米国関連

APSを搭載した新しいブラッドレー、米陸軍がM2A4E1を公開

陸上戦闘システムの開発責任者を務めるグレン・ディーン少将は3月末「ブラッドレー向けのAPS(Iron Fist Light Decoupled =IF-LD)購入に資金供給を始めた」と明かしていたが、米陸軍はIF-LDを搭載したブラッドレーの派生型=M2A4E1を公開した。

参考:PEO Ground Combat Systems

ウクライナに提供したブラッドレーと同数のM2A4E1調達資金を受け取った

米陸軍は10年近くエイブラムス、ブラッドレー、ストライカーへのアクティブ保護システム(APS)統合を研究し、M1A2/SEPv3パッケージにRafael製のTrophyを採用したものの、ブラッドレー向けに選択したElbit製のIron Fistは向かってくる脅威の50%にしか対応できなかったため、ElbitとGDはブラッドレーへのIron Fist統合方法を大幅に変更、レーダーや光学センサーといった各要素はオリジナルと異なる方法で統合・調整され、これを制御するソフトウェアも手を加えたIron Fist Light Decoupled (IF-LD)を開発。

米陸軍は何年も欠けてIF-LDを成熟させ「限りなく実戦に近い環境下で脅威の70%に対応できた」と、Elbitも「ロケット弾や対戦車ミサイルに対する保護能力を維持したままドローンにも対応できると実証した」と述べ、IF-LDの技術的な成熟度は「実戦配備レベル」に到達したと評価されたものの「資金不足」で2025年度の調達が見送られていた。

しかし、陸上戦闘システムの開発責任者を務めるグレン・ディーン少将は3月末「我々はブラッドレー向けのAPSを購入する資金を見つけた」「まだIF-LDの生産数は限定的なものに留まっている」と明かし、米陸軍もIF-LDを搭載したM2A4E1を公開して注目を集めている。

出典:PEO Ground Combat Systems

M2A4E1にはIF-LD、改良された前方赤外線照準装置、降車する際の熱を抑制する環境制御ユニットが統合されているため、米陸軍は「ブラッドレーの中でM2A4E1の生存性は最も高い」と述べており、これを調達する資金についても「我々はウクライナに提供したブラッドレーと同数のM2A4E1調達資金を受け取った」と明かしているため、200輌以上のM2A4E1を調達できるという意味だ。

関連記事:ブラッドレー向けのAPS、米陸軍がIron Fist改良型の生産に資金供給を開始
関連記事:米陸軍参謀総長、我々はウクライナで学んだ教訓を受け入れて適応する
関連記事:米議会、陸軍にUAVの脅威から戦車を保護するための計画を報告するよう要求
関連記事:米陸軍、エイブラムスは2040年までにハイエンドの戦場で無力になる
関連記事:米独に続き英国も主力戦車のAPSに「トロフィー」を選択

 

※アイキャッチ画像の出典:PEO Ground Combat Systems

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コメント

    • 無印
    • 2024年 5月 01日

    砲塔がてんこ盛り…

    13
      • Whiskey Dick
      • 2024年 5月 01日

      軍用機はステルス性重視のためツルツルになるのに、装甲車両と戦闘艦艇はゴテゴテになっていく。
      陸軍は交戦距離が短いので電波ステルスの必要性が薄い、艦船は寸法が大きいのでステルス化に限界がある(無理矢理これをやったズムウォルトは大失敗)。
      (ドローン及びトップアタック兵器に対する)装甲車両の生存性向上の手段として根本的な方策は「兵装区画と兵員区画を完全に分離して、着弾時の誘爆による死傷を防ぐ」ことなので、無人砲塔は今後のトレンドになるでしょう。
      ジープやトラックなど装甲化と費用に限界がある車両の場合は、乗降口以外を全て金網で囲ってみるとか。

      9
        •  
        • 2024年 5月 02日

        ロシアの戦訓だとドローン対策に車長の五感が最も信頼できると言われてますから無人砲塔化はどうなんでしょうね
        もちろん車両に例えばAEGISのようなものを積んで近接防空をオート化すれば無人砲塔化は出来るでしょうけど、それだと調達性が悪くなりますし通常の機関砲などを相手にミッションキルされやすくなってしまうわけですし

        6
          • hoge
          • 2024年 5月 02日

          その観点でいうと西側戦車の3人乗り砲塔で、車長と装填手それぞれに機関銃が用意されているのは最適でしょうけど、3人乗り砲塔では重量的に最早限界であり、2人乗り砲塔も若干軽くなる程度にしかならないことは昔から言われているようです(ルクレールのときの見積もりで3人乗りとの比較で9%程度の重量削減)
          そうすると次のステップとして明確な進歩させるためには無人砲塔化以外に最早選択肢はないのでは。

          6
            •  
            • 2024年 5月 02日

            個人的には必要なのは新機能を追加する進化というよりはリソース配分の見直しによる最適化だと思うんですよね
            例えば戦車にしても装甲配分で正面はこれまで通り重要だとして対APFSDSまで考慮する意味がどれだけあるのかと、そしてドローンによって戦場認識力が向上した現在で側面装甲を厚くする意味はあるのかと、むしろトップアタックがこれほど増えたならカバーすべきは上面ではないかと、そして上面に高価なセンサー類を積み重ねる配置は攻撃に対して脆弱すぎないかと
            私もT-14が出てきた頃は無人砲塔や装甲カプセル化といった先進的なコンセプトに感動しましたが、今ウクライナ戦役の戦訓から振り返ると時代に逆行してしまったようにも感じます
            まあとはいえ無人砲塔にメリットがあるのは明らかですから、戦後の兵器開発が楽しみですね

            3
              • hoge
              • 2024年 5月 02日

              難しいのは、ウクライナでの戦訓は「ロシアのウクライナの条件ではこうだった」というだけなので、次の戦いでは条件が根本的にひっくり返る可能性があることだと思いますね。
              APFSDS対策の必要性も、単にウクライナに有力な戦車と砲弾が不足しているという面も大きいでしょうし。

              とはいえ、無人砲塔もAPS依存も非常に高コストになりそうですし、故障時の対応も大変そうなので、どうなっていくのか気になりますね。
              M1E3では基本無人砲塔で砲塔からも操作可能なハイブリッドを考えているようですけど、そこまですると無人砲塔のメリットがあまりなさそうですし…

              2
          • TKT
          • 2024年 5月 02日

          映画の
          「トップガン マーベリック」
          でマーベリックがいっていた
          「考えるな、感じろ!」
          ですね。もともとはブルース・リーの映画のセリフですが・・。

          もともと戦車や装甲車は視界が極端に悪く、敵前では降車した歩兵との協力、役割分担が重要であり、戦車エースのオットー・カリウスなどもそういっています。銃眼・ガンポートに小銃を差し込んでやる完全乗車戦闘が非現実的と言われ、昔の歩兵装甲車にあった銃眼が鉄板でふさがれるようになったのもそのためです。

          いろいろ実際に経験、体験すると今のロシア軍で増えている
          「亀戦車」
          の方が簡単で実戦的なのかもしれません。

          2
    • たむごん
    • 2024年 5月 01日

    新型ブラッドレーも、対ドローン対策に、現場ではコープゲージなどつけるんでしょうかね。

    米軍が、現場でどういった運用をするるのか、少し気になります。

    12
    •  
    • 2024年 5月 01日

    APSなんてまともな装甲用意できないからつけてるだけって論調ももう今は完全に廃れたね

    10
      • ローテクおっさん
      • 2024年 5月 01日

      イスラエル軍が2023年にガザに投入した車両の内の4台中1台は撃破ないし損傷したとのこと
      そのうちの一部はAPSを搭載したナメル装甲車で、恐らく対戦車ミサイルにより10名が死亡の惨事
      正直に言って期待外れの惨状
      ドローン対策ならより遠距離で撃破できるRWSの方が望ましい

      21
        • 半分の軍事費の国から
        • 2024年 5月 02日

        世界初のソ連製APS「ドロースト」が1980年代にアフガニスタンで使用された時の迎撃成功率が80%辺りで、CIWSも60~80%辺りの迎撃成功率なので、「トロフィー」の成績も普通のなのではないかと思いますよ。アイアンドームの90%が異常なだけですね。
        迎撃費用は機関砲の弾の方が安いですが、成功率はミサイルの方が良い方向に行くので、APSFDSの迎撃も可能な迎撃弾体と機関砲弾によるドローンや迫撃砲弾等の迎撃との併用が求められているというのは正解なのかと、今回の記事は、途中経過報告なのではないかと思いますよ。

        陸に上がったCWIS
        リンク

        3
    • 無名
    • 2024年 5月 01日

    実戦に勝るデータ収集方法は存在しないので、ウクライナにいくつか提供して実戦投入してみたら良いのにと思います。
    鹵獲対策は必須ですが。

    6
      •  
      • 2024年 5月 02日

      10式の14両くらい送ってデータ取ってほしいですよね
      ついでにコンバットプルーフが得られればセールス的にも期待できますし

      3
        • 半分の軍事費の国から
        • 2024年 5月 02日

        走行しながら射撃可能なC-RAM能力付きの対空車両も用意して、戦車と共に行動させないと、今の戦場では危険ですよ。後は、リップソーM5みたいな車両に40mmグレネード搭載した対人攻撃特化した車両も付随車両として要ると思うのですけれど‥

        1
          • Whiskey Dick
          • 2024年 5月 02日

          神林長平の「今宵銀河を杯にして」のことでしょうか。
          あれに登場する戦車は砲塔にCIWSらしきものを搭載していて、無人の対空車両を随伴していた。

          3
        • 幽霊
        • 2024年 5月 02日

        ただ送るだけではゴミになるだけですよ
        送るなら国内にウクライナ軍人を招いて訓練するかヨーロッパの何処かに自衛官を派遣してそこで訓練を行うなどをした上で送る必要がありますし、整備マニュアルのウクライナ語への翻訳や車体内やモニターに表示される日本語表記をウクライナ語に翻訳して張り替えたりする必要が有ります。

        7
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 5月 01日

    >Elbitも「ロケット弾や対戦車ミサイルに対する保護能力を維持したままドローンにも対応できると実証した」と述べ
    ほんとにござるかぁ?って感じですが、こればっかりは実戦投入されないと試験での実証でしかないですからねぇ

    17
    • nimo
    • 2024年 5月 01日

    とうとう出たね
    高価だろうし連続攻撃にさらされながらどれほど活躍できるのか気になるが
    ウクライナでは登場しないだろうし謎のままかな

    7
    • D-day
    • 2024年 5月 01日

    お古を提供して、その資金で開発したと言うのがアメリカらしいです。

    5
      • kitty
      • 2024年 5月 02日

      「開発資金を見つけた」って謎の表現。

      6
    • イーロンマスク
    • 2024年 5月 02日

    ロシアにもアクティブ防護システムはあるはずなのに結局は亀戦車
    随伴歩兵がいると使えないってのは致命的よね

    6
      •  
      • 2024年 5月 02日

      アレーナは従来型の対戦車ミサイルなどの脅威に対するもので、亀戦車はFPV.ドローン対策に特化した装甲です
      単純にトップアタックくらいなら対応してますが真上からの攻撃は想定外でしょうし、そう何発も撃ち込まれる事態も対応していないでしょう

      14
      • れんちゃ
      • 2024年 5月 02日

      ロシアの場合、試験場レベルでは高度な製品でも量産品に同等品が採用されているかは保証が…
      従って、物理的に防護として機能する方が信頼性が高いってことなのかも知れない。一時期配られた戦車にペタペタ張る方式のジャマーもあんまアテにならなかったそうだし、やっぱフェンスだよね!と。

      2
      • 名無し
      • 2024年 5月 02日

      ウクライナでの動画を見る限り、APS好きな開発者たちは、ドローンはAPSの電源切ってるときにも飛んでくるという現実を、受け入れられて無いんだろうなあ、と思ってる。
      APSも対空ミサイルも、24時間電源入って探知システフル稼働で即応迎撃体制なんて有り得ないから。

      一方、カゴは24時間稼働である。

      7
      • hoge
      • 2024年 5月 02日

      Shtoraは正面からくる特定の誘導方式のATGMの妨害しかできないのでドローンには無意味だし、ドローンにも対応できそうなT-14のAfganitは今のところT-14専用でずっと開発中のステータスだから、「ロシアにもアクティブ防護システムはあるはずなのに結局は亀戦車」は明確に誤り。
      ロシアにはそもそもドローンに対応できるAPSのものがない。

      4
    • den
    • 2024年 5月 02日

    なお、500ドルのドローンで木っ端微塵にされる模様

    6
    • ルイ16世
    • 2024年 5月 02日

    一方ロシアはそこら辺のトタンと金網を使った

    2
    • れんちゃ
    • 2024年 5月 02日

    近年の兵器はシンプル化が進んでいたけど、ドローンの脅威の表面化でゴテゴテと色々と付ける感じになってきたね。
    なんか、見た目が空想作品の兵器っぽくなってきた感がある。

    2
    • M3A3はどうするんでしょ?
    • 2024年 5月 02日

    エイブラズム並みの車両分解オーバーホールしてから改修するのかな?海外サイトを覗いたら
    「新型ブラッドレーIFVは、 「アイアン・フィスト・アクティブ・プロテクション・ システム、改良された高精細前方赤外線砲手照準器、および降車時の熱ストレスを防ぐための環境制御装置を統合した」結果である」
    と実績のあるイスラエルのアイアンフィストの導入でしたか。

    • バンダイは早くジムⅢのMG作ってくれ
    • 2024年 5月 02日

    APSは基本、対戦車ミサイルとかロケット対策のもの
    ドローンはおまけ程度ってことなんじゃない

    基本は対空砲とかジャミングで対処するだろうし

    • kitty
    • 2024年 5月 02日

    しかし型番どうにかならないものか。
    M4A1もM4E2もあるし、素人さん避けかいとまで思ってしまう。

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