米空軍が保有する61機のB-1B爆撃機の内、全ての任務を完全に遂行できるは6機しかないことを、共和党上院議員のマイク・ラウンズ氏が明らかにした。
参考:Senator: About 10 Percent of B-1s are Fully Combat-Ready
中東で機体の構造的寿命の大半を使い果たしてしまったB-1B
7月30日、米国議会上院軍事委員会に名を連ねる共和党上院議員マイク・ラウンズ氏は、空軍が保有する61機のB-1B爆撃機の内、全ての任務を完全に遂行できるは6機しかないと明らかにした。
これは以前、記事にした「米空軍は爆撃機戦力の40%を失う?任務遂行可能なB-1B爆撃機がほとんど無い」の内容と情報が一致する。
大型爆撃機のB-1B「ランサー」は、核兵器や大型の巡航ミサイル運搬用として設計された航空機で、ソ連崩壊、冷戦終結など、当初想定された任務の必要性が低下したため、通常兵器が搭載出来るよう改造され、約20年間、本来の任務からかけ離れた、長距離近接航空支援任務へ投入され、アフガニスタン、イラクで酷使を続けた結果、機体の構造的寿命の大半を使い果たしてしまった。

出典:pixabay B-1B
米国下院議会の委員会は「現時点で、作戦任務を完全に遂行可能なB-1Bの数は、一桁に過ぎない」と話し、B-1Bの状況が悪化していることを認め、さらに、必要な訓練に使用する十分な量のB-1Bがなく「B-1B搭乗員の練度を維持することが難しくなっている」と指摘している。
現在、15機のB-1Bが空軍の保守点検施設で機体メンテナンスを受けている最中で、39機のB-1Bが機体のメンテナンスやその他の問題により飛行を停止している。
※完全に作動する6機を足しても60機しかなく、残りの1機が何処で何をしているのかは謎。
戦略軍司令官のジョン・ハイテン空軍大将(現在、統合参謀本部副議長に指名され、指名承認手続き中)は上院軍事委員会の公聴会に出席し、資金さえあれば保守点検施設でB-1Bの問題を解決できると訴え、そのための資金を空軍に与えるよう要請した。
今後20年間、B-1Bを飛ばすためには、機体構造の大幅な補強が必要で、主に「主胴体、主力付け根部分、可変翼機構、昇降舵」についての補強を行う必要があり、2020年度の予算で39機分のB-1Bメンテナンス費用が認められなければ、B-1Bは当分の間、地上で過ごすことになる。

出典:public domain B-21
当初、ノースロップ・グラマンが開発中のステルス爆撃機「B-21」を100機調達し、2030年代までにB-2、B-1Bを退役させる予定だったが、米軍は中国の軍事力増強に対応するため2018年、議会に対し312個ある飛行隊を、今後10年間で386個飛行隊まで増やすよう要請している。
もし、この要請に議会が承認を与えれば、爆撃機の飛行隊を現行9から14(+5個飛行隊)へ増やさなければならず、さらに追加で100機前後のB-21が必要になる。
恐らく、B-21を200機前後調達し、B-52Hと合わせて14個飛行隊を構成するもと思われるが、B-21を年間12機づつ製造したとしても、200機を調達するためには16年ほど掛かるため、B-21の調達が完了するまで、B-2、B-1Bの退役を先延ばしし、14個飛行隊を実現しようと考えているのだろう。
この計画を実現させるには、B-1Bをあと20年前後は維持する必要があり、アフガニスタン、イラクですり潰してしまった機体寿命を、何としても取り戻さなければならない。
地上でモニュメントになるには、まだ早すぎる。
※アイキャッチ画像の出典:public domain
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