米国関連

流石にコレは安い、第4.5世代戦闘機F-16Vの機体単価は5,000万ドル台

国防総省が14日に発表した契約内容を計算した結果、第4.5世代戦闘機F-16V(Block70)の機体単価は6,000万ドルを下回ることが確認された。

参考:United States Department of Defense:Contracts For Aug. 14, 2020

流石に安い、F-16Vの機体単価は大量発注の影響で5,000万ドル台へ

米国の武器取引は通常、国務省が発表する対外有償軍事援助(FMS)承認の通知で内容が公開されるのだが、購入兵器に付帯する一切の関連費用(例えば戦闘機の場合は各種スペアパーツ、要員のトレーニング、地上シュミレーター、各種消耗品、メーカーによる保守サービス、FMSの行政手数料や輸送費等)が含まれた総額しか公開されないため兵器単体の単価を読み取ることが出ない。

逆に公式に単価が公開されているF-35は例外中の例外と言っていい存在だ。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Christopher Quail

では、何も手がかりが無いかと言うとそうでもない。

米軍発注分も同盟国がFMSを通じた発注も最終的に防衛産業企業に発注するのは国防総省なので、同省が必ず公開する契約内容を追っていけば関連費用抜きの発注金額を知る事ができる。そのため、この金額を基に計算すれば大凡の兵器単体の単価を推測することができる。

その方法で米国の国防総省が14日公開したロッキード・マーティンとの契約を見ていく。

国防総省はロッキード・マーティンに対して90機のF-16Vを620億ドル(約6.6兆円)で発注したと多くのメディアが報じているが、これではF-16Vの単価は6.8億ドル(725億円)になってしまうため報じられている内容がおかしいのは一目瞭然だ。

出典:pixabay

まず620億ドルという数字はF-16Vに関する取引上限(契約期間は10年)を示したもので、国防総省が620億ドル分のF-16Vをロッキード・マーティンに発注したという訳ではない。国防総省が正式に発注したF-16Vの数は多くのメディアが報じている通り90機だが契約金額は49.4億ドル(約5,200億円)に過ぎないため、このことからF-16Vの機体単価は約5,490万ドル(約58.5億円)だと推測することが出来る。

この数字を今年4月に公開したブルガリア空軍向けのF-16V(発注金額5億1,200万ドル ÷ 発注数8機 = 1機あたりの機体価格は6,400万ドル)と比べると機体単価が910万ドル(約9.7億円)安くなっており、これは発注数が多いため1機あたりの製造費用が安くなったと考えられ、今後も新規製造のF-16V受注が見込まれるため機体単価がどこまで安くなるのか見ものだ。

因みに今回発注されたF-16Vは、どの国が発注したものなのか非公開だが台湾が発注した66機(約80億ドル)とモロッコが発注した24機(約37億ドル)である可能性が高いと言われている。

※5,490万ドル(約58.5億円)という数字は純粋な機体単価(航空万能論による推定金額)であり関連費用を含んだ導入費用とは別物なので注意

 

関連記事:意外と安い? 第4.5世代戦闘機F-16C/D Block70「通称V仕様」の機体価格は約69億円
関連記事:戦闘機導入の相場、フランスのラファール導入が高額になる理由

 

※アイキャッチ画像の出典:whitelook / stock.adobe.com

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    そりゃ売れますよねって納得の機体単価

    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    前の記事で

    韓国でも、反日くんはみな社会の負け組落伍者だって言うし(笑)
    勝ち組富裕層はみな人種や国境をのり越えてビジネスに励んでる時代に取り残されたからって、赤の他人までひがみに巻き込むなよ
    負け組はどの国でも同じ、役立たずでも韓国叩けば日本国に貢献してるだのの幻想にひたるのが哀れ
    君ら負け組はどの国でもお荷物なんだよ

    というコメントがあったんだけど、ソース知ってる人いますか?

      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      ここは軍事系のブログでそういった話がしたければ他所でやれよ
      邪魔なんだよ

      6
      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      あなたがそのコメント書き込んだんじゃないですか?

      1
      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      低能ネトウヨって本当に韓国大好きだよな
      全く関係ないところで発狂するの止めろよ
      この記事は韓国のかの字も出てないのに

      1
        • 匿名
        • 2020年 8月 16日

        何気に「ネトウヨ」という言葉を持ち出すバカパヨ。
        やることがセコいwww

        1
      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      前の記事でも顔真っ赤で同じコメしてるね

      1
      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      邪魔だ二度とコメントしないでくれや

      1
      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      記事に関係ないのに韓国の内容出さないでくれる?
      はっきり言って不愉快

      2
      • 匿名
      • 2020年 8月 19日

      その負け組の行動はSNSで声がデカイ意識高い()人特徴ですね
      ここは場違いですよ

      2
    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    性能的には文句ないんだろうけど、途上国にはまだ高くない?安物買いになったとしても中華製や露製の方を選ぶ国もまだまだ多そう。

      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      維持費を考えると、やっぱりお得。
      でも結局は政治とか袖の下が絡む。
      オーストリアとか。

      1
      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      性能と価格面を考えると、現状でF-16V程お得感の有る戦闘機は無いと思うよ
      ステルス性を除けば、最新鋭の戦闘機と比べても性能面で余り遜色は無いから
      因みに、ロシアの戦闘機はベラルーシが新規導入したSu-30SMのトータルコストが実は米欧製新鋭機と大差無い事が当ブログで紹介されたし、過去の実績が芳しくないMiG-29/35系列の機体も大して売れていない
      中国製も未だ信頼感が無いのか意外に売れていなくて、最近ではJF-17がミャンマーに売れた程度
      それに対して、世界各国で多数の導入実績があるF-16なら「他国で使われた中古機に自国で必要な近代化改修を施してから導入する」と言う裏技が使えるから、途上国だと懐事情に合わせた導入がしやすいのもメリット(但し、本当に金のない国は戦闘機どころか練習機を戦闘機代わりに配備するので精一杯の所が少なくない)

      2
      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      なので、戦闘機を保持していない国も少なくないという現実が存在しているのでしょうね。
      西側のが高くて買えないからと言って、中国ロシアのを購入するのは政治的に危険すぎるので買わないという国も結構ありますし、練習機に軽武装してというのでお茶を濁す国もありますから。

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    ボーイングは90年代にF22生産への参加やF15の買収を捨てでもF16を買収したほうが戦闘機部門が長生きできた説。

    でも2000年以降の体たらくを見るに、仮にF16を買収できたとしても大して長続きしなさそう。

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    F-16自体が初飛行(1974年)から半世紀近くが経過して生産数も2018年6月の時点で4604機に達しているから、開発費はとっくの昔に償却されて製造コストも戦闘機としてはかなりの所まで安くなっているのだろう
    だからV型でレーダー等の電子装備が刷新されても安く出来るのだと思う
    今後はV型の新規発注で、F-16の総生産数が米欧製超音速戦闘機の最多記録を誇るF-4ファントムの5195機に何処迄近づくか、非常に楽しみだ

    2
      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      夢は大きい方が良いですよ。
      ほら、K国さんも夢だけは大きいから。

    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    戦後西側の名機!

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    F-16って元々ローコストの普及機だったわけで
    あれこれくっつけて価格高騰したけど他の機体もみんな高くなった結果元のポジションに落ち着いたって感じね
    F-35買えない国はF-16って感じだけど最低ラインがこれって途上国にはなかなかツライ話だな…

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      前の記事にあったF-5THは、そういう層を狙ったものなんだろうか

      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      東側にも通じてる国ならsu-30とかJ-17って手も有ろうし、やる気が有ればMig-35とかJ-10も交渉次第で行けるだろうけど政治的に中露の戦闘機選べない国は練習機上がりの軽戦闘機とJAS-39E/FやF-16Vの合間を埋める手頃な戦闘機が中古機しか無い状況だよね。

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    やっぱ量産効果ってすげえな
    新造のF-16VだけでなくF-16C/DのV仕様への改修も売れまくってるらしいしな

    2
      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      台湾はA/BをV仕様に改修するんだっけ
      A/BをC/D仕様に改修した機体は結構あるから、それらもV仕様にできるなら売れ行きはすごいことになりそう

      1
        • 匿名
        • 2020年 8月 16日

        台湾の場合中国への政治的配慮でC/D仕様を売らずに限りなくC/D仕様に近いA/B仕様になったという経緯が有るから機齢が若いA/B仕様という特殊な事情が有る。

        他の国が採用した当初のA/B仕様をC/D仕様にアップデートした機体は機齢が高くV仕様の改修には向かないと思う。

        1
    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    F-16XLの雄姿も見てみたかった、、

      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      あのデルタ翼嫌いじゃないけどさすがに魔改造過ぎる気もする。
      まあコンペ相手が悪かったよ……

      1
        • 匿名
        • 2020年 8月 16日

        そういえばF-2はなんであのモデルを参考にしなかったんだろう?後続距離増加と搭載量アップには良いんじゃないかと思ったんだけど。

          • 匿名
          • 2020年 8月 17日

          別の設計案のアジャイルファルコンを元にしたと噂がある
          翼の面積がほぼ同一

          1
      • 匿名
      • 2020年 8月 18日

      時代を先取りし過ぎた感があるよね。
      最近のテンペスト、日本のF-3などに少し似ているかも・・
      あれが出たときリアルタイムに覚えているけど、凄いインパクトだった。

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    これ一部の国除けば欲しがる国はいっぱい出てくる。
    沢山生産すればコストも下がるからまた安くなる。ロシアのミグ・スホーイとヨーロッパのタイフーン、ラファールと導入競争激しくなる。

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    頭狂新聞の半田が「F-35は高いからやめてF-16Vを買え!」と言い出すに100ウォン賭ける。

    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    まじかよ頑張れば一機買えるやん

      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      頑張れ♥️頑張れ♥️

    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    多分ボーイングの首脳部の中にゴーンさんもどきがいる。
    開発には金を出さず、在り物の生産だけしていれば確実にもうかりり報酬は増える、その先のことは気にしない。

    • 匿名
    • 2020年 8月 16日

    やっぱ今の戦闘機はガワより中身の電子装備が重要なんだな
    どうせならF-4EJ改にAN/APG-83を搭載改修したF-4EJ改スーパーを見たかった

      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      尾翼位置とか空力設計ミスの多いFー4Eじゃ今さら…

      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      F-4は、そのガワの方に寿命が来てるとかスペアパーツの確保が難しいとかの話だったような
      とは言え、ガワさえまだ大丈夫だったら本当にそうなってたのかもね

      • 匿名
      • 2020年 8月 16日

      生産開始から40年以上経過しているF-16も初期生産型は無人標的機に改修されたりしているからガワの寿命を迎えていく機体も今後は増えていく。

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