米国関連

LOT18~19でF-35の調達価格が上昇する可能性、米軍の調達削減が原因

国防総省は2025会計年度予算で調達するF-35を削減する可能性が高く、この影響は対外有償軍事援助(FMS)を通じたF-35の売却で緩和されることなく「F-35自体の価格を押し上げる」「LOT18~19の交渉条件は根本的に変更されるだろう」と報じられている。

参考:Potential F-35 Cuts in 2025 Won’t Be Made up by FMS, May Drive Costs Higher

米軍の削減分をFMS経由の受注分でカバーできると考えるのは間違い

F-35の価格は複数年契約(BlockBuy)の交渉によって決定され、国防総省は2022年12月「2023年~2025年(LOT15~LOT17)をカバーする契約を締結した」と発表、ロッキード・マーティンは「LOT14と比較してエンジンを除いた機体価格は平均6.5%上昇する」と明かし、COVID‑19によるサプライチェーンの混乱、インフレ率の高騰、発注数の削減(LOT12~LOT14と比較して80機減)、Technical Refresh3の組み込みがコスト上昇の原因らしい。

出典:U.S. Air National Guard photo by Staff Sgt. Mercedee Wilds

国防総省とロッキード・マーティンは2026年~2027年(LOT18~LOT19)をカバーする契約について協議を進めているのだが、3月に提出される2025会計年度予算案の中で空軍はF-35Aの調達数を6機削減、海軍はF-35Cの調達数を8機削減する可能性が高く、国防総省の関係者は「この削減がサプライヤーに誤った需要シグナルになる」と、ロッキード・マーティンも「F-35の価格の67%はサプライヤーが提示する部品価格に依存している」「LOTの数量変更はサプライヤーが提示する部品価格に大きな影響を及ぼす」「LOT18~19の交渉条件は根本的に変更されるだろう」と認めている。

この話は非常に分かりづらいので噛み砕いた表現で説明すると「FMSを通じたF-35Aの販売は絶好調」で「米軍の削減分ぐらいFMS経由の受注分で簡単にカバーできる」と思えてしまうが、生産能力に空き出るなら「F-35Aの調達を前倒しすればいい」と言うほど発注国の国防予算には柔軟性がなく、そもそも発注国の調達スケージュールは「パイロットやエンジニアの訓練」「F-35Aを受け入れるためのインフラ整備」「既存機の退役とF-35Aの導入を考慮した調整」に大きく依存している。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Beaux Hebert

つまり2025会計年度予算案で「F-35の調達を削減する」ということは「LOT15~LOT17で約束した調達数を削減する」という意味になり、これは部品製造するサプライヤーに「LOT18~19でも同じことが発生するかもしれない」という需要シグナル=部品価格を押し上げる要因になるため「LOT18~19の価格を決める交渉条件が根本的に変わってしまう」という話だ。

防衛産業界の関係者は「一部の人々は(FMS経由の発注が)米軍の削減分をカバーしてくれると考えているが、この問題は見かけほど単純ではない」と指摘、さらに2025会計年度予算案で削減されるのはF-35に留まらないため「多くの痛みが発生するだろう」と予想している。

追記:上記以外の要素としてLOT15~21(2023年~2029年)で製造される機体は「中途半端にblock4の要素が組み込まれた機体」になるため「後に改修コストがかかる」と問題点があり、米空軍が調達数を削減しているのも同問題に関連し、同盟国もLOT21までの発注を避けたいと考えているかもしれない。

関連記事:国防総省がLOT15~17をカバーするF-35製造契約を発表、3年間で最大398機を調達
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※アイキャッチ画像の出典:PHOTO by Senior Airman Yosselin Campos

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コメント

    • 765
    • 2024年 2月 24日

    まあぶっちゃけしゃーないんじゃない?
    大きな欠陥が見つかって大改修の結果価格が高騰とかならともかく、原因はほぼコロナの影響なんだしそのうち落ち着くでしょう

    2
    • 58式素人
    • 2024年 2月 24日

    思うのですが。
    ”何もかも或は何がなんでも”F35頼みは、良くないのでは。
    空爆に限れば、Ho229相当の軽爆があっても良いのでは。
    無人機では心配なので、有人機で。
    500lb×4又は1,000lb×2又は2,000lb×1の誘導爆弾搭載で。
    F35に比べて、製造の難易度はだいぶ低いと思うのですが。
    ステルス機同士の空対空戦闘を行わなければ、これで良いような気もするのですが。
    仮にウクライナにあれば、クリミア大橋など簡単に落とせると思うのですが。

      • ぱあ
      • 2024年 2月 24日

      ステルス機能を捨てて敵陣に突っ込めと。ほう。
      それなら無人機の方がいいね。

      11
        • 58式素人
        • 2024年 2月 24日

        ステルスのレベルにもよると思います。
        できれば、再使用はしたいでしょうから。
        構造は大まかに明らかになっているでしょう。
        Ho229の場合、WW2当時の英国の対空警戒レーダーに対する
        ステルス性能はあったようです(ノースロップ社で確認しているとか)。
        デルタ翼機のHSバルカン爆撃機は、NATO演習時に
        米国の対空警戒レーダーを出し抜いた実績があります。
        現在、トルコ(F35に関わっていますが)でステルス機製造していますし。
        ステルスのレベルを下げると、製造の難易度は下がると思えます。
        問題は材料ですが、西側であれば、そうは苦労しないのでは。

        2
          • PLA TANKS LOVERS
          • 2024年 2月 24日

          そもそもHo229はたまたまあの形になっただけだと思うのですが…TFXは純粋なステルス機ですしバルカン爆撃機と比べて何が言いたいのかよくわかりません。たかだか1tしか爆弾を積めない機体を作るなら、今までの戦闘機で充分かと。
          なんなら爆弾に羽根と航法装置を着けて飛ばす方が安上がりでは?

          9
        • バーナーキング
        • 2024年 2月 24日

        「Ho229相当の軽爆」と言ってるんだから当然ステルスなのでは。、

        7
      • 匿名希望係
      • 2024年 2月 24日

      人命を捨てるすってか?
      爆撃するのってたいていは、大戦後以降のレーダー網で最新のステルス機でもつらいのにな

      6
      • 朴秀
      • 2024年 2月 24日

      昔あったA-12アベンジャーみたいな感じですかね
      なんでもかんでも一緒にしようとしたF-35よりは安上がりでしょうし面白いと思います
      米軍はX-47(無人機)とかで同じことを考えているかもしれませんが

      というかF-35…安物買いの銭失いのことわざそのままですね

      1
        • ブルーピーコック
        • 2024年 2月 24日

        なまじF-4が優秀過ぎただけであって、F-111の失敗から何も学ばなかった結果がコレですよ。
        でF-111もF-35も代替機は無いし、能力はあるからタチが悪い。

        3
    • 765
    • 2024年 2月 24日

    爆撃なんていう最も危険な任務こそむしろF-35の様な高性能ステルス機か、あるいは無人ステルス機が必要なのでは……
    護衛機が敵戦闘機と空対空戦闘しながら、SEAD隊が防空網を切り開いた後に、敵陣地に突っ込むのが攻撃部隊ですよ

    3
    • lang
    • 2024年 2月 24日

    放漫財政続けてた結果、国債利払い費が軍事費を超えるの笑えない

    3
    • ブルーピーコック
    • 2024年 2月 24日

    性能云々よりもODINとか含めて複雑過ぎるサプライチェーンや、3タイプ一括開発による弊害が目立つ感じ。翼だけとか、胴体からここまでとか、バラバラに作ってどこかで組み立てるとかやってれば、そうなっても仕方ないんだろうけど。

    8
    • バーナーキング
    • 2024年 2月 24日

    前倒しで調達できる、したい国自体はなくもないと思うけど、それが大きなアップグレード控えた旧バージョン、となるとなぁ。
    TR-3とエンジン問題の目処が立たないと、どうにもならん気がする。

    7
      • 匿名希望係
      • 2024年 2月 25日

      S-400ぽーいしてくれたらトルコの分を(接収したので)アメリカがはらってくれるかもしれないが

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