米下院が「トルコへのF-16売却をブロックする条項」と「S-400を導入したインドへの制裁回避に道を開く条項」を含む国防権限法を可決して物議を醸している。
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参考:House adds roadblock to Biden’s plan to sell U.S. fighter jets to Turkey
参考:US House passes Ro Khanna’s historic amendment on sanctions waiver to India
バイデン政権は「国家安全保障上の緊急事態を宣言」して強行突破=事実上議会の決定を無視してくる可能性もある
米下院は14日、バイデン政権が要求した国防予算のトップラインを上回る8,390億ドルの国防権限法(NDAA)の可決したが、このNDAAは「トルコへのF-16売却をブロックする条項」と「S-400を導入したインドへの敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)を回避に道を開く条項」が含まれており物議を醸している。
トルコは旧式化したF-16C/Dをアップグレードするため米国にF-16V売却(新規にF-16Vを40機+既存機のV仕様アップグレード80機分)を要求中で、この売却話は「F-35プログラムからの追放に対する補償」のためバイデン政権から持ちかけたものと言われているが、S-400導入を問題視する米議会はトルコへのF-16V売却を認めず暗礁に乗り上げていた。
しかしトルコがフィンランドとスウェーデンのNATO加盟を支持したことでバイデン大統領や国防総省が「トルコの戦闘機近代化を支持する、これはNATOの安全保障ひいては米国の安全保障に貢献する」と表明、米下院外交委員会も「もしトルコがフィンランドやスウェーデンのNATO加盟をブロックすればF-16V売却を認めない」と発言したことを合わせ「トルコへのF-16V売却は高い確率で実行に移される」と見られていたが、14日に可決したNDAAにはトルコへのF-16売却をブロックする条項が含まれている。
実際には「米国製の戦闘機を売却・譲渡するには『その国が米国の安全保障にとって重要である』と政権が議会に証明する必要がある」という条項を追加するというもので、ロシアからS-400を購入してギリシャと東地中海で対立し、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟を妨害したトルコに下院の議員は怒っているため「トルコが米国の安全保障にとって重要である」と政権の主張には同意しない可能性が高く、事実上トルコへのF-16売却をブロックするための条項らしい。
一方でNDAAには「S-400を導入したインドへの制裁回避に道を開く条項」が含まれており、印メディアは「米国がインドへの制裁免除を認めた」と大々的に報じている。
ただ上院はNDAA(上院版のNDAAに上記の内容が含まれるのか不明)をまだ可決しておらず、最終的バージョンのNDAAに「トルコへのF-16売却をブロックする条項」と「S-400を導入したインドへの制裁回避に道を開く条項」が含まれるかは謎だが、ここでトルコを刺激すればフィンランドとスウェーデンのNATO加盟手続きが再び政治問題化するかもしれない。
トルコはフィンランドとスウェーデンのNATO加盟を批准を意図的に遅らせることができ、この批准手続きを政治的な交渉材料に持ち出してバイデン政権に揺さぶりをかけてくるかもしれないが、バイデン政権も再三要求しているトルコへのF-16V売却を阻止する議会に辟易しており、トランプ前大統領と同じように「国家安全保障上の緊急事態を宣言」して強行突破=事実上議会の決定を無視してくる可能性もある。
果たしてバイデン政権は下院の決定にどのような反応を示すのか注目される。
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トルコはあの宗教系国家に退化したからなぁ
正直、認めない議会の方が理解できる
いっそやり過ぎてEUから追い出されでもしたら面白いんだが
トルコはEU加盟国ではありませんよ
NATO加盟国です。
そしてトルコの戦略的重要性からNATOから追放されるのはまずあり得ないでしょう。
NATO第二位のアメリカに次ぐ規模の軍を持っていて
黒海と地中海をつなぐ海峡を抑えている国を同盟から追い出すなんてなったら
他の国から確実に気が触れたのかと思われますね
トルコが完全にロシア側についたら黒海をロシアが完全に支配して手が出せない聖域になってしまいます
自分は逆で、米下院の決定の方が理解出来ない。
トルコは、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟の件で“留保条件付き”と言うべき内容とは言え加盟を容認して誠意を見せた形になっているのに「F-16は売らない」と言って置きながら、トルコ同様S-400を導入している為に揉めているインドへの制裁は回避しろだなんて筋が通らない。
インドだって裏でロシアと何をやって居るのか分からないと言うのに(自分はイラン程ではないにしろ、ロシアに対して裏で何らかの支援をしている気がする)…バイデン政権が「国家安全保障上の緊急事態」を宣言して強行突破してもおかしくない状況だと思う。
米国議会のいちばん要らん時に妙なポリコレを発揮するのは本当にうんざりする。
日本よりはるかに外交下手
一言で言い表すなら「えぇ~・・・・・」しかない。
トルコは国産ステルス機すら開発中なんだから、F16V輸出反対してもデメリットしかないだろ。
トルコに笑顔でF16V売って、ギリシャに笑顔でF35A売って、インドに笑顔でF18F売って・・・・というぐらいの強かさどこ行ったんだよ。
CAATSAってバカ議員発案のバカ議員量産の盛大な自滅兵器だな。
CAATSAの問題点はともかく、CAATSAを発動させたあとが一番問題
S-400を禁止されたなら、対となるパトリオットを当然求めるわけだけど、それを認めない
それじゃ困るからS-400導入を強硬するというのは無理からぬ判断ではある
「代わりを与えない」ことが一番の問題点かと
これにはエルドアンちゃんも顔面イスタンブルー
もともとトルコはロシア製の戦闘機に興味を持っていて
アメリカが売らなかったら普通にロシアからスホーイ買うだけなんじゃないですかね
今のスホーイに他国向けの戦闘機製造に向けられる半導体は残ってますかね…
足りない部分はトルコがウクライナ支援用の部材と一緒に共同調達してくれるぞ。
おかしな話だよな。同じS-400導入した国で兵器売却の対応が違ってる。
ましてやトルコはアメリカ主導するNATO側。
フィンランド・スウェーデンのNATO加盟を賛成した見返りにF-35導入を要求して密約もらえたと思ったんだがな、トルコの手落ちかな、アメリカの背信かな。
お向かいのギリシャはF-16の軍事優位で挑発するし、今更北欧のNATO賛成ひっくり返せないし、エルドアンの顔面はいったいどうなる。
トルコのF-35関連費を返して関係終了が早くて丸いのでは?
F-16アップグレードが通っても、まだ何悶着もあるだろうし……
しかしこれでバイデン大統領が強硬突破を計ったら、それじゃあ今までのトランプ大統領への批判はなんだったんだ、という話になるので、議会に迎合するような気が••••。
それはそれでグチャグチャになりそうですが。
どっちもS-400導入に端を発する制裁だったよね
米下院が両者に違った決断を下した理由は何なの?
対中包囲網的に重要
人権問題的にエルドアンは米議会で不人気
インドはF-35導入国ではない(今の所)
NATOにあけるトルコの重要性と今持っている拒否権(ス・フィン加盟の件)を軽視する議員が多い
こんな所ですか。
なるほどね
アメリカの基準で言えばロシア制裁に参加せず原油の輸入を続けるインドも人道上の非難を受けてもおかしくないはずだがなあ
本音はどうあれ建前上インドもトルコも民主主義を守る同盟国であるはずで、その2国に公然と違う基準を適用することはアメリカの求心力の低下につながるわけで正直やめて欲しい
上院がトンチキ法案に乗らなければ大丈夫と、日本は身を持って覚えた・・・
ふ…深いなぁ(小並感
トルコのS400導入に関する問題はそもそも疑問やなあ
NATO陣営のトルコがS400導入したというのは、NATO側としてはロシアの最新兵器を鹵獲したも同然で
これを使ってNATO側はS400への対抗方法を開発出来る。
ロシア議会が自国の最新兵器をNATO側に売ってしまった事で大騒ぎするのであれば分かるけど
味方陣営がS400を導入した事でF35売らないF16売らないと騒いでるのがおかしい。
勿論安全保障上、S400をNATOのネットワークには組み込まないよとかを行うのは理に適ってるので構わないが
何でこういう風にネジれるてるんでしょうね。
正味はトルコと西欧側がNATOで同盟結びながらもあんまりコミュニケーションが取れてないんでしょうね。
アジア版NATOとか言ってますが、それを作っても日本と韓国も同じようなねじれ方するでしょうね
S-400の情報がNATOに漏れるのと同様に、S-400に対するF-35のレーダー反射具合などもロシア側に筒抜けになる可能性を無視できないってのを以前ここで読んだ気がします。
将来のことは判らないけれども。
現在のトルコの強さは、1936年のモントルー条約に基づく
ボスポラス・ダーダネルス両海峡の管理権に尽きるのでしょう。
悪く言えば、これを盾に東西両陣営から利益を得ているのですね。
WW2の時には中立でしたが、その空軍では、スピットファイアとBF109が
翼を並べている状態でした。S-400も同じ文脈で入手したのでしょう。
今回も、スェーデンとフィンランドを悪く言えば強請っていますね。
穀物輸送を巡ってロシアと取引をしようとしているようにも見えます。
仕方のないこと(?)とは言え、コウモリ状態と思われ、インドとは異なります。
同列に議論するのは間違いと思います。”アレはアレ、コレはコレ”とすべきでしょう。
米下院のインドとトルコへの対応の違いは『その国が”米国の”安全保障にとって重要である』度合いに尽きるてことかと。
目下米国にとって最大の脅威が、その地位を脅かす力を着々確実に付けつつあり、野望を隠さない中国なのは誰の目にも明らかです。思い切った米軍再編はそれを端的に示しています。
その意味で、インドは味方陣営に取り込み協調すべき戦略上重要なピースと認識されているのは間違いない。一方のトルコはNATO加盟国でありながら身勝手で、手綱を着け制御すべき相手という認識なのかと思います。
結局のところ米議会はアメリカファーストなのかと。