前回の記事「F-16の後継機計画が米空軍の公式資料に登場、新しい戦闘機「MR-X」の登場は2035年頃」でも少し触れたが、米空軍はF-35Aの調達数を今後5年間で10%削減する予定だと米空軍協会が発行するAir Force Magazineが報じている。
参考:USAF to Cut F-35 Buy in Future Years Defense Plan
F-35の運用コストが中々下がらないのは民間業者に投げた保守やサポートに関わる人件費が障害か?
米空軍はF-35Aの運用維持コスト想定を大幅に上回っていることや、ソフトウェアのアップグレード「block4」や物理的な電子機器の刷新「Tech Refresh3」が完全に組み込まれたF-35Aを購入した方が更新費用や手間を節約できるため2022年度~2026年度までの5年間で調達するF-35Aの調達数を予定より10%削減(240機→220機)することを議会に提案するつもりで、このような米空軍の動きについてAir Force Magazineは「今後6年~8年の間にコストを制御できなければF-35Aの調達を大幅に削減するという最後通告」だと指摘しているのが興味深い。
F-35Aの調達数削減が5年間で20機程度なら1年あたり4機削減なので妙に騒ぎ立てる必要もないだろう。
しかし下院軍事委員会のメンバーで米軍全体の航空機調達に強い影響力をもつ戦術航空陸上部隊小委員会のドナルド・ノークロス委員長(民主党)が国防予算外で認めていたF-35の追加調達分について「2022年度から認めない」と主張しており、本当に追加調達分も削減されると話が変わってくる。
2021年度の米空軍によるF-35A調達は空軍予算分48機+国防予算外の資金供給分12機の60機で構成されており、空軍予算分4機+国防予算外の資金供給分12機の16機削減になれば5年間で80機削減(国防予算外の資金供給分によるB/C調達分もカウントするとF-35の調達数削減は5年間で最大105機まで膨らむ)となるため流石に無視できない数だ。
果たして議会は空軍の提案を承認するのか、国防予算外で認めていたF-35の追加調達分をバッサリと切ってくるのかは今後の議会審議を見てみないと何とも言えないが、F-35ジョイント・プログラム・オフィス(JPO)のエリック・フィック中将が興味深いことに言及している。
フィック中将は「ポロシャツを着ているロッキード・マーティンやプラット&ホイットニーの関係者は素晴らしい仕事をするが非常に高価だ」と指摘、高価なF-35の運用コストを引き下げるためロッキード・マーティンやプラット&ホイットニーと締結してる保守やサポート契約にメスを入れることを示唆した。
要するにF-35の運用コストが中々下がらないのは民間業者に投げた保守やサポートに関わる人件費が障害になっているという意味で、これは海軍の沿海域戦闘艦も同じ問題に直面しているため非常に興味深い指摘だ。
沿海域戦闘艦(フリーダム級/インディペンデンス級)は運用コスト引き下げを実現するため、水兵が担っていたメンテナンスの大部分を請負業者に委託することで艦の運行に最低限必要な乗組員編成を40人(後に50人編成に変更)まで削減する方法を採用したのだが、米メディアのDefenseNewsは沿海域戦闘艦の年間運用コストは約7,000万ドル(海軍は5,000万ドルだと反論している)でアーレイ・バーク級駆逐艦の約8,100万ドルと大差がないと指摘している。
この問題を調査した米国の政府説明責任局(日本の会計検査院に相当)によれば沿海域戦闘艦が母港を離れて活動(特に海外)する際、乗組員だけでは展開先の寄港地で艦をメンテナンスできないため請負業者を呼び寄せる必要があり「このコストが馬鹿にならない」と指摘、海軍は展開先に請負業者を呼び寄せるのではなく寄港先の請負業者にメンテナンスを任せようとしたが機密保持や契約の関係上難しくマイク・ギルディ作戦部長は「請負業者に頼ったメンテナンスを止めて整備担当の水兵を再配置を進める」と語っており、メンテナンスの外部委託は結局高くついたという意味なのだろう。
参考:Unplanned Work on Maintenance Contracts Creates Schedule Risk as Ships Begin Operations
恐らくF-35も同様の問題に直面しているので請負業者に委託しているメンテンスを空軍のエンジニアに取り戻すことをフィック中将は考えているのかもしれないが、元々専門の請負業者にメンテナンスを任せる前提で設計されているF-35や沿海域戦闘艦を自前のエンジニアに取り戻して上手くいくものなのだろうか?
関連記事:F-16の後継機計画が米空軍の公式資料に登場、新しい戦闘機「MR-X」の登場は2035年頃
関連記事:初期コンセプトが完全に崩壊した米海軍の沿海域戦闘艦、年間運用コストまで高騰
関連記事:日本も導入を進めるF-35が抱えた5つの問題、性能は申し分ないが取り巻く環境がネック
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Master Sgt. Larry E. Reid Jr.
自前で面倒を見たくないから外注… はよくある話だが、競争相手もなければメンテナンス対象も汎用的じゃないしそりゃ高く付くよなぁ。
ただ、技術継承とかもあるし、単純にこの手の民間人を切れば良いというわけでもないというのが難しい。
民間軍事会社の活用といった、対テロ戦争以来、米軍産が推し進めた「軍の民営化」は結局、米軍と財政に大打撃を与えただけだったということ。その浪費で米は覇権を急速に失い衰退を自ら早めた。カネは金融セクターに流れ、とてつもない資産バブルの一因になり、それがまた金融危機リスクを高め米をさらに弱らせる。単独覇権の巨大帝国の終焉なんて案外こんな内部の腐敗の自滅でやってくるんでしょう。中露に勝てっこない。
ロシアは、一旦転けて、立ち直りつつある。
中国は、これから転けているのが明らかになる。
現在、過去、未来の関係。
その中国の話10年前から聞いてるぞ
もうその前提で話すべきじゃない
言い続けたらいずれ当たるさ
>巨大帝国の終焉なんて案外こんな内部の腐敗の自滅でやってくるんでしょう。
同意ですが、中露にも当てはまりそうですな。
人間が運営してる限り腐敗しない組織なんて夢物語だからな
諸行無常…悲しいなぁ
外部委託したら逆に高くついたって話が、なんで帝国の終焉のような話になるの?
アメリカが覇権国にあぐらをかいて、やりたい放題して国が傾きかけているのはわかるけど、だからと言って、中ロに負けるという結論にはならないと思うけど。
内部の腐敗で言ったら、中ロも相当だろうし、日本もたいがいでしょ。
LCSってもうミッションモジュールは無く、フリーダムは対艦ミサイルも積んでないのに、何にそんなメンテ代が掛かってんだ?
実験も兼ねていろいろな新型(つまり汎用ではない)装備やシステムを組み込んで作ったから、今後使う見込みがほぼ0とはいえそれらもメンテしなきゃならないからじゃないかな
米軍のアウトソーシング費用は、予想外に割高なんだろう。
本来の経費削減目的が、裏目に出たようだが、民間に業務を丸投げすれば、
こうなることくらいわかりそうなものだ。
>ポロシャツを着ているロッキード・マーティンやプラット&ホイットニーの関係者は素晴らしい仕事をするが非常に高価だ
ポロシャツ云々と言うのは皮肉で言ってるんだよね?
日本で言う、ウェーイ系ベンチャーに対する皮肉を言うようなもん?
単に制服(兵士)じゃないって意味でしょ
米英ではポロシャツは私立高校に通う裕福な家庭のお坊ちゃんを象徴する服装のイメージらしいですよ。
皮肉で言ってるんでしょうね。
なるほど、向こうではそういう意味合いを持ってるのですね・・・
ありがとうございました!
向こうではポロシャツが高級品なのか?、
それとも、価格に関係なくそういう慣習なのか?
どちらにしろ、意外でした。
こういう請負業者って最前線の基地で整備が必要になっても来てくれるの?
今は平時だからコストが云々、うまく回らない云々などと言ってられるけど、
こんなんでいざというとき戦争できるのかな・・・。
日本人「いざというとき戦争できるの?」
アメリカ人「おまいうw」
なるほど 佐世保や呉に横須賀って、米には重要な基地なのかも
各国訓練や何らでよく寄港するが、実は高度なメンテが目当てだったりして
丸ごと売るよりHKSやトラストみたいな立ち位置で外貨獲得すればいいのに
思い遣り予算で格安整備、となるのかな?
マジにF35を147機も買って日本大丈夫?
他に選択肢がないからどうしようもない
アディール並に改造できるなら使いようもあるけど今の指定された武装しか使えない状態だと主力戦闘機としては微妙
買わなかったらもっと悲惨な事になるので(F-15SJを100機ほど丸ごと抱えたまま過ごし続ける羽目になる)
幸い運用コストはF-15とあんまり変わらんのでF-15を更新する分に関してはね
一番地獄なのは大量に保有してるF-16をこれで更新しようとしてる米空軍だと思う
お前の頭よりはマシ
性能面で問題視されている訳ではないので
あくまで運用コストの話
日本は飛行コストの情報出てこないけど、F-15J Pre-MSIPはアメリカ軍のF-15C/Dと同条件でしょうし、F-4EJなんていくらかかってたのやら…
こいつらをお金かけて飛ばすよりF-35を飛ばした方がよほど有意義だと思いますけどね
F-15J/JDって、細かい仕様相違な機体が多数あるらしくて、ケロロな人いわく空自も把握しきれない程だとか﹙メーカーの三菱頼みな部分があるとか﹚。
なのでF-15JのPre-MSIP群をF-35A/Bに、J-MSIP群をF-15JSIに集約するのは、管理の面でもメリットがあった様です
F-15JSIは、ご存知の通り暗雲が垂れ込めて来たので、残念な事になるかもしれませんが。
F35って要するにアメリカが世界中から集金する壮大な詐欺でしょ。最初から最後まで収益性ありきで始めて、実用性が二の次になったんでしょ。金融立国になって製造業がダメになったアメリカの象徴みたいな話であって。
どこの週刊誌を読めば、そんなこと書いてるんですか
自衛隊の装備は何でも文句付ける感のある評論家と称する人もいるから、探せば似たような主張の記事がホントに在るかも?
F-35シリーズは性能面で問題になっていません。
運用やアップデート、兵站管理システムALISの不具合による代替システム開発等のコスト面で問題視されているという話です。
どうでもいい話ですが、F-35シリーズを貶めたい人って全角半角やハイフンの使い方適当ですよね…
いや、このブログでも取り上げられていたが、米空軍の将官が2030年代半ばの台湾を舞台にしたウォーゲームでF-35はF-22と共に航続距離が短すぎる為に「余り役に立たなかった」と明言されており、性能面でもF-35は問題視されつつある
それにF-35はアップデートの遅れで実現出来ない性能向上の要素が含まれているのも忘れてはならない
何れにしても「F-35終了」の通告へ向けてのカウントダウンが始まったのは事実だ
F-35になにを期待してたのって思っちゃうけどな。
ロッキードマーティンからしたら、ヒットしたF-16にステルス能力を加えたマルチロール機であって、それ以上ではない。
日本も含めて、次期戦闘機開発が遅れた結果、F-35を主力戦闘機というしかなくなっただけのことでしょ。
F-35終了って、そもそも勘違いしてると思うよ。
米国的に問題なのは、F-16後継の割に運用コストが大きい点だけどね。
まさにその記事の最後に、ご丁寧にもブログ主様が書いてくれていたぞ。
「追記:F-22やF-35が2030年代半ばの台湾を舞台にしたウォーゲームで「余り役にたたなかった」のは「中国軍の脅威が存在する空域下に侵入する」という戦術を実行すればNGADに劣っていたという話で、中国軍が運用する戦闘機と比較してF-22やF-35の性能が劣っているから余り役にたたなかったという意味ではないので注意してほしい。」
あれは内陸まで侵入して航空撃滅戦をするとか、そういう場合の話ですよね。
中国製ミサイルの射程がやたら長いせいで、給油機が安全に給油できるポイントが以前より後退してしまった。
そのせいで前線から奥まで入り込むと航続距離に不安が出たという話で、迎撃戦では問題ないです。
アップデートも遅れてるけど、中止になった訳ではない。
ユーロファイターのトランシェ4も遅れてますし、そっちよりは進んでますよ。
F-35はユーロファイター以上に先進技術の塊ですから、生産、運用初期のトラブルはつきものです。
一つ一つ潰して経験を積んでいくしかないですよ。
そうしないといつまでも旧式機しか乗れません。
何で調達数が削減されるかもって話が終了のカウントダウンになるんだろう…
外注にして安くなるのは中国にアウトソースするからでしょう
重厚長大を中国に奪われた報いですね
これがコスト高の原因だとしたら、新しい戦闘機を作っても劇的にメンテナンスコストを削減することは難しいのでは…
日本国内回した場合、下請けは格安で対応するけど、元請けが暴利を貪り、結果高コストとなりそう。
開発費・製造費・維持費の全てが計画時より高騰、その結果取得数を減らしてさらにコスト増加の悪循環って毎度のパターンだよな
開発国のアメリカはそれでいいのかもしれんけど、アメリカ兵器を購入してる同盟国の懐事情的にはたまったもんじゃない
せめて軍用機だけでもNGADプログラムでこの悪循環から抜け出せればいいんだけど
デジタルセンチュリーも成功するか眉唾なんだよな…
実機でのテストを飛ばしてシミュレーションで済ますんでしょ?
データ相関に問題があって実機で問題が噴出したら大炎上してもおかしくないよね
何れにしても、冷戦終結後の「強敵が居ない時代」に作られた米軍の兵器は駄作の宝庫だったと近い将来結論付けられるのは確実だと思う
特に、F-35はかつて零戦の前にコテンパンにやられたブリュスターF2Aバッファロー並みの駄作機として歴史に名を残すんじゃないだろうか…其れこそ愛称を「ライトニングⅡ」から「バッファローⅡ」に変えた方が良いと思うよ
やはり、兵器開発は強敵が居ないと確固たる戦略・戦術思想が生まれないので上手く行かないと言う事なんだろうね
それと軍事分野のアウトソージングも冷戦後の時代のあだ花に過ぎなかった事が実証されたと思う
F2Aバッファローはフィンランドで大活躍して「空の真珠」と称えられた機体です。
兵器の評価は運用する国や方針でいくらでも変わり得るので、単純に決めつけるのはやめたほうがいいでしょう。
フィンランド空軍のバッファローはねえ…エンジン出力が低い割(民間仕様のエンジンの為)に米英軍が使ったのより数百キロ軽かったと言う話があるし、そもそもフィンランドとソ連両空軍の練度の差がアレだからねえ……
そもそもF2Aのライバル機は96式艦戦でゼロ戦は世代が違いますよ。
ゼロ戦と比較すると乱暴な上下機動に強く、苦戦しながらも奮闘してデータを集め、後に一撃離脱戦法として実を結びますから。
途中送信してしまいました。
兵器はそれ自体は性能で劣っていても、米軍でのF2Aの運用でも貴重な戦訓を残したりしますので、単純な決めつけで否定はしない方がいいですよ。
まぁ、たまに何で量産にGoを出したのか、担当者の頭のネジが抜けていたとしか思えない様なポンコツもありますけどね
ブラックバーン・ロック、フェアリー・アルバコア
カヴェナンター、巡洋艦時代のフューリアス辺りが有名所でしょうか
ついにレントシーカー系の話にもメスが入り始めたねー
公がやる絶対に無くせない類の仕事は搾取対象として美味しいんだよな