不具合に苦しむボーイングのKC-46Aに追加の欠陥が報告され、さらなるプログラムコストの超過が発生するだろうと米メディアのDefenseNewsが報じている。
またカテゴリー1に分類される欠陥が見つかったKC-46A、空軍はボーイングが自社資金で対処すると説明
実績十分な旅客機「767」ベースの新型空中給油機KC-46Aは「開発過リスクが低い」と判断して米空軍とボーイングは研究・開発費用を最大49億ドル(約5,310億円)で固定することで合意、米空軍はKC-46Aの開発が難航してもトップラインに設定された49億ドル以上を支出する必要がなく、ボーイングはKC-46Aの開発費用を最大49億ドルまで収めないと自社資金を投入する必要があるので開発コスト削減の自助努力が進むと考えられていたのだが、完成したKC-46Aは完璧に程遠く米空軍は頭を抱えることになる。
小さい不具合や製造過程の品質問題は置いておくとしてもKC-46Aには飛行の安全性やミッション達成を阻害する通称「カテゴリー1」と呼ばれる欠陥が6つあり、補助動力装置(APU)に関連した2つ欠陥については解決済、燃料システムに関連した欠陥についても修正の目処がついているため残りは本ブログで何度も取り上げた空中給油作業を監視・制御する「リモートビジョンシステム(RVS)」と燃料を移送するフライングブームに関連した3つの欠陥だ。
ボーイングは契約上KC-46Aの不具合を解決するのに必要な追加資金を米空軍に要求できないため47.5億ドル(約5,000億円)を超える自社資金を投じているのだが、新たに2つのカテゴリー1に分類される欠陥が報告されたと米メディアのDefenseNewsが報じており、米空軍は「新たな欠陥の問題はボーイングが自社資金で対処する」と言っているのでKC-46Aに投じるボーイングの自社資金は50億ドル/5,500億円を軽く突破(既に突破しているとDefenseNewsは報じている)するかもしれない。
今回報告された2つ欠陥のうち1つ目はKC-46Aの給油燃料タンクに設置された排水チューブのひび割れ問題で、同機を低温環境で運用するとチューブ内に溜まった水が凍結→膨張してチューブにひび割れが発生(計3回発生)、2つ目はKC-46Aが搭載する飛行管理システムのソフトウェアに関連したバグで同機のナビゲーションに異常を引き起こすと指摘されている。
実際、米空軍が運用していたKC-46Aは太平洋の上空でナビゲーションに異常発生して一時的に迷子(別のナビゲーションに切り替えることで緊急事態を宣言することなく無事に目的のホノルルに着陸)になったらしい。
この2つの問題はパイロットや搭乗員の生命を危険に晒す欠陥ではないとボーイングは説明しているのでカテゴリー1の欠陥でも1ランク問題の深刻度が低い「カテゴリー1B」に分類された欠陥である可能性が高いのだが、緊急対処の必要性が低いカテゴリー2以下の欠陥とは異なるのでボーイングは早急な対応を行う必要がある。
因みに排水チューブの問題に対処するためボーイングはKC-46の検査ガイダンスの手順にチューブ内の水をチェックする項目を加えたと主張しているが、この問題を恒久的に解消するためには排水チューブ自体を再設計して引き渡し済みのKC-46の排水チューブを交換する必要があると米空軍は述べており、飛行管理システムの問題は開発を担当したゼネラル・エレクトリックがソフトウェアの改修を開始しているらしい。
どちらにしても再設計された排水チューブや改修されたソフトウェアは実機に適用する前に国防総省の定める所定の手続き=つまり実機による検証テストをパスしなければならず、これらの各種検証テストにかかる費用も全てボーイング負担なので欠陥が報告される度にボーイングの自社資金は溶けていくことになる。
余談だがKC-46Aに批判的な共和党のロブ・ウィットマン議員(既存のKC-46A調達契約を見直してA330MRTT調達に切り替えることを主張している)は今回の欠陥について「KC-46Aの欠陥に関する報告を毎月耳にして私はイライラしている」と発言しているため、空軍やボーイングの関係者は絶対にウィットマン議員と目を合わせたくないだろう。
関連記事:米空軍が新しい空中給油機の調達方針を発表、KC-46AとA330MRTTが再び競合か
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Abigail Klein
>>ボーイングは契約上KC-46Aの不具合を解決するのに必要な追加資金を米空軍に要求できないため
代わりに日本に負担してもらうよ!
この状況でも待ってる日本とイスラエルにそれやったら今後輸出の目が完全に消滅するのでは。
へたすると民間航空機からボーイングが消滅かな
排水チューブはともかくなんで民間機ベースなのにナビゲーション関係でバグが起こるねん
航空機と水の凍結問題も歴史は長いぞ。
非与圧区画の配管内に水が残留したままになってるなんてのは旅客機メーカーとしては恥でしかない。
今回の問題は(ベース機にはない)給油タンクの配管なんだから
「旅客機ベースなのになんで?」という話とは関係ないだろ。
いや、ボーイングは給油機メーカーとしても老舗
707ベースのKC-135を何十年も作ってきたんだから、給油機特有の部分の知見も有してるはず
これでは無能のレッテルを貼られても仕方ない
KC-135は古すぎて当時のエンジニアは残っていないと思われ…
多分KC-767の技術者どころか、KC-46Aのプロジェクトスタート時のエンジニアすら残っているだろうか……。
そもそも、ボーイングにエンジニアが在籍しているかも怪しい(他社からの派遣、アウトソーシング的な意味で)
シニアエンジニアをみんな切っちゃうから仕方ない
その点、川崎P-1のエンジニアの面々見るとあれは間違ってないのか?
平均50代じゃ?ってほど高齢化してて戦慄を覚えたが・・・
すぐ切ってしまうとノウハウ残らないのは確かだけどあれはあれで継承先がなさそうで恐ろしい
日本の軍需産業ってすごい。
新明和(川西)は飛行艇を作ってるし、日本製鋼所は大砲を作ってるし、社会主義国家みたいで競争原理ってあるのか?
老舗の給油機メーカのくせに、というのは否定しないが
それとこれとは話が別だろ。
ここのコメントの話題には合致してない、と言っている。
そもそも凍結の恐れがある配水管には水が溜まらないように配慮をするのが普通でしょ。排水先がタンクであれ機外であれ、少なくとも巡航姿勢では配管から水が抜けるようにしないと。
そういった細かなノウハウがボーイングでは継承されていないのかと疑われてもしょうがない。
恐らくは経験の浅い技術者が担当してチェックされなかったポカなんだろうと想像しますがね。
それは全然否定しないがそれは別のとこで話せよ。
旅客機ベースなのになんで? という話と
給油機として当然の配慮がされてない、という話は
何の関係もないだろ?
ナビゲーション関係でバグが~なのに
ナビ関係のコメントないw
好意的に捉えるなら、TACANとかの軍用機特有の装備のみにバグがあったって感じかな?
知らんけど
草
いやもうホント草
ボーイングは、軍産部門を分社化したほうがいい (撤退したほうがいい)
自衛隊のKC-767って優秀だな、プローブアンドドローグを追加発注する計画を実行すべきか。
それとも、ナビって旅客機とは違うが、KC-767と同じだったりするか。
KC-767はエンジン弱くて、KC-46の7割しか燃料運べないので、同じ給油作戦するのに多く機材が必要で、運用コストが嵩むんだよ。そもそも持ってる機数も少ないし。
まあ、給油できねーんじゃ話にならないんだっつー切り口も、勿論あるんだが。
防疫封鎖で民間航路が完全停止して、航空機を購入するべき航空会社がどこも倒産寸前か倒産に追い込まれている状況で、アメリカ製造業の花形の中の花形のボーイングを米政府はさぞ手厚くケアしてるんだろうと思ったら、全然そんなことなくて死体蹴り状態なのちょっとかわいそうな気もしますね…。議会の予算権限はともかく、既に百機あまり納入してしまった機体に設計レベルの欠陥がボロボロ見つかるのは開発と納入を同時並行で行う調達制度の明らかな弊害だと思うんだけど、そこを指摘する議員はいないんですかね。
前日談があって、当然ボーイングから、エアバス(窓口ノースロップ)に決定、トラブって、ノースロップ撤退の単独入札で、全員イライラしてるのかも。
またボーイングか。いい加減飽きたわ。
すごい頻繁に燃料投下してくれるね、さすが給油機だ
加油!
油断も隙もねえな。
ボーイングの経営陣は航空機ではなく油を売っているのではないか
これまでの聞いてるトラブル内容が、軍用機開発経験0どころか、飛行機開発経験0みたいに思えるんだが
まじでボーイングは完全に開発能力無くなってて、手探りでやってるように思える
ボーイングも次世代機作ってるとの話だけどこうも欠陥続きだと不安だ
ボーイングの飛行機は道化が監督して猿が作ってるって話は本当だった
なんで天下のボーイングが三菱重工みたいな事になってるの
軍事部門は元からロッキードに押されてたけど
最近は得意の旅客機まで不具合が多発してるのはなんで
肌身でわかるようなエンジニアがボーイングにはいなくなっちゃったのかね
経験を積んだ中核エンジニアの人経費が膨らんで、ある程度切ったという話は737Maxの問題が顕在化した時からありますし。
火種は何年も前からあったんでしょうね。
ソフトの不具合とかは新開発ならそんな事もあるかもねって思うが
低温環境下での凍結による破損とか何年高高度飛ぶ飛行機で飯食ってんだ?って呆れるわ
これが初めての給油機開発って訳でもないのになんでド素人みたいなミスばっかしてんだか…
MSJの失敗の一因は、ボーイングに指導を仰いだことだったんではないか…?
(いやまぁ大半はMが悪かったんだろうけどねあれ)
どこかで三菱ダイヤモンドの時のノウハウを引き継いでないとかきいたな
ボーイング…お前…消えるのか…?
こりゃT-7もダメだな(と言いたいだけ)
今は対岸の火事だが、日本製造業の地盤沈下と宇宙ジェットのゴタゴタを考えると、数年後にはF-3を巡って「また三菱か」を連発してないか不安で仕方ない。
保険として川重にも有人化可能な無人戦闘機の開発任せるとか出来ないだろうか。技術が不足してるなら、多角化のため(米メーカーでなく)ダッソー辺りと技術協力して。
その点トッポってすげぇよな、最後までチョコたっぷりだもん。
>米空軍とボーイングは研究・開発費用を最大49億ドル(約5,310億円)で固定することで合意
担当している人間は軍もボーイングも胃が痛いでしょうな。
別の業界でもこういう話はありますが、人が悪かったり、やり方を間違うとモラルハザードを起こすんですよね。
先日も発注側の軍の管理にも問題があると報告が出てましたよね。失敗プロジェクト臭がプンプンします。(笑)
委託先(ボーイング)が破産したらどうすんでしょうね。アメリカは公的資金注入はハードルが高そうだけども。
やれやれ、こうも次から次へと欠陥が出て来るともはや驚かないよね。
この際残りの調達予定のKC46は思い切って損切りしてA330MRTTに変更ってできないのかね。
このままF35に給油出来なければ只の貨物機として民間航空会社に譲渡するか、もしくは博物館送りにするかだね。
インフラ整備が必要になるからB-767をイスラエルと共同開発で改修した方がマシかな?
ボーイングや
ああボーイングや
ボーイングや
記事内容から、KC-46AのナビゲーションシステムはGPS航法と非GPS航法を統合管理するものじゃないかと推測してます。
どちらかの航法システムで飛行中にプログラム中のバグでエラーが出てしまったが、切り替えることで事なきを得たということなのかと。
軍用機ですから非GPS航法は必須機能でしょう。