米国関連

米海軍、数年以内に魚雷発射管から発射・回収が可能なUUVを実用化

米海軍は潜水艦の魚雷発射管から発射・回収が可能なUUVの開発を進めており、プログラムを主導するスミス少佐は「数年以内に実戦投入できる」と述べた。さらに米海軍は空中と海中の両方で飛行(航行)できる小型ドローンの実証テストをSubUAS社に発注した。

参考:US Navy tests sub-launched drones while industry continues designing
参考:Uncrewed Submarine Will Launch, Recover Drone That Can Swim, Fly

クワッドコプタータイプのドローンがもたらす脅威は「陸上戦に限定されたもの」という考えが覆されるかもしれない

潜水艦に求められるスペックや能力は運用国の戦略や戦術に左右されるため、伝統的な対潜水艦戦(ハンターキラー)能力を重視する国もあれば、長距離哨戒、対地攻撃能力、特殊部隊の運搬など多用途性を重視する国もあり、どちらが世界的なトレンドかと言えば多用途性を確保した潜水艦で、最近ではUAVやUUVの水中発射能力や連携能力も要求されている。

潜水艦の魚雷発射管から運用可能なUUV(米海軍のRazorbackUUVや仏海軍のD-19など)は実用化済みだが、任務終了後のUUVを回収するためにはダイバーによる面倒な作業が必要で、米海軍のモートン少将は「任務を終えたUUVは移動している潜水艦の魚雷発射管に自力で帰還する能力が必要だ。この機能が実装されれば全てのSSNはUUVの母艦になる」と述べており、開発中のREMUS600ベースの新型UUV=RazorbackUUVの後継は「自律的な回収に対応した設計になる」と報じられていた。

この新型UUVは「Medium UUV(MUUV)」と呼ばれており、開発プログラムを主導している米海軍のケビン・スミス少佐は「Leidos社とL3Harris社は開発を加速させるため自社費用で実証モデルを建造した。新型MUUVは数年以内に実戦投入される予定だが、海軍は産業界から入手可能な類似モデルを使用して訓練を行い運用方法を学んでいる」と、新しい潜水艦司令官の候補に挙がっているロブ・ゴーチャー少将も「大西洋の潜水艦部隊はHII製のUUVテストし、太平洋の潜水艦部隊はL3Harris製のUUVを魚雷発射管から発射・回収に成功した」と明かしているのが興味深い。

出典:U.S. Navy photo by Lt. Corey T. Jones

ゴーチャー少将は「魚雷発射管から発射・回収可能なUUVを2024年に配備する計画がある」と述べたが、この取り組みは新型MUUVの開発・実用化と並行して行われる予定で、既存のRazorbackUUVは欧州地域や太平洋地域で行われた21の演習に参加して対機雷戦に貢献し、中東海域でも実際の海底探査任務や港湾警備任務を遂行していると付け加えているものの、新型MUUVに最も期待している能力は「潜望鏡とソナーに限られた状況認識力の拡張」だろう。

魚雷発射管からの発射・回収に対応した新型MUUVなら単体でのISR(情報・監視・偵察)任務だけでなく、必要に応じてUAVの水中発射や通信の中継などにも使用でき、浮上することなく「UUVを回収して再使用できる能力」は弾庫容量が限られる潜水艦にとって非常に魅力的だ。

出典:AeroVironment

因みに米海軍は攻撃型原潜への水中発射型UAV「Blackwing(デコイ発射装置を通じて海中に射出)」搭載を発表済みで、2021年に同機を120機調達すると報じられていたためロサンゼルス級やバージニア級にBlackwingが搭載されている可能性が高く、インド海軍も独自の水中発射型UAV開発を、イスラエル企業も潜水艦からの運用に対応したNinox103UWを発表、中国でも環球時報が「西北工業大学が開発したPeregrine UAVが中国初の水中発射のテストを行った」と報じており、水中発射型UAVの可能性に関心が集まっている状況だ。

クワッドコプタータイプの小型ドローンもウクライナとロシアの戦争で「可能性」と「実用性」が証明されたが、米海軍は以前から「空中と海中の両方で飛行(航行)できるクワッドコプタータイプの小型ドローン」に関心を寄せており、米海軍研究局は13日「Naviatorの実証テストをSubUAS社に発注した」と発表して注目を集めている。

もう米海軍が何に期待しているかは動画を見て貰えれば分かるとも思うが、この動画は8年前のものでSubUAS社のホームページに掲載されている「Naviator」はもっと洗練されたデザインになっており、同社は最新のNaviatorについて「水中での航行速度は最大3.5ノットだが、サイズや構成によって水中での航行速度は10ノットに達する可能性がある」と主張、米ディフェンスメディアは「ドローンは海中から素早く空中に飛び出して敵艦を確認後、素早く海中に隠れることができる。有人潜水艦から発射するUUVと組み合わせればNaviatorの可能性は更に広がるだろう」と指摘している。

まだ空中と海中の両方で飛行(航行)できるクワッドコプタータイプの小型ドローンが実用に耐えうるのか、このコンセプトが本当に有用で戦場で役に立つのかなどは不明だが、陸上戦だけでなく海上戦力も安価なドローンやUAVの脅威に晒される可能性が高まっており、クワッドコプタータイプのドローンがもたらす脅威は「陸上戦に限定されたもの」という考え自体が覆されるかもしれない。

関連記事:潜水艦に求められる多用途性、米仏は潜水艦をUUV母艦に変更したい
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Lt. Tyler Baldino/Released

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コメント

    • 774rr
    • 2023年 11月 16日

    > 空中と海中の両方で飛行(航行)できるクワッドコプタータイプの小型ドローン
    海上でどの位通用するんやろうね?
    陸上と違って航続距離や稼働時間が求められると思うんだけど
    そうなると小型のクワッドコプターだと性能足りないよねって思っちゃう

    じゃあ大型化するか〜ってなると 今度はそうそう消耗出来ない価格になるだろうし
    マビックみたいに気軽には使えないよね
    どんな運用を想定してるんやろか?

    11
    • 無能
    • 2023年 11月 16日

    回収するためには海面付近まで浮上しないとダメそうで回収時はリスキーに見える
    自爆型のクアッドコプターで追跡したら攻撃できるかな?

    逆手にとってデコイみたいな使い方はできそうだけど

    1
    • ルアー
    • 2023年 11月 16日

    ウクライナの戦場から分かったことは現時点でミリタリーユースのドローンはコスパ、性能共に民生ドローンに比べて劣っている
    逆に言えば軍用のドローンが劣っている証拠として欠点も多い民生ドローンの改造品が目立つ
    ミリタリー由来のドローンは現時点ではG3MBT戦車のような完成形と言えるドローンが無いということ
    オリオンもTB2も、目立った活躍は戦局に影響力があるレベルではほぼ無い

    1
    • 58式素人
    • 2023年 11月 16日

    普通の魚雷のように、50ktで走ったりはしないのでしょう。
    出力の小さな推進機関を前後に逆向きに付ければ、問題は解決しそうな気もします。
    舵は邪魔だろうから、ウオータージェット方式にしたら良いのでは。
    ただ、内径21インチの発射管に対して、Mk37魚雷のように19インチの外径になるのでは。
    あるいは、射程が短いなら、給電/データ通信用のワイヤを引き摺るでしょうから、
    普通にワイヤを巻き戻せば良かったりして。

    3
    • gobu
    • 2023年 11月 16日

    ミサイル全盛時代に
    もしかしてデカイ空母は時代遅れじゃないだろうかと
    言われて久しいが
    次の大国のトレンドは水中空母かな

    我が国も伊400の後継艦はよー

    3
      • kitty
      • 2023年 11月 16日

      ブルーノアなつい。

      4
    • Easy
    • 2023年 11月 16日

    しかし,結局は撃ちっぱなしの使い捨ての方がコスパが良い、ってことになりそうな予感が・・・
    撃ちっぱなし設計なら設計上の制約は魚雷管の物理サイズぐらいだが、回収を前提とすると回収フックのサイズだ仕様だ安全性だ水密はどうか排水はどうする的な山のような検討と仕様を積み上げねばならず。
    頑張って作っても回収機能部分のオーバーヘッドで使い捨て方式より性能が劣っては兵器として優位性が無くなってしまいます。

    8
    • ホテルラウンジ
    • 2023年 11月 16日

    潜水艦にドローンを積めば、今ウクライナ戦争でやってます、ドローンを使った観測砲撃と同じ方式が出来るんですよね。
    ドローンで弾着を確認して正確な射撃を行うように、潜水艦は敵艦隊が出そうな箇所に衛星通信等で遠距離と通信出来るドローンを放ってそのエリアを監視し、
    敵艦隊が出てきたら内地や後方の味方艦隊から極超音速の対艦ミサイルを放って、ドローンで最終誘導させて極超音速ミサイルの弱点とされる最終誘導を補強して当てたら良いんです。
    つまり潜水艦は極端な話、武装は不要で、魚雷の代わりにドローンを山積みにして敵の制海権の海域に侵入して、適宜
    偵察ドローンを放ち、「目」の役割さへ果たせばいいんですよね。
    だから今の海自の潜水艦は隠密性を武器に要所要所で静かに敵艦隊を待ち伏せしてますが、その隠密性を活かして中国の制海権のエリアにドローン山積みにして出張って行く使い方に変わると思います。
    逆に隠密性がまだ甘い中国の潜水艦はそれが出来ず、日米の艦隊に先に発見されてしまいますからこの戦法が出来ず、極超音速ミサイルの最終誘導手段が確保されません。
    勿論、監視させるには現在のドローンの滞空時間がまだまだ不足してるとか技術的な課題はいっぱいあると思いますが、方向的には陸と同じく、海も、「最終誘導」手段として使えると思います。

    9
    • エマノン
    • 2023年 11月 16日

    発射はともかく、発射管から回収するというのはかなり凄いですね
    試験的に出来たとして本当に実用になるんでしょうか?

    • 朴秀
    • 2023年 11月 16日

    発射はともかく回収ってどうやるんだろうか
    魚雷型の物体が自分に向かってくるのはなんか怖いだろうな

      • M774A6
      • 2023年 11月 17日

      帰投するUAVに偽装した魚雷で母艦撃沈、てありそうですね

    • 通りすがりの動物号
    • 2023年 11月 17日

    水中では無線通信がむずかしいから、有線方式でしょうね。
    回収しようと思えばできるので普段は回収して数を確保しておく、つまり平時の補給回数を減らすのが主目的で、実戦になったら使い捨てになるのでは?

      • coke
      • 2023年 11月 17日

      母艦が原潜であり、なおかつuuvの動力がモーターであれば、電力は事実上無限。
      作戦中に弾薬など物理的な消費が発生しなければ、実戦でも回収再利用するメリットはあると思います。

      1
    • ブルーピーコック
    • 2023年 11月 17日

    海中ドローン潜水母艦、略して海母。・・・なんかしっくりこないな。

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