豪州のアルバニージー政権は5日「米国製のHIMARSとノルウェー製のNaval Strike Missileの購入契約を締結した」と発表、開発中の精密ストライクミサイルが完成すると豪陸軍はHIMARSで最大1,000km先の目標を攻撃できる。
参考:Australia to buy long-range HIMARS missile system from United States after Ukraine praises weapon’s effectiveness against Russia
参考:豪、米国製ロケット砲購入へ ウクライナでの実績評価
参考:AUSTRALIA – HIMARS LAUNCHERS
参考:US Army conducts ‘static’ test with ramjet for future Precision Strike Missile
ウクライナでの実績に関わらず「オーストラリアはHIMARS調達する予定だった」というのが正解
日本メディアは「ウクライナでの実績を評価してオーストラリアがHIMARSを購入した」と報じているが、米国務省が豪州のHIMARS購入の可能性を議会に通知したのは2022年5月なので「豪州のHIMARS売却打診」はウクライナ侵攻前の2021年だった可能性(FMSの法的要件の審査にかかる時間は平均6ヶ月)が高く、そもそも豪陸軍は2021年7月にATACMSの後継となるPrecision Strike Missile(PrSM=精密ストライクミサイル)プログラムに参加したため、ウクライナでの実績に関わらずHIMARS調達する予定だったというのが正解だ。
米国と共同開発中のPrSMはATACMSよりも小型化されているためランチャーポッドに2発装填可能で、低率初期生産が始まっている初期バージョンは最大499km先の静止目標を攻撃することができ、シーカーを改良したアップグレードバージョンのPrSMは「海上を移動する目標への攻撃も可能」と言われており、開発中の新型モーターを搭載したPrSMの射程は700km~800kmまで拡張される予定だったが、2022年に米陸軍は「開発中のラムジェットモーターが技術革新の恩恵を受けたためPrSMの射程は1,000kmに延長される」と明かした。
英国もプログラムに参加して「2024年にPrSMを導入(M270MLRSで運用)する」と述べているため「米英豪は共同でPrSMの開発・調達を進める」という意味だが、MBDAもドイツ陸軍向けにHIMARSやM270のランチャーポッドに収まる巡航ミサイル「JOINT FIRE SUPPORT MISSILE=JFS-M(最大射程300km以上)」を発表、目標に接近するためのアプローチに違いがあるもののPrSMと同じようにランチャーポッドに2発装填可能で、M270A1を運用する欧州諸国(フランス、イタリア、オランダ、フィンランド)はPrSMではなくJFS-Mを選択するかもしれない。
少々話が脱線したが、豪陸軍はHIMARSはシーカーを改良したアップグレードバージョンのPrSMを使用することで艦艇攻撃にも対応し、2026年にテストが予定されているラムジェットモーター搭載バージョンのPrSMが完成すれば射程1,000kmの対艦弾道ミサイルを手に入れることになり、将来的に米軍との共同作戦で太平洋上に点在する島に展開するようになれば「生存性の高い強力な接近阻止・領域拒否」を実現するだろう。
因みにNSMの購入はホバート級駆逐艦やアンザック級フリゲート向けのもので、同艦のNSM採用は昨年の4月に発表されていたものなので特に驚きはないが、NSMはハープーンの更新用に米海軍を含む西側諸国(計10ヶ国採用)が相次いで導入しているため「ハープーンの終焉」は近いと言える。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Matthew Dickinson サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦の後部甲板で運用中のHIMARS
PrSMの射程が1000kmに達しましたか。
本気になったアメリカはやっぱ恐ろしい。
射程500kmで作ったミサイを、INF条約のために性能を抑えてあったとは言えども瞬く間に1000kmにしちゃいますからね。
これで韓国に配備すれば北京が、台湾に配備すれば香港・上海に加えて海南島までが射程に入ることになる(どちらも即配備は無いと思います)。
日本からだと1000kmだと北京に届かないんですよね。
まあ米軍は、日本には射程3000km?の極超音速ミサイルLRHWを配備するでしょうが。
日本は203mm自走りゅう弾砲とMARSの後継を決定しないとして、島嶼防衛用高速滑空弾で代替しようとしているけど、本土に乗り込まれた際に、奪還する為の瞬間火力が足らないと思うのですよ。
それに日本単独で開発・生産している装備は、戦時に入って生産できるとも限らんです。
HIMARSと弾薬を買いましょうと言わないから、せめて唾をつけとくぐらいの議論はするべきと思うのですよ。
ウクライナ以前のそれは緊縮財政のあおりもあって多連装ロケットは後継無しとされましたがあの活躍です。陸幕もクラスター廃止でその威力に懐疑的だったのが代替弾頭の効果を示され「こんなに使えんの!」状態でしょう。
また島嶼間掩護には射程不足でしたが地上発射SDBが使えるなら最大150kmです。これは艦上運用もできる。またC2での被空輸性もある。なんだかんだでハイマースを採用するはずです。各方面特科連隊で全国配備までして欲しいです。
また同時にこれは国産開発でどうのにはして欲しくない。超極音速の特殊兵器とは違い同盟国間で相互運用性が重要な装備です。というか米国メーカー開発の新弾頭と新システムを輸入導入できる方が得策です。国産化で逐次国内開発とか地対地ロケット弾でまでしてらんないです。
むしろそれが出来る国内メーカーはハイマース生産に参画して下請けで関与してくほうが良い。残念ながら我が国は韓国とは違います。内需も無ければ販路も無い。K239のマネは出来ません。
同意します。
HIMARSより重いと言っても25tだし、
16式機動戦闘車より1t軽い。
少なくとも、用途廃止を停止すべきかなと。
トップ画像はアンカレッジ艦上での発射試験のやつかな?
日本は12式改の地上発射型を採用するとは思うが、ハイマーズみたいに『他のミサイルなども使える』仕様にするのかね。