米国関連

再掲載|宇宙を作戦領域とする「宇宙軍」の武器とは何なのか?

日本でも宇宙空間を作戦領域とする「宇宙作戦隊」が誕生したが、果たして宇宙を作戦領域とする軍の武器は何なのか?

※本記事は2020年6月1日に公開した記事の再掲載です。

参考:What is a space weapon, and who has them?

宇宙兵器は大まかに6種類に分類できる?そもそも宇宙兵器とは何を指しているのか?

大気圏内で使用される兵器は大まかに陸海空の3つに分類され、陸上兵器なら戦車や装甲車、海上兵器なら空母や駆逐艦、空中兵器なら戦闘機や爆撃機など体系的に整備されているが宇宙を作戦領域に宇宙軍の武器は全く未知でまだ手探りの状況だ。

恐らく映画に登場するような武器を備えた宇宙船や無人ロボットが登場するのは遙か先の話で、まだ誰も宇宙兵器を分類することも体系的づけることも出来ていないが米国の戦略国際問題研究所(CSIS)は宇宙兵器の分類法を作成することに取り組んでいる。

戦略国際問題研究所が発表したレポートによれば宇宙兵器は以下の6種類に分類することが出来るらしい。

  1. 地球から宇宙空間の標的を攻撃する運動エネルギーを使用した兵器
  2. 地球から宇宙空間の標的を攻撃する運動エネルギーを使用しない兵器
  3. 宇宙空間の標的を攻撃する宇宙空間に配備された運動エネルギーを使用する兵器
  4. 宇宙空間の標的を攻撃する宇宙空間に配備された運動エネルギーを使用しない兵器
  5. 宇宙空間から地球上の標的を攻撃する運動エネルギーを使用した兵器
  6. 宇宙空間から地球上の標的を攻撃する運運動エネルギーを使用しない兵器

この6種類の分類はもう少しわかりやすく再分類すると「地球対宇宙兵器」と「宇宙対宇宙兵器」と「宇宙対地球兵器」に分けることができ、それぞれが物理的な手段と非物理的な手段を持っていることになる。

まずは最も開発が進んでいる地球対宇宙兵器から見ていく。

出典:Public Domain F-15による衛星攻撃兵器「ASM-135 ASAT」発射実験

地球対宇宙兵器の物理的な手段は主に対衛星攻撃兵器のことを指しており、この兵器は陸上や艦艇、航空機から発射されるミサイルで宇宙空間に配備されている敵の衛星を物理的に破壊することを目的にしている。米空軍は1959年に空中発射型の衛星攻撃兵器(ASAT)を米海軍はNOTS-EV-1ミサイルの発射実験を行い一定の成果を収め、1977年にF-15から衛星攻撃兵器「ASM-135 ASAT」を発射実験を行い、この種の兵器に必要な技術を確保したと見られている。

出典:Public Domain ソ連が開発しようとした対衛星攻撃兵器のTerra-3地上レーザー

ロシアもソ連時代に陸上発射型の対衛星攻撃兵器を開発して実戦配備を行い1990年代まで運用が続けられたが、現在は運用されていない。これとは別にソ連は地上配備型の高出力レーザーで衛星の機能を破壊する兵器を開発していたが実用化には至っていない。

中国は2007年に弾道ミサイルを転用した対衛星攻撃兵器の発射実験を行い、インドは2019年に対衛星攻撃兵器の発射実験を行った。そのため米国、ロシア、中国、インドの4ヶ国が対衛星攻撃兵器(もしくは技術)を保有(あとイスラエルが保有しているかもしれない)していることになるが、日本も本来の目的とは異なるが低軌道上の衛星攻撃に転用可能な弾道弾迎撃ミサイル「SM-3 Block IIA(最高迎撃高度1,000km+)」を保有しているため対衛星攻撃兵器を保有しているといってもいい。

出典:public domain イージス巡洋艦「レイク・エリー」から発射されるRIM-161スタンダード・ミサイル(SM-3)

ただし、一度も訓練をしたことがないので敵の衛星を破壊できるのかは謎だ。

地球対宇宙兵器の非物理的な手段は主に宇宙に配備された衛星との通信を妨害する兵器のことを指しており、これは実用化され多くの国(米国、NATO、ロシア、中国、イランなど)が実際に運用を行っている最も普及した宇宙兵器といってもいい。

そしてここからが公式に実用化されていないと言われる謎の「宇宙対宇宙兵器」と「宇宙対地球兵器」の話になる。

宇宙対宇宙兵器とは宇宙空間に配備された物理的な攻撃手段で敵衛星を破壊したり、宇宙空間に配備されたマイクロ波や電子妨害装置で敵衛星の機能をダウンさせるもので、ロシアはソ連時代に宇宙空間での物理的な攻撃手段を開発して実際に宇宙空間でテストしていたと言われている。さらに2018年にフランスはロシアが宇宙空間で敵衛星の機能を奪い取る兵器(フランスの主張ではロシアが宇宙空間でフランス軍の通信衛星から通信を傍受しようと試みたらしい)のテストを行ったと非難したロシアは否定してる。

出典:public domain ソ連の宇宙ステーション「サリュート」には機関砲が装備されていたのである意味、原始的な宇宙対宇宙兵器を装備していたと言える。

実際、このような兵器が秘密裏に開発されていても不思議ではないのだが、公にされることがないので謎に包まれており、戦略国際問題研究所も特に宇宙対宇宙兵器の非物理的な手段による攻撃は、どこから攻撃を受けたのか観測しづらく厄介だと指摘している。

そして最もSFじみた兵器が宇宙対地球兵器だ。

宇宙対地球兵器の物理的な手段とは宇宙から地球上の標的を直接攻撃するもので、非物理的な手段とは宇宙から地球上の通信やネットワーク等を妨害する能力で、これを真っ先に実用化した国は真の優位性を獲得するだろうと戦略国際問題研究所が指摘している。

戦略国際問題研究所が発表した宇宙兵器の分類が定着するのかは分からないが、全く指針のない状態の宇宙兵器をある程度分類してくれたので理解しやすくなったのは確かだ。

もしかしたら将来、宇宙対宇宙兵器や宇宙対地球兵器という言葉が飛び交うようになるのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:dimazel / stock.adobe.com

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 01日

    ヨルムンガンドやな

    • 匿名
    • 2020年 6月 01日

    核を否定する日本だからこそ宇宙対地球兵器傾けるべきなんでよね。
    核を否定するならば、核に匹敵する兵器への投資は核を開発する国と同じくらいすべきだと思う。
    でなければ非核三原則なんて耳に心地よいだけの世迷言にしかならない。

      • 匿名
      • 2020年 6月 01日

      核が駄目ならBC兵器とかどうなんでしょうか
      日本には某宗教団体の実績もあるので技術的にはできそうな気がするんですが、やっぱりいろいろと難しいですかね

      それかダーティボムみたいなやつでも

    • 匿名
    • 2020年 6月 01日

    日本がスペースデブリ回収やるとか言ってるけど、
    アレって、敵対する人工衛星にも効力発揮できるのは秘密だな。

      • 匿名
      • 2020年 8月 17日

      そのせいで中国が速攻軍事目的で使えるって反応したけどね。
      一番平和的かつピンポイントに強力な兵器だよ

    • 匿名
    • 2020年 6月 01日

    いつの日かアニメみたいに敵宇宙戦艦を一撃で射抜く運動エネルギーを使用しない兵器が実現される日が来るのか?

    巨大なミラーを構築出来ればファーストガンダムで地球連邦軍がソロモン攻略戦で使用したソーラーシステムは技術的に実現出来そう。

      • 匿名
      • 2020年 6月 02日

      HEAT弾なら運動エネルギーは使わない…ロマンがないか(–;)

    • 匿名
    • 2020年 6月 01日

    その先には無慈悲な夜の女王たる月が!

      • 匿名
      • 2020年 6月 01日

      大質量による運動エネルギー兵器が一番強い(確信)
      作中じゃ、対核戦争用の司令部を、所在する山ごと消し去ってましたっけ

    • HY
    • 2020年 6月 01日

    宇宙兵器というとついロマンに走りがちです。ですが、早期警戒衛星を張り巡らし合う中で「宇宙対地球兵器」を打ち上げようものならすぐ「地球対宇宙兵器」で撃ち落とされる気がします。「宇宙対宇宙兵器」は出番すらなさそうです。

    あまり夢のない話ですが未来の宇宙戦争は人工衛星を打ち上げては落とし合う、地味なものになると思います。そして破壊された衛星のデブリ同士がぶつかってさらにデブリが増える「ケスラーシンドローム」が起こって終了です。

      • 匿名
      • 2020年 6月 02日

      みんなの夢を壊さないで…w

        • 匿名
        • 2020年 6月 02日

        みんなわかってるだろうけど、わざわざ宇宙で金かけて戦争する意味ないもの、奪えるものもないし

          • HY
          • 2020年 6月 02日

          奪えるものはありますよ、「地の利」です。古来人類は敵よりも高く、見晴らしのいい場所に陣や城を構えることで、敵の様子を把握し戦いを有利に進めてきました。宇宙はその究極の場所です。
          現在、ロシアや中国、北朝鮮がミサイルを構えていながら、自由主義国が安心していられるのは米国の早期警戒衛星と偵察衛星が見張っているからです。もしそれが破壊されたとしたら世界はまた冷戦時代のような緊張を味わうことになるでしょう。

            • 匿名
            • 2020年 6月 03日

            それはそれでスリルがあって楽しそうですね
            軍備増強の理由にも使るので一石二鳥

        • HY
        • 2020年 6月 02日

        ごめんね。

      • 匿名
      • 2020年 8月 17日

      ケスラーシンドロームは、下手をすると人類が将来、宇宙進出する事が出来なくなる危険が有るから宇宙関係者の間で懸念されていて、対策も検討されているみたいよ
      具体的な方法としては、衛星通信のジャミングや傍受とか、GPSに欺瞞信号を送り込む等して衛星の機能をダウンさせると言う「衛星を物理的な手段で破壊しない攻撃方法」が一番良い
      なので、対抗策として衛星に何らかの防護手段を施そうと言う話もある
      従って、未来の宇宙戦争はもしかすると衛星は一個も落とされないけど、そのシステムは何時の間にか機能しなくなっているので、替わりの衛星か衛星を修理する衛星を打ち上げる競争になっていると言う、衛星の落とし合いよりも更に地味なものになるかも

    • 匿名
    • 2020年 8月 17日

    意外とSFファンが多いのが草

      • 匿名
      • 2020年 8月 17日

      そりゃまあ、サンダーバードや初期のウルトラマンとか幼少期に見ている世代なら
      SFに流れる層多そうですからねえ。

      デブリだらけになって通信衛星が使えなくなって、断絶の時代が来るのも見れますかねえ。
      (海底ケーブル切るのは衛星落とすより容易だし)

    • 匿名
    • 2020年 8月 17日

    飛行機と違い燃料やエネルギーをほとんど使わずに飛び続けられて形状の縛りもない人工衛星ではかなり高度なステルス化が進むんじゃなかろうか
    黒く塗装して形状最適化と電波吸収体を使われたら発見は容易ではないぞ

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