米空軍はグアム島に配備していた5機の爆撃機「B-52H ストラトフォートレス」を米本土のマイノット空軍基地へ移動させ16年間に及ぶ爆撃機の前方配備に終止符を打った。
参考:The Air Force Abruptly Ends Its Continuous Bomber Presence On Guam After 16 Years
米国の爆撃機はグアムから移動したのか?それとも中国の力によって後退を余儀なくされたのか?
2004年に始まったグアム島アンダーセン空軍基地への爆撃機前方配備は16年間一度も途切れることなく続けられてきたのだが、今月16日に交代の爆撃機が用意されないまま配備されていた5機の爆撃機「B-52H ストラトフォートレス」は本土のマイノット空軍基地へ向けて飛び去ってしまった。
USAF B-52Hs SEEYA01, 02, 03, 04 & 05 departed Andersen AFB, Guam en route home to Minot AFB, North Dakota. pic.twitter.com/woOBYDT8fq
— Aircraft Spots (@AircraftSpots) April 16, 2020
これは前方配備の必要性がなくなったのではなく中国の中距離弾道ミサイル「DF-26」がグアムに配備された爆撃機を狙っているためで、米空軍は爆撃機を中国の手が届かない場所に移動させること強制されたと見るべきだ。
果たして、グアムから米爆撃機が去った太平洋地域の軍事バランスは何方に傾いたのだろうか?
米空軍は今後も必要に応じて太平洋地域での爆撃機運用を続けていくと表明しており、当面は米本土を拠点に爆撃機の運用が行われると見られている。ただ米空軍には「グアムの代替地」と言われている豪ティンダル空軍基地がある。
この基地は中国本土から4,000km以上離れたオーストラリア北部にあるため問題の中距離弾道ミサイル「DF-26」が届かず、オーストラリアが米空軍の爆撃機が運用できるよう約11億豪ドル(約740億円)の費用を投じて基地を拡張(滑走路延長や新しいターミナルの建設等)することが決まっているのだが、完成自体は2027年頃なので爆撃機を当面は米本土に後退させておくしかない。
しかし、基地完成後に再び爆撃機の前方配備を再開する予定なので太平洋地域における軍事バランスの変化は「一時的なもの」というのが米空軍の見解だ。
では、今回の出来事を中国から見た場合どうなのだろうか?
1996年の台湾海峡危機において中国は米海軍の圧倒的な空母戦力の前に手も足も出なかったが、今回は中国にとって初めて力で米軍を後退させたことになるため接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略の下に育ててきた軍事力の方向性が間違っていなかったと自信を深めているはずだ。そして今回の件で勢いづいた中国は米海軍の南シナ海後退を積極的に狙ってくるだろう。
中国は空母艦隊とミサイル(DF-21やDF-17など)で圧力を加え続ければ「グアムと同じ理屈」で米海軍が南シナ海を諦めるかもしれないと考えても不思議はない。さらに米海軍も米空軍がグアムから戦略爆撃機を後退させたのに、なぜ自分たちは高価で価値の高い空母を南シナ海で危険に晒し続けなければならないのかと言い出すかもしれない。
しかし米海軍が南シナ海から後退してしまえば勝手に埋め立てて造成した南沙人工島を中国の領土だと認めることに繋がり、さらに同島に中距離弾道ミサイル「DF-26」を持ち込みオーストラリアのティンダル空軍基地を再び「DF-26」の射程圏内に収めてしまうはずだ。そうなれば米空軍は再び爆撃機を米本土へ後退させなければならないため米海軍が「グアムと同じ理屈」で後退する見込みは殆どない。
以上のことから、中国はグアムの米爆撃機を本土に後退させ太平洋地域の軍事バランスを中国有利に傾けたが、オーストラリアのティンダル空軍基地が一部でも稼働を始めれば再び米国有利に傾くため、南シナ海から米海軍を追い払わない限り中国有利の状況を維持することは難しいと言える。
さらに中国にとって問題なのは中距離核戦力全廃条約の失効だ。
これまで米国は地上配備型の中距離弾道ミサイルや巡航ミサイルを禁じられていたため同条約に参加していない中国は米国に対し遠距離攻撃において一方的に有利な状況だったが、今後は米国も中国と同じように中距離弾道ミサイルや射程の長い巡航ミサイルを開発してくるため、爆撃機の拠点となる航空基地だけを狙う戦略では米国の接近阻止・領域拒否(A2/AD)を防ぐことは難しいだろう。
米国にしてみれば闇に紛れて移動を行い、あの手この手でカモフラジューされる車載型の弾道ミサイルや巡航ミサイルの生存性がどれだけ高いのか良く知っているため、これをオーストラリア北部に分散配備しておけば爆撃機に頼ること無く南シナ海の人工島を攻撃可能になる。
さらに爆撃機を極超音速ミサイルの発射母機化することも検討中なので、これが実現されれば米空軍は爆撃機を今よりも後方に下げることが可能になるはずだ。
果たして中国はハンデの取れた米国とどのように戦っていくのだろうか?
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Jonathan McElderry
ヘイヘイアメ帝ビビってる~www
とか何とか言いながらうかつに穴蔵から出てきて何かやらかすのを誘っているというご意見の篠沢教授に掛け金全部。
#誰かこのネタ分かって下さい。
なつかしぃー
そんなに中国の中距離弾道ミサイル「DF-26」はアメリカにとって脅威なのか?
だとしたらこのブログでも述べているように南シナ海問題も厄介なことになる
日本は思いっきり射程圏内に収まるが対策できるのだろうか?
GDPで負けている&報復手段が無い以上、現実的には米帝の核と、韓国に対するような寡占的戦略物資作っとく以外ないですね。
そこまでいかなくとも、核を作れるけど作らない、追い詰められなければね、的なCPの良い手段がいいですね。
戦略原潜もあるしなぁ
公明の罠というやつでは
今日の新聞にこの記事が載ってました。
管理者様は新聞社を出し抜きましたね。
さすがです!
そいつぁ、まずは当たらんという意味ですね。