デル・トロ米海軍長官は今年1月「包括的な造船計画の見直し」を命じていたが、この調査によってコンステレーション級の1番艦完成が最大3年、コロンビア級の1番艦完成が12ヶ月~16ヶ月ほど遅れる可能性があると判明した。
参考:Constellation Frigate Delivery Delayed 3 Years, Says Navy
米海軍艦艇の建造・保守スケジュールが遅れている問題は何年も前からの話なので、現在の状況は唐突に発生した訳では無い
デル・トロ米海軍長官は今年1月「パンデミック後の状況が造船業界とサプライヤーに影響を及ぼし続けており、これがコンステレーション級フリゲートやコロンビア級原潜に与える影響を懸念している」と表明し、包括的な造船計画の見直しを命じていたが、この調査によってコンステレーション級の1番艦完成が最大3年、コロンビア級の1番艦完成が12ヶ月~16ヶ月ほど遅れる可能性があると判明した。
コンステレーション級フリゲートはベースとなったFREMMの設計と85%の共通性を持っており、海軍は2022年8月にコンステレーション級建造にゴーサインを出し、この時点で80%の詳細設計が完了していたものの、欧州基準よりも高いレベルの生存性を要求されためFREMMの共通性は15%まで低下、造船所も沿海域戦闘艦の艤装工事、サウジアラビア向けの多目的水上艦(フリーダム級の改良版)、コンステレーション級の建造の3つを同時並行で進めているため労働者不足に陥り、1番艦完成が最大3年遅れる可能性があるらしい。
コロンビア級が遅れている原因は「船体全体の工事と各モジュールの製造に関係している」としか説明されておらず、この他にもフォード級3番艦の引き渡しは18ヶ月遅れ、有人艦の追加弾薬庫として機能するLUSVの調達開始は2025年度から2027年度に、フォード級5番艦の調達も2028年度から2030年度に、バージニア級原潜の後継艦(SSN-X)建造も2035年から2040年代初頭に延期されており、米海軍と中国海軍のギャップはますます広がるだろう。
因みに米海軍艦艇の建造・保守スケジュールが遅れている問題は何年も前からの話なので、現在の状況は唐突に発生した訳では無い。
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※アイキャッチ画像の出典:fincantieri
利益最優先、金融などの実体のない産業をもてはやした結果ではある
株主利益最優先ね
短期的利益のみ優先される
金融業は製造業やサービス業に投資して稼ぐ産業だから、実物経済が存在しなければ成立しない。製造業とサービス業にしても彼らを支える余剰食糧が必要であり、やはり農業が無ければ成立しない。必要とする順番は農業→工業・サービス業→金融業のはずだが、現代社会での地位はこの逆である。
先進国では農業・工業が衰退しているのに何故金融業が存在できるのか?先進国の金融業はもはや利幅の少ない自国の農業・工業には投資せず、労働力が安く人口増大が見込まれる途上国に投資するというのもある。結果、途上国で農業・工業が発展し、先進国との貿易で先進国側が赤字になるのは説明が付く。もう一つは自国の不動産や贅沢品、株式など価格変動の激しい分野に投資するというもの。都市部の不動産は投機目的で高騰しており、株式は「企業の状態を正確に表す指標」なら良いのだが、ボーイングの様にベテラン社員の解雇と品質管理の省略で利益を出す「株主利益優先・短期的利益優先」で株価を吊り上げる虚業も生まれる。こうして先進国の産業及び資産には実態とかけ離れた価値が示されるようになる。
エマニュエル・トッド先生が理論的に説明してましたね
レーニンの帝国主義論。資本主義の最終段階としての帝国主義 みたいな話だな。
自由主義資本主義の場合、金が金を産む速さ > 労働者の賃金の伸び との説は昔からあった。
金融国家になって、他国をコントロールは、自由主義資本主義のベタな流れなのかもしれない。
遅延が常態化してるって地味にヤバいやろ
ド派手にヤバいかと
年単位の遅延なんて普通に裁判沙汰でしょうし
今後の海自が米国艦ベースになる事は無さそうですね。逆のパターンは公明に折れたせいで消滅しましたが
>欧州基準よりも高いレベルの生存性を要求されためFREMMの共通性は15%まで低下
またアメリカの悪いとこが、これじゃせっかくFREMMを導入した意味が無い
米空軍と海軍はいっつも遅れる遅れる言ってんな
陸軍は、遅れるどころか、ポシャってる。
米海軍水準の生存性って……いや、コンステレーションはFFMと違ってTier1戦闘艦ですし話は分かりますが、ダメコンや何やの部分なんて設計の基礎の基礎なんだから、着工してから言わないで下さいよって感じですよね。というか欧州艦艇の基準を不足と見做してるなら欧州型の船をベースにしなければ良かったんですよね。ワンボックスカーでは大きいし高いので軽自動車に乗りたいが、家族全員乗せたいし衝突安全や乗り心地や最高速度でも妥協したくないしなあと言ってるうちに軽バンですらないミニバンという体裁の実質ワンボックスカー(税制優遇なし)を買う羽目になるようなアホさ加減ですよ。
中国と日本以外の海軍は調達どこも上手くいってないよな
結局は民生を基本とした製造「基盤」がしっかり存在しているかどうかなんですよ、大事なのは
軍事需要だけで、とても金のかかる高度な艦船の造船設備や人や技術を赤字覚悟で無ければ維持
出来ないんですから(これは造船だけに限りませんが)
民生部門で設備や人を支え、それを軍事部門にも活用するしか無いんです。
まず民生基本です、それが消えれば軍事部門も消えます。昔とは逆なんです。
アメリカの民生向け造船はまず日本にシェアを奪われ、さらに韓国、中国と猛追されて、もはや
壊滅的です、再建は不可能でしょう。これは欧州造船界でも同じ悩みを抱えています、英国の艦船
建造も米国と同様な病を抱えています。
米海軍の装備更新・調達が遅れて「米海軍と中国海軍のギャップはますます広がるだろう」はまるで現状で米海軍が戦力的に負けているような表現ですね。
まあ、そのうち負けるでしょうけど、今はまだ米海軍の方がはるかに上ですよ。
中国は西太平洋だけに全軍を集中できるけど、米国はそうはいかないという局所的なものはありますが。
延期期間でもがみ型が起工から就役まで行くやんけ!
遅延回復出来ないままだと就役がASEV2番艦より後になるのは流石に草
もがみ型は公募から引渡しまで約5年ですからね。
コンステレーションは3年遅れると、起工から引渡しまで7年ということでしょうか。
艦級は違えども、米海軍が日本の造船能力に目を付けるのも分かる気がしますね。
85%の共通性が15%まで落ちたら実質再設計ですよね。
F/A-18A/B/C/DとF/A-18E/Fの共通性が1割程度、F-15CとF-15Eが70%の共通性と聞くと「なんでこうなった」はあると思います。
LCSに変わって新しいフネ作るので「あれもこれも」と要求した結果こうなるんだとしたら、海軍の悪癖はいまだに改善されてないことになるので、議会からも相当圧力がかかりそうです。
冷戦後におけるアメリカ軍の兵器調達はセルフ方式のうどん屋に似ている。
計画・試作の段階では安く済ませるつもりだった。→開発途中から欲を出して多機能化したくなる。→機能の追加の度に設計がやり直しになり、納期も開発費も高騰する。→他国の同種の兵器と比べ何倍も高い見積りになる。→「少数調達して短期間で退役(F22のBlock20)」「調達を中止して、旧式の改良で対応する(AH64)」「他国から同種の兵器を買う(M109の後継)」のいずれかのパターンになる。更に「白紙に戻して再度開発に挑戦するがまた失敗(AH64の後継)」「他国の兵器に独自機能を追加→費用増加(本記事)」みたいに泥沼化するケースもある。
冷戦期は「ソ連が新しい兵器を出したので質と数ですぐ追いつかないといけない」という理屈で失敗も多かったですが開発機会も多くそれなりに回ってたと思いますから、WW2から1980年代初頭まではそのサイクルが回ってたんでしょうね。
冷戦末期以降、開発そのものの数が減ったので「せっかくの開発機会だから」で色々要求した結果、ハードウェアだけでなくソフトウェアも含めて複雑化する状況だと思います。
品質・コスト・納期(QCD)に関しては新しい考え方が必要で、本来ならデジタルツインでそこをフォローすべきなんですが、現実とデジタルのギャップを埋める仕組みができていないのが現状ですよね。
今の状況は個人的に「せっかくは敵だ」という格言(?)が合ってると思います。
引用記事にも「欧州基準よりも高いレベルの生存性」の内容が書かれていないので何故そんな大幅な設計変更に繋がったのか、そのあたりの基本的な必須要件は頻繁に見直されるものなのか知らんですが「何を見てヨシ!って言ったんですか?」案件な気が。
でも最近、紅海に連れて来て久々に実践させてみたら本当にボロボロの状態なので、欧州の基準自体合ってないようなものなのかも。それにそもそもヨーロッパの連中って軍艦をショーウィンドウと勘違いしてる側面があって、イタリアは艦砲を売り込みたいから何個もつけるしドイツに至ってはRAM万能論に浸ってVLS無くした船まで作る始末。ダメコン以前に兵器の選択からしておかしな思想を持ってるのではと疑わざる負えない。そんな中で世界で一番危険な対中国を考えているのか疑問符が付くのも致し方ないのでは。
そういえば、「VLSはお金の都合が付けば後で付ける」とか言って実戦配備しちゃった国もありましたね…。
そんなFFMの装備を見直していたら、
>水上艦艇用機関銃架(遠隔操作型)
おお、これはUSV対策に有効な先進的な装備じゃん。先見の明があるわーと感心したら、
>「水上艦艇用機関銃架(遠隔操作型)」はレーザー測距装置や自動追尾装置、映像記録機能などを省略してコストの低減を図っている。
オミットしちゃいけなかった機能をケチった予感
そもそも初期のイメージ図でも85%も共通性ある?ってくらいの違いだったし(艦上構造物は違うし、ソナーは無いし)
設計変更で最終的に詰めたらそのぐらいしか共通性が残らなかったってだけな気がするわ
生存性どうのも隔壁等を弄ったというより、より高い生存性を求めてSPY6搭載を目指した結果とかそんなのを端折ってるだけじゃないの
過去記事やwikiを参考にするなら
1.去年末から年始のテストに成功したものの、初期運用能力獲得がまだなAN/SPY-6(V)3の採用
2.原型カルロ・ベルガミーニ級よりも発電機を強化するため船体延長による大型化(全長9メートル、満載排水量1300トンほど増加)
3.MK.41VLSとSM-2ブロックⅢC採用で個艦防御力アップ
辺りですかね。アメリカ製の武装や電子機器にしたからここまで共通性が下がったのかは分かりませんが。
ビジネス関連の記事を読んでると、合理的かつ効率重視でスケジュールに柔軟なのがアメリカ人らしい。
アメリカ軍とその関係各社だけがおかしいのかね。
・シンプルに価格を抑えて作ります→やっぱりアレもコレも妥協できない→設計やり直しで逆に価格上昇
・価格を抑えるため検査を省略します→作ってから省略した検査部分に不具合発覚→設計からやり直しで価格上昇
近年の米軍はこの二本立てばかり。そうして予算が逼迫して最初に戻り、また同じ間違いを繰り返す悪循環。世界帝国の軍事力が緩やかに崩壊していく過程を見てるんだろうか?