米国関連

ウクライナに向かうFrankenSAMの正体、寄せ集めの即席防空システム

米国はウクライナ軍の枯渇する迎撃弾を補充するため「FrankenSAM」と呼ばれれるプログラムを考案していたが、この正体は「同盟国やパートナー国から提供されたレーダーやコンポーネントを組み合わせた即席の防空システム」らしい。

参考:Pentagon’s ‘FrankenSAM’ program cobbles together air defense weapons for Ukraine
参考:Ukraine Situation Report: ‘FrankenSAM’ To Speed Delivery Of Air Defenses

旧ソ連製のBukシステムでAIM-7を発射できるようにしたのもFrankenSAMの一部だったのだろう

今年初めに流出したウクライナ関係の機密資料には「反攻作戦の準備状況」「戦況に関する数字や分析」「切迫した防空システムの現状」が含まれていたため大きな問題になったが、この資料にはウクライナ軍のA2AD(接近阻止・領域拒否)能力維持に関する行動方針も記述されており、3ヶ月以内に実行すべき短期的方針、6ヶ月以内に実行すべき中期的方針、9ヶ月以内に実行すべき長期的方針の3つに分かれている。

出典:VoidWanderer/CC BY-SA 4.0 Buk-M1

短期的方針には「同国国やパートナー国から旧ソ連製迎撃弾の調達」と「A2AD能力の延命=迎撃弾を節約するため交戦目標や範囲の限定」が、中期的方針には「NASAM、IRIS-TSL、ホークの供給」と「FrankenSAMプログラムの促進」の提供が、長期的方針は「NATO規格の防空システム」や「統合されたデジタル防空ソリューション」の提供が含まれ、FrankenSAMの正体について様々な憶測が飛び交っていたものの、どうやらプログラムの正体は「ウクライナ向けの防空システムを世界中から集めた部品で生み出す」というものらしい。

国防総省の高官は12日「我々は同盟国やパートナー国から提供されたレーダーやコンポーネントを組み合わせ新しいシステムを完成させた。このシステムは最新のウクライナ支援パッケージに含まるAIM-9Mを発射可能だ」と明かし、旧ソ連製のBukシステムでAIM-7を発射できるようにしたのもFrankenSAMの一部だったのだろう。

出典:Public Domain

因みにAP通信は「FrankenSAMの一環として米軍は『時代遅れで使用されなくなったHAWKシステム』の供給に動いている。これは倉庫から取り出したものを再利用できるようにするのではなく、同盟国が運用している近代的なバージョンにアップグレードされる」と指摘している。

関連記事:米国がウクライナにシースパローを提供、旧ソ連製のBukを改造して運用か
関連記事:ウクライナ軍のA2ADが機能しなくなる?BukとS300の迎撃弾がまもなく枯渇か

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Kyle Baskin

本格侵攻前の事前準備、イスラエル軍の歩兵部隊と戦車がガザ地区に侵入前のページ

米国務長官、アゼルバイジャンが数週間以内にアルメニアへ侵攻する可能性を警告次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    2024年に無人機工場が完成、ロシア軍に供給される無人機の規模は桁違い

    米当局者は「ロシアはイランの協力を得て無人機工場を建設している。この工…

  2. 米国関連

    バイデン大統領、クラスター砲弾提供は弾薬不足解消までの一時的な措置

    バイデン大統領は「この戦いは兵站の戦争なのにウクライナ人は弾薬を使い果…

  3. 米国関連

    再び破られた約束、KC-46Aの不具合解消は2025年から2026年にずれ込む

    米空軍は2022年10月「KC-46Aの不具合解消(RVS2.0のリリ…

  4. 米国関連

    オスプレイの虚偽請求疑惑、司法省とボーイングが和解金支払いで合意

    米司法省は29日「受注したオスプレイ製造契約の中で虚偽の請求と陳述をお…

  5. 米国関連

    悪性コードが含まれていないと確認した国防総省、米政府保有のDJI製ドローン使用再開を勧告

    国防総省は政府が使用を停止している中国のDJI製ドローンについて「悪性…

  6. 米国関連

    LRDR完成が新型コロナの影響で再び遅延、日本も採用の可能性が高い「SPY-7」に影響も?

    日本のイージス・システム搭載艦に採用するかもしれないロッキード・マーテ…

コメント

    •  さ
    • 2023年 10月 14日

    戦時だから、寄せ集めだろうが何だろうが早く安く大量に用意できる事こそ大事だものね
    ただそうなると調達速度や量、コスパ的に考えて、中国製の部品も大量に使用されるのでは?

    コスパが良いと国際的に(戦時の)スタンダード化してしまうリスクもあるし、(不穏な間柄の中国に依存するリスクなど)その辺りの事も踏まえて動いていればいいのだけど

    21
    • 58式素人
    • 2023年 10月 14日

    もう冬は目前なのだけど、間に合うのかな。
    それと、最前線でのさばるロシア戦闘機の撃墜も必要なのだけれど。

    5
    • ななし
    • 2023年 10月 14日

    なるほど、寄せ集めのつぎはぎだからフランケンか

    38
    • 戦略眼
    • 2023年 10月 14日

    有り物を集めて工夫するのは、大事です。
    足らぬ足らぬは工夫が足らぬ。

    12
      • 匿名
      • 2023年 10月 14日

      >足らぬ足らぬは工夫が足らぬ。

      それ、とある東洋の敗戦国が行った国内向けプロバガンダのスローガンでしたね…

      7
    • トーリスガーリン
    • 2023年 10月 14日

    ミグにHARM積んだり寄せ集めで対空システム作ったり…兵器システムって思ってたより柔軟なんだなぁと感心する
    もちろん本来性能を完全に引き出せてるわけじゃないんだろうけど

    13
      • nednir
      • 2023年 10月 14日

      妄想ですが
      計算能力の低さをソ連がプログラマの超絶技巧で補っていたせいで解読に苦労したとか
      ヤードポンド法とメートル法の変換で開発者間で混乱が生じないようにする工夫とか
      平和になったら読みたいです

      5
    • べる
    • 2023年 10月 14日

    最新より一世代前とかの方が
    データとかシンプルでこういうのやりやすいのかもね

    9
    • MIM-72G
    • 2023年 10月 14日

    『時代遅れで使用されなくなったHAWKシステム』の供給に動いている。これは倉庫から取り出したものを再利用できるようにするのではなく、同盟国が運用している近代的なバージョンにアップグレードされる」
    どの道引渡し前にオーバーホールするのでしょうから、そのついでなのでしょうがアップグレードパーツが足りませんというオチだけは起きないと良いですね。
    同じ旧型システムのMIM -72A/M48 シャパラルはもう引退して20年立つだけに廃棄済なのでしょうね。

    2
    • れんちゃ
    • 2023年 10月 14日

    ウクライナの各種兵器統合能力は米軍も高く評価している
    つまり、これをウクライナから学ぶ事は米軍にとって損はないという事だ
    また、ウクライナが直面している脅威は限定的なものでもあるので、そこまでの専門性が求められる訳でもない
    特に緊急度が高かったり、高度な攻撃に対してのみ高度なものを用い、他の対象には兵士の機銃も含めて、
    あらゆるものを投入することで数を確保するという事だね
    また、これらを消費する事で各国の在庫を新しい対空兵器で更新していくという話ともなる
    どっちみち、耐用年数はそれほど残っていない兵器群なので簿価は高くはない

    5
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  2. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP