米国関連

米陸軍、開発中の自走砲「M1299」が70km先の目標に砲弾を命中させる

米陸軍は22日、開発中の新型155mm自走砲「M1299」が70km先の目標に砲弾を命中させることに成功したと発表して注目を集めている。

参考:Army long-range cannon gets direct hit on target 43 miles away

無改造のエクスカリバーを使用して70km先の目標に砲弾を命中させることに成功

米陸軍は砲兵の射程拡張を目的にした「拡大射程砲(Extended Range Cannon Artillery:ERCA)」プログラムを進めており、M109A7の車体に長砲身の58口径155mm榴弾砲「M907」を組み合わせた新型155mm自走砲「M1299」を開発中で、39口径155mm榴弾砲を搭載した「M109A7」を凌ぐ射程実現を目指している。

39口径155mm榴弾砲を搭載するM109A7が射程延長弾「M982エクスカリバー(Ia-2)」を使用すると最大40km先の目標を攻撃することが可能だが、M1299は同じ砲弾を使用して70kmに次の目標を攻撃することを目標で今年3月のテストでは65km先の目標に砲弾を命中させることに成功、M1299のシステム見直しや装薬の構成を再調整して望んだ今月19日のテストで目標だった70kmの目標に砲弾を命中させることに成功した。

開発を担当したトニー・ギブス陸軍大佐は「今回の成功は1年半に及ぶエクスカリバー砲弾を使用したテストと結果分析の集大成だ」と語り、射程延長弾「M982エクスカリバー(Ia-2)」に手を加えること無く70kmの先の目標に命中させることが可能であることを実証できたと主張している。

出典:Photo by Lance Cpl. Katherine Cottingham

因みにM1299は開発中のロケットアシスト砲弾「XM1113」と組み合わせると100km先の目標を攻撃可能になると言われており、開発中のラムジェット砲弾「XM1155 ERAP」を使用すると100km以上の射程が実現する見込みだが実用化時期については不明だ。

一応XM1113については2022年に限定的な生産を行いテストを行う予定だが、ロケットアシスト砲弾にしてもラムジェット砲弾にしても相当高価になることが予想されているため実用化への道のりは相当険しいものになることが予想される。ただ相当高価とは通常の155mm砲弾と比べた場合の話で射程が100kmを超えてくると精密誘導の対地ミサイルとの競合になってくるため、そう考えるとコスト的な問題をクリアするのは難しくないのかもしれない。

国土の狭い日本に需要があるのかは良く分からないが、米国や欧州では射程を拡張した自走砲や榴弾砲とUAVを使用した前方観測を組み合わせて効率的で致死性が高い縦深射撃を構築する動きを見せており、将来的に砲兵の交戦距離は100km以上に拡張され英国のウォレス国防大臣が予見したように将来の戦場では「隠蔽と発見」が戦いの勝敗を左右するようになるのだろう。

関連記事:センサーとシューターの分離が進む米陸軍、自走砲で巡航ミサイル迎撃に成功
関連記事:米陸軍、射程100km以上を実現するラムジェット砲弾「XM1155 ERAP」の実験に成功
関連記事:ウォレス英国防相、トルコ製UAV「バイラクタルTB2」が証明した実力を称賛

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by Lance Cpl. Katherine Cottingham

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    ズムウォルト「俺の出番かな」

    11
      • 匿名
      • 2020年 12月 22日

      前甲板の役立たずをM1299の砲塔と換装しよう(提案)

      12
        • 匿名
        • 2020年 12月 22日

        コンセプト考えると冗談抜きで別にそれでいいよねって思ってしまう。
        当のズムウォルトは対艦番長のミサイルキャリアーとして再利用されることになってしまった。

        7
    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    米陸軍は試作はするけど制式化はなかなかしないよな。前も一回作ってなかったか?

    1
      • 匿名
      • 2020年 12月 22日

      クルセイダーかな。
      あらゆるシュミレーションをして、試作機だけは作って、必要になれば量産をする。

      3
      • 匿名
      • 2020年 12月 23日

      量産されて使い倒されたのに制式にならなかったXM177とかいうのもあるし米軍の制式って何なんだろう

      1
    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    ガンタンクの射程260kmはありえないと思っていたが、そう遠くない未来に実現しそうだな。
    ただ、ガンダムの世界と同じく、レーダなりセンサで捉えられなければ戦果を上げられないのも現実か。

    4
      • 匿名
      • 2020年 12月 23日

      その為の戦術データ・リンクよ
      将来はドローンに位置バレした次の瞬間には70km先の自走砲から砲撃されるのかもな

      6
    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    クルセイダー、NLOS-Cとやって来て、行き着いた先が他国の自走砲より砲身が長い普通の自走砲と言うね…
    長い遠回りだったな

    10
    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    ハンファ「ウリも早く開発しないとソウルが火の海にされるニダ!!」←(手遅れ)

    5
      • 匿名
      • 2020年 12月 22日

      韓国大好きだね君
      好きな人が気になって気になって仕方ないから、関係ない話題でもすぐに韓国の話を始めちゃうんだね

      27
      • 匿名
      • 2020年 12月 23日

      優れた人に醜い嫉妬をしてしまうのが酷使様の酷使様たる所以だな

      1
    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    侵攻側としたら最悪だな~
    一台でも取りこぼせば被害甚大
    一台で直径140kmの円をカバーされたらたまったもんじゃない

    7
    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    撃ってから70kmの目標に着弾するのに何秒くらいかかるんだろうね
    動いてる標的には当たらないもんかな

      • 匿名
      • 2020年 12月 22日

      迫撃砲で対車両用にミリ波誘導砲弾とかあるけどコストや目標識別の問題でメジャーとは言えないよね
      基本榴弾砲の相手は固定目標だったんだけど、これだけ射程が伸びると動く目標にも狙いたくなるのが人の性

      7
      • 匿名
      • 2020年 12月 22日

      エクスカリバーの次期バージョンは、UAVが目標に電波を当て続ければ、そこに突っ込むもの。

      10
        • 匿名
        • 2021年 5月 16日

        電波だと向きによってはUAVが一番の信号源となり、弾頭がUAVに向かいそう。

    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    M109に58口径155mmを乗せて、滑空翼、GPSだけで70kmとかA-10ほぼ要らなくなるし、東西のスタンダードになりそう。
    ちょうどハンファの輸出した奴が、一気に旧企画になりそうな。(自衛隊も)

    そして、ソウルから移した米韓合同指揮所がまた頭の痛い問題に。

    ズムウォルト君の大砲とステルスは、冷戦後、正規軍は礼儀正しくなり、米軍の脅威はゲリラになるからミサイル勿体無いという、世界を想定したものだからレールガンでも研究してるといいよ。

    1
      • 匿名
      • 2020年 12月 22日

      これで各国のM109が近代化改修されるかな。

        • 匿名
        • 2020年 12月 23日

        砲塔を付け替えるにしても、他の国のM109の車体がボロボロだし、車体をA7レベルに改修しなくちゃいけないから、よっぽど改修に拘らなければBAEシステムがAS-90の車体を流用して作った魅力的だろう

        4
      • 匿名
      • 2020年 12月 22日

      K-9の場合、K315弾使えば射程が50kmまであるし(ただしGPS誘導は開発中)、GGAMとかいう射程100kmある砲弾開発中だから旧規格になるのはまだ先だと思う(今改修中だし)

      99式自走砲の方がよっぽど問題が深刻だと思う、改修するとか聞いたことないし、他の自走砲と比べて足遅いし

      7
    • にわかミリオタ
    • 2020年 12月 22日

    弾のコストが膨大になりそう

    3
    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    北海道や対馬に同レベルを配備すれば隣国への相当な威圧になるよね
    とか言ってる間に隣国のほうが先に開発し配備しそう

    12
    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    レールガン:俺氏死亡宣告

      • 匿名
      • 2020年 12月 22日

      レールガンと自走砲じゃあ想定される戦場が違い過ぎませんか…?

      13
    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    自衛隊の島嶼防衛に最適だ
    ぜひ、装備したい兵器だ

    2
      • 匿名
      • 2020年 12月 23日

      それなら、こちらもよさげかと。
      リンク
      射程1600㎞の化け物ですw
      来年、米陸軍がテストを開始するそうですが。

      2
        • 匿名
        • 2020年 12月 23日

        このブログでも最近紹介してたな

        • A
        • 2020年 12月 23日

        バルト海からモスクワを艦砲射撃できるようになったら素敵。

    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    長射程化は良いことだけど移動目標に対して70㎞先から無誘導の砲弾を撃っても当たる気がしない
    直撃をl狙わずに、連射する運用になるのだろうか

      • 匿名
      • 2020年 12月 22日

      砲弾は榴弾だし対象はソフトスキンですから、移動目標が前提なんてことはないですよ。
      そっちは徹甲弾や対地ミサイルの出番です。

      5
        • 匿名
        • 2020年 12月 23日

        この場合のソフトスキンが具体的に何なのか例を挙げていただけないでしょうか
        運用がうまくイメージできないのです

        2
          • 匿名
          • 2020年 12月 23日

          主に生身の兵士、装甲のない車両、装備、物資、施設(建物だけでなく道路、滑走路等)ですね。
          装甲付きの代表格の戦車にも砲塔やセンサに破片が当たれば効果はあります。
          歩兵戦闘車両ほどの装甲でも破片でのダメージは戦車とそう変わらんでしょう。
          その他、兵士への心理的効果が期待できます。
          生身の兵士は破片が掠っただけで重症か死亡ですから、涼しい顔していられるのはどこか壊れているかなり慣れている人だと思います。

          9
            • 匿名
            • 2020年 12月 23日

            ありがとうございます

            2
    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    軌道が変わるのだから対迫レーダーが無効になるのかな?
    アイアンドームなら楽勝か

    • 匿名
    • 2020年 12月 22日

    同じ砲弾で倍近く射程が変わってくるのは不思議な感じ。

    3
      • 匿名
      • 2020年 12月 23日

      超炸薬なるものを使ってるから砲身寿命が短くなる問題が出てきたらしい。1000マイル砲ができたら同じく砲身寿命に悩むのかな。

      4
        • 匿名
        • 2020年 12月 23日

        鋼の性能も飛躍的に向上はしているが、砲身はやはり消耗品
        砲身交換を迅速化できるようにするか、あるいはレールガンのほうが正解なのかはこれからの模様見

        1
      • 匿名
      • 2020年 12月 23日

      発射後、砲弾がエンジン無しの飛行機に変形するんだよ。

    • 匿名
    • 2020年 12月 23日

    >自走砲や榴弾砲と、UAVを使用した前方観測を組み合わせて、効率的で致死性が高い縦深射撃
    陸自が得意そうな分野でしょう。様々な戦場を考慮しない日本にM1299は不要かもしれませんが、
    技研にとっていい研究分野だろうと思います。

    4
      • 33-4
      • 2020年 12月 24日

      陸自は既にNEWSとFCCSを連接させて、NEWSが傍受した相手の電波源に特科の榴弾や普通科のMMPM、MPMSを叩き込むということはやってるから実際にやるとなったら、ここにセンサとしてUAVを追加で組み込めばいいから技術的な難易度は低そうではある。尚、予算()

      1
    • 匿名
    • 2020年 12月 23日

    クラスター爆弾なくなって海岸線が寂しくなったが、超長射程榴弾があれば本州の中央線から着上陸地点に射撃して時間稼ぎ出来そう。
    これなら榴弾砲を大規模移動させる必要ないし、弾もミサイルよりやすいだろ。

    3
    • 匿名
    • 2020年 12月 23日

    これ、おおすみ級の甲板から発射できないかな。
    前はMLRSをしもきたの甲板から発射していたようだが、砲だと厳しいかな

    1
      • 匿名
      • 2020年 12月 23日

      戦車砲並みの砲安定装置が必要=砲自体の複雑化・肥大化を招きそう
      シーステートの制限も有り全天候性に難が有り穏やかな日しか戦争できない。

      1
    • A
    • 2020年 12月 23日

    戦艦大和からエクスカリバー弾を発射したらどんだけ飛ぶんだろう。
    しかも衛星やUAVで支援させたら…(わくわく)。

    1
      • 匿名
      • 2020年 12月 23日

      今の技術なら大陸間弾道砲弾って作れないのかな
      それってつまり単段式ロケットではあるんだけど

        • 匿名
        • 2020年 12月 27日

        かつてイラクが挑戦してましたね。

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