米海軍は15日、アメリカ級強襲揚陸艦2番艦「トリポリ(LHA-7)」が正式に就役したと発表した。
参考:U.S. Navy Amphibious Assault Ship USS Tripoli Joins the Fleet
航空機運用に特化したアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0」仕様の最終艦トリポリが正式に就役
米海軍は火災発生から4日目となる16日、ワスプ級強襲揚陸艦6番艦「ボノム・リシャール(LHD-6)」の火災を完全に鎮火したと発表したが、長時間火災の高温に晒され続けた艦内は真っ黒の焦げてしまい、これを元に戻すのは難しいかもしれない。
— OSINTtechnical (@Osinttechnical) July 16, 2020
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そんな中で米海軍は15日、アメリカ級強襲揚陸艦2番艦「トリポリ(LHA-7)」が正式に就役したと発表した。
同艦はアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0」として建造される最後の艦で航空機の運用能力が非常に高いのが特徴だ。同艦の航空機支援スペースや航空燃料の貯蔵量はワスプ級強襲揚陸艦の約2倍まで高められており、米海軍が現在進めている強襲揚陸艦の簡易空母化「ライトニングキャリア」構想に理想的な艦と言えるが、その代償として強襲揚陸艦の代名詞ともいえる「ウェルドック」が非搭載のためLCACを使用した兵員や装備の輸送に対応していない。
これに不満の米海兵隊はアメリカ級強襲揚陸艦に航空機運用能力を損なうことなくウェルドックを復活させるよう要求してきたため、3番艦「ブーゲンヴィル(LHA-8)」からは設計が大きく改められたアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 1」へ移行する。
この「Flight 1」の設計は米海兵隊の要求を実現させるためワスプ級強襲揚陸艦の最終艦「マキン・アイランド」とアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0」の間をとったような設計で、同艦は「Flight 0」に比べて航空機支援スペースが約20%、航空燃料貯蔵量は約50%も低下しているが、航空機格納スペースだけは「Flight 0」と同じ床面積を確保することに成功(但し一部の天井高はFlight 0の半分になっているため格納容積で比較すると16%減)した。
しかし「Flight 1」は、これを補うため飛行甲板のレイアウトを見直し「Flight 0」よりも3機分多く航空機を駐機することが出来るよう改良されているため、航空機格納スペースに移動することなく飛行甲板上でMV-22Bを整備できるようになっているのだが、海兵隊の打ち出した新しい方針によって「Flight 1」の努力が無意味になるかもしれない。
世界の何処かで紛争(要するにローエンドの戦い)が発生すれば真っ先に投入される可能性が高い米海兵隊は、各種支援が整っていない状況下で活動することが求められており、自前で戦闘機から戦車などの装甲車輌まで全てを保有して運用しているのだが、無人航空機+精密誘導兵器の組み合わせが世界中に拡散したため戦車や装甲車といった時代遅れの装備では生き残れないと判断して、2030年までに戦車大隊(主力戦車M1A1エイブラムス)を完全廃止、砲兵大隊や水陸両用車中隊を削減するという大胆な方針を打ち出した。
そのため戦車や装甲車両を輸送するLCAC運用能力を取り戻すため苦心を重ねたアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 1」の存在意義が怪しくなっている。もし戦車や装甲車といった重装備を廃止もしくは削減するのならサン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦(2万5,000トン)で十分揚陸能力は満たせると推定されるため、アメリカ級強襲揚陸艦は航空を主体した水陸両用作戦に特化したままで良かったのかもしれない。
以上のように戦場環境の変化に振り回され続けるアメリカ級強襲揚陸艦だが、まだ現役として活躍を続ける予定だったワスプ級強襲揚陸艦を1隻失う可能性が高いため、航空機運用能力に特化したアメリカ級強襲揚陸艦「トリポリ」にかかる期待と重要性は非常に高いものがある。
因みにアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 1」仕様の3番艦「ブーゲンヴィル」は建造中で、4番艦~6番艦の建造も予定されてる。
関連記事:F-35B運用能力が向上?ウェルドックを取り戻した「アメリカ級強襲揚陸艦」の実力
関連記事:米海兵隊が戦車を廃止したい理由は? 世界中に無人機と精密誘導兵器が氾濫したため
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo courtesy of HII by Derek Fountain/Released
アメリカなら小型空母と揚陸艦をそれぞれ別に造っちゃった方が面倒なさそうな気がするがな
WW2の頃のかつてのアメリカだったらそうなんだけどね。
今のアメリカは、ドッグが足りなくて整備待ちの艦があふれている状況なので無理。
以前このブログで読んだ、大型空母を辞めちゃうって話はそれなのかも。
自衛隊は小型空母(いずも)と揚陸艦(おおすみ)で機能別に分けてるんだよな。
任務も絶対数も違い過ぎるとはいえ機能別のが手堅い気がするし、正直Flight 1の全部盛り仕様は器用貧乏な雰囲気を感じてしまう
国同士が戦う正規戦ならそれで間違ってないんだけど
非正規戦闘を考えると1隻で済む所へも2隻派遣しなきゃならなくなって効率が悪い
どっちに軸足置くかで方針がブレてるのが今のアメリカの問題点なんだと思う
トップの画像、フェイクと思えるほどジグザグ航行している。
航空機の脅威があるからって戦車廃止じゃなくて
戦車対戦車での徹甲弾を想定した正面装甲重視から
側面や背面や上面も含めた全方位の防御力高めるしかないんじゃないかね
重量が重くなりすぎて全周重装甲が不可能なら
装甲で耐える戦艦からミサイル防空艦に変わったように命中する前に迎撃する方向で対処するしかない
君は戦車の上にデパートでも作るつもりかね?
しかし重装備じゃない海兵隊は必要なのか??
完全装備の重装備部隊をいつでもどこでも送れますが売りなのに
強力な打撃力を提供できないなら解散してその予算を回したほうがいいだろ
今後の方針みると海兵隊の必要ないじゃんと思う
>完全装備の重装備部隊をいつでもどこでも送れますが売り
海兵隊は本来、そういうことを売りにしてる組織ではないよ。
そういう勘違いを前提として話を考えると見当違いの方向に結論が行くよ
戦車の上にイージスアショアが建てられれば…
イスラエルの何とかっていうミサイル防御ありましたよね。
あれって重たいのかな?
装甲ではなくAPSで対応したら、海兵隊と連携した作戦行動が出来ないんじゃね?
LCACが使えないウェルドック非搭載の航空戦力特化の強襲揚陸艦と短距離離発着機しか運用出来ないSTOVL空母って何が違うのだろう?
アメリカ級のフライト0はヘリで空輸できる車両乗せるように車両甲板が残っている。
フライト1ではさらに削減されてるけど。
上陸部隊(歩兵)の搭乗スペースの有無では?
LCACが無いと戦車は運べないが、歩兵や軽車両なら輸送ヘリだけで対応出来るのだと思われる。
揚陸艦は輸送艦だから胴体の断面がUで輸送量が多いけど遅い。せいぜい20ノットくらい
徴用、リースした民間輸送船に随伴護衛できれば良いって感じ
空母は戦闘艦だから胴体の断面がVで輸送量が少ないけど速い。30ノットくらい出る
駆逐艦や巡洋艦達と艦隊組んでも足引っ張らないようにって感じ
いかなる状況でもMBTの防御力を放棄するのは悪手のように思えますが・・・まあ、所詮素人考えなので。
日本の陸自や英陸軍その他、保有するMBT数を減らしている、維持費のかかるMBTを減らすのは金が無いからだろう。
海兵隊もリストラだろうね。
そんな最中、中国の海兵隊は2万から10万に増強だからやる気満々ですなぁ。
横から申しわけありません。
なるほど船体断面に違いがあるのですね。
ご教授ありがとうございました。
皆様お詳しい方なので質問させて下さい。
何故動力を原子力にしないんですか?
空母より比較的敵地に近い所での戦闘を行うので被弾の危険性を考慮しているのでしょうか?
ブログの記事にもあるが、無人航空機&精密誘導兵器の組み合わせの前には、MBTなんて一番薄い上面装甲を狙い撃ちされて終わりだからね。
戦車の直接防御力が役に立たないので放棄せざるを得ない状況になっている訳で、無人航空機&精密誘導兵器は正に陸上戦闘におけるゲームチェンジャーになっている。
自分の砲何発も食らっても自走できるという話から生存生高そうなイメージでしたけど、そもそも乗員無事じゃ済まないですね。
ここまで攻撃の精度が高くなってくると被弾前提の兵器って微妙だなあ・・・。
実際、戦争でミサイル喰らっても今回の火災くらいの損傷は受けるんじゃないかな?
そういう意味では頑張って修理したほうが良い経験になりそう。
戦時に被弾して二日も燃え続けるような事態になったら撃沈処分だよ。
被害を見る限り修理は放棄して作り直した方が早いと思うね。
2030年までに戦車大隊(主力戦車M1A1エイブラムス)を完全廃止、砲兵大隊や水陸両用車中隊を削減するという大胆な方針を打ち出した。
代わりにドローン部隊でも新設するのかな?
海兵隊の概念は、上陸戦部隊でなく有事即応部隊という性質を明確にする流れですね
現実に、海岸からの強襲という状況は限定されてますから
空挺部隊と海兵隊の統合まで視野に入れてもおかしくない
海兵隊本来の任務に専念するって事ですかね。今の戦力があれば英国軍くらい軽くひねりそう(笑
ボノム・リシャールは派手に燃えましたね。写真を見る限り修復は難しそう。
消火にあたった方達は苦労したでしょう。4日間に渡る攻防、大変お疲れさまでした。