米海軍から久々の朗報が届いた。9年近くオーバーホールを待っていたロサンゼルス級原潜ボイシについて「ニューポート・ニューズ造船所とオーバーホール契約を12億ドルで締結した」と発表され、今度こそボイシのオーバーホールに期待が持てそうだ。
参考:Sub Boise will begin its overhaul nine years late, with $1.2B contract
金曜日に発表された契約によってニューポート・ニューズ造船所はオーバーホールを開始することが可能になる
2023年1月に開催された海軍協会の年次総会で米海軍上層部の不満が爆発し、大西洋海域を管轄するダリル・コードル大将は「私にとってCOVID‑19やサプライチェーンといった問題もどうでもいい。SM-6や魚雷をスケージュール通りに納品して欲しいだけだ。我々は10隻の潜水艦を発注したのに手元に届いたのは6隻だけで、残りの4隻はどこに消えたのか?私の部隊は潜水艦が不足している」と不満をぶち撒けた。

出典:U.S. Navy photo courtesy of Newport News Shipbuilding/Released
米造船業界は年2隻づつ発注されるバージニア級原潜を年1.2隻のペースでしか建造できず、年10隻のオーバーホール作業もスケジュール通りに進捗していないため、コードル大将は「現在19隻の潜水艦が整備中か整備待ちの状態だ。もしスケジュール通りにオーバーホールが行われていれば潜水艦艦隊の戦力は9隻も増えていた」と述べていたが、米海軍は23日「ロサンゼルス級原潜ボイシのオーバーホール契約を12億ドルで締結した」と発表して注目を集めている。
2015年に哨戒任務を終えたボイシはノーフォーク海軍造船所でオーバーホールを行う予定だったものの、オハイオ級原潜の核燃料棒交換、空母のオーバーホール、ロサンゼルス級原潜のラホーヤとサンフランシスコを繫留訓練艦に変更する作業に取り組んでいたため、攻撃型原潜のオーバーホールはどんどん先送りされ、2018年にニューポート・ニューズ造船所に移動し「ボイシは2021年までオーバーホールを終えて復帰する」と報じられていたが、実際には資金不足でオーバーホール契約を締結出来なかった。

出典:U.S. Navy photo by Chief Mass Communication Specialist Darryl I. Wood/Released 係留中の2018年に行われたボイシの指揮官交代
海軍は2020年9月にボイシのオーバーホールの初期費用として約3.5億ドルを支払い、当時のギルディ作戦部長は「ニューポート・ニューズ造船所でスペースされ確保されれば直ぐにオーバーホールが始まる」と議会に報告していたものの、この時もオーバーホールは始まらず、2024会計年度予算の中で「今年度中にボイシのオーバーホールが始まる」と言及していたが、金曜日に発表された契約によってニューポート・ニューズ造船所はオーバーホールを開始することが可能になるらしい。
因みに海軍は過去「ニューポート・ニューズ造船所の設備や技術者らは艦艇の新規建造に特化している」と述べて「原潜のオーバーホール能力」に懸念を表明しており、米海軍海上システム司令部の副司令官も2020年「ニューポート・ニューズ造船所はロサンゼルス級原潜のヘレナやコロンバスのオーバーホールに苦戦しているため、まだボイシのオーバーホールに手がつけられない。同造船所は10年以上も原潜のオーバーホールから遠ざかっていたため関連技術やノウハウが失われている」と言及したことがある。

U.S. Navy photo by Chris Oxley courtesy of Newport News Shipbuilding/Released
ニューポート・ニューズ造船所はDefense Newsの取材に「10年間の中断を経て潜水艦の修理事業を再構築した」「我々はオーバーホールに精通した熟練労働者を確保し、関連するサプライチェーンを成熟させ、作業プロセスを改善して設備にも多くの投資を行ってきた」「この複雑な事業への復帰は困難が伴ったもののヘレナやコロンバスで経験を積んだ」と述べており、今度こそボイシのオーバーホール(作業完了は2029年9月の予定)に期待が持てそうだ。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Jeffrey M. Richardson/Released
20年、30年後には日本と韓国が米海軍の船を建造してるかもしれませんねぇ…
オーバーホール完了は5年後ですか…
海軍の規模に対して造船能力が貧弱過ぎるでしょ
米海軍は本気で海軍工廠を建設するか、軽整備は同盟国に割り振るかを検討したほうが良いんじゃないでしょうか?
海軍工廠だけじゃなくて、陸軍の砲弾やミサイルも国有民営にしないと投資ケチり過ぎてダメかもしれない。
日本も現場は外国人多いから、10年後はどうなるやら。
日本や韓国に仕事を投げられないんですかね
さすがに原潜は無理か
機密の塊だからね
いくら同盟国とは言えそこまで仲が良いわけじゃない
オーバーホールで12億ドルか
日本の潜水艦なら3隻作れるな
何日か前の記事で。
ハワイに原潜修理用の乾ドックを建造するとありました。
完成は数年先のようですが。
完成すれば、米海軍の不満も多少は緩和されるのでは。
ついでに、AUKAS原潜も建造が捗ったりするのでは。
ロス級のオーバーホールが無理ならバージニア級を新造すればいいじゃない
金食い虫すぎてやばいな
海自は限られた予算を最大限活かしてると思うわ
アメリカの製造業では人手不足すぎて、不法移民の児童まで借り出す惨状
好転する気配が一切ないですね
外国に丸投げしたら、トランプに仕事を盗んだって難癖つけられるのでどこも受注しないと思います
>アメリカの製造業では人手不足すぎて、不法移民の児童まで借り出す惨状
製造業が不人気なのか、若しくは技術者や職人が少ないのか。アメリカでは工学系専攻の学生は7%程度(日本は16%程度)で、工学系技術者の多くを外国人に依存している。民生品の製造なら問題無いが、機密情報の塊である原子力潜水艦に外国人技術者を充てたり、被爆の危険がある原子炉の作業を無学な不法移民にやらせるのは不安過ぎる。
「外国人に任せられない」とゆーても〇〇系アメリカ人とか除外しってたら果たしてどんだけ残るのか。
米に限らず移民受け入れたり入り込まれたりしてる国とかもそーだがこの先どうなっちゃうんですかねぇ
ウクライナ情勢専門のサイトでは、こういう情報はほぼ目にしないので、ありがたいです。
ロシアが日本に侵攻する余裕はなくても、北が血迷ったり、実験に失敗して日本にミサイル落とすとかのリスクは絶えずあるので、米潜水艦とか、日本はもっと気にするべきなのですが。
どこの造船所の話かは分からないですが、バージニア級の整備と建造のための技術導入でオーストラリアから来ている実習生(費用は豪州政府持ち?)を受け入れた結果工員不足が緩和してワークフローが改善したという話を聞きました。真偽の程は分からないですが、造船所の人材不足で海軍の配備計画がこれほど壊れてしまうとなると、同盟国の人材や資本を投入するというアイデアは笑い話ではなくなっていくのかもしれないですね。といって候補になりうるのは日本と韓国だけですが。両者は水上艦ニーズは米国に近いところにあってもバージニアのような長大な航続距離を持つ大型SSNを必ずしも必要としていないし受け入れる余地もあまりないので、なかなか厳しいでしょうが。
ロス級原潜は沈黙の艦隊のやられ役だったり、レッドストームライジングの反撃の切り札みたいに90年代の作品によく出てた。