントで既述した通り、日本単独での優れたエンジンの開発は十分に可能だ。
日本と英国がエンジンを共同開発する理由は、日本と英国の双方にとってメリットがあるから。
もともと英国側はテンペスト用エンジンで基本設計から日本の協力を希望しており、それにこたえる形で日英共同開発になった。
英国は、事前協議で日本の高温化コア技術を欲していると述べた。
つまりは日英共同開発により、英国は日本の優れたコアエンジンの技術を手に入れることができ、日本は生産数が増えることによるコスト削減が期待できる。
このように、実現すれば日本と英国の双方にとってメリットがあるが、実現しなかった場合に備えて日本単独でのエンジン設計も実施されている。
>日本単独での優れたエンジンの開発は十分に可能だ。
そういうのは普通は捕らぬ狸の皮算用って呼ぶ。
いや別に、大量受注を前提に販売価格を破格に安く抑えるとかいう話でもないんだから、皮算用とは違うだろ。開発費が予算化できなければそれまでの話なんだから。
すでにF135級世代なら開発が完了していることに突っ込むべきなのでは?
そうやって今まで予算も与えず開発も何もせずにここまできて、
いざ予算ついて自主開発始めたらお前ら含む外野から、金がもったいないだの技術不足で出来ないから無駄だの何のって。
そん事言ってたもう何にもしなくなるよ?いい加減考えないと。
AETPの計画をポシャらせるのは反対
しかし、本当にその性能を達成出来るのか疑問
(性能は可能であっても耐久性含め)
また、絵に描いた餅にならないだろうか?
まあ3つ作れば良いでしょうな。議会さんよぉ予算もっと用意せぇや!
F-35はF-16の後継機として単発機の必要があったわけだけど、要求が過大すぎる。
技術革新によりいつかは単発機でもレーザー兵器等の搭載は可能になるだろうけど、さすがに一足飛びに狙いすぎでは無いか。
余裕のある双発機で成功させてから、単発機で実現させるべきだったように思う。
・・・というか、このパターンって恒例のアメリカの新兵器開発失敗パターンじゃありません?
新機軸を盛り過ぎて、結局オジャンになるパターン・・・。
新機体の新エンジンの性能不足はもう米軍のお約束というかなんというか…
同じような話いろんな機体で見てきたぞ…
要件を見るにエンジンどころか戦闘機の新規設計が必要なのでは?
控え目にレガホからスパホ並みの劇的ビフォーアフターが必要。
アメリカならNGADの開発が始まってるし、日本は実質的にイギリスが国際共同開発をしているテンペストにぶら下がっている状態だし……
いや、日本と英国は対等な関係だし、テンペストにぶら下がっているわけでもない。
ロイターは「次期戦闘機開発をそれぞれ進める英国と日本が、双方の計画を統合し、新たに共同事業を立ち上げる方向で調整している」と報じている。
つまりは、協議がうまくいけば、日本の次期戦闘機の開発プログラムと、英国のテンペストプログラムは発展的解消を遂げて、新たに共同事業が立ち上げられる。
ロイターは「日本と英国の対等な協力関係になるだろう」と報じている。
やはり彼ら自らが批判する通り、米国の低バイパスエンジン技術は大きく後退している。 英国のテンペストエンジン構想こそはるかに先進的だ。
内蔵ハイブリッド発電機を採用したテンペストのエンジンはメガワット級の発電量を目指し、ロールスロイスが「空に浮かぶ発電所」と言明しており、米国が適応サイクル方式という高価なハードウェアで実現しようとするエンジンの燃費及び寿命問題を人工知能ソフトウェアで簡単にクリアすることを狙っている。
我が国がイギリスとこうした超次世代エンジンを共同開発するのは天運です。足鎖であり、国税浪費の元凶であるF-35の購入数量を英国のように半分に削り、F-3/テンペストの開発加速、大量配備に総力を尽くさなければならない。
F-35Cの加速こんなに低いのか…
さすがに使い物にならないレベルでは
エンジン同じなのに、デカくて重いからな
それでもF-35Cは内部兵装はだから加速・機動性が悪いわけでもなかったりする
F-18とかに同等兵装させたら、更に鈍足・機動性皆無になってしまう
離着艦性能≒低速優先の艦載機だしこんなもんでは?
レガホと大差なし、スパホよりはマシでしょ?
まあどうせ換えるなら余裕がある方が良いよねってのは自然な話ではある
ただ換装に60億ドルもするなら、新エンジンの初期不良が洗い出された頃に、初期のF35を中古で売り飛ばして置き換える形で新しいの買った方が良い気がする
エンジン開発もいいけど、その前に対中防諜の観点から、人、機器、ソフトウェアなどのあらゆる面で完全にスパイフリーな開発環境を整えるのが先じゃないか?
どんな高性能エンジンを開発しても、中国が技術を盗んで同じものを作ってしまえば、新型エンジンを開発する意味がない。