米国関連

米国、HIMARSからATACMS運用能力を削除してウクライナに提供か

HIMARSで使用可能なATACMSはクリミア大橋を直接攻撃できるため「ウクライナ供与」が再三噂されてきたが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「ATACMSが使用できないよう改造したHIMARSをウクライナに提供している」と報じている。

参考:U.S. Altered Himars Rocket Launchers to Keep Ukraine From Firing Missiles Into Russia

クリミア大橋への攻撃にHIMARSを使用することは可能=GMLRS弾が届く範囲までクリミアを解放できたならという意味になる

HIMARSやMLRSで使用するGMLRS弾は最大80km先の目標を精密攻撃できるため「榴弾砲では手が届かない目標(前線の後方に設置された弾薬庫、物資集積地、司令部等)」への攻撃で活躍中だが、同じランチャーで射程300kmのATACMSも使用することができ、ウクライナは再三「ATACMS供与」を要請してきたが米国はこれを拒否し続けている。

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. William Chockey

しかしGMLRS弾では到底届かないロシア軍の拠点で爆発が発生すると必ず「米国がATACMSを供与しているのではないか?」と噂されてきたが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「バイデン政権は戦いのエスカレーションを未然に防ぐためATACMSが使用できないよう改造したHIMARSをウクライナに提供している」と報じており、これが事実なら英国、ドイツ、フランスが提供しているMLRSもATACMSの運用能力が削除されているだろう。

米政府高官は7月「クリミア大橋への攻撃にHIMARSを使用することは可能で、ウクライナ人が自国の主権が及ぶ範囲でロシア軍と戦うことに何の制約もない」と明かしていたが、これはATACMS供与を示唆しているのではなく「GMLRS弾が届く範囲までクリミアを解放できたならクリミア大橋の攻撃に使用してもよい」という意味になるため非常に興味深い。

出典:Rosavtodor.ru / CC BY 4.0

つまりATACMSの供与が「戦いのエスカレーションを招く」という理由でウクライナ支援の選択肢から外れるなら、西側製戦闘機の供与など期待するだけ無駄だ。

関連記事:米国、ウクライナ軍がクリミア大橋攻撃にHIMARSを使用してもOK
関連記事:ウクライナ国防相、最終的に西側は射程300kmのATACMS提供に応じる

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by John Hamilton M270から発射されたATACMS

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コメント

    • 58式素人
    • 2022年 12月 06日

    ”ATACMSの供与が「戦いのエスカレーションを招く」という理由で
    ウクライナ支援の選択肢から外れるなら、西側製戦闘機の供与など
    期待するだけ無駄だ。”
    同意します。やはり、古くても東側戦闘機を整備/改造して渡すことでは。
    あるいは、ウクライナには巡航ミサイルやSRBMの開発製造能力がありますから、
    そこを支援するのが良いかと。

    30
    • XYZ
    • 2022年 12月 06日

    カードとしてインフラ攻撃を続けるならば、ATACMSを提供するという発表をしても良いレベルになっていると思いますが、アメリカはこの戦争を長引かせたいのでしょうかね・・・。

    27
      • NHG
      • 2022年 12月 06日

      こういうのは起承転結が簡単に入れ替わっちゃうから注意
      いまでさえ「ウクライナがNATOの犬になって歯向かうから矯正の必要がある」と考えてるロシアに、そういう道理は通じないです
      欧米とロではそもそもの視点が違うから、そこから導き出される結論も違うものになる

      25
      • 2022年 12月 06日

      この場に及んでもこのような制限をかけ続けると、仮にウクライナがこの戦争を乗りきっても、将来ウクライナ自身は中国からの技術提携や兵器提供を受ける方針を取りそうだ。
      この生かさず殺さず方針を台湾も視てるだろうな。

      16
      • nachteule
      • 2022年 12月 07日

       アメリカ製兵器で広域なロシア領土内のどこかを攻撃するって時点でロシアと核戦争含めて直接やる気があるなら提供するだけの話。ウクライナが勝手にやりましたって言い訳なんて通用しないでしょ制限無しなら使うんだから。

       それにATACMSは新規製造なんてして無くて在庫は既存ミサイルからのアップグレードでウクライナが調子に乗ったらすぐに無くなる量。その少ない在庫の種類だってバンカーバスターなのかユニタリー弾頭、更なる射程延伸型と幾つもある中で何をどれ位保有しているのかも不明。
       射程が長くてもどこかのタイミングで弾種含め適切な使い方をしないと、戦争短縮に大きく寄与しないと思う。
       
       

       

    • もり
    • 2022年 12月 06日

    まかり間違ってロシア本土の都市に攻撃なんかしちゃった日にはロシア国民の戦争意欲も上がっちゃうしロシア政府も後戻り出来なくなるからねぇ

    13
      • p
      • 2022年 12月 06日

      しかし既にロシア本土内の航空基地などは攻撃されているし、先日のドローンならモスクワまで射程圏内のようだから結局ウクライナの意思次第なところがあるような気もする
      まあウクライナ製兵器による攻撃と米国供与兵器によるそれとではインパクトに差があるのは確かだが…

      24
        • ぬっこ
        • 2022年 12月 06日

        ロシアの常套手段になっている偽旗作戦にも説得力を持たせないよう、意思頼みではなく物理的に不可能な状態にしておく必要があるのだと思う(ウクライナを信用できないというのも大きいと思うけど)。

        作戦立案にも関与している米国がロシア本土の攻撃が可能な武器を提供し実行されたとなれば、それはもう米国による攻撃に等しく見られるわけで、「NATOの攻撃からロシアを守る」というこれまで一蹴されてきたロシアの理屈を認めることになる。そうなれば大戦のリスクを抜きにしても、なんとか維持されている国際世論に影響が出るし、ひいては米国世論すら支援の縮小に向かう恐れがある。

        3
      • xyz
      • 2022年 12月 06日

      供給するしないは関係なくどっちにしても露助はウクライナを攻撃し続けるのは変わらんし
      後戻りが出来ないのは同じなんだよな。
      露助を弱体化するって意味では軍事施設限定運用で供与した方が論理的ではある。

      28
    • りんりん
    • 2022年 12月 06日

    制御ソフトウェアの中からATACMSにかかわる部分を削除しているだけでしょうから、必要になればすぐに使用できるでしょう。
    アメリカ政府は、ウクライナの長距離攻撃用ドローンの製造を邪魔してはいないみたいですから、自分で製造する分には何も言わないし、素材の入手にも制限を加える気は無いのでしょう。

    17
    • 無無
    • 2022年 12月 06日

    ロシアとアメリカが裏で話し合っていて、かつお互いに騙し合いを繰り返してる様相
    外交とはいかに相手を騙すか、だとは誰が言ったのか
    そこを判ってて戦うウクライナにも知られざる裏面があるんだろうね

    1
    • 2022年 12月 06日

    日本が買うトマホークも色んな制限が掛けられてそう
    有事の際に使い物になるか怪しいなぁ

    16
      • XYZ
      • 2022年 12月 06日

      こういう不安を抱えないようにするには自主開発しかありませんよね。

      北○・上○・尖○、ウラジ○ストクあたりには打ち込めない仕様とかだと悲惨。

      14
      • ポロニウム
      • 2022年 12月 06日

      日本の買うトマホークって500発やろ。
      あくまで国産巡航ミサイルが開発完了・配備開始するまでの繋ぎだって話だったのでは?

      17
      • ndk
      • 2022年 12月 06日

      制限を機にするなら、F-35やイージスシステムのブラックボックスに何仕込まれてるかわかたもんじゃないから、
      気にし始めると禿げる禿げる。
      まあ、アメリカさんとは末長く仲良くしないとダメだね。

    • まつ
    • 2022年 12月 06日

    ATACMS供与さクリミア大橋狙っても現時点ではすべて撃墜がオチ。

    • 人参は飲み物
    • 2022年 12月 06日

    アフガンやベトナムしかり戦争は多くの制限(聖域)を作ったほうが負けるって学ばなかったのか?
    前の記事で密約がどうのこうのとかやっていたけど、本当にありそう

    6
    • AH-X
    • 2022年 12月 06日

    例え撃墜されても狙われている、破壊する手段を持っているってだけで相手には相当なプレッシャーですよ。

    4
    • 2022年 12月 06日

    そもそも、在庫がそんなに無いんじゃなかったかー・・・そんな文章を読んだ記憶がある。
    あと、割高。

    • ひまわり
    • 2022年 12月 06日

    たとえばFCSから特定の電装部品やソフトウェアを削除している程度であれば
    ATACMSの弾薬とともにそちらも提供すれば前線で運用能力を直ちに回復できるでしょう
    そもそも使わせたくないなら弾薬を提供しなければいいだけなので、そのような改造をする軍事的な意義がありません
    あくまで戦争をエスカレートさせないというアメリカの立場を示すための形だけの措置でしょう

    • はひふへ~ほ~
    • 2022年 12月 06日

    プログラム上だけであって、物理的使えないものではないだろう。
    だからこそここの大統領が「ATACMSをよこせ」と言っているのでは?

    1
    • mun
    • 2022年 12月 06日

    かたやロシアは長距離ミサイルを自由に使用し
    あまつさえ民間人や民間人のためのインフラを標的にしているというのに
    エスカレーションを防ぐ、という言葉があまりにも虚しいですな

    5
    • おっさん
    • 2022年 12月 06日

    ウクライナだって長距離打撃力を開発しようとしてるだろう。それがある日突然形となって現れないとも限らない。
    ウクライナ製巡航ミサイルが、IRBMが、どっかの誰かによって、どっかの誰かのパーツでウクライナ独自の兵器としてお披露目される日が来ないとも限らない。

    ってのはないですかね。
    やっぱり長い手がないと嫌がらせもままならない。

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