2020年代中の完成を目指し、全く異なる2つの新型空対空ミサイルが開発されているが、果たして、この2つのミサイルは両方とも米軍に採用されるのだろうか?
両ミサイルの最も致命的な差は「サイズ」や「射程距離」ではなく開発資金の出所
米国のレイセオン社は9月、新しい空対空ミサイル「Peregrine(ペレグリン)」の開発を発表した。
Raytheon unveils Peregrine medium-range air-to-air missile at #ASC19. pic.twitter.com/gjPNla3USf
— Steve Trimble (@TheDEWLine) September 16, 2019
このミサイル最大の特徴は、現在使用されている「AIM-120」と同等の性能を維持しながらサイズを半分にした点で、これはウェポンベイに空対空ミサイルを収納するF-22やF-35にとって、非常に魅力的なミサイルとなる可能性がある。
レイセオンの副社長、トーマス・ブッシング氏は、この新型空対空ミサイル「ペレグリン」について「米国と同盟国の戦闘機パイロットが、より多くのミサイルを戦闘に使用できるようになる。小型化されたミサイル本体には、高度なセンサーや誘導装置、推進システムが収められており、これは大きな技術的飛躍だ」と述べた。
これとは別にロッキード・マーティン社は米空軍の依頼で、中国の長射程空対空ミサイル「PL-15(200km以上)」に対抗するため「AIM-120C(105km)」や「AIM-120D(180km)」よりも射程が遥かに長い、新型空対空ミサイル「AIM-260 Joint Advanced Tactical Missile(JATM)」の開発(2021年に試射、2022年に初期運用開始予定)を進めている。
このミサイル最大の特徴は、現在使用されている「AIM-120」と同サイズならが射程距離を300km前後まで延長している点で、これは中国の「PL-15」のみならず、ロシアの「R-37M(ロケットブースター使用時で300km~400km)」や「K-77M(200km)」などの長射程空対空ミサイルに対抗する上で、非常に重要なミサイルとなる可能性がある。

引用:raytheon 新型空対空ミサイル「Peregrine(ペレグリン)」
このように両ミサイルは開発コンセプトが全く異なるため、どちらが優れているのかは運用環境によって異なり、中国やロシアのような長射程空対空ミサイルを保有していない国との戦闘では、手数を増やせる「ペレグリン」の方が優れているだろうし、その逆の場合は「AIM-260」の方が優れていると言える。
しかし、両ミサイルの最も致命的な差は「サイズ」や「射程距離」ではなく開発資金の出所だ。
米軍のミサイル・ロケット命名規則に基づき「AIM-260」と命名されたミサイルを開発しているロッキード・マーティン社には、米空軍から開発資金が提供されているが、レイセオン社の「ペレグリン」は自社資金で開発が行われているため、米空軍の要求性能をストレートに反映しているは「AIM-260」ということになる。
どけだけ優れていても「運用者」である米空軍の要求が反映されていない「ペレグリン」は、完成後の米空軍導入が約束されていないため見通しは不明瞭と言わざるを得ず、手数を増やせる「ペレグリン」の特徴は「AIM-260」を搭載した戦闘機の大量投入で実現できると言われればそれまでで、逆に「ペレグリン」は「AIM-260」の代わりを務めることが出来ない。
結局、レイセオン社の「ペレグリン」開発コンセプトは画期的に見てても、よくよく考えると他の方法で代用可能=唯一無二の性能ではないため、近年、常に予算不足に悩まされている米軍が、わざざわ資金を提供してまで開発するべき代物ではないという見方もできる。
果たして、米空軍はレイセオン社の「ペレグリン」をどのように見ているのだろうか?
※アイキャッチ画像の出典:storm / stock.adobe.com
中国機が無尽蔵に増えていくことによってそういうコンセプトが必要になってくるかもね
その先行投資なのかも
小型化ができるのならその分を使って長射程化もできるのではと、素人考えでは思うのですがどうなのでしょう。提案していないのなら難しいのでしょうか。
それをしたのがAIM-260なのでは?
言葉が足りませんでしたね。レイセオン社は、小型化と長射程の両方を提案することも可能なのでは?という疑問です。逆に言えばロッキード・マーティン社も小型化の提案も可能なのかなと思いますが、その上で米軍の要望が長射程なのであれば、既に大勢は決まっているということですが。
ローキード・マーティンのCUDA、レイセオンのPeregrineともにAMRAAMの長さ半分でHalfRAAMと呼ばれてますが、射程はAIM-9Xの長射程版か初期AMRAAMと同等の射程70kmと見込まれています。
レイセオンとしては数が出るAMRAAMの市場を他社に奪われたくないところですが、F-16/22/35にシステム統合するにはLM社の関与が必要なので、なかなか厳しいところでしょう。
レイセオンが製造するAIM-9Xとの共食いにもなるので、どちらか片方に統一したいところはありそうですが
日本はさらに小型短射程化を突き進めてマイクロミサイルによるミサイル弾幕の形成を目指すべき
マクロス的に考えて
確か、レイセオンはJATMとは別に、LREWと言う長射程空対空ミサイルの開発を米空軍から請け負っているはずなのだけど…それと並行して、真逆のコンセプトの空対空ミサイルを自腹で開発している理由を知りたい所だね。
ビーストモードなりF-15EXなりで、自前で大量のミサイル搭載したりミサイルキャリアーと連携する運用が模索されているのは、根本的にミサイルの数が足りないという事だろうか?
対等の相手と有人機のみで殺り合うならば現状の6~8発程度のミサイルでも間に合うが、多正面戦で各本面毎の数で劣ったり、大量の無人機や巡航ミサイルを相手にする場合では、現状のステルス機の機内搭載量では全く足りないということだろう
そりゃ理想は、長射程大威力のミサイルを多数搭載だろうが
B-21への対空能力付与も、現状のステルス機の機内搭載量の不足を補う面が有るのかもしれない
本邦のF-3開発でも、数的劣勢を補うには航続力(滞空性能)と兵装搭載量が大きい方が有利とのシミュレーション結果が出たらしいし
AFRLのSACMに応じて開発されているのが、LMのCUDAとレイセオンのペレグリンである筈なので、米空軍の要求が反映されていないというのとはちょっと違うと思いますよ。