一向に完成しないボーイングのT-7Aについて政府説明責任局は「さらに完成が遅れるかもしれない」と、空軍も「ボーイングのスケジュールは楽観的な仮定に依存しているため、トラブルが発生しても対処する時間的余裕が全くない」と指摘している。
参考:GAO blasts T-7 delays, cites ‘tenuous’ Air Force-Boeing relationship
T-7Aの問題はデジタルエンジニアリングの効果=圧縮できる開発期間やコストを見誤ったのが原因
米軍採用を勝ち取ったボーイングのT-7A開発状況は芳しくなく、2022年後半に予定されていたマイルストーンCは2025年2月までずれ込むことが確定しており、初期作戦能力の宣言は2027年以降になる可能性が高いのだが、政府説明責任局(GAO)は最新の報告書の中で「さらに作業スケジュールが遅れるリスクに悩まされている」と指摘し、空軍関係者もGAOに対して「ボーイングが提出してきた新たなスケジュールは『最も楽観的な仮定』に依存しているため、仮にトラブルが発生しても対処する時間的余裕が全くない」と述べている。

出典:Boeing
つまりマイルストーンC(量産段階に進むための審査)を2022年中に達成するのが不可能になったため、ボーイングは2023年1月に仕切り直した開発スケジュールを空軍に提出、これを元にマイルストーンCを2025年2月に変更したのだが、このスケジュールは残りの開発作業とテストにトラブルが発生しない「楽観的な予測」に基いているため、テストの失敗、予期せぬソフトウェアのバグ、問題になっている射出座席の修正、その他の問題に直面しても時間的余裕がなく、GAOは「もし問題が起きれば大幅な遅れが発生する」と指摘しているのだ。
ボーイングは次期練習機を受注するため「競合よりも圧倒的に安価な入札額」を提示、空軍はボーイングの入札額について「予想していたプログラムコストより100億ドルも安かった」と述べており、空軍の要求要件に合わせた実機の開発作業、T-7A×351機、地上シミュレーター×46台、メンテナンス、サポートなどを全て含む「最大92億ドルの契約」を受注することに成功したが、この契約はKC-46、エアフォース・ワン、MQ-25と同じ「固定契約」なので、想定以上に開発費が高騰すれば全てボーイングが負担する必要がある。

出典:Boeing
開発作業の遅延でボーイングは10億ドル以上の追加負担を、2023年に量産機が手に入ると信じていた空軍も「T-38の寿命延長(2024年度予算に1.25億ドルを計上)」に追加投資を余儀なくされており、利害が一致する両者はT-7Aの実用化を急ぐため「開発」「テスト」「量産」の3要素を同期させながら同時に進めようとしているのだが、GAOは「もしテストで問題が見つかればコストを上昇させる要因になる」と警告しているのが興味深い。
問題の射出座席は今年2月の予備テストで十分な改善が見られたものの、安全性を実証する「射出シークエンスのテスト」には最大2年近くかかる見込みで「もし設計自体に変更が必要な修正が見つかれば量産された機体の修正コストは莫大なものになる」という意味なのだが、F-35もテストが完了する前に量産機の製造を開始したため「テスト前に製造された機体の修正」に14億ドルも追加コストが発生しており、GAOは「遠回りに見えても1つづ確実にステップを上げた方がいい」と指摘しているのだ。
さらに空軍とボーイングは飛行制御ソフトウェアの完成度についても意見に相違があり、空軍の専門家は「あと6回程度の修正が必要で、各修正毎に6ヶ月程度のテストが必要なためソフトウェアの完成は2年以上遅れる」と主張している。
結局のところT-7Aの問題は「ボーイングがデジタルエンジニアリングの効果=圧縮できる開発期間やコストを見誤った」と言え、ケンドール空軍長官も「完全に信頼できるモデルが確立されていない以上、デジタルの進歩が現実のテストに取って替わることはできない。確かにデジタルエンジニアリングは大きな進化だが効果は過大評価されている。検証された手法と異なることを行う場合は検証する必要がある」と述べており、空軍はAGM-183AとT-7Aの開発で高い授業料を支払った格好だ。

出典:Air Force photo by Matt Williams
ただT-7Aの実用化が今以上に遅れると米空軍の高等戦術訓練機、米海軍の戦術的代替航空機、ゴスホークの後継機プログラムへの提案に間に合わなくなる可能性があるので、ボーイングにとっては死活問題だろう。
関連記事:米空軍が極超音速兵器「AGM-183A ARRW」の調達を断念、事実上の開発失敗
関連記事:ボーイングが陥った固定価格の悪夢、KC-46Aの損失が70億ドルを突破
関連記事:芳しくなくT-7Aの開発状況、量産機引き渡しは2023年から2025年以降に変更
※アイキャッチ画像の出典:Photo by: U.S. Air Force
もう破棄してLM製T-50いれたら?っていう感想しか出ない
T-50は自重がT-7Aの2倍ほど重くそれは戦闘への要求が相対的に大きいためでしょう。
アメリカや日本の場合このクラスの軽戦闘機は向いていない気がします
同感ですね
それと空自の次期練習機はこれでM-346に確定でしょう(恐らくT-7Aでは時期的に間に合わない為)
さっさと決めないとT-7A押しつけてきそう。
できれば新型がいいなー
文谷氏によると日本領空に接近する中国・ロシア軍機の大部分は亜音速機らしいので、F15やF35のような高性能戦闘機でスクランブル任務を行うのは割に合わないとのこと。超音速飛行が可能で空対空ミサイルを2発積める程度の戦闘機を採用すれば、多数購入できるうえにスクランブル任務のコストを節約できる。FA50はアメリカ製兵器を搭載できる、最高速度はマッハ1.5、価格は30億円程度で元が練習機であるため、自衛隊で採用すれば老朽化が問題になっているT4の後継とスクランブル任務のコスト削減が同時に可能になる。韓国の大統領が日本に友好的なユン氏なので、日韓友好をアピールする上でも有効だろう。
(文谷氏は「軍事研究」誌でスクランブル専用機として中国製戦闘機を推していたが、西側と全く規格が異なるので運用は不可能。)
財務「じゃあ戦闘機いらんね(大幅カット)
とか戦闘機での大量領空侵犯があったときとか配慮も考慮もしてないんだよな
ついでにいうと航続距離も
ポーランド空軍のようにFA50とF16、F35の三本立てが最適解だと思います。
FA50は練習とスクランブル対応、F16は防空の主力、F35は隠密作戦のように役割分担すれば、各機体の能力に応じた最適な作戦が可能です。
FA50の航続距離の短さについては、日本の場合は海沿いの基地に分散配備することでカバーできるでしょう。かつての三菱F1みたいに爆撃任務に使わないのならば重量増による航続距離減少や機動性の低下も避けることができる。
分散配置するには整備するための人も設備もその分確保して配置しなきゃいかんのですが。
スクランブル機の運用コスト軽減のためにFA-50とその運用インフラを分散配置…って完全に目的が迷子になってませんか?
それならF-16を導入して三沢や那覇に配置する方がまだなんぼかコスパがいいのでは…(なお納期
戦闘機の機種を増やす位ならば、F-15EX導入して従来からある資産を有効活用した方が結局は安く済むのでは?退役する初期型も80%位は部品に出来るとの事ですし。
FA50は日本にとって致命的な欠陥がある
導入時にムン氏の後継者が大統領だった場合、日本に納入される機体の部品ソフトの製造又は組立てが韓国だった場合、信用できない。
高価格帯の能力が限定されすぎている航空機や訓練だけにしか使用出来ない練習機の保有割合なんて世界トップクラスじゃないのか?攻撃に使用出来る航空機は米空軍だと自衛隊の4倍だけどT-4と同じT-38の保有数なんて2倍ぐらいしか無い。
現時点で周辺国がキナ臭いのに長射程ミサイルがスパローしか使用出来ない状態で放置しているとか流石におかしいやろ。何も考えてないのは空自も同じだろうに。
そもそもスクランブルって進行してきた敵戦力を領空に入る前に止めるのが目的で、当然仮想敵は敵の主力戦闘機なんですがね。中露のスパム領空侵犯のせいでスクランブルの意味が鈍足大型機を追い払う事になってますが。
FA-50でJ-20やSu-57かもしれない不明機に対処しろは鬼畜過ぎませんかねぇ。
たしかにFA-50の素性は悪くないのですが、文政権から伊政権での変化が激しかったようにその逆も今後起こりうるわけです(対日融和的な事に対する世論調査が芳しくないのもその証左)。
これから前向きな関係を築くことは重要ですが、防衛関係のハード面を何かしら韓国に依存するのは現時点ではまだリスクが高いと思います。
文谷の言ってることはあまりあてにしないほうがいいですよ。自衛隊は安価な中国製戦闘機を導入すべきとか言っていた御仁ですから。
一体どこに仮想敵国から平気を買う国が存在するというのか…
中国製は極論にしてもスクランブルその他用途として安い飛行機を揃えるってのは変な考えではないと思うが
問題なのは値段ではなくて中国から買うということですね。日本に自国と同じスペックのものを輸出するわけがないので日本が中国と対立した際は数も性能も劣ることになってしまうし、相手がこちらの機体の仕様も弱点も全部知っていることになる。
領海のさほど広くない韓国でさえ「KF-16でも航続距離が足りん」といってるのにそれよりはるかに航続距離の短いFA-50が日本のスクランブルにどれだけ役に立つんでしょう。
日本の防空識別圏の南西端までだと那覇から700kmくらい?
超音速どころか遷音速の下の方で飛んでっても帰りの分残したらロクに燃料使えないし、小松や築城や三沢から近距離限定で使うにしてもちょっと引っ張り回されたらすぐ帰りが心配になるからかえって対応に必要な機数が増えかねないのでは…。
もちろん「絶対に出て来た基地に帰らなきゃいけない」訳ではありませんがそれ前提に機種選定条件緩くするのはリスキーかと。
それは金勘定・効率面からは正しいかもしれませんが、貴方がパイロットだとして、①最高の電子戦装備とステルス性能、その範囲で最高の機動性を持つ戦闘機と、②その8割で買えるけど性能は↑に一歩も二歩も譲る戦闘機、どちらでスクランブルをかけたいですかね?
平時といえども最前線にいるパイロットも、また守られるべき日本国民であることは忘れないでほしいです。
(ま、専守防衛とは第一撃で自衛隊が血を流す体制何だということは忘れられて久しいですが)
現実は8割じゃなくて半値以下
運用コストまで入れたらもっと効率的にできるな
リソースには限界があるんだから無駄遣いしていいはずがない
日本の場合は保有機数にも限界があるので。
まあ「んなもん早よ無くせや」という話ではありますが。
>まあ「んなもん早よ無くせや」という話ではありますが。
オタ的には、定数緩和された上で、多種多様な装備に溢れてくれると嬉しいのですが、
人口ブーストの在った時代なら兎も角、人手確保が課題な昨今ですから、
「無いもの強請りで終了」な話しになるのでしょうね。
そこは(本音ではあるけど)枝葉で、主旨は「機数に限りがある」の方です。
機数に限りがあるのに単価ケチって要求性能満たさない機体を導入したら総合力が落ちちゃいますからね。
数に限りがあると、『適材適所』より、『大は小を兼ねる』の論理が勝ると。
そして訓練されたオタは、上記の論理で表面上は諦めるけど、
本音の部分では『多種多様』の夢を見る訳ですね。
色々な意味合いを含めての『夢』を。
誰でも最高の兵器で戦いたいのですが、高価過ぎて数が揃えられなければ守備すべき領域をカバーできません。ナチスドイツの6号戦車は当時世界最高の性能でしたが、高価で生産台数が少なかったため数に勝るソ連軍T34の進撃を止めることはできませんでした。もし自衛隊機を全てF35に置き換えた場合、今の予算では精々200機ぐらいしか保有できず、中国・ロシアが今後大量に配備すると想定される亜音速ドローンの監視に支障をきたすであろう。
FA50の運用コストはF35の1/10で速度性能も劣らないので、スクランブル任務に支障は無く大量に配備可能である。最新型のFA50はアムラームも装備可能で、地上レーダーと早期警戒機の支援を受ければそれほど不利ではない。
パイロットの人手確保に関しては、文谷氏曰く「パイロット志願者は声優志願者並みに多くいる」らしいので、少子化しても問題ないでしょう。志願倍率が現在の90倍から50倍に落ちたところでパイロットの質は確保できるはずだ。
同じ方の発言なんで、反論の論旨は同じになるのですが、言い方を変えると、「貴方は文氏の思想的後継者は今後とも韓国大統領に就任することは無い」と本気で考えているのですか?
谷族のほざくことは無視しろって、ミリオタの基礎知識だろう?
「海自や空自の基地警備にARは不要、ボルトアクションで十分」って宣った事もあったな
KC-46の嵩むボーイング負担の納期延長による赤字に今回の期日内に収まらないペナルティとか軍用機部門の赤字による会社運営がなんだか凄そうですね。
民間機部門だって、737MAXの件に、787の受注減少(大方行き渡ったのと、コロナでのキャンセル)に品質問題(サウスカロライナ工場生産の機体に問題があり、シアトルの方は生産終了)、777Xの開発延長・納入遅延で、もう見てられない惨状かと
まあ、エアバスの方だって問題が無い訳でもありませんが……
なんでボーイングはこんなに劣化してしまったのか。詳しい人教えてほしい。
元々ミリタリー部門は凄い保守的で、無理しないボーイングだったのに(爺ィ脳)。
吸収したMDは、ロッキードやグラマンとトップクラスのはずなのに((ボケ爺ィ昔惜)。
軍事部門とは畑は違うとは思いますが、Netflixの「他に落ちた信頼 ボーイング737MAX墜落事故」ってドキュメンタリーは素人目線には中々興味深かったです。
安全重視の技術者中心のモノ造りの社風から、丁度マクゴネルダグラスを吸収合併した辺りから、コスト効率重視の社風に変わって、テストフローの軽視やドキュメントを残さない、問題提起する技術者の大量解雇に繋がって…というダメな企業文化あるあるとあいうか、今のボーイングの斜陽が何となく伺えるというか…
ボーイングのMSJの技術顧問達って本気で能力あったんだろうか?
昨年初頭の朝日新聞デジタル記事ですが、1990年代にボーイングの機体制御システムを手掛けた技術者(後にB社へのサプライヤー企業に転職)への取材記事がありました。
吸収合併のはずが旧MD経営陣に主導権を握られ、株価至上主義に経営方針が変わったそうで、利益を出す方策としてB社では丸投げ外注が増えていきました。
件の技術者の転職先は同時期にほぼ同じ機器をエアバス社からも受注していますが、同社からは詳細で膨大な要求仕様書が送りつけられたそうです。
一方、B社は「どんな機能と設計が必要かを考え、書類も整えてほしい」と丸投げしてきたとのことです。
B787の不手際やB737MAXの墜落事故も原因は無責任な丸投げ外注にあると言われています。
その経営体制が現在も続いているんでしょう。
あー全部その手の部品メーカーに丸投げしろって指示出したんだな>MSJ
そら無視するわ
ボーイングのまた固定契約かw
呪われてるな
それでもまだつぶれないのはさすがだが
潰すに潰せないから、アメリカ政府も総出で延命させているだけだと思うよ
実際、コロナと737MAXの件で相当な額を注ぎ込んでクビを繋がせていたハズだし
正直、B-52の機体寿命が切れる前にボーイングが倒産する可能性の方が高いと思うよ、このままじゃ
KC-46を固定契約して死にかけてるのに
なんで同じ失敗を繰り返すのか
米国がボーイングを潰せないと思っているから
こんなクソ以下の経営ができるんだな
いくつかの新機軸があるとはいえ練習機もまともにロールアウトできなくなるとは。。
ウィリアム・ボーイングもマクドネルもダグラスも草葉の陰で泣いてるよ。
ボーイング…お前船降りろ
T-7の開発が間に合わなくて、T-50を韓国からリース。その後T-7の契約を切って、T-50の発注をかけるまで見えた。
ついでにボーイングの軍用機部門が2030年代迎える前に店じまいまで見える。
実際問題、韓国軍にもLIFT化されたT-50はそんなに数はないが、すでに物が生産できる体制だし比較的安全ではないだろうか。
あとはアメリカが国外で生産された装備の輸入緩和をするかどうか……(LMに追加で生産ラインを設けさせるほど人的金銭的余裕あるの?)
じゃあ逆に、何ならまともにできるのだよ(素)
従業員のストライキじゃね
契約を取ってくる事は優秀でしょ(その後の事は知らない)
NAKANUKI
ボーイング出身者は経営陣から全員叩き出され、残ってるのはマクダネル・ダグラス出身者だけという噂は本当なんだろうか…