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米海軍、新技術が成熟するまでDDG-Xの設計と購入をテンポを遅らせる

米海軍のギルディ作戦部長は「レーザー兵器や極超音速兵器といった新技術が成熟するまでDDG-Xの設計と購入をテンポを遅らせる」と述べ、検証されていない新技術を詰め込んだ艦艇は二度と作らないという決意を示した。

参考:Navy applies lessons from costly shipbuilding mistakes

バス鉄工所も「DDG-Xの設計が完全に検証されるまでアーレイ・バーク級の建造を続けたほうがいい」と訴えている

米海軍のマイク・ギルディ作戦部長は2021年のネイビー・リーグで「フォード級空母に23もの新しい技術を詰め込んだことは海軍にとって繰り返すことの出来ない過ちだった。今後のプラットフォーム開発において新技術の導入はもっと慎重なアプローチをとる必要があり、1隻に追加する新しい技術は2つまでにして事前の陸上テストを徹底することが望ましい」と述べ、最新のジェラルド・R・フォードが手痛い失敗を被ったことを認めた。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Connor Loessin/Released

この経験を踏まえてギルディ作戦部長は最近「レーザー兵器や極超音速兵器といった新技術が成熟するまでDDG-Xの設計と購入を遅らせる」と述べ、検証されていない新技術を詰め込んだ艦艇は二度と作らないという決意を再び示し注目を集めている。

米海軍が昨年公開したDDG-Xのコンセプトモデルは波浪貫通タンブルホーム船型を採用したズムウォルト級ベースではなく、アーレイ・バーク級のデザインをリファインしてに統合マストを採用した手堅い設計で、推進機関はズムウォルト級と同じ統合電力システム、センサーはアーレイ・バーク級FlightIIIと同じAN/SPY-6(V)1/RMAモジュール×37個構成、ミサイル発射セル(MK.41)の数もアーレイ・バーク級と同じ水準を維持するという保守的な設計だ。

出典:U.S. Navy

ただし船首方向に150kwのレーザー兵器を1基搭載し、MK.41×32セルは極超音速グライド・ビークル(HGV)を搭載した極超音速兵器を12発収納した発射セルに交換できる仕様で、艦尾方向の左右に搭載されるRIM-116/RAMを出力600kwのレーザー兵器に変更することを示唆している。

開発中の極超音速兵器はズムウォルト級への統合作業をロッキード・マーティンに発注(12億ドル)したばかりで、このミサイルは陸軍と共同開発しているため仕様が共通だがランチャーは独自のものになり、MK.41と互換性のない新しいVLSが準備されており、これを海上で安定的に運用できるのか1度も検証されておらず、レーザー兵器もアーレイ・バーク級やサン・アントニオ級の一部に搭載が始まっているものの実用化からは程遠い。

出典:Lockheed Martin 米陸軍の極超音速兵器LRHW

そのため新技術の熟成がある程度進むまでDDG-Xの開発を遅らせ、時間がかかっても徹底的に検証作業を行うという意味だ。

因みにアーレイ・バーク級の最終発注は2027年で「2028年からDDG-Xの発注に切り替える」ことを海軍は想定しているが、バス鉄工所も「DDG-Xの設計が完全に検証されるまでアーレイ・バーク級の建造を続けたほうがいい」と訴えており、DDG-Xの1番艦建造は2030年代にずれ込むかもしれない。

出典:public domain タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦

ただ耐用年数に余裕がないタイコンデロガ級の後継艦計画もDDG-Xに統合されてるため、FlightIIIの構成要素で埋め尽くされたDDG-Xをタイコンデロガ級の後継艦として先行建造する可能性もある。

追記:初の海外展開に向けて準備を進めているジェラルド・R・フォードは昨年夏の洋上テストでジェット・ブラスト・ディフレクターに問題が生じたが、問題のシステムを交換後は非常に順調で同艦の発着艦システムの信頼性は約98%に達しているらしい。

出典:Richard Watt/MOD / OGL v1.0

追記:英国のAjaxが直面する開発の遅れ=不具合が収まらない原因について陸軍は「変更箇所(1,200ヶ所以上)を詰め込みすぎた」と述べており、検証されていない「出来るだろう」という甘い考えは取り返しのつかない失敗をもたらすことがある。

関連記事:米海軍、次期駆逐艦DDG-Xでタイコンデロガ級とアーレイ・バーク級の更新を想定
関連記事:アーレイ・バーク級の正統な後継艦、米海軍が次期駆逐艦DDG-Xを発表
関連記事:米海軍のギルディ作戦部長、フォード級空母に「未検証の技術を詰め込み過ぎた」と失敗を認める

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy

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コメント

    • ブルーピーコック
    • 2023年 2月 25日

    (ΦωΦ)
    「最新技術を詰め込んだし、新品だから壊れないだろう。ヨシ!」

    36
      • けい2020
      • 2023年 2月 26日

      まさにそれだった

      3
    • 海軍スキー
    • 2023年 2月 25日

    ズムウォルト級に続いてフォード級でもやらかしてるから仕方ない事ではあるんだけど、米海軍の更新遅れによって中国海軍との相対的な戦力比が近付いて行くのはちょっと不安になる

    一先ずはアーレイバークフライトⅢとコンステレーション級に期待やね

    33
      • チェンバレン
      • 2023年 2月 25日

      LCS「あいつらしょうもない金食い虫の失敗作だよな」

      8
        • けい2020
        • 2023年 2月 26日

        議会「利権が優先だLSCを30隻までつくれ」
        海軍「了解しました」

        4
          • チェンバレン
          • 2023年 2月 26日

          議会「ボーイング救済のために時代遅れのスパボブロックⅢ買いなさい。あ、予算は海軍から出してね」
          海軍「やめてくれよ…(絶望)」

          4
    • トーリスガーリン
    • 2023年 2月 25日

    保守的過ぎても問題だけど完成見込みの技術を詰め込むのはねw
    陸上テストはしっかりやろう!な!?っていうのは至極真っ当な話ですわ

    海自って基本米軍を眺めながら色々やってるから基本的に上手くやってると思うんだけど、仮にレールガンが完成して艦船に統合するときはやっぱちょっと苦労すんのかね

    30
      • チェンバレン
      • 2023年 2月 25日

      試験や実験って大事よね
      見切り発車するとさらに遅れると言う悪循環
      数兆円の勉強代は高かった
      なお米空軍

      7
        • トーリスガーリン
        • 2023年 2月 25日

        B-21「い、今のところ上手く行ってるから…(震え声」
        デジタルエンジニアリングで開発進めてるけど、要素技術については開発済みのものを使ってたりするんですかね?
        あくまで機体開発がデジタルなだけで要素技術が検証済みならいいのかなと思ったり

        1
          • チェンバレン
          • 2023年 2月 25日

          KC-46「ヨシ!」

          15
          • nachteule
          • 2023年 2月 27日

           あれ将来的に派生機体ありそうだけど今の所は冒険した形状でもない空軍専用の純粋なステルス爆撃機だしなぁ。低空を高速侵攻とかでもなくある程度の高さを悠々と飛ぶ前提だろうし。

           エンジンだって高出力で加速力や速度求められているわけでもないF-135に近いみたいだし、機体だって高速飛行で機動力が求められるわけでもない。ステルス技術はF-35とかのフィードバック有るし、転ける要素はないように思う。

          1
    • 人参は飲み物
    • 2023年 2月 25日

    最近の現場猫は米英の設計チームによく現れるみたいだね

    17
    • ななし
    • 2023年 2月 25日

    中国の055型はタイコンデロガ級に次ぐ強さだと自称しているしレールガンを搭載したものがあるという話だし、アメリカの焦りはいかほどのものだろうか

    2
      • くらうん
      • 2023年 2月 25日

      旧ソ連同様、非民主国家の兵器開発は実態がなかなか伝わらないので何とも。
      まあ逆に伝わるのは利点のみで欠点はほぼ出ない事を前提に、一般人としてはそれらの実力は1割引き程度で考えていいのでは。055型はレールガンの実装はしないようですね。
      敵の力は侮り過ぎても怖がりすぎても駄目。

      27
        • ブルーピーコック
        • 2023年 2月 25日

        ボマーギャップ論やミサイルギャップ論争のように、ソ連軍の実態が明らかになったら大したこと無かった・・・なんて事もありましたが、同じように中国の実態が分かるまでは警戒しておくべきかなと思います。
        まあ分かったら分かったで「必要な時」が来るまで黙っておけばモアベター。

        19
      • 蒸しパン
      • 2023年 2月 25日

      どっかのネットニュースでペロシ氏が台湾訪問時、「055型が出航しペロシ搭乗機をレーダーで追尾しようとしたがアメリカの電子妨害で追尾出来なかった」ってあったな…。「055型の搭乗員の訓練不足、不手際。あるいは本来のレーダー性能要求を満たしていない」とか。

      15
    • hoge
    • 2023年 2月 25日

    AJAX、ASCODそのままにすれば良かったのでは…

    4
      • 月虹
      • 2023年 2月 25日

      搭乗する兵士に健康被害が出るほどの振動→車両に問題があるが英国人の雇用を守るために生産ラインを止めることができない、という悪循環にハマっていますからね、AJAXは…

      ハンファのレッドバックをライセンス生産した方が良いのでは?と言う局面になっているのがイギリスらしいですが。

      2
    • 味噌バターチャーシュー
    • 2023年 2月 25日

    これいつまで経ってもDDG-Xの建造始まらないやつでは?
    極超音速兵器もレーザー兵器も前進はしつつも実用化なんていつになるやら分からないし

    8
    • 2023年 2月 25日

    ブリッジの上にSPYレーダー、やっぱりこっちの方がいいと思う。
    RAMを後方左右に2機、理想的だけど自衛隊はお金ないので無理かな。
    ヘリコプター格納庫が小さいみたいだけど無人機に置き換えるんだろうか。

    1
    • りんりん
    • 2023年 2月 26日

    アメリカがDDG-Xの建造を急いだ理由のひとつが、中国海軍と比較してのミサイルセル数の劣勢といわれています。
    管理人様も書かれていますが、アメリカ海軍ではVLS122セルのタイコンデロガ級が退役を迎えているのに、LCSはVLSを持たないため増設したNSM8発が限界、コンステレーション級は32セルの設計で増設するためには線図から引き直す必要があり、時間と予算が必要の模様。
    ならばアーレイ・バーク級Ⅲを建造すればいいじゃないかとなりますが、極超音速ミサイル用ランチャーはアーレイバーク級では船体サイズ的に搭載不可能の可能性が高い。
    そしてズムウォルト級は・・・なんだかな状態。
    結果としてオンステージの艦艇に搭載されたミサイル数が、中国海軍と比較して劣ることになってしまった。
    まあアーレイ・バーク級が拡張限界に達していて、できれば新造したくないというのもあるのではないかなという気がしますが・・・(建造当初から艦内容積の不足が語られていた)。

    とにかくそんなこんなでDDG-Xの建造を急いでいたのですが、建造がずれ込むと台湾有事に間に合わない可能性が生じてしまう。
    もちろん、ズムウォルト級やジェラルド・R・フォードみたいに新技術を盛り込んた果てに失敗を繰り返すのも困る。
    アメリカ海軍としては、このミサイルセルギャップを短期的に解消する妙案が必要になるかも知れません。

    (私はこれまで公表されていた情報から、DDG-Xはレーザー等の新技術兵装は、間に合わなければ初期建は後日装備で、とにかく建造を開始すると思っていました。極超音速ミサイル用ランチャーなんて、初期の艦は絶対に間に合わないことが確定していましたので。それとMK41VLS96セル見当で計画されていますが、極超音速ミサイルの搭載と前後してセル数が追加されるのではないかと考えています。そうしないとMk41VLSが不足しますから。なおそのための船体の延長は可能のようです)

    4
      • nachteule
      • 2023年 2月 27日

       ズムウォルトはAGS撤去して極超音速滑空体C-HGB搭載のためにMultiple All-up Round Canisters詰む予定の筈だし金は掛かるが微妙な戦力を何とかしようとする流れではある。

       セル数が多ければ良いけどそれが全てではないし、少ないセル数で何かすると言うアプローチが有ってでもいいだろう。1発当たりの威力を上げる、1セルに複数、命中率の向上で1発をより有効に使うとか考えても良いと思う。

      1
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