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表面上は横這い実質的には削減? バイデン政権が国防予算案の規模を7,150億ドルと発表

バイデン政権は今月9日、2022年度予算教書(連邦政府予算案)の一部を先行発表して来年度の国防予算を7,150億ドルで編成する方針を示した。

参考:Biden requests $715B for Pentagon, hinting at administration’s future priorities

7,150億ドルという国防予算案は表面的には横這い、但し海外緊急事態対応基金が廃止されるため実質的には500億ドル以上の削減?

バイデン政権は2022年度予算教書(連邦政府予算案)の一部を先行発表、注目を集めていた国防予算案はトランプ前政権時代に示されていた7,220億ドルより70億ドル減、2021年度の国防予算より100億ドル増の7,150億ドル(約78兆円)で編成すると明らかにした。

単純に見れば大統領選挙で勝利を収めた民主党が主張する国防予算削減と中国の脅威に対抗するため共和党が主張する3%以上(210億ドル)の国防予算増額の間をとった形と言えるが、バイデン政権は「国防総省の裏金」と呼ばれていた「海外緊急事態対応基金(OCO)」を廃止するため国防総省は執行できる資金は500億ドル以上削減されるのかもしれない。

出典:Gage Skidmore / CC BY-SA 2.0

このOCOは元々はイラク戦争やアフガニスタン戦争の戦費調達のために設けられた制度なのだが、すでに制度の趣旨は形骸化して戦費ではなく装備品の調達や維持費用に転用されており国防総省は本年度の国防予算7,050億ドルとは別にOCOとして約680億ドルを確保していたため2021年度に国防総省が執行できる資金の合計は7,720億ドルに達してしたのに、2022年度はOCOが廃止されるため国防総省が執行できる資金はバイデン政権が示した国防予算案の7,150億ドルだけという意味だ。

補足:2021年度に要求された約680億ドルものOCOの内485億ドルが永続的な要求額で、この巨大な予算を説明するための詳細が殆ど提示されておらず実質的に国防総省が国防予算で確保できなかった部分の穴埋めに充当されいるという認識が強い。

そのため2022年度の国防予算は本年度と比較して100億ドル増額されたと言ってもOCOで確保していた資金が入ってこないため、このままでは国防総省は本年度と比較して500億ドル(約5.5兆円)以上資金をカットされてしまうことになる。

ただ今月9日に先行発表された2022年度の予算教書は各連邦政府機関に配分する予算のトップラインのみしか明かしておらず、OCO廃止に伴う国防総省への補填があるのかもしれないので5月以降に発表される詳細な予算教書を見るまで何とも言えないがバイデン政権の関係者はOCOで賄われていたものに関して「基本的な国防予算内で達成する」と言っているため大きな期待はできない。

因みに米メディアは今回発表された予算教書に国防予算の配分方針に関するヒントが散りばめられていると言っており、バイデン政権は研究開発に資金を重点的に配分するため大規模なレガシーウェポンやシステムの統廃合を予告、海軍の艦艇調達に関しては「実行可能で責任ある投資」を提案しているのでトランプ政権が掲げた355隻体制や政権末期に当時のマーク・エスパー国防長官が発表した500隻体制「Battle Force 2045」には見直しが行われると言っている。

出典:public domain ミニットマンIII

あとトランプ大統領が推進した核兵器や大陸間弾道ミサイルの近代化についてバイデン政権は維持するつもりで、予算削減の槍玉に挙げられていた大陸間弾道ミサイル「ミニットマンIII」の更新プログラム「地上配備型戦略抑止(GBSD)」には今後も資金が供給される見込みらしい。

これは管理人の個人的な推測だが国防予算を大幅に削減すれば国内外に対する影響が大きいと考えたバイデン政権はOCOを廃止することで実質的な国防予算削減を狙っているのではないかと思っており、国防総省は大幅な予算の組み換えを強いられることになるだろう。

関連記事:米国防総省、増額が見込めない国防予算を節約するため空母の廃止を検討
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関連記事:米中を比較しても無意味、政治的なレトリックに過ぎない国防予算10%以上の削減要求

 

アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Trevor T. McBride

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 4月 11日

    廃止される基金だけで日本の防衛費と同額ですがな。
    安保体制にもいつかはしわ寄せが来る、こちらは防衛費も増やさないとならない状況

    30
    • 新・にわかミリオタ
    • 2021年 4月 11日

    >本年度と比較して500億ドル(約5.5兆円)以上資金をカットされてしまう
    相変わらず規模が大きいなぁ。
    それにしてもこんなにカットして大丈夫なんだろうか?
    いや、大丈夫なわけないよな・・・

    23
    • 匿名
    • 2021年 4月 11日

    オバマ政権時代の様に対テロ予算に偏重し過ぎて正面装備の老朽化を招いた様な失敗を繰り返さない事を祈ります。

    25
      • 匿名
      • 2021年 4月 11日

      それは筋違いな批判
      あのときはそれが必要な予算組み立てだと国民も理解していた
      誰が大統領でも同じ事をしてる
      あえて過ちを指摘するならば、アメリカを標的とするテロを生み出すに至った長年のアメリカ対外政策そのものが問題でしょう

      23
      • 匿名
      • 2021年 4月 11日

      そう言えばアメリカの極超音速兵器開発を中止させたのもオバマだっけ。

      14
    • 匿名
    • 2021年 4月 11日

    OCOの撤廃でもアフガン、イラク、シリアから撤退なら問題ない。ただ、油田が米国所有になってるという、イラク、シリアから撤退するかな。
    イラク、シリアの米軍支配地域で事実上グルド国が復活してるから、トルコは喜ぶか。そして、マスコミはなんて表現するかな。
    あ、T-7Aレッドホークの代わりにT-50で先行してシステム構築は予算カットか。

    5
    • 匿名
    • 2021年 4月 11日

    対外的には対中国への姿勢を維持しつつ、予算自体は削減した訳ね
    日本も第二の防衛費・補正予算があるけど、これを禁止したようなものか。仮にも5.5兆円なんだから米軍にはかなりの痛手だろうが、それでも10%削減という最悪の事態よりはマシに思える。マシなだけだけど。
    ていうか、裏予算が日本の防衛費とほぼ同等って…

    14
      • 匿名
      • 2021年 4月 11日

      5兆円以上もの裏資金って、米国防総省の闇を見た気がする。

      6
        • 匿名
        • 2021年 4月 11日

        CIAや国務省も独自の闇資金持ってるんやろうか?

        2
          • 匿名
          • 2021年 4月 12日

          CIAは基本的に闇だから
          本当に何をやってるのか、過去の秘密工作の露見や、ここでも出た、隠蔽のための空軍への予算付け替え疑惑な。

      • 匿名
      • 2021年 4月 11日

      日本の補正予算は全額国会審議を経て可決する必要が有るから、予算の使い道を議会に殆ど提示出来ていないOCOの方が遥かにヤバい

      16
    • 匿名
    • 2021年 4月 11日

    もうなんか文字通り桁違いすぎて笑うわ。我が国もお金があったらな…

    7
      • 匿名
      • 2021年 4月 11日

      大半が人件費と兵器の維持管理費で消えるけどね。

      7
    • 匿名
    • 2021年 4月 11日

    この時期に軍縮は割と重要なポイントだろうね
    中国もこの数字を見ていないわけがない
    バイデン政権になってからやたらアメリカに対して強気な理由の一端

    16
    • 匿名
    • 2021年 4月 11日

    コロナバブルが弾けたら、なりふり構わない景気対策やりそうだから
    そのしわ寄せがまた国防費に影響しそうだな

    2
      • 匿名
      • 2021年 4月 11日

      正直、何故株価がこんなに上昇するのか理解出来ません >コロナバブル

      3
      • 匿名
      • 2021年 4月 11日

      もう既に、コロナバブルの悪影響は出ているんだよね
      具体的に言うと財政出動に伴う財政悪化が進んでいる為、米国を中心に法人税の引き上げが始まっており、先日のG20では世界共通の「法人税の最低税率」について議論が始まった程
      この分だと、影響は国防費に止まらず世界経済全体へ波及しそうなんだよな

      3
    • 匿名
    • 2021年 4月 11日

    >これは管理人の個人的な推測だが国防予算を大幅に削減すれば国内外に対する影響が大きいと考えたバイデン政権はOCOを廃止することで実質的な国防予算削減を狙っているのではないかと思っており、

    米政府内には多くの中国人脈が浸透していると言われてます。
    表向き国防費増のフリをしつつ、実質国防費減ということは、中共にとっては実を取れるいい話ではありますね。

    20
    • 匿名
    • 2021年 4月 11日

    >2021年度の国防予算より100億ドル増の7,150億ドル(約78兆円)

    海外緊急事態対応基金(OCO)を廃止しなかったとしても、
    インフレ調整後では前年度より約0.4%減額になるので、
    どのみち実質減額になりますな。

    3
    • 匿名
    • 2021年 4月 11日

    アメリカは兵器の研究開発費に
    想定していた金額よりも大幅に超えて
    さらに延期してプロジェクトをキャンセルする事が多すぎる
    この部分を改善すれば結構な金額が削減出来そうだけど

    2
    • 匿名
    • 2021年 4月 11日

    アメリカ海軍には「2つの予算案」が存在するといわれている。一つは軍が希望するそのまんまの予算。つまり現在の兵器の維持管理費はもちろんのこと将来の脅威を見通して保有したい装備の研究開発なども盛り込まれている。そして実際に提示されるのは2つ目。これならギリ認めてもらえるだろう、というもの。将来への投資は少なくなり、現況への補填に充てざるを得なくなる。軍事予算をどんどん増額し、しかもその内訳さえ明らかにしていない中国はこの状況をどう見ているだろうか。

    5
      • 匿名
      • 2021年 4月 12日

      請求する予算がすべて満額回答の国なんて無いから
      落としどころに予算折衝があるわけで
      イケイケ冷戦時のソ連すら、過大な請求や不要な装備と見なされて予算切られた話は多々あるよ

      1
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