米陸軍参謀総長のランディ・ジョージ大将は「ウクライナとロシアの戦いで戦争の性格が急速に変化しており、我々も変化を認識して適応していかなければならない」と述べ、通常火力戦略の下で海外製自走砲の調達を再推進する可能性があるらしい。
参考:Change of plans: US Army embraces lessons learned from war in Ukraine
参考:Uncertain fate for active protection on Army’s combat vehicles
米陸軍は通常火力戦略の下で実績のある自走砲調達を再推進する可能性がある
毎年大きな注目を集める米陸軍協会の年次総会も「イスラエルとハマスの戦争勃発」で影が薄くなってしまったが、米陸軍参謀総長のランディ・ジョージ大将は「ウクライナとロシアの戦いで戦争の性格が急速に変化しており、我々も変化を認識して適応していかなければならない」と、陸軍の近代化を担当するジェームズ・レイニー大将も砲兵戦略を「ウクライナで何が起こっているのか」と「米太平洋陸軍が通常火器に何を要求しているか」の両方に対応させる必要があると言及した。
レイニー大将は「我々がウクライナで目撃しているのは精密射撃の有効性や様々な新技術だが、最も多くの敵を戦場で破壊しているのは通常砲=通常火力(榴弾砲のこと)だ。まもなく発表する通常火力戦略には戦場での通常射撃を強化する施策(射程の延長や自動装填装置の採用など)が含まれている」と、陸軍で調達を担当するブッシュ次官補も「通常火力戦略は拡張射程砲プログラムの要件など砲兵戦力の構成に関する重要な決定が含まれている」と述べているのが興味深い。
米陸軍は牽引式のM777更新を検討中で、2021年に最低でも4つの装輪式自走砲(CAESAR、ARCHER、ATMOS、Nora B-52)をテストしたが調達には至らず、独自に装輪式自走砲を開発する方針だと噂されていたが、レイニー大将は「NATO加盟国の中に我々の関心を集める装備をもつ国がある」と述べたため、米ディフェンスメディアも「新たな砲兵装備を迅速に取得するため、通常火力戦略の下で実績のある自走砲調達を再推進する可能性がある」と報じている。
さらにブッシュ次官補も「空挺部隊はヘリで移動するためM777を重宝しているが、陸軍の他の部隊は『もっと別の能力』を欲しがるかもしれない。調達の観点から『海外製システムの採用』が受け入れられるなら、新規開発よりも迅速にシステムを取得できるオプションを持っている。とにかく今後も通常の大砲が必要で、ロシアとの戦いでも砲兵が戦場における最高の破壊者であると証明されている」と述べており、NATO加盟国に取得先を絞るならCAESAR、ARCHER、DANA、ZUZANA2、DITA、MORANA、RCH155などがオプションに該当する。
設営に時間がかかる生存性の低い指揮所は時代遅れ、機能を分散して移動可能でなければならない
個人的に最も興味深いのは「立ち上げに2時間も要する戦術作戦指揮所の時代は終わった」という米陸軍参謀総長の指摘だ。
陸軍は戦場に高度な司令部を設置するため「発電機を備えて空調管理が行き届いた大型テント」を設営してきたが、ジョージ大将は「移動可能で迅速に更新できるオープン・アーキテクチャの必要性が戦場で証明された。設営に2時間もかかる指揮所は時代遅れで、数分で移動でき移動中にも作戦指揮を継続できるシステムが必要だ」と訴え、短期的には今あるものを修正して対応し「将来的には新たなC2(Command and Control)アーキテクチャに移行しなければならない」と付け加えている。
因みにジョージ大将は「5輌のストライカーに分乗する35人だけで旅団戦闘団全体の指揮統制を行っているのを見て衝撃を受けた」とも言及し、市販品のノートパソコン、タブレット、無線通信装置を搭載したストライカーは1つのノードとして作動する戦場ネットワークに接続されているため「物理的な距離を無視して指揮統制を行える能力開発に労力を割くのは間違っていない」と述べた。
他にもエイブラムスの新しいアップグレード=M1E3について「兵站上の負担を軽減する重量削減」「徘徊型弾薬やドローンによるトップアタックからの保護」「アクティブ防護システムの統合」が重要になると述べているが、陸上戦闘システムの開発責任者を務めるグレン・ディーン少将は「エイブラムスの暫定的な解決策として導入したトロフィーの性能に満足しているものの、戦車への搭載が大変なので実際の運用・維持が少し難しい」とも言及。
この辺りの問題もSEPv4を中止して「より積極的なアップグレード=M1E3」の開発に踏み切った要因なのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army Reserve photo by 1st Sgt. Michel Sauret
米軍は無駄も多いけど最終的には対応する印象
自衛隊もちゃんと考えているのかな?
欧米の常設編成は大隊の混成である旅団が基幹となっていることが多いですが、
陸自の基幹的編成は中隊の混成となる連隊(戦闘団)形態なので、前線の指揮系統はもっと細かいですね。
また800両以上の大量調達する予定のパトリアAMVは防護性能に実績がありますし、これの指揮特化タイプも調達します。
(細かい不安は尽きないですが)即応機動連隊など、予定の大枠ではかなり先進的な構造になるかと。
誤解を招きそうなので一応前置きとして自衛隊は大変役立っているという前置きをしておいて、その上で。
アメリカと日本で大きく違うのは、軍事力が国家の地位に与える影響ではないでしょうか。アメリカの経済力さえも含めて、その軍事量が圧倒的だからこそ今の地位があり、それを維持できるのであって、今回のようにその保有戦力が一気に陳腐化しうる事態になればそれこそ死活問題。対して日本では、確かに一大事ではあるが立場的にはアメリカほど影響は受けないわけで、どうしても本気度が変わってしまうのかと。国内世論も違いますしね。
むしろ昔の陸上自衛隊、北海道重視で、対ロシア軍を重視した訓練や装備だった、敵制空権下での作戦を想定していた昔の陸上自衛隊の方が上手く対応していた、適合していたかもしれません。
泥濘期での戦闘を考えると、機動戦闘車のような装輪装甲車よりも、戦車のような装軌車両の方がよく、歩兵支援が中心であれば、74式戦車のような105㎜砲でも十分かもしれません。
市街地での対ゲリラ戦、離島奪回のための上陸作戦、のための訓練や装備などが、今のウクライナでの戦訓に合わないのは当然ですが、かといって一方では中国のような脅威もあり、ハマスのような脅威も実際にあり、防衛の対象を一つに絞るのも難しいと言えます。
指揮所がムダにでっかくて豪華で人が多すぎるのはアメリカ軍だからで、陸上自衛隊の設備や施設は、もとから米軍のものより簡素で小さいわけです。
いちいち大きな発電機や空調装置が必要なのは、電子化や自動化のやりすぎ、ムダな金、予算のかけすぎのためではないでしょうか。むしろ昔のアナログな指揮所に少し戻せば、今よりずっと簡素で小さい指揮所になるでしょう。
先ずは19式を改良してちゃんと実戦でも使える形にしてほしいね。
なんだあの解放座席は、ふざけてんのか
なんだかパラディン更新と装輪榴弾がごっちゃでは?まずは山岳空挺とストライカーに戦術輸送機で空輸可能な装輪榴弾砲が必須でしょ。C130適応ならもうカエサル6×6ですね。MPFにセットでこれを選定すべきだったと思います。
で、主力のパラディン後継ですが、超長射程化で尚且つCRAM可能なのが開発中です。砲塔はその国産ので良いとして車体の刷新も必要です。XM30が決まればそれの車体流用で延長型を採用すれば良い。MPFのアスコッド車体でも別に良いでしょう。MPFは500両と言うなら互換性ある車体は多いほうが良い。
米陸の砲兵戦力の内で在来火砲の今後の構成はそう難しい事では無いように思えます。
管理人さんと同じで、指揮所廃止論は興味深いのと同時に戦場の様相が変化している事を実感できますね。
アメリカだけでなく、中国や欧州などもウクライナ戦争から多くを学んで、研究しているでしょうし、日本も遅れることがないようにするして欲しいものです。
アメリカ軍のトランスフォーメーションのように部隊移動だけでなく、戦闘教義のレベル抜本的に変化が生まれそうですね。
現状開発できる装備から必要なものを探すだけでなく、武器設計から見直す物もあると理解しました。
徘徊型ドローン・偵察型ドローンなど、各種ドローンの進化は凄いですね。
戦場での滞在可能時間から逆算して、あらゆる兵器の必要性を洗い出しているように感じます。
映画「シン・ゴジラ」で陸自が野戦司令部から各種指示をしてる描写とかしてましたけど、今後5年、10年後にはそういった描写はすっかりなくなって、指揮車輛同士が連携して司令部として機能する描写に変わるんでしょうね。艦船が戦闘中に停船してることがないように、機甲車輛も戦闘時には常に移動するよう変わるかもしれません。
これからはSd Kfz 251から指揮してたナチス・ドイツ機甲師団っぽさが出てくるのか
お二方の仰る通る事例、とてもイメージしやすかったです。
通信機器の小型化、小型電子機器の性能向上は劇的ですからね。
クラスハⅣの電子線装置を取り除いて、指揮能力向上したものをイメージしてたのですが。
敵方に識別されないためにも、似たような車両が走り回った方が、よいのかもしれないですね。
陸自は戦車・火砲の定数を削減した状態のままで
12式改誘導弾やトマホーク等の長距離対地・対空ミサイルの増強を進めるが
ウクライナ戦争や今回のイスラエル戦争でも
(正規軍同士の対称戦でも民兵レベルの非対称戦でも)
完全装甲化され自走化され、継続的に戦場に展開し、迅速な配置転換が可能な
戦車や自走榴弾砲・ロケット砲の存在は極めて重要であることは証明された
一方で戦車も自走榴弾砲もドローンによるトップアタック能力に対する
上部装甲の脆弱性も改めて証明され、この対策は必須であることも判明した
一発一発が高価な誘導弾は精密でありながら、再生産に時間がかかり
誘導弾より大量生産が迅速に可能な戦車砲弾や榴弾・迫撃砲弾と
それを発射する戦車・自走火砲の数は誘導弾と並んで陸上戦力の両輪だ
トップアタック対策と自走化を施した上で戦車・自走砲の増備も必須だ
自走砲は増やすべきですね。とはいえ政府としては基本的にまずは初期の電撃戦への対応を今は重視してるのかなとは。全部同時には難しいので…特にこの国では、
防衛費と若者人口に限界がある以上、陸自の増強は止めた方が良い。
(敵が核兵器を使わなければ)とりあえず敵の上陸を阻止できればこちらの勝利なのだから、陸上で戦う武器より上陸を事前阻止を優先すべきである。現代の大砲は射程が精々30km程度であり、敵の艦艇及び航空機はこれ以上の長射程兵器を使用すると思われるので、大砲なんかより対船舶ミサイル(射程100km以上)を増強した方が良い。
地上の損害を減らしたいのであれば陸自を減らした分、海自・空自を増強して積極的に敵を狩るようにすべき。
※西南諸島の中国軍対応はどうするのかという話なら、島の大きさを考えれば敵も大重量の兵器を持ち込むとは考えにくい。精々水陸両用車と重迫撃砲程度あれば十分でしょう。それ以上の火力支援は航空機と軍艦にやらせればいいのだし。
島国の日本が敵国と国境をべったり接したウクライナでの戦訓を「そのまま」取り入れてもしょうがないでしょう。
島をまたいで攻撃できる長射程の対艦対地ミサイルの増強や、無人水陸両用車やUSVの開発とそれじゃ間に合わんからとりあえず既存USVの輸入導入、も至って妥当な選択かと。
強いていうならUAV対処能力は強化すべきかなぁ。
海外製自走砲を調達って所で、一瞬K-2を買うのかと思ってしまった。
装輪式を調達するという話なのね
自走砲については、これから試行錯誤をします(笑)宣言では?。
本命は自国製でしょう。軍需企業と議員が黙っていないでしょうから(苦笑)。
司令部は、分割するのでは。今の米軍は全部を集めているのかな?。
そうなると、通信が更に重要になるのでしょうね。
かっこいいこといってますが、結局海外から買ってくると・・・
米軍ってもはや海外(欧州)製ばかりですよね パーツ単位だとさらに悲惨なことになりそうですが
欧州を下に見てる割には依存度が増えてるようなきがしますが・・・
米海軍がシステムにドイツSAP製のソフトを採用したのが一番衝撃だったけど(AWS上で動作)
兵器体系はもちろん、指揮命令系統など様々な分野で大きくこれまでと変化しそうですし、変化しないといけなくなりました。
日本ではまずは弾薬の製造能力と備蓄量の大幅な増大ですが、他にも同盟国との使用兵器の統一化が可能な部分は国産に拘らない、有事に供与される兵器へ日本の指揮システムへポン付けで組み込める装置の開発も必要ではないでしょうか。
兵器を供与されても訓練に時間がかからない方がすぐに役に立ちます。
同じ兵器でも自軍の指揮命令系統へ組み込む為に大幅な改修が必要では時間がかかりますし、組み込む装置がすぐに数を揃える事ができないかもしれません。
その点ウクライナ軍は現時点では最も即応性があり柔軟なシステムになっているのだと思います。
戦後に復興の為の外貨獲得にも役に立つかもしれません。
XM1299「………あれ俺は?」
ウクライナでのM777の損耗率を見れば、砲兵部隊の自走化が急務なのは明らかですもんね。
装軌式でなく装輪式を調達するのは、HIMARS他の実績を見て不整地踏破能力よりも展開速度、陣地転換速度を重視したということでしょうか。
強力な索敵能力、カウンター攻撃能力を持つ敵に対しては装軌車両の移動能力じゃ不足ということなのかも。
指揮所の分散化、機動化も興味深いですね。
ウクライナではロシア軍のコマンドポストが何度もHIMARSで叩かれていますが、自分がやられる側になることを想定したら確かに前線に固定拠点は置けませんわ。
トレーラーに各種機材を載せて、士官は端末だけ持って装甲車両から指揮みたいな形になるんでしょうか。
偽装やデコイの重要性も上がりそう。
ペントミックを引きずってる陸自みたいに隠蔽され砲爆撃に耐える施設でないのは長年の対テロ戦争の影響でしょう。正規軍相手でなければ砲撃はCRAMで迎撃する。そもそも正規軍相手でも砲兵火力はエアカバーで近接を許さない前提がある。
NATO連中のそれはAPCで構成される事が普通で、新型装輪装甲を導入したら指揮幕僚用(士官用)は真っ先に更新されてますが米軍のそれは新型のAMPVでなければM113です。要は更新遅れの結果でしょ。
米陸は編制外在庫のMRAPを改装して指揮通信車で活用したら良いのでは?カイマンATVとか機動性能向上で改装した早々に放置されてるのがあるはず。あれらなら残存性は言うまでもなく酷暑地用で相応の給電能力もあるでしょうし導入費で車両費は不要です。
当時はあの車高が問題視されてましたが無人機で上から見られるなら車高2mでも3mでも変わりやしません。足が鈍いのは後方運用のでならまあ許容範囲です。APCでは無謀でも路面を選べるCCVでなら問題にならない。逆に欧州勢が幕僚シェルターでボクサー使うのとか過剰な気がします。高機動トラックベースの装甲化で十分でしょう。
ガンダム世界の陸戦艇みたいなのは…デカ過ぎて駄目か